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Rei《VOICE》など [音楽]

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Reiの最新アルバムは7曲収録のミニアルバム《VOICE》だが、それよりもフェンダーのプロモーションの映像をよく目にする。ストラトキャスターが70周年アニヴァーサリーなのだそうで、その映像でも演奏シーンを見ることができる。

そもそも初めてReiの映像を見たのはエピフォンの楽器紹介の動画によってであった。大きめのボディのアコースティクを軽々と弾きこなすまだ少女のようなReiのカッコよさに、すぐにCDを買ってしまったのを思い出す。
最初のミニアルバムは長岡亮介との共同プロデュースによるもの (長岡亮介とは東京事変のギタリスト・浮雲である)。

フェンダーのYouTubeチャンネルにはAmerican Acoustasonicというやや特殊な形状のエレアコを演奏する動画もあるが、この楽器の印象も強烈である。
フェンダーが原宿に旗艦店を設けたのは、日本はアマチュアの女性ギタリストの比率が高いので、楽器店としてよりファッションショップ的な意味合いで進出したとのこと。そうした意図があるのならReiのプロモーションはぴったりなのだろう。

もっともプロモーションとしての、つまりお仕事としての映像より、純粋なライヴのときのエレキギターでの演奏のほうが楽しく聴けるのは確かだ。SANABAGUNとのコラボによる動画をリンクしておくことにする。

中学生くらいの若者にギターを知ってもらおうとするフェンダー・チャリティー・スクールというイヴェントがあり、Reiとハマ・オカモトが講師になっている動画もある。ロバート・ジョンソンの〈クロスロード〉と、選曲はベタだがブルージーな音楽の啓蒙としては順当。
ハマ・オカモトはReiのバックで演奏することが多いが、Tokyofmの《THE TRAD》やテレビ朝日の《ハマスカ放送部》など、その音楽的な知識が深くて面白い。でも最近のハマスカ放送部の企画はタモリ倶楽部っぽいような気がする (それで良いんですけど)。

〈追記〉Reiが Lonely Dance Club で使用しているテレキャスター・シンラインはフェンダーがRei用に製作した楽器のようです (ブリッジが6wayのようだし、スタンダードとは細かく違う。シンラインなのに重いとのこと)。したがって市販されている普通のシンラインとは別ものです。

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Rei/VOICE (Universal Music)
VOICE (Limited Edition)(限定盤)(SHM-CD)(DVD付)




Rei/Epiphone Masterbilt Century Collection
https://www.youtube.com/watch?v=n7_u6WGYr1Q

Rei × SANABAGUN/Lonely Dance Club
https://www.youtube.com/watch?v=Z-gSCqTvuko

Rei/UNLIMITED EXPRESSION Vol.14
https://www.youtube.com/watch?v=pmAFa0PDcE4

Fender Stratocaster 70th Anniversary: Backstage Vlog
(メイキング映像)
https://www.youtube.com/watch?v=FVCDUfzSBVk

Rei&ハマ・オカモト/フェンダー・チャリティ・スクール
https://www.youtube.com/watch?v=z5uW_78KrYk&t=203s
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ジャズ・バルティカ2008のオーネット・コールマン [音楽]

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Ornette Coleman (Jazz Baltica 2008)

宇多田ヒカルのベスト・アルバム《SCIENCE FICTION》は単なる寄せ集めのベスト盤ではなくて、新しく入れ直した曲が3曲、リミックスが10曲とのことだ。Re-Recordingは〈Addicted To You〉〈光〉そして〈traveling〉だが、track 1にシングル盤でいえば4thの〈Addicted To You〉を持ってきているのがさすがである。〈Automatic〉や〈First Love〉でなく〈Movin’ on without you〉や〈Addicted To You〉のほうが初期の宇多田を象徴している楽曲のように思えるからだ。

4月13日夜の日本TVの新番組《with MUSIC》で宇多田は、なぜアルバム・タイトルがサイエンス・フィクションなのかを語っていたが、よくわからなかった。もっともアルバム・タイトルなんてある種の識別記号だと考えればそのとき思いついたフィットする語彙でよいわけで、そのサイエンス・フィクションという言葉で連想するのがオーネット・コールマンなのである (と強引に結びつけてしまった)。

