SSブログ

坂崎幸之助の〈The Beatles White Albumの秘密〉を聴く [音楽]

sakazaki&yukai_181116.jpg
坂崎幸之助&ダイアモンド☆ユカイ
(allnightnippon.comより)

ビートルズのホワイト・アルバム50周年記念エディション発売前日の11月8日夜、オールナイトニッポンGOLDスペシャルという番組で坂崎幸之助とダイアモンド☆ユカイのトークが放送されたのを、そのトーク部分だけYouTubeで聴きました。発売前の大騒ぎみたいなのは、昔のWindows発売の頃を思い起こさせる。あれは何だったんだろう? と今になって思うのだけれど。Windowsもビートルズもイメージとして、ちょっと懐古趣味っぽいように思います。

世界同時発売ということで、それまでは放送もできないらしいなかで、許されている範囲の曲をかけたらしいのだけれど、それは下記リンクのYouTubeではカットされています。約45分ほどなので、聴くのが一番なのだけれど、内容をかいつまんで書いてみます。知っていることもあるし、知らないこともあるし、だけれど、やはり坂崎さんの話術に引き込まれるのはいつもの通り。
お時間のある人は私の駄文など読まず、下のリンクから直接聴いたほうがよいです。

まず最初に坂崎さんが言う言葉。今回のエディションに収録されている未発表のデモ&セッション音源について 「もうどれだけ残ってんだ。ビートルズと大瀧詠一さんは」 という 「つかみ」 に笑ってしまう。ジ・アルフィーなんかせいぜいマスターっきり残ってないよ、とのこと。それが膨大に残っているのは、その頃から未来を見越していたんだろうという推理です。
でも坂崎さんのその当時の感想は、とっつきにくいアルバムであったという。まず2枚組というのはそれまでになかったし、LPなんて高いからそんなに売れないはず。買うのに決心がいりますよね。それにメンバーはすでに求心性を失ってバラバラの状態だったし、それはジョンとポールに対してジョージが擡頭してきたことにあるのだろうと。
それでその2枚組というのに影響されて加藤和彦が2枚組アルバムを出そうとして、結局却下されて1枚になってしまったことをアルバム解説でグチッているのだそうです。ビートルズも加藤も当時は同じ東芝だし、対抗意識があったのでしょうけれど、でも相手がビートルズじゃ、ちょっと無理。《ぼくのそばにおいでよ》(1969) ですね。2枚組で出していたら面白かったのに。

話はジェフ・エメリックに。エメリックはジョージ・マーティンの下で働いていたエンジニアで、ビートルズの一番身近にいた人です。それまで禁忌だった方法――バスドラムの中にマイクを入れた人でもある。それ以外にもいろんな録音の技法を編み出した人ですが、今年の10月に亡くなってしまいました。
〈Tomorrow Never Knows〉のヴォーカルを、ジョンから 「ダライラマが山の上で歌っている声にしといて」 と言われて、ジョンは帰っちゃった。いつでも帰っちゃうんだよなぁ、という話です。今、Tomorrow Never Knows を検索したらトップにミスチルが出て来ました。ヤレヤレ。

坂崎さんはホワイト・アルバムをニュー・アルバムとして聴いた世代なのだけれど、キツかった、という。とっつきにくくて、ばらばらという意味ですよね。対するダイアモンド☆ユカイさんは、ビートルズ・ファンの第2次ビートルズブーム世代だといっています。
その頃、赤盤・青盤というのが出た頃だけれど、オレは音楽にうとくてあまり知らなかった。その頃、流行っていたのはクイーンとかキッス全盛なんだけれど、スポーツ少年だったからクイーンとかキッスって見た目がバケモノみたいであんまり (ファンに殴られますよ) ……で、ビートルズの《Please Please Me》から聴き始めたんだとのこと。髪の毛も短いし。これで長髪って言われてたんだ。
それでギターがやりたくなって親にギターを買ってもらったんだけど、何かちょっと違う。つまりガットギターだった。近所のオニイサンに教わろうとしたら〈禁じられた遊び〉で、そりゃないよ、で、やっとコードを弾くというところに辿り着いたんだそう。

Gの音を出すとき、日本の教本では1弦だけ3フレットなんだけれど、イギリスの教本は2弦も3フレットを抑えるように書いてあるんだ。だからイギリス人は皆こういうふうに弾いてるんだとのこと。ああ、3度抜きね、と坂崎さん。そこからギターの話題に。
ポールって3フィンガーでは弾かないで2フィンガーじゃないですか。人差し指っきり使っていない。考えようによっては、すごい適当なんだよね、と坂崎さんが言う。でもそれでないと雰囲気が出ないんだそう。
〈Back in the U.S.S.R〉では3人がベースを弾いていて、という話から、それって後のフィル・スペクターとかそういう音につながっていくのかな、と発展してゆく。ウォール・オブ・サウンドを作るために大瀧詠一もたとえばギターを3人重ねて、でも同じ人が重ねたらダメで、違う人が3人で同じフレーズを弾くことによって音に厚みが出るのだそうです。

