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魔法使いのいない5月 — ZARD [音楽]

ZARD_揺れる想い.jpg

ZARDを私はほとんど知らない。
最初に聴いたとき、それがどの曲だったか忘れてしまったが、曲のイメージがなんとなく古いように思えてしまって、ずっと関心を持てないでいた。
たぶん彼女の経歴のかなり終わり頃になってから、ふとベスト盤を聴いてみて 「これはいいかも」 と感じたのが心変わりの始まりになる。

プロモーションとして公開される画像の禁欲さに惹かれた。たとえば《Cruising & Live》は黒のパンツスーツで、その頃そうしたマスキュランなコーディネイトが流行っていたのかもしれないのだけれど、無彩色で無性的で、訴求力がわざと抑えられているように見える。セクシャルに見せるのはタブーなのだろうか。
あるいは簡素なジーンズにTシャツというふうに常にシンプルで、露出を避けることによりかえって興味をひかせるという意味あいがあるのなら、それもまたプロモーションのひとつなのだろうと思った。

ライヴ映像としてのDVD《What a beautiful moment》も袖の長めな黒のパンツスーツで、無造作に束ねた髪、照明も色をつかわず、ステージは暗くて、何の飾りも仕掛けもない。その誠実な歌い方だけが印象に残る。あらためて名前だけは知っていたかつての大ヒット曲を聴いてみて、その新鮮さにうたれた。これは一種のトラディショナル・ソングかもしれなかった。

私がリアルタイムで聞いたのは最後の2枚のアルバムだけで《君とのDistance》は結果としてラスト・アルバムとなってしまったが、そのタイトル曲〈サヨナラまでのディスタンス〉は、異様なエフェクトをされているためなのだろうか、その暗さが際だっていて、陰鬱というだけでなくて、嫌な予感がした。

 風の中で もっと強い 女になりたい

というリフレインは言葉がダイレクトでリアル過ぎないだろうか。単純に飾らないというのとは少し異なっていて、そこに彼女の生身が出ているようで、こういう歌詞もありなのかとも思ったけれど、意外な感じもした。芯は強いのだけれど、すごく繊細な心の、はかなさが垣間見える。今になってふりかえるのならば、それはなんらかの暗示の言葉のようにも思える。

このライヴDVDのextra versionに、ちょっとミスをした曲の断片がつなぎあわされて編集されたパートがある。YouTubeに今あるデータだと08:20のあたりからの〈もっと近くで君の横顔見ていたい〉は絶唱で、凜とした精神の強さと痛々しさを感じる。
ZARD — 坂井泉水という存在は唐突に永遠に失われてしまったが、歌がずっと心の中に生き続けるのだとするのなら、どこまでも続く坂道の先に、永遠は見えるのかもしれない。


ZARD/What a beautiful moment (B-VISION)
What a beautiful moment [DVD]




2004年ライヴ extra version 1
http://www.youtube.com/watch?v=qLUd0IEjJ10
揺れる想い (2004年ライヴ)
http://www.youtube.com/watch?v=ZqsTp1S3b38
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