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デヴィッド・バーン《アメリカン・ユートピア》 [音楽]

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7月8日のTOKYO FM《THE TRAD》でデヴィッド・バーンの映画《アメリカン・ユートピア》の紹介があった。《THE TRAD》は月〜木曜午後3時からのDJ番組で、水・木曜日の担当はハマ・オカモトと中川絵美里である。映画を 「観に行ったらめちゃくちゃよかったので急遽特集しちゃいます」 とのこと。
《アメリカン・ユートピア》はタワーレコードの宣伝誌『intoxicate』の先月号でも特集されていたので気にはなっていたのだが、こうやって紹介されたのでYouTubeで予告編などを観てみたら、そのコンセプトに俄然興味が湧き起こる。

番組の冒頭では、ザ・クラッシュの《London Calling》のジャケット写真で有名なポール・シムノンの破壊されたベースがロンドン博物館の常設展示となるというニュースとともに〈London Calling〉がオンエアされた。とても懐かしい音であるし、HALCALIのフワフワ・ブランニューの歌詞 「凍ったH2O 街から聴こえる “ジョー・ストラマー”」 までが蘇ってしまう。曲後、ハマ・オカモトのプレシジョン・ベースの製造年代を特定するトークが面白かった。

ま、それはいいとして《アメリカン・ユートピア》である。
YouTubeには幾つかの映像があるが、とりあえず〈Burning Down The House〉を歌うバーンがカッコイイ。オリジナルのトーキング・ヘッズのPVなどより全然レヴェルが上だ。
《アメリカン・ユートピア》はもともとはデヴィッド・バーンのアルバムで、そのツアーステージの再現というかたちでブロードウェイで上演されたものを、さらに映画にしたのだとのこと。映画監督はスパイク・リーである。

ステージ上から余計なものを排除するとの理由で、楽器からの出力はワイヤレスで、マイクはヘッドセットで、なのだが、ハマ・オカモトによれば、ワイヤレスには遅延があるはずなのにどうなっているんだ? との驚きがあったのだそうで、これはshureのAXT digitalという技術により遅延が無いのだそうである。
お揃いのグレーのスーツに裸足の人たちがステージ上で踊りながら歌い演奏するそのパフォーマンスは、非常に計算されていて、デヴィッド・バーンがこうしたかたちで出現してきたこと——もちろん彼は継続して音楽活動をしてきたのだろうが、私にとってはまさにデヴィッド・バーン突如再来というように感じられてしまう——に喜びを含んだ感慨があることは確かだ。
といっても私はトーキング・ヘッズをリアルタイムでは知らなくて、ボックスセットになったデュアルディスクで一通り聴いていたのに過ぎないが、そうしたトーキング・ヘッズ時代からのコンセプトが彼の中ではずっと持続していたのだと思って良いのだろう。
《THE TRAD》の中で中川絵美里は、何の予備知識もなくこの映画を観て、最初に脳 (の模型) を抱えた白髪のオジサンが出てきたので、これどうなっちゃうんだろ? と思ったとのことだが、次の世代にも訴えかけられるバーンの音楽性が健在であることにそのたくましさを感じる。決して時の流行に乗っただけのニューウェイヴではなかったと思うのだ。


David Byrne/American Utopia (Warner Bros)
American Utopia.. -Digi-




ミュージック・マガジン 2021年5月号
(ミュージック・マガジン)
ミュージック・マガジン 2021年 5月号




David Byrne’s American Utopia/Burning Down The House
https://www.youtube.com/watch?v=hldMkNnbcog

David Byrne’s American Utopia
https://www.youtube.com/watch?v=TslTH7hOKY4
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コメント 12

末尾ルコ(アルベール)

>ポール・シムノンの破壊されたベース

そういうのが残ってるんですね。あのジャケットは衝撃的かつカッコよ過ぎでしたからね。
わたし10代の頃一瞬パンクバンドのヴォーカルでしてというお話は今までにもさせていただいているかと思いますが、レパートリーはクラッシュ、セックス・ピストルズ、PIL、そして日本のルースターズなどでしたが、一度ライブハウスでやった時、ギター担当の者が演奏後にギターを床へ叩きつけて破壊したんです。直後ライブハウスのオーナーさんが、床が破損してないかすごく気にしてました(笑)。ベースとギターの違いはありましたが、ギター担当者が『ロンドン・コーリング』になりたかった意欲はよく理解できました(笑)。彼はミック・ジョーンズ信奉者でしたが。
それにしてもシムノンのベースがロンドン博物館に展示とは、ちょっとした感慨があります。

