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『Hanako』9月号を読む [本]

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音楽について前記事のコメントのリプライに書いた内容なのですが、再録してしまいます。

 「何聴いても皆同じに聞こえる」
 という表現をするかたがいらっしゃいますが、
 それはまさにその通りです。
 深く聴かなければバッハだってベートーヴェンだって
 ビーチボーイズだってPerfumeだって
 同じような曲に聞こえるものです。
 でもそれは逆に、自分の耳がプアである
 と公言しているのに等しいので、どうなのかなぁ、
 とは思いますが。(笑)
 自分が好きで興味のある人の音楽は区別できる、
 自分が嫌いで興味がない音楽は皆同じに聞こえる、
 というだけのことです。
 これは簡単な心理であり、真理なのですが
 意外にわかっていない人が多いです。

これは自戒をこめて書いたことでもあるのです。すべての音楽が好きで聴いているという人はいませんし、音楽に限らず好き嫌いはあって当然なのですが、かといって簡単に 「嫌い」 と言って切り捨てられないのが私の性格なのかもしれません。
それと私はコンテンポラリー・ミュージックというのか、いわゆる現代音楽系の作品にとても興味があるのですが、そういうことを話題にしても好き嫌い以前に 「わからない」 「知らない」 という反応が多いのであまり書かなくなってしまいました。そのあたりは迎合主義です。ただ、そうした内容の記事の場合、ナイスやコメントは少ないのにアクセス数だけは多かったりします。これが不思議ですね (いや、不思議ではないんですけどそういうことにしておきます)。

さて、というわけで『Hanako』9月号の話題です。特集タイトルは 「J SONGBOOK 日本の音楽を学ぼう!」 で、Kinki Kidsと山下達郎がとりあげられています。J-popといわずJ SONGBOOKとしているのにこだわりを感じます。ちなみに表紙が2種類あって、Kinki Kidsの表紙と山下達郎の表紙。表紙だけ異なりますが中身は同じです。好きなほう買ってね、ということでしょう。Kinki Kidsの写真を撮っているのは篠山紀信、山下達郎を撮っているのは『サンレコ』もこの『Hanako』も高橋ヨーコです。

それでこの前のさらにつづきのように山下達郎の話題を求めて読み始めたのですが、Kinki Kidsや山下達郎に辿り着く前に、他の記事が面白いのです。

「私を創った音楽の歴史。」 という記事では、各ミュージシャンが影響を与えられたミュージシャンについて語っているのですが、上白石萌音はミスチル、絢香、吉岡聖恵 (いきものがかり) をあげています。
Awesome City Clubのatagiは小学生のとき、宇多田ヒカルの〈Automatic〉が刺さったというので早熟だなあと思いますが、最初に買ったCDは宇多田ではなくポケビだったというのが微笑ましい。モリシーは小2でミスチルの曲が弾きたくてエレクトーンを始めたが、B’zを聴いて衝撃を受け 「これからはギターだ」 と思ったというのがちょっとアナクロで素晴らしいです。高校生になった頃、はっぴいえんどなどの70年代日本のロックを知ったとのこと。モリシーの音、私は好きです。POLINは親の影響で松任谷由実を聴いていたが、その頃流行っていたモームスでなくLUNA SEAにハマり、そしてチャットモンチーという展開。
長屋晴子 (緑黄色社会) は大塚愛、吉岡聖恵、そしてセカオワをあげていますが、上白石も長屋も吉岡聖恵を選んでいるのが目を引きます。
こういうのって世代がはっきりあらわれるので、なるほど〜と感心します。ときとして、その世代では知らないはずの曲やミュージシャンを知ってたりする人というのも意外な感じがしてそれはそれでまた良いし。

そして面白かったのは平野紗希子とゆっきゅんによる浜崎あゆみフリークのトーク。ふたりともとても詳しいのですが、あゆ全盛期のファンよりも一世代後ですよね。そうすると微妙に視点が違うような感じもして、でも共通の心理も感じられたりして、つまり浜崎あゆみも、もう音楽の歴史の中に組み込まれようとしていることがわかります。

