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TF1のミレーヌ・ファルメール ―《Désobéissance》 [音楽]

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Mylène Farmer (fashionmayann.wordpress.comより)

ミレーヌ・ファルメールの一番新しいアルバム (といっても昨年リリースなのだが) を聴いていて、その動画を探していたらまた深い沼にはまってしまった。深い森だったり深い沼だったり。
《Désobéissance》は昨年9月に発売。仏Stuffed Monkey盤で日本盤は出ていない。

音としてはエレクトロニカ風だが、それはデビューの頃からのリミックスを多く出すパターンがずっと続いているだけで、言ってしまえば永遠のワンパターンなのかもしれないが、それならPerfumeだってワンパターンなわけだし、でも本アルバムは全体に軽く仕上げられているように思う。
1曲目から4曲目までは動画をなんとか探したのだが、その後はリミックスだったりで、まぁいいや、と考えてあきらめた。

tr1の〈Rolling Stone〉は震えるようなわざと不安定なイントロで、いつも通りの暗さなのだが、でも始まってしまうとそうでもない。耳に残るリフレイン。
tr2〈Sentimentale〉はいつもとやや毛色が違っていて、声も軽く、エフェクトもかわいく作ってあるような気がする。それはこの動画にも現れていてサンチマンである。
tr3のアルバム・タイトル曲〈Désobéissance〉は音自体も映像も、王道のファルメールで、こうした建物の使い方とそこに現れる光がいつもながら上手い。ファルメールのこれまで来た道を振り返ればノスタルジックな曲ともいえる。
tr4はLPとのデュエットによる〈N’oublie pas〉。クリップは滑り台だったりブランコだったりが小道具として出てくるが、例によって画面はずっと暗い。LPはローラ・ペルゴリッジ (Laura Pergolizzi) というアメリカ人の歌手である。

だが、検索しているうちに最初の曲〈Rolling Stone〉のライヴがあった。フランスのTV局であるTF1の〈La chanson de l’année 2018〉にゲスト出演したときの映像である。(→5)
さらにFrance 2の〈JPGショー〉という番組で〈N’oublie pas〉を歌っている映像 (→6)。JPGはジェイペグではなく、ジャン=ポール・ゴルチエである。こんな番組があることを知らなかったので、一瞬、誰、このおじさん? と思ってしまったのはナイショ。ゴルチエのコレクションにファルメールがモデルとして出演したときがあって、その話をしてから歌となる。トップ画像はその2011年のショーにおけるゴルチエを着たファルメールである。

尚、7) はLa chanson de l’annéeのライヴを、近くからシロウトさんが撮ったもの。音は周囲の観客の声が入っていてめちゃくちゃだが、ダンスの動きはこの動画のほうが近くなのでわかりやすいかもしれない。
今回はリンクした動画が7本もあるので全部を観たら疲れますからご注意のほど。全部は観なくていいと思います。


Mylène Farmer/Désobéissance (Stuffed Monkey)
Desobeissance




1)
Mylène Farmer/Rolling Stone
https://www.youtube.com/watch?v=jpsmVEiBQNQ

2)
Mylène Farmer/Sentimentale
https://www.youtube.com/watch?v=fpU4-EUErfY

3)
Mylène Farmer/Désobéissance
https://www.youtube.com/watch?v=WnRGighEBss

4)
Mylène Farmer, LP/N’oublie pas
https://www.youtube.com/watch?v=3AoS_7u9eCU

5)
Mylène Farmer/Rolling Stone
La chanson de l'année, TF1 live, le 08/06/2018
https://www.youtube.com/watch?v=MKyC8wt8HQY

6)
Mylène Farmer, LP/N’oublie pas
au JPG Show, France 2, le 13/10/2018.
https://www.youtube.com/watch?v=73OAIcq9Epk

7)
Mylène Farmer/Rolling Stone
La chanson de l'année, TF1 live, le 08/06/2018 (近くから)
https://www.youtube.com/watch?v=dhKJnq-cpl0
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末尾ルコ(アルベール)

ジャン=ポール・ゴルチエ出てますね~。
割と前からその創作するデザインと本人の容姿がイメージとして合致しないなあとは思っていたのですが、何も知らずに見ると、(このおじさん、誰?)と思ってしまいますね。
ラガーフェルトなんかは、(いかにも)という感じでしたが。
ゴルチエは、「その辺の気のおけないおじさん」感が強いです。

それにしても特に、「Mylène Farmer/Rolling Stone
La chanson de l'année, TF1 live, le 08/06/2018」、いいですね~。
しかもコロッセウムですね。
このような場所を見ると、そもそも大規模イベントというものが欧州で紀元前から根付いていることがよく分かります。
しかも2018年のイベントなのですね。
ファルメール、若いですね。
いつまでも熟し続けるようなステージパフォーマンス。
このステージの感じは、ちょっとハマースミスのケイト・ブッシュを想起してしまいました。
観客の中には若い人たちも多いようですね。
フランス人の友人の娘さんたちに好きな歌手、ミュージシャンなどを尋ねると、ほとんど米国人の名前が出てくるんです。
好きな映画や好きな本なども同様で、どうなのかなあと感じるのですが、年齢が上がるにつれてフランスのものへの興味が増すのであればいいのですけれどね。(ファルメールはカナダ生まれですが)

