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Perfume《Future Pop》 [音楽]

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Perfumeのアルバム《Future Pop》で最もカッコイイのは〈If you wanna〉だ。あるいは〈Fusion〉でもいい。でも心が安まるように感じてしまうのは〈TOKYO GIRL〉だったりする。あるいは〈Tiny Baby〉の歌詞に出てくる 「チョコレイト」 という単語に反応してしまう。この対比は、あるいは乖離は、あるいは建て前と本音みたいなのはなぜ生じてくるのだろう。

音はますますクリアに、なによりもそのEDMな音は快楽のもっとも感じる部分を刺激する。これは危険だと思える音が連なる。音楽に使う音は、こんなに快楽を刺激し続ける音であってはいけない。アブナイクスリに近いような酩酊感の中に入ってしまう。

1曲目はインストゥルメンタルな序奏なので歌は2曲めから。その2曲目のアルバムタイトル曲〈Future Pop〉はキラキラしたギター音から始まるが、いきなり声の音像が大きくて近い。直接、頭の中に歌いかけてくるような気配。その説得性にビビる。音は明るく華やかだがその裏側にずっとノイズを伴っている。
そして3曲目の〈If you wanna〉へ移行する。歌詞は If you wanna love me か If you wanna kiss me で埋め尽くされる。意味はほとんどない。いや、あるのかもしれない。でもそれはどうでもいいのだ。そしてリズムが吃音のようにクロスする。オキマリのようなサビは存在しない。

Real Soundのimdkmの記事 (2018.08.24) によれば、EDMではビルドアップードロップという構成がひとつのセオリーとなっているが、いままでのPerfumeは音的にはEDMであるが、そうした構成を取り入れるまでには至らなかった。でも中田ヤスタカの音は、そのテリトリーにまで遂に侵入し始めたのだと分析している。

だが4曲目の〈TOKYO GIRL〉でいつものPerfumeが還って来る。

 踊れ Boom Boom TOKYO GIRL
 色とりどりの恋
 Let us be going ! going ! BOY
 Kawaiiと駆ける未来

の、Kawaiiと駆ける未来 (A / Bm) とメロディが下がるところが秀逸だ。
かつての〈I still love U〉のサビで、

 I still love U 抜け出せない 迷路のよう 見えないドア

のF / Dm / E / Aと、AmでなくAになるひそやかなドッキリ感に似ている。ちょっとだけ違うところへ行こうとする音の意志、その表情がいつもPerfumeには感じられる。
〈TOKYO GIRL〉でも〈Tiny Baby〉でも〈超来輪〉でも、キャッチーなメロディは、それはずっと過去からPerfumeの音の根底を維持してきた風景であるのだが、それは変形した日本古来のわらべ歌のような、あるいは、時にチャイニーズな音を彷彿とさせるような (〈超来輪〉)、たくみに郷愁をさそう音列であったりする。

そして〈宝石の雨〉や〈天空〉は電子的な衣をまとっているが、王道なポップソング、もっといえば懐かしいアニメのテーマソングのようなハイなままの印象で走り抜ける。ある意味、不安なままで終わらせないぞという予定調和的なエンディングへと持って行くための布石だ。そして終曲〈Everyday〉も声が大きめな存在感を示す。

Perfumeの音にはシンセを使っていながら決して出て来ない音がある。普通ならこういう音だって使うよね、という音が欠けているような気がする。でもそれをこういう音というふうに形容することができないのだけれど、それは好き嫌いを超えた、この音を使ったらポップにならないという種類の音だ。そうした周到なプランの総体がPerfumeをずっと支えている。


Perfume/Future Pop (Universal Music)
Future Pop(完全生産限定盤)(Blu-ray付)



Perfume/If you wanna
https://www.youtube.com/watch?v=pFc9PZrroOk

Perfume/If you wanna (live)
https://www.youtube.com/watch?v=33NbGIVptNU

Perfume/TOKYO GIRL
https://www.youtube.com/watch?v=Ivk9bFADw-I

Perfume/TOKYO GIRL (live)
https://www.youtube.com/watch?v=ZlQ-AgK45kE&t=61s
nice!(74)  コメント(8) 
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末尾ルコ(アルベール)

