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晩年のバド・パウエル — Portrait of Thelonious [音楽]

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ジャズ・ピアニストであるバド・パウエルのこれ1枚というのは私の場合決まっていて、それはそんなに名盤とはいえない《Portrait of Thelonious》である。
パウエルは初期の頃、その鋭くて、よく指の回るピアニズムという印象が強いが、晩年には当時のジャズメンによくある蝕まれた身体となり、演奏も覚束ないときが数々あったという。

《Portrait of Thelonious》はそういう晩年のパウエルを捉えたライヴ録音である。とはいえ、この日のパウエルは比較的調子がよかったとのことであるが、やはり指がもつれたりミスタッチをする個所も見受けられる。若い頃のようにとんがってはいなくて、もうぐずぐずである。初めて聴いたら、何てヘタクソなピアニストだと感じるかもしれない。

だが、このアルバムの2曲目の〈There Will Never Be Another You〉のテーマからアドリヴへ、その1〜2コーラス目あたりの懐かしいようなメロディラインとそのピアノの響き、ここにジャズの全てがある、と大げさかもしれないが私は思う。喜び、悲しみ、パウエルのそれまでの人生の全てがあらわれている。聴衆の拍手も暖かい。

たとえばデューク・エリントンやカウント・ベイシーも、現代のめくるめくほど指の回る若いピアニストたちのようなテクニックは持っていなかった。でもそのピアノの音はどうだろうか。エリントンやベイシーと同じような慈愛の音が、このパウエルにはある。音楽とはテクニックではない。テクニックとは単なるツールであって、いくら道具の高性能を誇ったところで音楽としての説得力はもち得ないのではないだろうか。

タイムマシンがあったらこの演奏している場に行ってみたいと思わせるのが最も素晴らしいライヴ録音に違いない。この時、パウエルの演奏をナマで聴けた人は幸せな人たちである。


Bud Powell/Portrait of Thelonious
ポートレイト・オブ・セロニアス+1


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