David Byrne’s American Utopia/Burning Down The House、視聴いたしましたが、カッコいいですね。スパイク・リーならむべなるかなですが、それにしてもワクワクします。
わたしはブリティッシュ中心に聴いていたので、トーキング・ヘッズを知ったのは『理メイン・イン・ライト』からです。あまりに話題になってましたし、もちろんコアなロックファンの間でですが、渋谷陽一と今野雄二のいささか子供じみた対立も鮮烈でした。
ただ、渋谷は批判していまして、わたしは渋谷派だったので、(そんなものかな)と組しそうになりましたが、でも買っちゃいました、『リメイン・イン・ライト』。そしてどう聴いてもカッコいいんですよね。いまだあのアルバムの曲はワクワク聴いてます。
その後トーキング・ヘッズを特に追ってはいなかったですが、デヴィッド・バーンとブライアン・イーノのコラボも大好きでしたし、坂本龍一とともに『ラストエンペラー』の音楽を担当したのも嬉しかったです。
YouTubeではトーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』当時のライブも視聴できますが、いいです、何度視聴しても。デヴィッド・バーンを中心として、唯一無二のバンドだったのだとつくづく感じます。

そう言えば、一か月後に予定されていた『ロッキンジャパン』が中止になったことで、Yahooニュースなどでも渋谷陽一の談話が引用されるという、極めて非日常な現象が起きてます。この中止に関しては極めて困難な判断だったと想像しますが、何やらホント、日本の状況は末期感が漂いまくってます。

・・・

たまたま最寄りの書店を覗くと『野呂邦暢ミステリ集成』という文庫本がありまして購入しました。まだ少ししか読んでませんがいいですね。ゆっくり愉しみたいと思ってます。

いつだって未知の作家を読み始める時間はエキサイティングです。現代短歌の塚本邦雄、おそらく作品を目にしたことはありますが(今は休んでますが、母が短歌をやっていて、家に短歌の本がゴロゴロしてるんです)、今後は意識して読んでみます。

>「映画を早送りで観る」 ってホントなんですか?

いるみたいです。そんなのなら観なきゃいいとも思いますが、文学作品自体を読まずにネットで作品情報やユーザーレヴューなどを読んで知ったつもりになると同様に、「話題としては持っていたい、知的と思われたい」などの欲求だけは人一倍あるようです。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2021-07-10 05:53) 

リュカ

前記事の内容でごめんなさい!
いま、「愛についてのデッサン」読み終わりました。
とても綺麗な文体で、ぐいぐい引き込まれました。
情景が目の前に浮かぶのが楽しかったです。
素敵な本、教えてくれてありがとうございました^^
by リュカ (2021-07-10 15:36) 

coco030705

こんばんは。
デヴィッド・バーン、いいですね。初めて知りました。
声も力強いし、裸足のステージングが面白いです。本当にダンスがそろっていますね。すごいです。
アメリカもやはりたくさんのすばらしいミュージシャンを輩出している国なんですね。

by coco030705 (2021-07-10 21:48) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

ザ・クラッシュのベースのニュースはこれです。
パンキッシュなルコさんには大きな感慨があると思います。(^^)
https://www.thejakartapost.com/life/2021/07/08/the-clashs-smashed-london-calling-bass-to-join-museum-of-london.html

大貫妙子はトーキング・ヘッズを評価していて、
それで私も聴いてみたという経緯があります。
ここに大貫妙子と渋谷陽一のトークのコピーが
ちょっとだけ掲載されています。
https://hibiky.hatenablog.com/entry/20130820/1376927600

デヴィッド・バーンはわからないですけど
ブライアン・フェリーがつまらないというのは
ちょっとわかりますね。
つまりフェリーは音楽バカなので、
日常的なトークの受け答え等はダメなんですけれど
音楽には別の脳があって、その脳で作られているんでしょうね。
で、バーンもフェリーもその背後にイーノがいるんです。
あらためてブライアン・イーノの存在はすごいです。
で、トーキング・ヘッズはアメリカのバンドですが
バーンは、国籍としてはイギリス人という感じがします。