ファルメールは生と死のモチーフ、あるいは思想的アクティヴィスト的表現や言動も多いようですが、こうしたものは彼女の深い部分から出ているのでしょうか。

・・・

>マレのような作曲家が映画の題材になるというのが驚きです。

しかも当時(今も? 笑)フランス最高の大スター ジェラール・ドパルデューによって演じられており、やや優等生的な作りながら、見事に美しい映画に昇華されている・・・ここがフランスの奥深さなのでしょうね。
「闇」がよく表現されている作品でして、こういうのは一度映画館で観たいのですが、特に高知なんかでは難しいです、新作でさえも。

>雑然とした屋根裏部屋のようなものです。

いいですね~。
どのような分野でも大きなスタイルが確立する以前の状況ですね。
見本も指導者もなくて、どこを目指しているのかも漠然としていて、しかし「目指している」という意識や感覚は十分過ぎるほど燃え滾っているという。
そもそも、「屋根裏」には憧れがあります。
日本家屋にもそれらしき場所がなくはないですが、やはり欧米の小説などでよくモチーフとなる屋根裏や地下室・・・ワクワクします。

日本の歌謡曲については、まあ今更ながら、(プロの作詞家は凄いな)なんてことを実感しております。
わたしがブリティッシュ・ロック一色だった時期は、とてもじゃないけれど(聴いちゃられないよお!)という感覚のみで、(なんだこの軟弱な歌詞ばかり氾濫しやがって!)と、そんな思いばかりでした。
歌謡曲の歌詞なんて、まともに読んではいられない・・・というところでしたが、ある時吉本隆明が誰かとの対談か何かで、「阿久悠の歌詞は凄い」と語っておりまして、(へえ~~っ!)て感じですよ。
吉本隆明は中島みゆきの歌詞も「凄い」と言ってましたです。
現代詩と比べても何ら遜色ないとか。
ま、吉本隆明の信奉者だったわけではないですが、自分が軽視していただけに、とても驚き、見る目が変わったことを覚えてお増す。

>経済的利益には貢献していません。

わたしもですよ!
「新しいもの」についてはまず警戒心が起こりますし、とりわけ「新語・流行語」には虫唾が走る(笑)ものが多いです。
まあ、経済的利益に貢献してないのは、懐具合の問題もありますが(笑)。

それに 「公共の」 とか 「誰もが利用できる」 ものが嫌いなので
扱いやすい国民にはなれそうもありません。(^^)

『ライク・サムワン・イン・ラブ』につてのお話、ワクワク、ゾクゾクいたします。
このクラスの監督となると、ディテールが凄過ぎて、何度観ても発見がありますよね。
『ライク・サムワン・イン・ラブ』、また観てみよおっと! RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-05-04 17:13) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

YouTube 5) のゴルチエ・ショーの2’52”あたりから
ゴルチエのランウェイのファルメールの映像がありますが、
2011年コレクションの 「ブラック・スワン」 というのは
ジジ・ジャンメールにインスパイアされた名称だとのことです。
でも2010年にナタリー・ポートマンの
《ブラック・スワン》という映画もありましたが、
そのへんの関係性はよくわかりません。(^^)

そうです。すごいシチュエーションですね。
場所はLa chanson de l’annéeの記事に
coeur des arènes de Nîmesとありますので、
ニームの円形劇場だと思います。
こういう場所で、いわゆるレコード大賞みたいなイヴェントを
やってしまうというのがフランスらしいです。

ファルメールは1961年生まれですから今年57歳ですが
若く見えますし 「芸風」 もずっと変わりませんね。
フランスの沢口靖子というか。(コラコラ ^^;)
ファルメールはもうキャリアが長いですから、
日本でいうと、ちょっと違いますけど美空ひばりみたいなもので、
この動画だと若い人にも人気があるみたいですが
あくまでTV局が作っている画面ですから、
フランスの実情がどうなのかはよくわかりません。
また、ファルメールとローラン・ブトナとの共同製作というか
プロデュースはずっと続いているようで、
これだけ継続しているのは稀有のことですが、
ブトナの影響力が今、どの程度であるのかも何とも言えません。
思想的方向性もよくわかりませんが、
私の感覚では彼女のデカダンな傾向は弱まっていると思います。

日本ですとどうしても過去の有名人に偏りがちですので、
フランスでマレを選択するようなことは起こりえません。
そのへんが文化に対する意識の違いだと思います。

音楽の調性は12音がどれも均等であるとしたのがバッハですが、
その平均律という考え方以前には調それぞれに特徴がありました。
それは楽器がまだ不完全であったことと、
また楽器が本来持っている構造的な理由により
得意な調と不得意な調というのが存在することにもよります。
そのため、バッハ以後もベートーヴェン頃までは、
その調性特有の個性や表情というのが存在しています。
それはバッハ以前に遡っていくと、より明確になっていきます。
平均律が確立されていない頃の世界はプリミティヴですが
無法地帯でもあります。

歌詞に限りませんが、世評というのはごく感覚的なもので、
その時代の評価というものが必ずしも正確かというと
むしろ少し時代が経ってからの方が判断できるのではないか
と思います。
同時代では近過ぎてかえってわからない面もあるのでしょう。
私は吉本隆明はよく知りませんが、
吉本も同様にして新しい視点が出てくるのかもしれないです。
同時代的な吉本信奉者によって
当時の彼にはカリスマ性があったのかもしれませんが、
それに必ずしも正当性があったかどうかは疑問です。

私も懐具合の問題がほとんどです。(笑)
でも資本主義国のなかで共有的な考え方が蔓延したり、
共産主義国に限って貧富の差が格段に存在したり、
政治っていうのは常に抜け道にこそ極意があるんですね。

キアロスタミは面白そうですが、
もう少し観てみないとなんとも言えません。
私は映画については不案内なのでご教示ください。
by lequiche (2019-05-05 12:00) 

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