Prince — Welcome 2 America [音楽]
Prince
(Live At The Los Angeles Forum, April 28, 2011)
プリンスの《Welcome 2 America》が発売された。当初予定の発売日は7月30日だったが最終的に約1ヵ月遅れの8月24日にリリース。2010年に製作されながら生前未発売であったアルバムである。
なぜ発売されなかったかは不明だが、単純に考えればプリンス本人が発売するクォリティに達していないと判断したからだろう。だが、そのようにして発売されていない音源がペイスリーパークには山のようにあって、後に残された人々からすればこれを発売しない手はない、と画策してしまうのが主に金銭面のことからすれば自然である。心あるファンの中には 「それはないんじゃないの?」 と言う人もいるが、恥ずかしい部分まですべて晒されてしまうのが有名人の宿命というもので、大作家になれば子どもの頃の日記まで公開されてしまうのと同じである。
まだ聴き込んではいないのだが、アルバムタイトル曲の〈Welcome 2 America〉にしても、派手で輝いているプリンスではなく、やや曇り日の記憶のような、音のコラージュのような、プリンスの2010年という時点での心象風景のタペストリーのような音が綴られる。
ネットの囁きをざっと読んでいると、プリンスが出さなかったものを無理矢理リリースするのはどうなのかといった意見も聞かれるが、プリンスは自己採点が厳し過ぎるので、このようにまとめられて新しい音源が出されたことは肯定的に評価できるように思う。
アルバムに附属しているライヴ映像があって、それから〈17 Days〉と〈The Bird〉の2曲がYouTubeに公開されている。2011年4月28日のロスアンジェルス・フォーラムに於けるライヴであるが〈17 Days〉の赤いストラトで弾かれるプリンスのギターがカッティングもソロも結構聴かせる。十分にグルーヴィなライヴであるが、これより少し以前の2006年〈At The Brit Awards〉というライヴ映像がある。〈Te amo corazón〉というミディアムのやや暗い曲から始まるが〈Purple Rain〉そして〈Let’s Go Crazy〉と続くこのコンサートのまとめかたを聴くと、2006年のほうが2011年よりも圧倒的クォリティであり、やはり晩年になるにつれて、ややそのテンションは下がっていったという印象は否めない。でも繰り返すようだがプリンスのギターワークはどのコンサートに於いても異常にパッショネイトである (尚、この2006年のライヴにはシーラ・Eが参加している)。
たとえばチャーリー・パーカーなどと同じように、プリンスの遺した音は全て聴く価値があると思う。
プリンス/ウェルカム・2・アメリカ
デラックス・エディション (SMJ)
Prince/17 Days
(Live At The Los Angeles Forum, April 28, 2011)
https://www.youtube.com/watch?v=wMY4NFW7GkI&t=3s
Prince/The Bird
(Live At The Los Angeles Forum, April 28, 2011)
https://www.youtube.com/watch?v=BGV2uN2s2uk
Prince Live At The Brit Awards 2006
Te amo corazón/Purple Rain/Let’s Go Crazy
https://www.youtube.com/watch?v=DbggBc7l9K4
Prince/Welcome 2 America
https://www.youtube.com/watch?v=HJtxSdTL488
プリンス「17 Days」「The Bird」、視聴いたしました。
いきなり余談となりますが、今回母とともに視聴したんです。母、くぎ付けになってました。「カッコいいねえ!」とか言いながら。これは見た目はもちろん、その圧倒的ステージングのすべてに感じたのではと思います。
元来母はどちらかと言えば、日本の歌手、ミュージシャンを好みまして、最近はB’zやKingGnuに藤井風、平井大などが加わりましたが(笑)、やはり「日本語で歌っている」というのが重要なようで、外国ミュージシャンはもっぱらわたしだけで愉しんでいたのですが、今回プリンスを喜んでくれたことで、今後海外ミュージシャンも一緒に愉しめ祖です。
それと、音楽のクオリティはもちろんのこと、鑑賞した人たちにエネルギーを与える、いわば「スター」の威力というものもあらためて感じましたです。
シーラEもカッコいいですよね~。と書きつつも今すぐそばで母は「パープルレイン」の動画を鑑賞しております(笑)。
プリンスって、その存在総てが本物の「ゴージャス」ですよね。
>大作家になれば子どもの頃の日記まで公開されてしまう
これって確かにファンには興味ありますが、「文学」と「学」という意味の中でやることなのかなと、いつも少々思わなくもないです。
>やや曇り日の記憶
確かに。
そして残念ながらプリンスの人生が早く終わってしまい、それを知っているわたしたちが感じるものも、彼の生前とはまた違ったものがあるはずだと思います。
…
ビートルズって、これも後付けの印象に過ぎませんが、とてつもない実験ユニットだったという感もあります。
ローリング・ストーンズなのですが、どうなのでしょう、80年代以降のクリエイティビティに難ありと見做す向きは多く、わたしもそう感じなくもないのですが。
そして60年代後半ですよね。
いろいろ探索してみたいと思います。
>日本の音楽も、よくここまで来たなぁ
なるほどです。
やはり現在はそれだけのレベルにあるとご評価されているのですね。
これって一つの理由は、ネットが普及してから、いい悪いは別として、お金をかけずにありとあらゆる音楽にアクセスできるようになったことも大きいでしょうね。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2021-09-02 19:18)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
それは素晴らしいです。
というより、さすがルコさんのお母様!
