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最近買った本など [本]

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「最近買った雑誌」 に続いて 「最近買った本」 です。言い訳は前回に準じます。

●鈴村和成『ランボー、砂漠を行く』(岩波書店)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000024175/
アルチュール・ランボーが詩を書かなくなった時代について最初に知ったのは確かマリ・クレールという古い雑誌に載っていた記事で、それまでの通り一遍の天才詩人といった形容から、なぜ彼は詩作をやめてしまったのかという探求が盛んになり、というような状況をなんとなく知ってはいたが、踏み込むことはしなかった。
思潮社から出された分厚い『ランボー全集』によって、それまでの翻訳とは異なった表現によるランボーを知った。もはや 「酩酊船」 の時代は過ぎ去ったのだとそのとき思った。
この本は古書店にて購入。まだぱらぱらとしか読んでいない。

●小鷹信光『アメリカ・ハードボイルド紀行』(研究社)

アメリカ・ハードボイルド紀行 ――マイ・ロスト・ハイウェイ




マニアック過ぎて全然わからないけれど面白い本。このマニアックさはかなりディープだ。映画好きの人ならわかる内容なのかもしれない。著者はダシール・ハメットなどの翻訳家として知られる。

●ほしおさなえ『東京のぼる坂くだる坂』(筑摩書房)

東京のぼる坂くだる坂 (単行本)




東京の坂に関する詳しいエッセイなのだが、その全体の流れは小説になっているというハイブリッドな作風。坂に関する部分はリアルな取材に基づいているらしいので、これを元にして坂道探索に行くのもあり。ほしおさなえは活版印刷三日月堂のシリーズなどで知られるが、小鷹信光の娘である。

●梨木香歩『草木鳥鳥文様』(福音館書店)

草木鳥鳥文様 (福音館の単行本)




見た目がカッコイイ本。絵・ユカワアツコ。写真は長島有里枝。というか梨木香歩の本は皆、さりげなくカッコイイ。

●松本完治『シュルレアリストのパリガイド』(エディション・イレーヌ)

シュルレアリストのパリ・ガイド




エディション・イレーヌの本はバーコードが印刷されていないのですが、書店のレジでは習慣でバーコード・リーダーにかざして読み取ろうとするけれどピッと音がしないので笑います。内容はパリ・ガイドのようなそうでないような。細かいことですけど社名はエディション・イレーヌでなくエディシォン・イレーヌとして欲しかった。

●ヴァージニア・ウルフ『波』(早川書房)

波〔新訳版〕




訳者は森山恵。新訳版とのことだが、SFやミステリーだけではないところにまで手を伸ばす早川書房。ヴァージニア・ウルフはみすず書房の水色の布装著作集が私にとって最初のスタンダードだったが、岩波文庫版の『灯台へ』を読んで、ランボーと同様に新訳の重要さを知る。同じような印象の装幀で『ジェイコブの部屋』がならんでいたがこれは文遊社という発行元。まだ買っていません。で『波』はどうかというとまだ読んでいません。

●高野史緒『まぜるな危険』(早川書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4152100389/
高野史緒は『ムジカ・マキーナ』の著者。最近だと『大天使はミモザの香り』は買ったのだけれどまだ読んでいません。早く読めよ、と本たちが言っております。

●ジョゼフ・グッドリッチ編
『エラリー・クイーン創作の秘密 往復書簡1947−1950』(国書刊行会)

エラリー・クイーン 創作の秘密: 往復書簡1947-1950年




これはとりあえず資料として買っておく。ところが書店で見たら同じようなクイーン研究本が複数あり。さすが人気作家です。2人のクイーンの創作をめぐっての往復書簡とのことだが、『十日間の不思議』とか『九尾の猫』って正直どうなの? っていうのがちょっとあって。

●ブッツァーティ短編集 (東宣出版)

魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)




全3巻。書店に並んでいるのを偶然見つけました。2017〜2020年に出ていたのですがまるで知りませんでした。ディーノ・ブッツァーティはイタリアの作家。『タタール人の砂漠』(1940) で知られるが私はこれ1冊っきり読んでいない。ジュリアン・グラックの『シルトの岸辺』(1951) はこの『タタール人の砂漠』の影響があるといわれていますが、そうかな? 尚、グラックの『シルトの岸辺』は同一訳者で2回訳されていますが最初の訳文のほうが私は好きです。

