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スター・ウォーズ — ジョージ・ルーカスとリドリー・スコット [映画]

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数日前のニュースでフィリップ・K・ディックの『高い城の男』がアメリカでドラマ化されたのだそうだが、その広告として地下鉄のシートをナチスの鷹の紋章や日本の旭日旗のデザインにして、物議を醸しているとのこと。
『高い城の男』(The Man in the High Castle, 1962) はディックの、alternate history物とジャンル分けされるSF小説で、ドイツと日本が第2次世界大戦で勝った後の世界を描いている。
パラレル・ワールドの一種でもあり、スチーム・パンクも同様の変種と考えてよいが、そうしたなかで最も有名なのが『高い城の男』だと言えるだろう。

YouTubeにあるトレーラーを見ても、見ようによってはかなり危険な画像であるが、つまりナチスに対する賛美でなく単なるマテリアルとしてそのシンボルが出てくるだけでも拒否反応はあるわけで、これをドラマ化するというのはある意味、かなり冒険なのだと思う。
エグゼクティヴ・プロデューサーとして、そのトップにリドリー・スコットの名前があったので、ああやっぱり、と納得してしまった。リドリー・スコットは《ブレードランナー》の監督であるが、それは同じディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』がベースとなった作品だからである。

だが、今、SF映画の話題といえば、もちろん《スター・ウォーズ》である。エピソード7が12月に公開ということで、トレーラーは見られるが、まだそんなに詳しいことはわかっていない。少しずつ、小出しにしてくるプロモーションはいつものことであるが。

スター・ウォーズの中にアーシュラ・K・ル=グィンの『ゲド戦記』の影響が多く見られることはすでに以前のブログに書いたが (→2014年12月10日ブログ)、《フォースの覚醒》トレーラー冒頭にある “Who are you?” “I’m no one.” という応答は、ゲド戦記・2の『壊れた腕輪』(The Tombs of Atuan, 1971) を連想させる。
ゲド戦記・1の『影との戦い』(A Wizard of Earthsea, 1968) で、名前の重要性を説き、相手の真の名前を知るものはその者を操ることができるほどに名前が重要だったのに対し、『壊れた腕輪』ではその名前が無い (奪われた) という状況にあるアチュアンの巫女を描くところからストーリーが始まる。
エピソード7もアチュアンも、どちらも主人公が女性であるところも共通している。
ゲド戦記というとどうしても過去のアニメを連想してしまうが、残念ながらあのアニメよりもスター・ウォーズのほうがル=グィン的なテイストはいかされている。

ルーカスの《スター・ウォーズ》が典型的なSFの明るいセンス・オブ・ワンダーを具現化しているのに対し、リドリー・スコットは負の、暗いイメージとしてのSFのにおいがどうしてもつきまとう。
その時代の2人の作品を時代順に並べてみると入れ子細工のようになっていることに気がつく。

 Lucas: Star Wars [episode 4] (1977)
 Scott: Alien (1979)
 Lucas: The Empire Strikes Back [episode 5] (1980)
 Scott: Blade Runner (1982)
 Lucas: Return of the Jedi [episode 6] (1983)

《エイリアン》は少し際物的なイメージが強かったが、ルーカスのスター・ウォーズ・シリーズへの応答とも思えるのが《ブレードランナー》だと思ってよいだろう。リドリー・スコットは常に、退廃、偽善的未来、絶望、悲哀を語る。
作品としてあまり成功しているとは思えないが、《ブラック・レイン》(1989) でも彼の主題は一貫している。久しぶりの《スター・ウォーズ》の再開時に、規模は違うけれどリドリー・スコットがディック作品でその名前を現して来たのは偶然なのだろうか。

でも《スター・ウォーズ》も作品を重ねる毎に、少しずつ憂愁の色がほの見える部分があるようになってきた。それは単なるスペース・オペラではありませんよ、というエクスキューズなのか、それともアメリカそのものがそういうテーマを欲しているのか、私にはよくわからない。
それと、新宿プラザが無くなった今、《スター・ウォーズ》はどこで観るべきなのかが、もっとよくわからない。誰か教えてください。


Star Wars: The Force Awakens (trailer)
https://www.youtube.com/watch?v=BDvZ9UECfj8#t=122
The Man in the High Castle (trailer)
https://www.youtube.com/watch?v=zzayf9GpXCI
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Speakeasy

(原作読んでいませんが)私も『高い城の男』の予告編観ました。良い感じです。アマゾン・プライム限定のドラマですよね。私はアマゾン・プライム会員なので日本でも公開してくれることを期待しています。

・『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』おすすめ劇場ランキング
1位 109シネマズ大阪エキスポシティ
2位 成田IMAXデジタルシアター
3位 ユナイテッド・シネマ としまえん
4位 109シネマズ川崎
5位 その他多くのIMAXシアター

とのことです。詳細は↓で・・・

http://buzz-plus.com/article/2015/11/19/imax-star-wars/

by Speakeasy (2015-11-30 21:36) 

lequiche

>> Speakeasy 様

アマゾン・プライム会員なんですか。いいですね〜。
ディック原作の映像が、どの程度ヒットするのか興味があります。
ディックというと、やっぱりクセがありますから。

スター・ウォーズの上映館のご紹介ありがとうございます。
でもこれだと日本じゃまともには観られないみたいな内容で……。
上映サイズ等で多少問題があっても、
なるべく大きな画面で観られればとりあえずいいかな、と思います。
by lequiche (2015-12-01 00:48) 

末尾ルコ(アルベール)

「ブレードランナー」の新作をリドリー・スコットではなくドゥニ・ヴィルヌーヴというカナダの才能ある監督が担当するようでして、同監督の「プリズナーズ」「複製された男」など、極めてダークかつ魅惑的な作風で、「ブレードランナー」新作も「この人なら」という感じです。
ディックと言えば、原作とはまったく別物になっていましたが、ポール・バーホーベン監督「トータル・リコール」のはちゃめちゃぶりは大好きです。

                    RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2015-12-01 01:27) 

リュカ

しまった!ゲド戦記!
絶対読むぞーって思って「影との戦い」を読んだ後忘れてた(@_@;;
スター・ウォーズ、わたしはたぶんユナイテッド・シネマ豊洲で
4DX版を観る気がします(笑)
by リュカ (2015-12-01 10:44) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

おぉっ、詳しいですね。そうなんですか。
以前は絶対に続編は作らないと言っていたように覚えてますが、
やっぱりやるんだな、ということは知っていました。
どのようなかたちになるのか楽しみです。
バーホーベンの映画も観ていません。
是非観てみたいと思います。
by lequiche (2015-12-02 02:27) 

lequiche

>> リュカ様

ゲド戦記はあのアニメの影響のためか
イメージが残念な感じになってしまいましたが、
原作は非常に優れたジュヴナイルで翻訳も素晴らしいです。
最初は3部作だったので『さいはての島へ』までがひとつのクールですね。

4DX! そういう手がありますね。
でも、ああいうのって酔いませんか?(^^;)
by lequiche (2015-12-02 02:27) 

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