Perfumについてはわたしにとって不思議な部分が以前からありまして、何故不思議かと言えば、その一番大きな理由は「熱心に観て(聴いて)いるわけではなかった」という個人的理由なのですが、「この3人がPerfumでなければならないという必然性がどこにあるのか」というのがよく分からなかったのです。
つまり、もともとこの3人の中に「現在のPerfum」が存在し、成長しつつあったのか、それとも圧倒的なプロデュースの力なのかといったことですね。
今回のお記事を拝読し、あらためてPerfumのプロフィールをチェックし、おぼろげながら分かってきた感は出てきました。
実はわたしはPerfumに好意的だったとは言い難く、しかし気になる部分もあったので、数年前にWOWOWでライブ放送を観てみました。
でも3曲くらいで観るの止めちゃったんですね。退屈を感じました。
ところが今回リンクしてくださっている曲を視聴して分かったのですが(←と言いますか、素朴過ぎることで失笑ものなのですけれど 笑)、Perfumの曲はある程度以上大音響で聴くべきなのですね。
今回はイヤホンで音を大きくして視聴したのですが、カッコいい。
今でも覚えておりますが、ライブ放送を視聴した時は小さめの音でした(笑)。
いや、もちろんロックを含め、音量を上げねば魅力半減以下の音楽が多く存在していることは知っていましたが、Perfumをちょっと侮っておりました。大きな反省です。
そしてもう一つ大きかったのが、(甲高い声にエフェクトをかけるヴォーカルって、どうなんだ)というのがあったんです。
しかしこれも、「世界観全体として、この声が必要」なのですね。

「If you wanna」や「TOKYO GIRL」のMVを観ていると、様々な映画から引用も感じられますが、全体としてとても未来的懐古を感じさせてくれる孤独が表現されていて心地いいです。
そしてダンスは洗練の極みとなりつつありますね。
わたし日本人のやるストリートダンス系は今一つ気に入らないのですが、Perfumの東洋的ジェスチャーを全面的に取り入れ、しかも「激しく踊らない」ダンスは素晴らしいと思います。
こうした動きは、白人や黒人だとなかなか様にならないのですよね。
あくまで無表情で踊るのも、澁澤龍彦好みの自動人形を彷彿させてくれます。
おくればせながらわたしも今後、Perfumに注目していきたいと思います。


須賀敦子は、多く読んでいるわけではないですが、わたしも大好きです。一つ一つの言葉が他の言葉に代え難いくらいまで的確に選択されている印象です。

>全部が一種の特殊な百科事典

これはまさしく、「澁澤龍彦的な読み方」のような気がします。

「Toru Takemitsu/Bryce」の楽譜も拝見させていただきました。
やはりゾクッとするような魔的なものを感じます。
ちょっとこの世のものではないかのような・・・。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-08-26 12:44) 

Speakeasy

Perfumeの新譜が各サブスクリプション・サービスで利用可能となっていたので、Apple Musicでもって聴いてみました!

Perfumeのアルバムは2ndしか持っていないので過去作と比較する事はできませんが、非常に聴きやすいというか、楽しく聴けました。
ほぼボーカル無しの「FUSION」等は、そのアイドル?らしからぬ攻めの姿勢に思わず笑いました。

自分の自慢は、Perfumeが「ポリリズム」でブレイクして以降、ミュージックステーション等、TV出演して来た映像(演奏シーンだけ・・・喋りはあれなんで・・・あれって・・・笑)を編集してブルーレイに収めてあることです。あんまり見返さないですし、同じ曲が何度も重なるのが難ですが・・・

そんないい加減なファンですが、他のアルバムも早くサブスクで聴ける日が来ないかな~♪

by Speakeasy (2018-08-26 17:00) 

猫毬

こんばんにゃ♪
Perfumeの曲の微妙なつながりかたって、
きっと狙ってつくってますよねー^^
チョコレイト♪
猫毬も反応しちゃいます(笑)
by 猫毬 (2018-08-26 20:37) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

音楽には人それぞれで好みがありますし、
Perfumeはライヴでどこまで歌っているのかわからないとか、
エフェクトをかけ過ぎるとか色々言われていますが、
それがコンセプトなら構わないと私は思います。
3人のキャラについては、昨年のブログにも書いたのですが、
最初に観たとき 「これ、CLAMPの魔法騎士レイアース!」
と直感的に思ってしまったのです。
私の勝手な思い込みですが。(^^)
3人のバランスもとてもよくとれていますし、
必然性はあるのではないでしょうか。

