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僕らだけの未来 — GARNET CROW [音楽]

GarnetCrow_200616.jpg

すごくマニアックなことを書けば、ゴールドトップのレスポールはレスポール・スタンダードとは音が違うように思う。ゴールドトップはその表面を1色で塗りつぶせばいいだけだから、スタンダードのように杢目云々みたいに材料に気を使う必要がない。サンバーストが経年変化でどうなるか、といったような姦しい評価とも無縁だ。だからそんなに良い材でなくてもいいという話も聞く。
スタンダードだったら、ほとんど黄色にしか見えないレモンドロップが好きなのだが、もちろんオリジナルなんて買えるわけがないから再生産モデルでの話なのだけれど、一度、理想的なレモンドロップを見たことがある。だが色は理想的なのだが、ブックマッチの左右の杢があまりにも非対称なので見送ってしまった。ところがそれ以降、美しいレモンドロップに遭ったことがない。

そもそもゴールドトップがレスポールの本来の色だったのだそうである。ソリッドな塗装は一見つまらないように思えるが、ゴールドトップは角度によって色が違って見えるように思える。ステージで真正面からライトが当たったときの美しさったらない。そして何よりも音が、これは私の勝手な思い込みなのかもしれないが、音が重くて太いような気がする。重いというよりも深いというべきなのだろうか。
そう感じたのはエディ・マネーのライヴのときだった。バックバンドのギタリストがゴールドトップを弾いていたのだが、そのとき初めて、ああこれがギブソンの音だと瞬間的に納得してしまったのである。そのギタリストの名前は覚えていないし、そしてエディ・マネーがどんな歌唱だったのかもほとんど覚えていなくて、でもそのゴールドトップの音だけは覚えている。
だからゴールドトップを弾くギタリストは特別な存在のように思えてしまうのだが、でもゴールドトップとレモンドロップとどちらか1本くれるといったら、きっとレモンドロップを選んでしまうだろう。人間の心とはそういうものである。それともそういうのって私だけ?

GARNET CROWは 「あの」 GIZAに所属していたグループで、会社都合で解散して (させられて?) すでに7年が経つ。その頃はGIZAのヴァリエーションのひとつのパターンくらいにしか思っていなかったのだが、今考えるとその頃のシーンはとても良かったように記憶しているし、すべて名探偵コナンのタイアップ曲と言われてしまえばそうなのかもしれないが、きっとその少し軽薄なテイストが共感できる時代だったのだろうと思う。

なぜゴールドトップのことを長々と書いていたかというと、GARNET CROWの動画をYouTubeで探していたら岡本仁志がゴールドトップを弾いている曲があったからなのである。GARNET CROWはヴォーカル、キーボード2人、ギターという変則的なグループで、だからベースやドラムはバンドメンバーではない。
ヴォーカルの中村由利による作曲とキーボードのAZUKI七による作詞がバンドのキャラクター全体を支配している。〈僕らだけの未来〉のライヴ映像で岡本仁志がゴールドトップを弾いているのだが、ある意味、岡本は単なるギタリストなのに過ぎない。だが、単なるギタリストこそがカッコイイのだ。
AZUKI七の歌詞は常に何か変だし、何か不穏だ (常用しているS90もやや異質だけれど)。

 生まれ変われるなら
 早く君に会いたい
 通り過ぎたときに
 君だけが足りない

歌い出しのこの部分だって、「生まれ変われるなら」 は 「早く君に会いたい」 には接続しない。2行目の 「早く君に会いたい」 の 「君」 が4行目の 「君だけが足りない」 の 「君」 に呼応しているだけだ。AZUKI七も言っているようにそこにあまり意味を求めてはいけないし、これは一種のサウンドなのだと思うことにする。
だから 「水平線に届くまで/君と走りたい」 と歌われていても実際に走ることはなく、「情熱は逃げない/抱きしめ」 と書かれていても、そんなアマちゃんな情熱など最初から信じてはいない。「ない」 の連鎖と脚韻にだまされてもいけない。本音は 「世界は悪意に満ちてゆく」 という箇所にあるのだ。だからAZUKI七はデカダンなのだ。

 言葉じゃできない 会話するように
 輝く君のそばにいるよ
 好きにやればいい
 愛がなくちゃ大差ない
 世界は悪意に満ちてゆく


GARNET CROW/The One — All Singles Best (GIZA)
THE ONE ~ALL SINGLES BEST~




GARNET CROW/僕らだけの未来
https://www.youtube.com/watch?v=I2sikk6yMZE
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末尾ルコ(アルベール)