エリック・クラプトンの話では〈While My Guitar…〉だけでなく〈Yer Blues〉も。でも当時はそういう情報は得られなかったから謎だった、と坂崎さん。
最も有名な〈Strawberry Fields Forever〉の2つのテイクをつなぎ合わせた話。速い回転数のテイクを遅く、遅いテイクをやや速い回転数にして、つないでしまったのだけれど、結局、コードをAで弾くのかB♭で弾くのかという問題があるのだそうだ。あぁ確かに。
そういうことをわざとやってしまったのがサイケデリックですよね。

イーシャー・デモ全27曲というのは、ジョージ・ハリスンの自宅で録音したアコースティク・デモで、坂崎さんはこれがとても気になるという。ホワイト・アルバムに収録されなかった曲も入っていて、ポールのソロ1作目に収録された〈Junk〉も入っている。〈Not Guilty〉はテイク102と記載されていて、でも結局、ボツだったわけです。
そしてポールはビーチ・ボーイズの《Pet Sounds》に影響されて《Sgt. Pepper’s…》を作ったのだということだが、wikiにはそのこととともにビートルズの《Rubber Soul》が《Pet Sounds》に影響を与えたと書いてある。ブライアン・ウィルソンとポール・マッカートニーとの関係性、互いに与えた影響というのは面白い。

〈Michelle〉のイントロのポールの独特なベースライン。これは以前にも聞いたことがあって、その解説の動画もあった。確かにそうだよね。すごく納得します。
最後の話題として、それまでビートルズなんてうるさいだけ、といっていたクラシック畑の先生がたが、〈Yesterday〉を聴いたとき、そのコード進行の斬新さに、これはちょっと普通のバンドとは違うんじゃないかと思ったというのを、ドイツに行く飛行機のなかで服部克久先生がおっしゃっていたとのことです。

ただ、こういうホワイト・アルバムみたいな 「全部出し」 の行く付く先は、マスター・テープをそのまま再現することにあるんだと思います。つまり8chあったらそれを各ch毎に選択しても音を出せること。ハイレゾとか各種のハイスペック仕様CDじゃなくて、マルチトラックの再現こそが究極のはず。それは現在のCDの仕様では無理なので、でも最終的にはそれがマニアの望むものなのかもしれないのだけれど、それが成立するだけの需要はやはり無いでしょうね。

リンクの最後に〈Yer Blues〉を。
ジョンってやっぱり歌うまいよね。(コラコラ ^^;)


The Beatles [white album] (Universal Music)
ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)(スーパー・デラックス・エディション)(限定盤)(6SHM-CD+Blu-ray)




坂崎幸之助&ダイアモンド☆ユカイ/
オールナイトニッポンGOLDスペシャル
THE BEATLES WHITE ALBUMの秘密 (トーク部分のみ)
https://www.youtube.com/watch?v=OjpYTkMQb2c

坂崎幸之助/MIchelleのベースラインについて etc.
https://www.youtube.com/watch?v=jqhFbg9IeyQ

Yer Blues/
John Lennon, Eric Clapton, Keith Richards,
Mitch Mitchell (Jimi Hendrix Experience)
https://www.youtube.com/watch?v=Iuy-10Ejck4
nice!(92)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 92

コメント 8

末尾ルコ(アルベール)

ダイヤモンド☆ユカイは今でもロックな風貌で、老けませんね。
布袋寅泰などもそうですが、日本のロッカーは体形を含め、外見的に老ける人がそう多くはありません。
このあたりはアジア人の特質ですね。
欧米のロッカーは、10代の頃に信奉していた人たちの「今」を見ると、失礼ながら、(ううう・・・)となってしまうことも少なくはなく、まあ例えば、クラッシュのミック・ジョーンズとかストラングラーズのジャン・ジャック・バーネルなどが、かなりお老けになった姿で、しかも若い頃の曲をやっていたりして、(どうなんだろう・・・)と感じてしまいます。
もちろん「老い」との深刻な葛藤も、欧米文化に深みを与えているとも言えますが。

坂崎幸之助はももクロと、『坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT』という番組を『フジテレビNEXT』でやってまして、我が家のテレビでは観ることができませんが、YouTubeにしょっちゅう上がってはすぐ削除されるというパターンがあって(笑)、削除する前にけっこう観てます。
歌や音楽にしっかり取り組んでいる番組はいいですね。