それに対して野宮真貴は憧れていた女性シンガーとして、佐藤チカ (プラスチックス)、シーナ (シーナ&ロケッツ)、イリア (ジューシィ・フルーツ)、松任谷由実をあげていて、これはストレートにわかるのでホッとします。でもデビュー盤は鈴木慶一プロデュースだったっていうのは初めて知りました。

鈴木涼美が椎名林檎と宇多田ヒカルをテーマに各1ページで書いている小説。椎名林檎ヴァージョンは町田のキャバクラ嬢というのがリアリティがあるのですが、その中で椎名がともさかりえに書いた曲では〈少女ロボット〉も良いけれど〈カプチーノ〉だって言うんです。マニアック過ぎてカッコイイ。
《少女ロボット》のCDはリサイクル書店で偶然見つけて購入したのを覚えています。


Hanako 2022年9月号 (マガジンハウス)
Hanako(ハナコ) 2022年 9月号増刊 [J SONGBOOK 日本の音楽を学ぼう! 表紙:山下達郎]




緑黄色社会/時のいたずら
https://www.youtube.com/watch?v=wIPB3jRsnB0

Awesome City Club/you
Awesome Acoustic Session at SHIBUYA SCRAMBLE SQUARE
https://www.youtube.com/watch?v=D0ytvJym0es
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末尾ルコ(アルベール)

>「「興味の無い音楽はつまらない」 と思っている人はつまらない」

真理ですね~。わたしもどのような対象でもできる限り丁寧に感じていく努力をしたいとあらためて思いました。
昔ですね、中学時代でしたが、同級生の女子が「外国映画を観ない理由」の一つとして、「外人は皆同じ顔に見える」と言うんです。これなんかも典型的な、「興味のないものは見な同じに感じる」の一例かなあと。反対に日本人に興味のない外国人にとっては、日本人の顔は皆同じに見えるわけですからね。
自分の好き嫌いや興味のあるなしを超えた客観性、あるいは俯瞰性を持たなきゃいけませんね。

影響を与えられたミュージシャンですが、これは「日本のミュージシャンの中から」という括りなのでしょうか。皆、日本人を選んでますね。わたしの場合は小学高学年からほとんど洋楽ばかりだったので、その時期に日本のミュージシャンの影響、ぜんぜんないんです(それもどうかと思いますが)。
でも「ミュージシャン」という言い方、いいですね。昨今は歌手やミュージシャンのことをいきなり「アーティスト」と呼んで憚らない向きが多いですが、一瞬(何の話?)とわたしなどはなってしまいます。

>「わからない 」 「知らない」

まず強い先入観があり、その先入観から決して外へは出ないという姿勢ですね。いろいろ問題です。

・・・

目録!わたしも大好きです。最近は時間がないのであまり目録読めないのですが、想像がどんどん膨らんで、本当に豊かな時間ができますね。子どもの頃は本編の後に付いている目録見てるだけで幸せな気分でした。

>でもそれは逆に、自分の耳がプアであると公言

なるほどです。どんな分野にも〈自分がプア〉だとは夢にも思ってない人が多くなってますね。
とは言え音楽に関しては、わたしもミュージシャンによっては同じような曲に聴こえる場合もなきにしもあらずで(笑)、このあたりはもっと精進せねばというところです。

ああ、タンジェリン・ドリームを忘れておりました。何と言っても『恐怖の報酬』!まだわたしキッズでしたが、これを封切上映で観られたのは幸せでした。他にも、『ザ・キープ』
『炎の少女チャーリー』『卒業白書』『ニア・ダーク/月夜の出来事』など、けっこう観てる映画でサントラやってます。
我がことながら、人生の早い段階で「歌なし」の音楽を愉しむ習慣ができていたのはラッキーだったです。なにせ「歌がないと聴けない」っていう人が日本には多いですから。それと歌があっても、「外国語の歌詞だとダメ」という人も昔から多いです。「音楽を愉しむ」根本が理解できてないと言いますか。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2022-08-12 08:14) 

kome

例えば、絵画だったら今さら印象派が好きなどとは言えない、やはり現代アートだよねというのはあります。
音楽でも実はそういうことは言いたいのですけれど、好みに対する思い入れの強い方がたがそれぞれいるので、そっとしています(笑)。
by kome (2022-08-13 09:05) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