最近、オーネット・コールマンをよく聴く。《Free Jazz》とか《Tomorrow Is The Question!》などのLPも続々と再発されているし、単なる私のマイブームというわけでもなく、比較的よく聴かれるようになってきているのではないだろうか。

YouTubeを探していたら2ギター、2ドラムスというセクステットの1978年7月のドイツでのライヴを見つけた。ギターはジェームス・ブラッド・ウルマーとバーン・ニックスで、ブラッド・ウルマーなつかしい! と思ってしまったのだが、でもそれよりもずっと後の2008年の3sat (ドイツのTVチャンネル) が収録したライヴが素晴らしい。
ジャズ・バルティカという1990年から毎年行われているジャズ・フェスティヴァルにおける2008年7月6日の演奏で、2ベースのクインテットであるが、ベースはアコースティクとエレクトリック各1本で、それにジョー・ロヴァーノのテナー、そしてデナードのドラムスというパーソネルである (オーネットはピアノレスでグループを組むことがほとんどだ)。

どの曲も比較的短めな演奏で、しかも変化に富んでいるし、トニー・ファランガのアルコが美しい。そしてあらためて思ったのだが、オーネットの音色は常に流麗で衰えも無く、むしろ逆に練れていて、そして常にスウィングしていること、これが重要である。有名なブルーノートのゴールデン・サークルにおけるライヴは、シンプルでメインストリームなジャズにしか聞こえない、というようなことを以前に書いたことがあるが、メインストリームというのは大袈裟にしても、オーネットは常にリズムをキープさせていて、それはフリージャズに特有な痙攣するようなパルスではなく、純粋にスウィンギーなテイストであり、そして根本的に明るい音楽であることだ。それはあの〈Lonely Woman〉でも翳ることはない。もちろん曲想自体は悲哀に満ちているのだが、オリジナルの《The Shape of Jazz to Come》の頃とは違って、この日のライヴにおけるメロディーラインは慈愛に満ちている。

下記にリンクした当ライヴは1時間17分もあるので、00:54:35の〈Dancing In Your Head〉あたりから最後まで聴いてみるのでも十分に堪能できるように思う (YouTube画面左下の 「…もっと見る」 をクリックして時間表示をクリックすると各曲毎のリンクに飛ぶことができる)。


宇多田ヒカル/SCIENCE FICTION
(ソニー・ミュージックレーベルズ)
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Ornette Coleman/Science Fiction
(ソニー・ミュージックレーベルズ)
サイエンス・フィクション (特典なし)




Ornette Coleman/JazzBaltica 2008
https://www.youtube.com/watch?v=yDVBrOnVdR8
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マウリツィオ・ポリーニ《バルトーク:ピアノ協奏曲第1番》 [音楽]

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Maurizio Pollini (2001)

マウリツィオ・ポリーニ (Maurizio Pollini, 1942−2024) は私にとってアイドルだった。衝撃を受けた最初の演奏はショパンの《エチュード op.10&25》だったが、圧倒的なその演奏に対して、すごいという声とともに 「メカニック過ぎる」 とか 「これはショパンではない」 などという誹謗も聞かれたことを覚えている。
私の知人にもその手の意見の人がいて、ポリーニに対しても、キース・ジャレットに対しても (というよりもECMの音楽全般に関して) ことごとく否定的で、はじめは音楽に対して深い造詣があるのかと思って聞いていたのだが、次第にそれは単なる好みの差なのだとわかるようになってきた。同時に選択肢は常に自分自身にあり、自らの選択こそが絶対だと悟った (他人の意見に影響され過ぎるのは無駄だという意味である)。

エチュードに衝撃を受けてそれ以前の録音を探した。ストラヴィンスキーのペトルーシュカとプロコフィエフのソナタだったが、今だったらともかくその当時はまだ冒険的な選曲だったように思う。それをリリースしてしまうというポリーニのセンスにしびれた。以降のシューベルトのさすらい人、シューマン、そしてノーノ (はさすがにあまり繰り返しては聴かなかったが)、シェーンベルク、ショパンのプレリュード、そしてポロネーズと、すべてを西独DG盤で揃えた。