『ホワイト・アルバム』については、主力されている曲はだいたい知っているのですが、アルバムとして正面から聴いたことは多分なく、これも近いうちに挑戦してみます。
というわけで、『ホワイト・アルバム』に関して現時点でいろいろ述べることはできませんが、こうして拝読させていただいておりますと、ビートルズの実験性というのは凄いなと。
ひょっとして当時世界で最も人気のあるバンドでありながら、最も実験的だったのかなあと・・・今更わたしがそんなことで感慨にふけるわけではありませんが、漠然とそんな感想を持ちました。

>日本人のタレントなどの記述が大変充実

これがもう笑っちゃいますよね。
歴史的に重要な俳優や歌手については、主要作品を並べているくらいのものもある中で、(わたしにとっては 笑)取るに足りないタレントについては、「あの番組でこう言った」とか、そんな情報まで載っていることがあります。
明らかなのは日本の場合、映画や音楽、あるいは文学なども同様でしょうが、しっかりしたファンを育たない社会的雰囲気が続いているということなのだと思います。
さすがに英語版は充実した内容が多いですよね。

>ただ、古びてしまうのも最近はそれはそれで面白いな、

それはもう、素晴らしいご視点だと思います。
すべての映画がゴダールや小津安二郎である必要はないわけで、わたしも間抜けな映画、大好きです。
それと、古臭くなっているのがまたいい味な場合も多いですよね。

マリー・ラフォレの動画も、その意味で古いと言えば、古いのですが、そこがまたこたえられない愉しさですよね。
映画や映像作品は、(うわあ、手抜きだ!)とか(お金ないのに無理して作って)とかいうのもおもしろさに繋がりますが、マリー・ラフォレの場合は、ご本人の顔が出るだけでも充実した作品となる・・・それだけのオーラがありますね。
それは多くの歴史的俳優や歌手などに共通する部分だと思います。

ランボーやマラルメと比較すると、ボードレールは通俗すれすれ、あるいはいい意味での通俗そのものと感じられる作品もあり、その点が現代においても親しまれる部分かなあと。
いわば、ポオの直系のような要素も濃厚ですよね。

>でもこんなのがむずかしかったら、まともな本は

文章が少し長くなるだけで、はなっから読むのを放棄する方々も多いですよね。
大雑把な言い方をいたしますと、いい文章を読めば読むほど、知性・感性ともに力が増してくるのですが、そのあたりがお分かりにならない方々が多くいらっしゃいまして(笑)。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-11-16 17:03) 

Speakeasy

坂崎さんがパーソナリティを務めた『オールナイトニッポンGOLDスペシャル~THE BEATLES WHITE ALBUMの秘密』は、ラジコでリアルタイムで聴きましたよ。
音楽と関係ないけど、ダイヤモンド☆ユカイの「サッカー、野球に、ベースボール」のフレーズは笑いました。
ギターのコードとか全然分かりませんが、とても興味深かったです。
ジェフ・エメリックの本は未読なので、欲しくなりましたね!

坂崎さんがビートルズサウンドを解説した『小倉・住吉のおスミつき』「THE PARROTS×ビートルズ」の回も録画して何度か見返しています。
これもコアな話が満載でした。

「Yer Blues」はストーンズの『ロックンロール・サーカス』での演奏ですよね!
この急造バンドは一応名前があって、ザ・ダーティ・マックと呼ばれました。
1968年制作の『ロックンロール・サーカス』は、完成後30年近くお蔵入りしていたのですが、その理由がストーンズの演奏がザ・フーのパフォーマンスに霞んでしまった為だと言われております。確かにこの時のザ・フーは凄いです!おそらくDVDしか出ていないのでブルーレイでの発売を希望します。

『The Beatles (White Album)』50周年記念盤の感想を自分のブログに書こうかと思っていましたが、未だイシャーデモも聴けてない・・・5.1サラウンド・ミックスはとても面白かったです。

by Speakeasy (2018-11-16 19:56) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

それは仕方がないことなのかもしれません。
基本的な体質が違うのだと思います。
私は最近のジミー・ペイジの姿しか知らなくて
昔のライヴ映像を見てびっくりしたことがあります。(^^;)

坂崎さんは何にでも詳しいですし、
ごくマニアックなのに全然嫌味でなくて
聞いていてもお話が楽しいです。
ももクロの番組もあるんですか! すごいですね。

ホワイト・アルバムはグループが解散に向かう頃なので
皆それぞれバラバラに好きなことやってるというのを
面白いと思うか、思わないかによっても印象が違います。
実験性というのは、ちょうど録音技術が発展途上にあったからで、
こういうこともできるかもしれない、というような
試行錯誤をやっていた中での作品という意味あいがあって、
もう有名になっていたから思い切ったことができたのか、
それとも有名とは関係なく、変なことがしたかったのか、
そのへんが入り交じっているような気もします。
ただ、なによりも大切なのは曲を作るという意志です。

wikiも逆に日本人に関しては充実していますから、
それについては便利と割り切ったほうがよいと思います。
いびつな記述というのはwikiに限らず、
もっと権威があるとされている辞書とか
解説書にもありますから。