中学校時代、同級生がやたらと生ギターをやっているのが多くて、そうなると(自分はやらない)という天邪鬼なところが出るのが生来のわたしでして、結局アコギだけでなくエレキもやらなかったです。
家にあるアップライトピアノでキース・エマーソンになろうとしたことはありましたが(笑)。
だから高校時代にパンクバンドメンバーだった時もわたしはでかい声を生かしてヴォーカルで、ギター少年は多くいましたけれど、種類の話題などには入れませんでした。
(ジミー・ペイジのダブルネックギター、いかすじゃん!)とか、そのくらいのものでした、わたしの場合。
これって思えば、仮面ライダーシリーズの(サイドカー、カッコいい!)とかそんなレベルですよね(笑)。

GARNET CROWは知らなかったです。動画、視聴させていただきました。
ちょっとスパニッシュっぽいアレンジも感じました。
歌詞に関しては今初めて聴いたばかりなので何とも言えませんが、無闇なポジティブ路線の昨今よくある歌詞とは格違いの奥深さ、そしてやたらなネガティブにも落ち込まない強靭さを感じました。

・・・

> でも文化人ワクだとコメディアンよりギャラ安いのに〜。(笑)

一部コメディアンが、おもしろくもないのに(笑)法外に儲けている日本ですが、いかに儲けても「知的である」とかいう承認を求めているのでしょうね。
「コメディアンに徹する」カッコよさを理解できてないなと思います。
要するに真っ当な美意識がないのではと。

アーティストという言い方は、メディアの使い方もおっしゃる通りですし、EXILEの誰かがドラマへ出演するときに、「ぼくのようなアーティストがドラマへ出ると・・・」的な言い方をしておりまして、こういう言い方をパロディ的でなく本気でする人がいるのに驚きました。

> でも私は時間つぶしに時間を使いたくはないのです。

「時間」というものの根本的な捉え方ですよね。
これはもう哲学的、にも最重要なテーマであって、しかも正解のないテーマでもありますが、少なくとも子どもの頃から意識させるような家庭教育(公教育ではおかしなことになりそうなので)が必要ではないかとよく考えます。
正解はなくても、せめて時間がいかに貴重なものであるかという認識を、ですね。
わたしの場合はもちろん自分がでれだけよき時間の使い方をしているかはまだまだ自信はありませんが、少なくとも常に「よき時間を創ろう」という努力はしています。

ファスビンダーは日本でニュージャーマンシネマが人気だった時期でも、大衆的人気は薄かった記憶があります。
何といってもヴィム・ヴェンダース、そしてヘルツォーク、シュレンドルフといった作家たちが一般層にもかなり浸透していた印象がりました。
もちろん映画自体に一切興味がない人たちもいましたが。
ファスビンダーはしかし、『マリア・ブラウンの結婚』以前にも多くの作品を撮っているのですね。
確かに観たいです。


> ただ、よく聞く言い方で 「結果を出す」 というのは
> 簡単に言ってしまえば 「経済的に潤う」 という意味でしかないので
> 最近の世界は全て金銭でしか価値が測れないのではないか

なるほどです。
本当にそうですね。
そして、「結果を出す」というフレーズもそうですが、ある種の言葉が一端流通すると誰もかれもが考えなしに、無神経に乱用する人たちがほとんどです。
結局言葉の使い方が無神経な人たちは、その人生の行い全般が無神経にならざるを得ないのではないと思ってます。

> 「むずかしい言葉を使っている本は読めない」

そんな人が大勢を占めている印象が昨今の日本です(笑)。

RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2020-06-16 04:30) 

にゃごにゃご

私もレモンドロップがいいです。
by にゃごにゃご (2020-06-16 14:11) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

今日のニュースでは
カート・コバーンのギターが今、オークション中で
現在1億円とのことですが、ん〜。(-_-;)
でもお金を持ってる人がどうしても欲しいのなら
それもありだと思います。
ただ、グランジとかパンクというものの精神性さえ
結局この世界の経済機構に組み込まれてしまう
というところに経済システムの怖ろしさを感じます。

楽器はもちろん見た目がいいほうがいいですが、
でも必ずしも音と外見は一致しないので、
私はテレキャスはあまり使い勝手がよいと思わないのですが、
それに暗い色のボディのテレキャスはあまり食指が……
という面もあるのですけれど、
でも山下達郎のテレキャスの音を聴くと
この楽器でなければ出せない音だと感じます。