しかし、1980年を過ぎるとあまり熱心さというか執着がなくなったのは、ポリーニに飽きてきたからではなく、世界のピアニストの指向が次第にポリーニ的なアプローチのピアニズムに収斂されていったので、つまり雑な表現でいえば、かつての感情過多でロマンティックな演奏スタイルは淘汰されつつあって、結果としてそれまでのポリーニの特異性が減少してきたからなのではないかと思う。

ポリーニのベストをあげるのなら、やはり最初期のエチュードと、そしてやはり初期に録音されたベートーヴェンの30〜32番ソナタだと私は思う。特にベートーヴェンの後期ソナタは、いままでのピアニズムと違っていたし、いきなり後期ソナタから出してくるピアニストもいなかったのではないだろうか (もっとも、DG盤は最初のボックスセットのデザインに較べると、再発LPのジャケットデザインがひど過ぎる)。その後、若きイーヴォ・ポゴレリッチが32番から出してきたのからもわかるとおり、以後のピアニストにポリーニが与えた影響は大きかったような気がする (あえて言うならば後期ソナタをこんなにポピュラーにしたのがポリーニだったとも)。
ポゴレリッチの初期のコンサートに対して坂本龍一が、そのエキセントリックさに驚いた感想を語っていたのも懐かしい思い出だが、そういう点から見るとショパン・コンクールというのがピアニストのトレンドの指標のひとつとなっていることは間違いない。

今、YouTubeで聴くことのできるなかでイチオシなのはブーレーズの振るバルトークのピアノ・コンチェルト第1番である。
DG盤のバルトークはクラウディオ・アバド/シカゴの1977年録音だが、YouTubeにあるのは2001年6月のブーレーズ/パリ管と、翌2002年の東京文化会館でのブーレーズ/ロンドン響のライヴである。
2001年のパリはシャトレ座でのライヴであり、シャトレ座といえばバルバラの《シャトレ87》を思い出すが、バルトークのパーカッシヴなニュアンスが良く現れていて、ブーレーズとの相性もあり刺激的なバルトークのように思う。以前にも書いたことだが、まだ調性感の残っていたバルトークのコンセプトをダルムシュタットによって葬り去ったのが若きブーレーズでありながら、そのブーレーズの振るバルトークが私にとって、もっともフィットするバルトークであるという矛盾が面白い (たとえば青髯公とか)。
文化会館のライヴはパリの翌年のため、オケは違うけれど練れている演奏のように感じるが、パリのほうがスリリングさは勝っているように思える。

ポリーニは晩年になってベートーヴェンを弾き直しているし、私も彼の録音の全てを聴いてはいないので、遺されたものを辿って行くことが偉大なピアニストを理解するための道なのだろう。残念ながら、もう新しい録音には出会えないとはいえ。


Maurizio Pollini, Claudio Abbado,
Chicago Symphony Orchestra
Bartók: Piano Concerto No.1&2 (Universal Music)

バルトーク:ピアノ協奏曲第1番・第2番(生産限定盤)(UHQCD)




Maurizio Pollini, Pierre Boulez, Orchestre de Paris/
Bartók: Piano Concerto No.1 (Mov 3)
Théâtre du Châtelet, Juin 2001
https://www.youtube.com/watch?v=Ijc90fbi9kY
(Mov 1)
https://www.youtube.com/watch?v=XMwH3011tTk
(Mov 2)
https://www.youtube.com/watch?v=0eGH826Y3CI

Maurizio Pollini, Pierre Boulez, London Symphony Orchestra/
Bartók: Piano Concerto No.1
Tokyo Bunka Kaikan, 21/Oct/2002
https://www.youtube.com/watch?v=9ynqvsnWZZc

Maurizio Pollini/Pierre Boulez: Piano Sonata No.2 (1947−48)
https://www.youtube.com/watch?v=-ZpNlxoXpQg
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