ROCK IN JAPAN中止に関しては
「もうこうなると誰も言うこときかないよ」
と怒りの声が書かれていますけれど、
修学旅行から音楽フェスまで、
ともかくオリンピック以外は全部中止なんですよね。
狂気の為政者たちには、そのうちバチがあたると思います。

野呂邦暢ミステリ集成は書店にあるようですね。
私も買ってみようと思います。
塚本邦雄は思潮社の現代詩文庫に入っているのですが
現在品切れのようです。
でもそのうち再刊されるでしょう。
但し短歌としてはかなりアヴァンギャルドです。

早送りの映画、作品情報だけで読んだ気になる本。
それだとイントロだけの音楽鑑賞もありそうですね。
食レポだけで食べた気になる高級レストランとか。
あ、それならお金がかからないから良いかもしれません。(^^)
by lequiche (2021-07-11 01:34) 

lequiche

>> リュカ様

そうですか。気に入っていただけて幸いです。
「本盗人」 なんて、そんなことあるわけないよ、
とも思うんですが妙に説得力があります。
もしかすると、実際にあったのかもしれません。
by lequiche (2021-07-11 01:34) 

lequiche

>> coco030705 様

デヴィッド・バーンはトーキング・ヘッズとして
一世を風靡した人です。
トーキング・ヘッズはワールドミュージックなど
いろいろな要素を取り入れて、
「いいとこどり」 という批判もありましたが、
そうした外部の要素が融合しているのならば
音楽はジャンル分け不能でも構わないと私は思います。
全盛期のトーキング・ヘッズはこんなのです。
お時間があるときにでもどうぞ。

Talking Heads/Born Under Punches
Rome, Italy 1980
https://www.youtube.com/watch?v=YO7N2tFb0X8&t=123s
by lequiche (2021-07-11 01:34) 

coco030705

「Talking Heads/Born Under Punches」を聴かせていただきました。メンバー1人1人が、実力者みたいな感じがしました。演奏も上手く、歌も上手いですよね。いいバンドって、みんなそうかもしれませんが。
デヴィッド・バーンはかなりハンサムですね。いい歳のとり方をしている人という気がします。おもしろいバンドですね。
ありがとうございました。
by coco030705 (2021-07-11 17:54) 

lequiche

>> coco030705 様

お聴きいただきありがとうございます。
この曲はアルバム《Remain In Light》の収録曲ですが、
バーンがワールドミュージック寄りに音楽を作っていた頃で、
たぶんその時代の流行ともいえるのでしょうが、
そうした傾向が結果としてバンドの崩壊につながった
という部分があるような気がします。

デヴィッド・バーンとしての作品の中には
坂本龍一、スー・ツォンとともにかかわった
ベルトルッチの映画《ラストエンペラー》の音楽があります。

《アメリカン・ユートピア》は2018年の作品ですが、
ビョークのアルバム《ユートピア》も2017年に出ているので、
ユートピアという言葉がなにかのキーワードなのかもしれない
という疑問があるのですが、まだよくわかりません。
wikiにも書いてありますが、
ユートピアは決してアルカディアではない、
というあたりがそのヒントのような気がします。
by lequiche (2021-07-11 23:18) 

Boss365

こんにちは。ご無沙汰しています。
デヴィッド・バーン、良い歳の取り方をした感じです。
高音の張りはなくなりましたが・・・
変わらず、シンプルでアートなステージですね。
近々実家に帰省予定なので、アルバム探してみます!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2021-07-13 12:34) 

lequiche

>> Boss365 様

今回のアルバムのプロモーションを初めて観たとき、
この人、誰? と思ってしまったことは事実です。(^^;)
でも歌の力強さは健在だと思います。
なるべくシンプルなステージを、というコンセプトで、
そのベーシックに流れている思想性はずっと一環していて、
ああ、やはりデヴィッド・バーンだとあらためて思いました。
by lequiche (2021-07-14 05:40) 

onscreen

間も無くこの映画の元になったブロードウェイ公演が再開されるようです。

一方一昨年に現地で観ましたのでその感想をアップしております。
よろしければリンクをどうぞ!
by onscreen (2021-09-16 07:34) 

lequiche

>> onscreen 様

コメントありがとうございます。
実際にご覧になったとは! 素晴らしい&うらやましいです。
単純に音楽だけでなく全体の構成を考えて作られている
というところがすごいと思います。
通路脇の席がいいんですね?(笑)
by lequiche (2021-09-26 04:43) 

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