という感じもしますが。(^^)
昨今のJ-pop隆盛がなぜかといえば、
やはり歌詞がわかるということに尽きると思います。
昔の歌謡曲よりは歌詞も音楽も洗練されてきましたが、
だからといって鎖国政策をする必然性はないので、
そのあたりが私にはずっと謎なのです。
やはり洋楽の作詞・作曲者からの
音に対する感受性の要求度が高いように
感じられるからかもしれません。
それはプレッシャーとなりますから、
プレッシャーの少ないドメスティックな音楽のほうが
聴きやすいということになりますので。
プリンスのライヴはどれもすごいですが、
2007年のスーパーボウルのハーフタイムショーは
ひとつのピークにあると思います。
このブログにも何回もリンクしているのですが、
すくに削除されてしまうので、
現在観られるのは下記のリンクです。
面白いのはカヴァー曲をメドレーで何曲か歌っていることで
プリンスのサーヴィス精神躍如ということですね。
歌いながらこれだけギターが弾けるというのは
常人にはありえないパワーです。
ロック・ギタリストのスーパースターとして
ジミ・ヘンドリックスがいますが、
彼のギターはあまりに独自のテイストで
誰にも引き継がれませんでした。
あえていえばジミの継承者に一番近いのがプリンスだったと
私は思います。
Prince/Super Bowl XLI
https://www.youtube.com/watch?v=-WYYlRArn3g
ビートルズもストーンズも最初はストレートに
ロックンロールを、あるいはR&Bをやっていました。
その闇雲なストレートさが私は好きです。
やがてビートルズはどんどん変容して行き、
実験的な方法論を展開して、そんなに時間をかけずに
ある程度の高みにまで到達してしまいました。
それが結果として解散につながったのだと思います。
ストーンズはビートルズに較べれば
R&Bというベーシックな音をずっと保持していましたが、
その中でやはり変容していったことは確かです。
ストーンズは当初、イギリスとアメリカでは
多少内容の異なるアルバムを作っていました。
1967年のBetween the Buttonsあたりまでです。
それ以後はイギリス/アメリカ共通となります。
このイギリス盤/アメリカ盤はCDでもそのままの状態で
つまりイギリス盤/アメリカ盤双方のパッケージングで
発売されたことがありましたが、私が持っているのは
そのようにアルバムが2種類あった時代がほとんどです。
つまり1970年代までで、それ以後はあまり知りません。
J-popは確かに進化してきましたが、
だからといって鎖国をすることはないのです。
他国からの影響を拒否しようとしている中国と
結果として同じになってしまいます。
J-popしか聴かないJ-popのミュージシャンを
私は信じません。
なるべく多くの音楽を聴くことが必要だと思います。
by lequiche (2021-09-03 03:16)
こんばんは。
「Prince Live At The Brit Awards 2006」がよかったです。プリンスって魅力的なスターですね。ギターも上手いし、衣装もいいと思います。早くに世を去ってしまったのが、残念ですね。神様に愛されたからかな。
by coco030705 (2021-09-03 21:02)
>> coco030705 様
ご視聴ありがとうございます。
6月15日のブログですでにリンクしましたが、
ウェブスター・ホールのライヴで
プリンスがちょっとふざけながら弾いているこのギター、
気軽に弾いているようですが素晴らしいテクニックです。
https://www.youtube.com/watch?v=r967lcA_rR8
同日のステージでのバンドによる演奏も良いです。
これはこの前の記事にはリンクしていませんでした。
https://www.youtube.com/watch?v=b2YdLEIAL4E
ミュージコロジーはエポック・メイキングな作品だと
思います。
プリンスは曲づくりを始めてしまうと、
眠りもせず食事もせず24時間やり続けたりとか
あまりにも無謀なことを重ねて
音楽に打ち込み過ぎてしまったのです。
by lequiche (2021-09-05 04:30)
こんばんは。
プリンスはいつも素敵なギターを持っていますね。自分のスタイルにもこだわりがあり、お洒落ですね。すごいアーティストだと思います。
バンドも女性ギタリストがいたり、女性コーラスも参加させたりと
多様な感じでいいですね。全エネルギーを毎日の作曲にささげていたのですね。夭折が惜しまれます。動画を聴かせていただき、ありがとうございました。
ところで、全然音楽とは関係ないのですが、池田エライザさんが主演のNHK総合放送の夜ドラが、9月6日(月)から始まります。題は「古見さんはコミュ症です」で22:45~23:15です。よかったら。
by coco030705 (2021-09-05 21:35)
>> coco030705 様
わざわざお聴きいただきありがとうございます。
ギターは市販品も使っていますが、
わざわざ特注することもあったようです。
すべてにこだわりがあったようですし、
バンドメンバーを選ぶときも
人種や性別などに対する偏見がありませんでした。
プリンスはどんな楽器でも演奏できてしまうのですが、
ライヴでアドリブでピアノを弾いたときも
まるでモーツァルトのようで心に沁みました。
池田エライザさんの情報、ありがとうございます。
BDレコーダーのドラマ全回録画で予約致しました。
by lequiche (2021-09-06 15:36)