確かに適正な音量というのは音楽によって違いますね。
声に対するエフェクトを
過去のヴォコーダー風味でないようにかける
ということについては、
マドンナよりもむしろ早かったように覚えていますし、
Perfumeのほうが、より挑戦的だったと思います。
中田ヤスタカの考え方は女声にエフェクトをかけるのでなく、
そういうエフェクト音の一種 (つまり楽器音のひとつ) として
設定しているように感じます。

PVにはもちろんそうしたパロディがありますが、
音とダンスと映像をあらかじめ関連づけて作っていますし、
コロオグラファーはずっと同じ人ですから
いわゆる 「Perfume組」 的な集団としての作品ですね。
歌詞についてもよく考えられていますが、
それは旧来のJ-pop的アイドル路線とはやや異なります。
尚、Perfumeの履いているパンプスは
踊ることを想定して製作された伊勢丹の特注で、
一般の人でも買うことができます。

須賀敦子は自らの文才をずっと隠してきました。
それゆえに最初から完成された文体なのだと思いますし、
最も美しい日本語であると私は認識しています。
ただ、車をかなりのスピードで走らせる人だったようで、
無鉄砲という一面もあります。
フルトヴェングラーもスピード狂だったようですが。

宮澤賢治には、その作品に出てくる言葉を拾った
宮澤賢治語彙辞典というのがありますが、
澁澤龍彦のものを是非作っていただきたいなと思います。
by lequiche (2018-08-26 22:07) 

lequiche

>> Speakeasy 様

おぉ、そうですか!
映像編集までされているとはすごいです。
FUSION って笑いますよね。
こういうのが未来のPopになるのかもしれません。
そのうちに声をサンプリングして、
人間が歌っているか楽器で弾いているのかよくわからない
という手法がきっと出てくると思います。
(もう、やってたりして?)

たとえば〈Spending all my time〉のクリップなど観ると
https://www.youtube.com/watch?v=H4znsXCH_2Y
すごく閉塞感というか、ちょっと怖い部分もあって、
指でだってダンスはできるんだ、というか、
そういうコンセプトは最初からずっと継続してありますね。
by lequiche (2018-08-26 22:07) 

lequiche

>> 猫毬様

ですよね~。(^^)
そもそもチョコレイト・ディスコっていうのが何なのか
なんとなくわかるけれど、よくわかんないというか、
語感のほうが意味より優先しているのが
Perfumeの歌詞だと思います。
でもSpecialってくらいだから、
単なる語感以上のものが
きっとチョコレイトには詰まっていると思います。
by lequiche (2018-08-26 22:08) 

Speakeasy

またまた、失礼します。
がははははは、映像編集等と言うレベルのものではないです。別に動画編集用ソフトを利用したりするわけでなく、曲の前後を適当にぶった切ってるだけです。ハイ。

>そのうちに声をサンプリングして、
>人間が歌っているか楽器で弾いているのかよくわからない
>という手法がきっと出てくると思います。

『関ジャム』で観たのですが、米津玄師の「 灰色と青( +菅田将暉 )」で聴こえるキーボードの様な音は人の声だそうです。

https://youtu.be/gJX2iy6nhHc

後、やはり米津玄師の「Lemon」で聴こえるウェッという音も人の声です。米津さんはこういう遊びが好きなんですね。

https://youtu.be/SX_ViT4Ra7k

「Spending all my time」のPVは、映画『リング』や、映画『AKIRA』の超能力者のシーンを思い出しました。
確かに、ちょっと怖いです。

by Speakeasy (2018-08-26 23:05) 

lequiche

>> Speakeasy 様

いえいえ、そうだとしてもすごいです。
PVとライヴ映像は違いますし、
同一曲でも動きは毎回違いますし、
ポリリズム以来の動画というのは貴重です。

あぁ、やっぱり。もうこういうの、やってるんですね。
当然といえば当然です。
上記の末尾ルコさんのコメへのレスで、
ヴォコーダーより一歩進んだ方法は
Perfumeのほうが早かったというように書きましたが、
マドンナは《American Life》(2003) で
すでにそういうテイストを取り入れているので、
だとするとやはりマドンナのほうがPerfumeより早いです。
まぁ、当然でしょうけれど。

Spending all my timeはいわゆるESPのパワーを
習得するための学校のようにも見えますが、
同時に隔離された施設のような二重性を帯びていて、
腕の数字は囚人を暗示していますし、
ほとんど同じ歌詞の繰り返しは呪術的です。
by lequiche (2018-08-28 05:14) 

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