一時期のGIZAは金太郎飴と言われて揶揄されていた
という歴史もあるのですが、
でもそうでもないよね、というか、
ちょっとマイナーなんですけれど私はかなり好きです。
アレンジをしているのはキーボードの古井弘人 (動画右) で
ELTでいえば五十嵐充のポジションです。
でもガネクロの場合の曲は
中村由利/AZUKI七の女性コンビによって作られています。
AZUKI七 (あずき・なな) は動画左のキーボーディストです。

歌詞に限らずすべての詩作はそうですが、
これがこうしてこうなる、と全部わかってしまうのなら
それは小説であって詩ではありません。
常にダブルミーニングと曖昧さ、もっといえば胡乱さを
兼ね備えるべきなのが詩であり歌詞だと私は思います。
でも一般的にはわかりやすいほうが好まれますよね。
なぜならわかりやすいから。(笑)

あぁ、「ぼくのようなアーティスト」 って萌えますね。
オコチャマのようでカワイイです。
もし、きれいな女優さんが 「私のような美人が」 と言っても
それはパロディとしてしか捉えられないはずです。
でも 「ぼくのようなアーティスト」 だと
状況によりますが、かなり微妙のような気がします。
この人、大丈夫? っていうことです。

ファスビンダーは私もあまりよく知りませんが、
つまり知ろうとすることに対するメディアの対応が
そんなに無いということです。
ちょっとマイナーなものになると、ある時期を過ぎると
入手しにくくなります。それは映像だけでなく
音楽でも本でもなんでもそうです。
その入手しにくさが日本はちょっと極端のような気がします。

カート・コバーンもそのギターが何億円もで売れたら
結果を出したことになるのかもしれません。(ー.ー)
まさにそれが経済効果であり、
でも昔の言葉でエコノミック・アニマルと
日本人の金銭づく・がめつさを形容されたことがありますが、
そもそも 「エコノミック・アニマル」 とは
アニマルなのであって、人間ではないのです。
今もエコノミック・アニマルの伝統は連綿と続いているようです。
by lequiche (2020-06-17 15:33) 

lequiche

>> にゃごにゃご様

そうですか。
レモンドロップという呼称もいいですね。
でも再生産モデルは最初からその色に塗っているので、
時間の経過でその色になったわけではないですから、
逆に何十年か経ったらどういう色になるのか
と考えると夜も眠れません。(ウソです ^^;)
by lequiche (2020-06-17 15:33) 

にゃごにゃご

ふ、ふ。
28年前に購入した再生産モデルのギブソン・レスポール、
全く色の変化がないです。
これでぐっすりですねっ!ふ、ふ、ふ。
by にゃごにゃご (2020-06-17 16:43) 

lequiche

>> にゃごにゃご様

まぢですか?
それだとまだ良質な木材が使えていた頃です。
是非、そのギターでライヴをやりましょう。
ごく内輪のギター見学会でもいいですから。
色に変化が無いんですか。それはすごいですね。
塗装表面を紙やすりできれいにしてあげたいです。(コラコラコラコラ ^^;;;)
by lequiche (2020-06-18 02:46) 

にゃごにゃご

今度見に来てみてくださいな。
食事、酒つきです。
by にゃごにゃご (2020-06-18 06:18) 

lequiche

>> にゃごにゃご様

わわっ、それはうれしいです。
ぜひ拝見したいです。
あ、拝見だけじゃなくて
ギタープレイもぜひお聞かせください。(^^)
by lequiche (2020-06-20 00:44) 

にゃごにゃご

私、ギターを買ったのはいいんですが、
結局、挫折しました。
lequicheさんの都合のいい日においでください。
私のブログになんとなく書いといてください。
by にゃごにゃご (2020-06-20 05:47) 

lequiche

>> にゃごにゃご様

いえいえ、楽しむための音楽でしたら
音楽に挫折は無いんです。
音楽を仕事にする場合だと別ですけれど。
なんとなく書くの、了解しました。(^^)
by lequiche (2020-06-22 02:25) 

にゃごにゃご

私の、レモンドロップじゃなくチェリーサンバーストなんですが
いいですか?
by にゃごにゃご (2020-06-23 18:11) 

lequiche

>> にゃごにゃご様

あはは。いえいえ、なんでもいいです。
ポルシェとレスポールは、色は何だっていい、
と昔から言われてます。(ホントか? ^^;)
by lequiche (2020-06-24 04:39) 

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