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tk-trap [音楽]

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tk-trapは小室哲哉の最盛期に結成されたグループである。プロデュースは小室哲哉と久保こーじで、メンバーは11名。小室と久保に加えて、ギター、ベース、サックスに2ドラムス+パーカッション、そしてコーラスが3名という布陣で、歌詞は全曲英語詞である。
そして1996年1月19日と20日に幕張メッセでのライヴのためだけの、たった2日間のグループであった。

演奏は録音され映像も撮られて発売されたが、当時、映像はVHSテープでしかなく、それらもずっと絶版状態にあったのだが、この2月にやっとCDとBlu-rayで再発された。25年振りの再発なのであるが、待ちわびた再発であり、異論はあるだろうが、個人的な好みでいえばこれは小室哲哉の最高傑作である。内容的にはいつもの小室ワールドでTM NETWORKの曲などを取り上げているが、小室が欲していた音はたぶんこういう音であり、全体のニュアンスはほぼプログレといってよい。
全曲英語詞を採用したことにより、それは一種の抽象性を帯びていてメカニックに聞こえるし、あくまでインストゥルメンタルが主体であることを主張している。シンセサイザーも多数使われているが、基本的には安易なシークェンス・パターンに頼らず、あくまでアナログな、あえていえばアナクロな演奏方法であり、たぶんグループ全体に対してはかなりガッチリとした譜面があって、その上に小室と久保が音を乗せているという感じである。
一方で小室哲哉ひとりでのインプロヴィゼーションではシークェンサーを多用し、キース・エマーソン的なお決まりのアクションもあるという、ごく趣味的でやりたい放題なライヴである。

オフィシャルでBlu-rayの5曲目に収録されている CAROL (Part 2) IN THE FOREST-CAROL (CAROL’S THEME II) がYouTubeに公開されている。全体のリズムがタイトで、男声2女声1のコーラスも美しい。やがてテンポを落として女声の詠唱となるが、そこから一転して5拍子で畳みかけるようなリズムが刻まれ最高潮となり、そしてテーマに戻る、この連なりがスリリングだ。

このtk-trapに関しては以前に書いたことがあるが (→2013年01月19日ブログ)、それからすでに8年、その間に音楽も時代も様変わりしてしまった。時は決して戻らない。


tk-trap (Sony Music Direct(Japan)Inc.)
tk-trap produced by tetsuya komuro cozy kubo RE:2021 (Blu-ray)




tk-trap/CAROL (Part 2) IN THE FOREST-CAROL (CAROL'S THEME II)
https://www.youtube.com/watch?v=ajg_9Q1rvg0

globe/Many Classic Moments
https://www.youtube.com/watch?v=APcOZvx82B0
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末尾ルコ(アルベール)

TMネットワークがメジャーになった頃は、(日本にこんなカッコいいバンドが出てきたのか)と感慨深かったです。それ以前の日本のどんなバンドにもないものを感じました。いい意味でのドライなカッコよさとでも言いましょうか。
リンクしてくださっている動画、視聴させていただきました。ソウルフルな熱気も感じられて、わたしにとってはまったく新しい小室哲哉体験となりました。このような曲はしょっちゅう流していたくなりますね。
小室哲哉はその後の小室ファミリー的な展開がいろいろな意味であまりに華々しくて、TMネットワークが台頭してきた時期のドライなロックテイストが感じられなくなり、興味を失ったのですが、そうは言っても密かにTRFとかカバちゃんのいたグループとか観てはおりました。
小室哲哉はそうですね、当初は(坂本龍一に比肩する才能ではないか)とか思ってました。そもそも比較するにはあまりに異なる二人ではありましたが。
キース・エマーソンというのもいいですね。パンク・ニューウェイブにどっぷりになるまでは、ロジャー・ウォーターズとキース・エマーソンが最も憧れてたミュージシャンです。最近でもちょいちょい若き日のエマーソンの動画を観るんですが、「演奏に必要のないアクションを敢えてやる」のがロックかなあ、なんてまた再認識したりして(笑)。
最近の日本のバンドではやはりKingGnuが好みです。スケール感がほかの日本のバンドにはない素晴らしさだというのと、常田大希と井口理の佇まいのバランスが、ジミー・ペイジとロバート・プラントとか、ピート・タウンジェントとロジャー・ダルトリーとか、そんなカッコよさがあります。母もすっかり夢中で(笑)、動画を見せてあげると、思わず「常田さあん!」とか叫んでます(笑)。

これはぼやきですが、我が家にはもう視聴できないVHSやレーザーディスクがけっこうありまして、ケイト・ブッシュのハマースミスはVHSだし、バレエのレーザーもかなりあるし、(どうしてくれるんだ!)といつも憤っております。

・・・

>ああこの人すごいな、と思わせる数少ない作家のうちのひとり

おお!そこまで評価してらっしゃるのですね。
『ユリイカ』の西加奈子特集を手に入れまして、これもじっくりと読んでみようと思ってます。

>決して高尚で難解な文学ではない

ああ、そう言えばシェイクスピアもかなりギャグですよね。
『若草物語』の最新リメイク『ストーリー・オブ・マイライフ』に、「シェイクスピアは大衆文学と芸術を融合させた」的台詞がありましたが、確かに「芸術」と「大衆性」を現在は区分けし過ぎている感はあります。