●ヴィリエ・ド・リラダン『残酷物語』(水声社)
https://books.rakuten.co.jp/rb/16818342/
リラダンは戦前からの齋藤磯雄訳が有名で創元社版の全集があるが、むずかしくて歯が立たない感じがしたのが過去の思い出。今回の水声社版も当世流行の新訳。訳者は田上竜也。これは素晴らしい訳だと思います。といってもまだ最初しか読んでいませんが (というか昔、齋藤訳で読んだときは単純に読解力がなかっただけ)。
訳者解説によれば 「ビヤンフィラートルのお嬢様方」 (Les Demoiselles de Bienflâtre) をなぜ 「お嬢様方」 としたかというとdemoiselleは貴族の令嬢という意味とともに俗語として娼婦の意味もあるので、その皮肉な面をあらわしたのだとのこと。モーリス・ルブランのルパン・シリーズには《La Demoiselle aux yeux verts》(緑の目の令嬢・1927) というのがあるので、単に令嬢という意味の古風な表現としか思っていなかった (マドモアゼル/ドモアゼル)。つづく 「ヴェラ」 (Véla) の訳も陰鬱で素晴らしい。
水声社では『未来のイヴ』と『クレール・ルノワール』を続刊予定。先日、古書店で買った古雑誌の中に『未来のイヴ』を特集した『夜想』17号 (1985) があって偶然読んでいたし、それに光文社文庫でも新訳が出ていて、リラダンが少しでもポピュラーになるのならそれも良いと、あまり期待しないながらも思う。

●The Peanuts Poster Book (Ilex Press)

The Peanuts Poster Book: Twenty Ready-to-Frame Prints (Poster Books)




大きめの画集。書店で安売りしていたので購入。でもamazonで見たらそんなに安いというほどでもなかった。
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末尾ルコ(アルベール)

読書の話題は最高にワクワクできることの一つですね。映画や音楽と比べて、「同じ作品を鑑賞している」ケースは少ない(映画など以上に多種多様の書籍が存在しますから)のも、「同じ作品を語り合う」のとは違うおもしろさがあります。

『ランボー、砂漠を行く』はまだ読んでないですが、ランボーの詩集は原文を含め多く持ってますし、彼の人生についての本も何点か持ってます。
ただ、詩を、止めてからのランボーについては今まであまり大きな興味を持ってませんでした。
好きな外国人作家の新訳、出ていれば買いたくなります。ランボーやボードレール、ロートレアモンなどは新訳というほどではないですが、新しめの訳を持ってます。
堀口大學や上田敏らの翻訳はもちろん好きなのですが、朗読や音読がすっきりできないことがあるんです。新訳はその点、重さはないけれどすっきり読めます。
サン・テグジュペリの『人間の土地』が大好きな一冊なんですが、堀口大學の訳、妙にもたもたしてます。まだ他の人の訳を持ってないので、そのうち買いたいです。

『アメリカ・ハードボイルド紀行』もおもしろそうですね。でもわたし、ハードボイルド、好きなのは雰囲気かな。新しい作家はそうでもないですが、ハメットやチャンドラーは読んでて登場人物の関係などが分からないくなることがあります。
ボギー主演で映画化されたハワード・ホークス監督の『三つ数えろ』は、何度観てもよく分からない内容にフランソワ・トリュフォーが(これでいいんだ)と勇気をもらったという逸話があったような。

それにしてもヴァラエティに富んだ書籍をお買いになっておられて、とても刺激になります。このところわたし、花を復活させているので、花や植物関係の本もまた買っていきたいなと思っているところです。

ヴァージニア・ウルフの『波』は読んでみたいです。しかも新訳ですよね。ウルフも短編なんか、すごく美しくて大好きです。

へえ~、『エラリー・クイーン創作の秘密 往復書簡1947−1950』なんていう本が出るんですね。やはり書籍はおもしろい。クイーンって、今でも新しい読者を増やしているんでしょうか。普遍的なおもしろさと構築性があるんでしょうね。

『ブッツァーティ短編集』もそそられます。わたしはこの作家、読んだことあるかどうか定かではありません(笑)。でもジュリアン・グラックに影響を与えているとなれば。

ヴィリエ・ド・リラダンの『残酷物語』。
もう令和なんて時代忘れて陶然としております、わたし、今。
これはもう申すまでもなく、いずれ必ず手に取りたい一冊です。

そして僭越ながらわたしがこのところ身の回りに置いている本を紹介させていただきますと、

『サンクチュアリ』(フォークナー)
『薄桜記』五味康裕
『太平洋の防波堤』デュラス
『池澤夏樹の世界文学リミックス』
『ブラック・ダリア』ジェイムズ・エルロイ
『人魚の嘆き・魔術師』谷崎潤一郎
『マルコムX』荒このみ
と、比較的新しいのは『池澤夏樹の世界文学リミックス』だけですね(笑)。
まあ再読、再再読なども多いですが、こうした本を読みつつも、宇佐見りんとか新しい作家も、気になれば読んでいます。
常に数十冊を身の回りに置いているというスタイルがずっと続いていて、どのくらいあるか最早分からない蔵書の中からその時々に読みたい本を抜き出しています。