ジャズ・プレイヤーのどなたかが言われていましたが、
どんな演奏の録音でも皆それなりの意味があって、
聞くに値しない音楽というのは存在しない、
というのです。納得できます。
映画も同様で、しょーもないと思える映画でも
それを作るのにはそれなりのパワーがいるものです。

ボードレールは通俗――そうかもしれません。
いろいろな表現があるからよいので
マラルメばかりでは疲れてしまいます。
音楽もノーノがあって、ももクロがあるからよいのです。

文章は密度だと思います。
たとえばブーレーズの文章は内容が濃過ぎて
疲れてしまいますが、文章に籠められてる情報が多い
というふうに捉えるべきだと思います。
でもそれだけが良いのではなくて、
ケースバイケースでいろいろな文章があるべきで、
スカスカの軽く読めてしまうものも、また必要です。
by lequiche (2018-11-17 01:07) 

lequiche

>> Speakeasy 様

おお~、聴かれましたか。さすがです。
「サッカー、野球に、ベースボール」 いいですね~。
なんか長嶋茂雄が言いそうですが。

ちょっとめんどくさい話ですけれど、
ギターのコードは、普通の開放弦の押さえ方の場合、
1~4弦だけで見ると、Gは上からソ、シ、ソ、レです。
ところがダイアモンド☆ユカイさんの言っていた
イギリス式の押さえ方だと、ソ、レ、ソ、レになります。
Gはソ-シ-レですが、これはGの主和音といって
一番基本の和音です。
(わかりやすいCでいうとド-ミ-ソの和音です)
でもGの真ん中の音、シを半音下げると
ソ-シ♭-レの和音となって暗い響きになります。
短調の響きです。(Gm:Gマイナーといいます)
つまり真ん中の音 (3度の音といいます) が
半音下がっているか下がっていないかで
明るい長調か暗い短調かに別れる鍵の音なので、
3度の音は大事なのです。
ところがイギリス式だとGの和音なのに 「シ」 がありません。
シなのかシ♭なのかわかりません。
だから明るいんだか暗いんだかよくわからない響きになります。
坂崎さんの言っていた3度抜きです。
でもポールは、わざとそうしているんです、たぶん。

エメリックの本、私も読みたいです。
坂崎さんのマニアックさはすごいですね。
Michelleのベースラインなんて今まで知りませんでしたし。

ザ・ダーティ・マック! それもすごい。
若い頃のクラプトン、カッコイイですね~。
DVDでもいいですから、そのザ・フーも観たいです。

感想はゆっくりでもいいですからお待ちしております。
実は昨年のサージェントは買っていないんですが、
これは今のうちに買っておこうかなと思いました。
でも今月はとんでもないものが出たので、
もう予算がありません。

エジプト・ステーションも聴いていないで言うんですが、
某あやしい店からあやしいメールが来て、
ポール国技館ライヴ完全盤発売って……ハハハ。(^^;)
こういうの買ったら泥沼かも。
by lequiche (2018-11-17 01:07) 

たじまーる

アルフィーはデビュー前の若い頃は(昭和40年代)
ビートルズを良くコピーしていたようですね。
坂崎幸之助のギターを聴くと超ビートルズが好きで
かなりビートルズの影響を受けたと(私は)感じますね(^^;)
by たじまーる (2018-11-17 16:04) 

lequiche

>> たじまーる様

ええっ? フォークグループじゃなかったんですか。
でもビートルズの曲はスタンダードですから
当然なのかもしれませんね。
坂崎さんはどんなジャンルにも詳しくて
すごいなと改めて思いました。
by lequiche (2018-11-18 03:02) 

Flatfield

昔、KORGのD888が個別に8入出力が出来るので、8chを個別に8個のアクティブスピーカーで出そうかと思い、中古のD888を買ったんですが、結局やらずにD888も処分しちゃいました。 丁度ビートルズ4人分の楽器と音声に合いますねー。
by Flatfield (2018-11-22 23:05) 

lequiche

>> Flatfield 様

そうだったんですか。8in/outならお手軽ですね。
タイムマシンで当時のビートルズのスタジオに持っていけば、
おお、使えるじゃん! なんてことになったかも・・・
ならないか。(^^;)
by lequiche (2018-11-23 10:25) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。