>最大公約数は避けて通りたいです。
>人気のある楽曲が必ずしもすぐれているかというと私は疑問だと思います。

まったく同感です。
批評の社会的地位が低い日本では、音楽でもその他ジャンルでも、売れたものが「名作」とされてしまいますよね。
まあ中には名作もあるのでしょうが、その意味では『キネマ旬報』のベストテンとか、必ずしも正しいわけではないけれど、売れた売れなかったとは関係なく選定されていて、資料としては十分な価値がありますよね。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2021-04-02 05:41) 

英ちゃん

TM NETWORKのTMは多摩の略なんだよね(^∇^;)
メンバー全員が多摩地区出身だそうで、そう聞くとチョッと格好悪い感じもするね?(^_^;)
by 英ちゃん (2021-04-04 00:59) 

青山実花

このグループの事は全く知りませんでした。

小室哲哉さんというと、
どうも、スキャンダルの方が目立ってしまって、
勿体ない気がします。
ここ数日は、
ネットニュースを開くと、
華原朋美さんのテレビでの発言が
話題になっているようで、何度も目に入ります。

こんなコメントしか出来なくて申し訳ありません。

by 青山実花 (2021-04-04 12:21) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

実はTMネットワークはリアルタイムでは知らないのです。
遡って、ああこういうバンドなんだと知りました。
CAROLももちろんTMネットワークがオリジナルなのですが、
そういってはなんですがこのtk-trapを聴いてからTMNを聴くと、
リズムが緩くてちょっと……と感じてしまいます。
プロデュース業となってからは、
やはり売れ線でなくてはならないですから、
小室哲哉のやっていたことは結局、歌謡曲の一環といってよいです。
確かに新しい意匠を備えていましたがその核は歌謡曲です。
だからといって歌謡曲が悪いという意味ではありません。

坂本龍一と較べると小室哲哉は、歌に比重があると思います。
ただあまりに量産したために個々の濃度が薄くなってしまい、
次第にメロディそのものも変化に乏しくなってしまった、
というふうに考えられます。

キース・エマーソンはオルガンを傾けて強く戻すことにより
破壊的な音を出していましたが、それと同じことを
このライヴのインプロヴィゼーションの曲でやっています。
wikiのキース・エマーソンの項には
「ハモンドオルガンを揺らし、内蔵のリバーブユニットに
衝撃を加えることによって爆発音を得たり」
と書いてあります。
でも観客はほとんどが当時の小室ファミリーのファンですから、
そのパロディの意味がわからなかったのではないかと思います。
それにしてもお母様はお若いですね。(^^)

レーザーディスクはアナログとデジタルの端境期の機械というか
映像がアナログですから、今から考えると中途半端でした。
他の方法で読み込めるようにできる可能性は少ないですから、
中古の再生機を探すくらいしか手がないです。
消えていった録音・再生機器は他にもたくさんありますね。

ジョイスは難解だと言われながらすでに一定のファンがいて、
ジョイス産業だと揶揄されるくらいの活況があり、
それに較べるとナボコフは、という状態だったそうなのですが、
最近はナボコフも同様に研究が進みはじめてきている、
というようなことを研究者の秋草俊一郎が書いています。
ロシア語からの翻訳も出ましたし、ナボコフはこれからです。
シェイクスピアも昔は高踏的な評価がされていたかもしれませんが、
実際はもっと世俗的な話が元になっているので、
そこで翻訳の文体もだんだんこなれてきているようです。

特に映画はエンターテインメントとしての評価が強いですから
どうしても興行収入が幾らか、ということに話題が行きがちです。
なんでも鑑定団でも有名オークションでもそうですが、
それが貨幣価値にして幾らかということでしか評価されないのは
他にメジャーがないからです。
でもそれは単に最大公約数として売れたということに過ぎません。
by lequiche (2021-04-06 04:31) 

lequiche

> 英ちゃん様

多摩ネットワークではカッコ悪いから、
最初は由来を伏せていたということらしいですが、
多摩ってカッコ悪いでしょうか?
わかりやすいですし、私は逆にカッコイイと思います。
地名をそのままのバンド名としたのにも
ボストンとかシカゴとかカンサスとか一杯ありますし。
by lequiche (2021-04-06 04:31) 

lequiche

>> 青山実花様

う〜ん、今、朋ちゃんの話題でにぎわっているらしいですね。
でも、また精神的に不安定のような気がします。
私は基本的には音楽は音楽でしか評価しません。
その人が変なヤツでも嫌な人でも、
音楽が素晴らしければそれで良いのだと思います。
たとえば〈I’m pround〉は曲も歌唱も素晴らしいですし、
それが他の要素によって損なわれることはないのです。

tk-trapというのはその当時の小室さんが
フラストレーションとかストレス解消のために
好きなことをやったユニットで、
もっといえば例えばTMネットワークのリズムでは
不満があったのだろうと私には思えます。
よりタイトなリズム、よりテンションの高い音楽を希求した。
でもこのライヴ、そこまでわかって聴いていた観客は
たぶんほとんどいなかったでしょう。
そこに私は小室さんの深い孤独を感じるのです。
by lequiche (2021-04-06 04:36)