荒このみなんですが、たまたま今日の新聞の書評に『風と共に去りぬ アメリカン・サーガの光と影』という本が紹介されてまして、おもしろそうだなあと。
『風と共に去りぬ』、映画は何度も観てますが、原作は未読なんです。以前同作品についてのお記事をアップされてますよね。原作、買おうかなと思ってます。               RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2021-09-11 18:57) 

coco030705

こんばんは。
アルチュール・ランボーの本、マリ・クレールに載っていたのですね。やっぱりマリ・クレールってすごい雑誌でしたよね。ファッション記事も好きでした。なくなって残念。

梨木香歩『草木鳥鳥文様』素敵ですね。梨木さんは大好きな作家です。これは持ってなかったので、買おうかなと思っています。

ヴァージニア・ウルフは、大学でヴァージニア・ウルフを研究していらっしゃる先生の英語購読の授業をとっていたので、「灯台へ」を読みました。が、全然忘れています。

エラリー・クイーンはよく学生時代に読みました。面白かったです。
by coco030705 (2021-09-12 22:43) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

翻訳は外国語を日本語に変換するわけですが、
その際、どうしてもその時代の言葉の使い方があって
それは時代とともに変化してしまいますから、
あまり古い訳では読解にそぐわなくなります。
今、坪内逍遥のシェークスピアでは
読むのにも実際に演劇に使うのにしても無理だと思います。
それと同じです。
また、時代とともに研究も進みますから
昔の翻訳だとよくわからなかった箇所が
明瞭になってきたりします。

私にとって新訳渇望のはっきりとしたきっかけは
高遠弘美訳の『O嬢の物語』を読んだときで、
それまで同書は澁澤龍彦訳だったのですが、
高遠弘美による 「ここはちょっと違うんじゃない?」
というような指摘があって、納得のできる内容でした。
それは齋藤磯雄訳のリラダンにも同様に言えるはずです。
齋藤が翻訳を始めたのは戦前で旧漢字旧仮名ですから。
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』も
ずっと野崎孝訳が有名ですし名訳だったのですが、
今読むと言葉遣いなどで 「ちょっとこれは」 という部分が
散見されます。それで村上春樹訳が出たのだと思います。

ただ翻訳の場合、下訳というのがあって、
伊藤典夫が『華氏451度』の解説で指摘していますが、
早川書房でずっとスタンダードだった宇野利泰訳は
意味不明であったり、こなれていない箇所があって、
その原因はどうも下訳者がいたからだ、とのことです。
つまり宇野利泰先生は下訳者の仕上げた文章に配慮して
あまり直さなかったのではないかということなのです。
ついでに書きますと、上記ブログで話題にした
エラリー・クイーンの場合、その後期には
原稿そのものを他の作家に依頼した作品があります。
昔は何事もアバウトでそんなものでしたし、
たとえば黒岩涙香なんて今でいう超訳みたいなもので
wikiでは翻案小説と分類してありますね。

小鷹信光の本は実際にはハードボイルドとは関係なく、
アメリカの雑誌とか本などの文化に関する
マニアックなエッセイといったほうがよいです。
植草甚一などよりずっと緻密で深いです。
深過ぎて私にはよくわからないですが。(笑)
しかし彼はずっとハードボイルド小説を翻訳していたので
このようなタイトルにしたのだと思います。
でありながら最初に娘とその夫のことをぼやいていて
(娘とその夫とは、ほしおさなえ・東浩紀のことです)
その落差がちょっと面白いです。

ヴァージニア・ウルフはこれからも新訳が出ると思います。
プルーストやナボコフなどと同様に
やりがいのある作家なのでしょうね。

ブッツァーティは『タタール人の砂漠』しか読んでいない
と書いてしまいましたが、他の作品も多少読んでいました。
書いているうちに気がつきました。
ただこの短編集は全く知らなかったので即買いしました。
幻想文学系といっていいのでしょうが
やはりフランスとイタリアでは作風が違っていて
イタリアはいかにもイタリアでパッショネイトな部分があります。
ですからグラックとブッツァーティでは幻想の拠り所が
全く異なるように感じます。
といってもイタリアはよく知らなくて、
たとえば須賀敦子が訳していたタブッキとか、
あと、ヴィスコンティの《イノセント》の原作である
ダヌンツィオの『罪なき者』くらいしか思い浮かびません。