似ている音楽や演奏というのは確かにあります。
たとえばジャズでいえば
チャーリー・パーカーとソニー・スティット。
較べてみると全然音色が違いますし
ソロの組み立て方も異なるのですが、
どちらかひとつだけ聴いた場合、ちょっとわかりにくいです。
同じ曲なら比較しやすいのですけれど
よい音源が見つかりませんでしたので異なる曲ですが、

Charlie Parker/Constellation
https://www.youtube.com/watch?v=VXSpo3A353o

Sonny Stitt/Afterwards
https://www.youtube.com/watch?v=qGG3PrEzI8w

ソニー・スティットのほうは《Sonny Stitt Plays》
というアルバムからの曲で、愛聴盤なのですぐ分かりますが、
初めていきなり聴いた場合 「これ誰?」
となる可能性はあります。

何を聴いても同じに聞こえてしまうのは私にもあって、
たとえば最近の多人数の女性グループの曲とか
韓国系のポップスなど正直いって区別がつきません。
昔の歌謡曲や演歌だって聞き覚えがある曲ならわかりますが
そうでない場合、ほぼ不明だといっていいです。
慣れもあるのかもしれません。
ただ最初からマニアックにテリトリーを決め過ぎて
狭い範囲でしか聴かないリスナーは残念だなぁと思います。

『Hanako』の特集は 「日本の音楽」 がターゲットなので、
この雑誌へのコメントをもらう場合も、
ドメスティックな話題に限っているのかもしれません。
上白石萌音は御両親ともに洋楽が好きだったので
子どもの頃は洋楽ばかり聴いていたとのことです。
メキシコに住んでいた時期もありましたから。

もっとも最近はミュージシャンでも日本の音楽しか聴かない
という人がずいぶん多いようです。
洋楽を聴いていたというのはたいがい親からの影響で、
友達からの影響で聴き始めたというケースは滅多にありません。
どのあたりの世代からそうなってしまったのだろうか、
というのが知りたいですね。
古い携帯電話のことをガラケーとかバカにするくせに
音楽の嗜好に関しての日本のガラパゴス化には
鈍感なように見えます。

でも、洋楽を聴く必然性というのは無くなりつつあります。
なぜなら現在の洋楽はかなりの比率でラップ系の音楽が席捲し、
英語などに堪能でない限りわかりにくいです。
もちろんラップにもよい作品もありますが
基本的に私には 「メロディがなければ音楽ではない」
という思いがありますので、
ラップはあくまでカウンターカルチャーですから
それが主流になってしまうのは音楽としては衰退だと思います。
ですから普遍的に洋楽が聴かれなくなっているという
昨今の現象に関しては
仕方がないという側面もあるように感じます。

タンジェリン・ドリームはサントラに
かなり関わっているんですね。
映画《恐怖の報酬》にはチャーリー・パーカーの名前も
クレジットされているのに気がつきました。
なるほど。「歌がないとダメ」 は納得できます。
私の音楽嗜好はもともとインストゥルメンタルですから
もともとのアプローチが違うのかもしれません。
by lequiche (2022-08-13 16:49) 

lequiche

>> kome 様

あぁ、印象派!
的確な喩えですね。(^^)
そっとしておくというのもわかります。
寝た子を起こさない、というのと同じでしょうか。(^^;)

篠山紀信の撮影は、さすがと思わせますが
高橋ヨーコの写真もとても好きです。
以前はフィルムカメラで撮影されていることが
多かったですが、今はどのくらいの比率なんだろう?
と思ったりします。
by lequiche (2022-08-13 17:18)