So-net無料ブログ作成

Et mon silence — フランソワーズ・アルディ《La question》 [音楽]

FrancoiseHardy_150316.jpg
Françoise Hardy

フランソワーズ・アルディの最も有名な曲はなんだろうか?
ゲンズブールの詞による Comment te dire adieu? (さよならを教えて) なのだろうか。たぶんそうなのかもしれない。でも私にとってのアルディは《La question》である。

フランソワーズ・アルディ Françoise Hardy は1944年パリに生まれ、その頃のフランスのポップスはフランス・ギャルの例でもわかるようにほとんどアイドルソングのようで、アルディもまたそうしたポジションで歌を始めた。デビューは1962年、18歳のときである。

しかし《La question》は1971年に作られた、従来の単純なフレンチポップスとは少し異なる雰囲気を持ったアルバムである。アイドルを抜け出してもう少し自分の個性を出せるようになった頃だ。このアルバムはブラジルのギタリスト/シンガー/コンポーザーであるトゥーカとのコラボレーション作品といってよい。余計な飾りが無くて、すごくシンプルで、でも単純な素朴さではなくurbanitéで、明るさと翳りとアンニュイとが混ぜ合わされていて、アルディの最高傑作であると私は思う。心がうつろなとき、なにもよりどころがないとき、小さなランプを点すようにこのアルバムを聴いてみると、言葉を持った音楽は心の襞のずっと奥にまで響いて聞こえる。特にギターを弾いているトゥーカの力が大きい。

トゥーカ Tuca は本名を Valeniza Zagni da Silva といい、アルディと同じ1944年、サンパウロ生まれのブラジル人であり、ギターだけでなくほとんどの作曲と編曲も担当している。

冒頭曲の〈Viens〉だけは比較的おおげさにオーケストレーションされた作品だが、でも和音は無駄に厚くなく、その中でもギターの存在感が顕著だ。アルディの歌は、その声質と、なによりもその発音がこころよい。
そして2曲目の〈La question〉になると音はごく絞られて、まずギターだけをバックにインティメイトに歌い出すアルディの声に気持ちがやすらぐ。
きれいに重なる柔らかなピアノと弦。でも、しきりに繰り返される Je ne sais pas (ジュヌセパ:わたしは知らない/わたしはわからない) という言葉。単純そうな歌詞でありながら、それは暗さに次第にすり寄ってゆく。

 Tu es ma question あなたは問い
 Sans réponse 答えのない
 Mon cri muet 叫びは声にならず
 Et mon silence 私は沈黙する

最後に残るのは私の沈黙だけなのだ。(訳詞は日本語盤CDにあったものを引き写したが、「あんた」 となっていたのを 「あなた」 に変えた。Sans réponse というフレーズが、意図した曖昧さのように見えるが、その4行前の Tu es le sang (あなたは血) の sang に呼応しているようにも思える)

このアルバムのタイトルは日本盤が発売されたとき、《Un Recueil de mes poésies/私の詩集》と名付けられていた。最近になって本来の《La question》に変更されたようである。なぜ、最初 Un Recueil de mes poésies だったのかは不明である。

〈Mer〉とか〈Si mi caballero〉など、以前聴いていたときにはシンプル過ぎる曲のような気がしていたのだが、今聴くと無駄のない完璧さが際立つ。その中で響くトゥーカのギターが美しい。音の壁やコンプレッションされた音圧は私にはいらなくて、こうした何でもないような音に心がやすらぐ私を発見する。それは私の心の反映であり、白い騎士のうつる鏡である。

トゥーカは1978年に33歳で亡くなっているため、彼女の作品はほとんど残されていないようだが、このアルディのアルバムだけでもその音楽という名の青い影は永遠であると思う。


Françoise Hardy/La Question (Virgin France)
La Question (Fra)




Françoise Hardy/La Question (1971)
https://www.youtube.com/watch?v=D-lIxIYmdKM
nice!(30)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 30

コメント 2

青山実花

全然詳しくない私が言うのは申し訳ないようなのですが、
フランソワーズ・アルディの、
「もう森へなんか行かない」は、
とても雰囲気があって好きです。

ユーミンの曲、「私のフランソワーズ」は
フランソワーズ・アルディの事を歌っているそうですね。
私の青春はほぼユーミン一色でしたので、
アルディさんご本人より、
ユーミンの歌に涙が出るような思いです^^;
(すみません、関係のない話で)

by 青山実花 (2015-03-16 23:16) 

lequiche

>> 青山実花様

あ、ギイ・ボンタンペリですね。
アルディでは〈さよならを教えて〉と並ぶ有名曲だと思います。

MISSLIMがリリースされたのは1974年ですが、
アルディの La Question の日本発売も74年で、
ユーミンがフランソワーズを作曲したとき、
すでにこれを聴いていたかどうかは微妙ですね。
やはりもう少し前の〈さよならを教えて〉〈もう森へなんか行かない〉
の可能性のほうが大きいです。
あとSoleil (邦題は〈アルディのおとぎ話〉) というのもあるので
そのあたりまでかもしれません。

そうですか。ユーミン1色というのもいいですね。
私は〈ハルジョオン・ヒメジョオン〉という曲が好きです。
もっとも暗い曲のひとつですが。
ただ、あの曲のイントロの編曲は何かのパクリだったんですが、
何だったか忘れてしまいました。
あと、〈かんらん車〉もいいかなぁ。暗い曲ばっかりですね。(^^;)
by lequiche (2015-03-17 07:07) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0