ルコさんこそ色々な傾向の本の選択をされているようで
大変参考になります。
デュラスのL’Après-midi de Monsieur Andesmasは
読んでいるうちにすぐに眠くなってしまうような
その午後のたゆたいみたいなのがいいです。(笑)
『風と共に去りぬ』は大久保康雄・竹内道之助訳が
スタンダードでしたが、最近になって
鴻巣友季子訳と荒このみ訳が並列して出されました。
まさに今、新訳ブームなのかもしれません。
鴻巣友季子訳に関しては
NHKの《100分de名著》のテキストでしたので
以前のブログでそれに関連したことをすでに書きました。
https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2019-07-13

そしてナボコフの『ロリータ』も大久保康雄訳が
長らくスタンダードだったのです。
翻訳本に関してはこのところ、とてもスリリングです。
by lequiche (2021-09-13 02:51) 

lequiche

>> coco030705 様

ランボーが詩を書かなくなって以降、どうしていたか
という紹介記事があって、それを読んで
近年のランボー研究がどのようになっているのかを
知りました。
たしかマリ・クレールだったと思いますが
違う雑誌だったかもしれません。記憶力が曖昧で……。(^^;)
それまでは詩を書かなくなったランボーについては
研究者からは黙殺されていたようです。
ところがそれではダメだという、いわゆる再評価が
その後活発になって現在に至っているのだと思います。

梨木香歩は最近のでは『風と双眼鏡、膝掛け毛布』
というエッセイが内容もしっとりとしていて
装幀もきれいですね。

ヴァージニア・ウルフ、大学で学ばれていたのですか。
それはすごいです。
『灯台へ』は良い作品ですね。
以前にそのことについて書いたことがあります。
お時間のあるときにでも見ていただければうれしいです。
     ↓
immense darkness ― ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』
https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2016-12-03

her little Chinese eyes — ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』その2
https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2016-12-29

エラリー・クイーンは『ローマ帽子の謎』という
最初の作品の劇場の雰囲気が好きです。
その空気感というのか、遙かな異国のイメージがあります。(笑)
あまり有名でない『盤面の敵』も好きなのですが、
この作品、シオドア・スタージョンが
ゴーストライターなんです。
でもスタージョンなんだからいいか、とも思います。
by lequiche (2021-09-13 02:51) 

coco030705

こんばんは。
すみません、私の言い方が言葉足らずだったようです。ヴァージニア・ウルフは、大学で英語の講読の授業として「灯台へ」の原作を読んでいて、その指導教授がヴァージニア・ウルフを研究しておられる方だったいうことだけなのですよ。あまり覚えていないのですが、かなり難解な本だったと思います。
lequiche さんは、色々な分野の知識が豊富でいらっしゃるので、いつもすごいなぁと感心しています。
by coco030705 (2021-09-13 21:30) 

ゆうのすけ

lequicheさ~ん コメントありがとうございます。おかげで大事に至らなかったことは幸いでした。一時的に あれ?ちょっと味覚がおかしいかなと思ったのも何とか治りました。
やはり私の感染は 家族からのエアロゾル感染が濃厚なのかもと。外では人と話さないし よくよく考えれば弟が食欲無くなった日の食事が重なるんですね。くわばらくわばら。^^;
在宅療養中は音楽三昧しようかと思ったら いざとなるとそんな気にもなれなくて 横になりながら活字ばかり追ってました。それに珍しく非常用の懐中電灯についているラジオで深夜番組(NHK)など。何十年ぶりにNHKを聞いたいたか。^^;
by ゆうのすけ (2021-09-13 22:43) 

lequiche

>> coco030705 様

いえいえ、そのような授業をお受けになっていたことだけで
十分に素晴らしいです。
厳密に読んでいくとウルフはむずかしいかもしれませんが
さらっと読んでその雰囲気に浸ることもできますから
優れた作家だと思います。

私は単に読んだことを受け売りしているだけですから
とても知識が豊富とはいえませんが
少しでもご参考になることがあれば幸いです。(^^)
by lequiche (2021-09-14 04:55) 

lequiche

>> ゆうのすけ様

何はともあれご無事でよかったです。
どこに何があるのかわからないのがこわいですね。
目に見えませんから。
やはり心が落ち着きませんから、
回復するまでは仕方がないと思います。
非常用の懐中電灯についているラジオ、ウチにもあります。
というかラジオに懐中電灯がついているんじゃないでしょうか?
あ、同じことですね。(笑)
by lequiche (2021-09-14 04:56)