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カプソンとユジャ・ワンのピアソラ、最近の室内楽CDなど [音楽]

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Yuja Wang & Gautier Capuçon (2013)

ここのところバタバタしていて、全然音楽が聴けていない。これは不幸なことである。
でも買っておかないと、と思っている何人かの偏愛するヴァイオリニストのCDは確保しているのだが、まだ未聴だったりする。

リサ・バティアシュヴィリの最近のアルバムのタイトルは《シークレット・ラヴ・レターズ》で、以前のアルバム・タイトル《シティ・ライツ》を連想させ、イージー・リスニングかと思わせられるが内容は全然そうではなくて、シマノフスキ、ショーソン、それにフランクのソナタである。
フランクはのそのヴァイオリニストの技倆を測るのに最適であるだけでなく、ピアニストのレヴェルもわかってしまうように思える。

アリーナ・イブラギモヴァの最近のアルバムはメンデルスゾーンのソナタ集だが、F-dur MWV Q26とf-moll op.4 MWV Q12の2曲に、1820年のF-dur MWV Q7、さらにMWV Q18というマニアックな収録曲。1820年だとメンデルスゾーンは11歳とのこと。
ただ、イブラギモヴァはキアロスクーロ・クァルテットもあるし、パガニーニの《カプリース》もあるし、で一応押さえているのだけれど追い切れていない。

でも最も先鋭的なのはバイバ・スクリデで最近作はシュルホフ、ヒンデミット、ヤルナッハ、エルトマンの無伴奏というのだけれど、これはかなりマニアックといってよいはず。
それより前のアルバムにモーツァルトのコンチェルト集があったのでその落差を大きく感じてしまうが (とはいってもカデンツァが自作のところがスクリデらしいのだけれど)、この世代の中では一番注目し続けていて、CDはほぼコンプリートしてしまっている。Olfeoってなかなかすごいのかも。
しかしごく初期のバルトークとイザイの無伴奏が廃盤になったままでプレミアがついている。はやく復活させて欲しい。

他にはザビーネ・マイヤーの《KlarinettenKonzerte》というモーツァルト、シュターミッツなどのコンチェルトのセットがあって、各種クラリネット・コンチェルトの集成なのだが、購入したのは単純に安かったからという理由が大きい。クラだけでなくバセット・クラ、バセット・ホルンの曲もあり。
さらに武満徹を含めた第2集もあるのを最近知りました。シュポーアが2曲入っている。

そしてユジャ・ワンはゴーティエ・カプソンのチェロにアンドレアス・オッテンザマーのクラリネットを加えたブラームスのトリオが最新盤。この曲はブラームス晩年の作品で、ちょっと地味な感じがあるがa-mollという調性の素朴な暗さが胸をうつ。YouTubeで音のみだが全曲を聴くことが可能だ。
だが、YouTubeで聴けるのに限っていえば、カプソンとのピアソラ《ル・グラン・タンゴ》が素晴らしい。少し以前のヴェルビエ・フェスティヴァル (2013年) の演奏が一番すぐれているように思える。ユジャ・ワンの室内楽曲に対する合わせ方は絶妙で、決して 「オレがオレが」 と無闇な自己主張などないのがさすが (あ、それにオレじゃないですね。失礼!)。ピアソラの楽曲はレパートリーとしてもうすでにクラシックと解釈するべきなのか、とも思うのだが、このカプソンのタンゴへのアプローチは濃密でテンションが途切れることなく、ピアソラの魂が宿っている。

さらにYouTubeでユジャ・ワンの2006年のカーティス音楽院時代のショパンのバラードを発見。19歳なので若い印象はあるが、ピアニズムとしてはすでに完璧である。


Yuja Wang, Andreas Ottensamer, Gautier Capuçon/
Works by Rachmaninoff & Brahms (Universal Music)
ラフマニノフ&ブラームス作品集 (UHQCD/MQA)(特典:なし)




Yuja Wang, Gautier Capuçon/Franck, Chopin
(ワーナーミュージック・ジャパン)
Piazzolla: Le grand tango 収録アルバム
ショパン、フランク




Lisa Batiashvili/Secret Love Letters (Universal Music)
シークレット・ラヴ・レター (UHQCD/MQA)(特典:なし)




Alina Ibravimova/Mendelssohn: Violin Sonatas
(HyPerion)
Mendelssohn Violin..




Violin Unlimited: Baiba Skride plays Solo Sonatas
(Orfeo)
近現代の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集




Sabine Meyer/KlarinettenKonzerte (Warber Classics)
Sabine Meyer Clarinet Concertos




Yuja Wang, Gautier Capuçon/
Piazzolla: Le grand tango
The Verbier Festival, Verbier Church, on July 30, 2013
https://www.youtube.com/watch?v=1HtmonWyo-4

Yuja Wang, Andreas Ottensamer, Gautier Capuçon/
Brahms: Clarinet Trio in A Minor, Op. 114
I. Allegro
https://www.youtube.com/watch?v=fAE3oqW9fRk
II. Adagio
https://www.youtube.com/watch?v=wWcHfO2P56E
III. Andantino grazioso
https://www.youtube.com/watch?v=FMz6IfgbWBo
IV. Allegro
https://www.youtube.com/watch?v=knu3RnjVmAc

Yuja Wang/Chopin: ballade 1
(live 2006)
https://www.youtube.com/watch?v=4l1bs5hlnYk
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末尾ルコ(アルベール)

今回お話くださっている演奏家、ザビーネ・マイヤー以外は(旧)共産圏関連の国々ですね。ロシアや東欧はもともとクラシック音楽強い地域ですし、アジアでは中国、韓国、そして日本が強いですよね。この辺りは東アジア的勤勉さとデリケートさとかが関連しているのでしょうか。そう言えばこれら国々関連、バレエも強いです。
リサ・バティアシヴィリ、アリーナ・イブラギモヴァ、バイバ・スクリデ、どれもよさそうですね。特にバイバ・スクリデのシュルホフ、ヒンデミット、ヤルナッハ、エルトマンの無伴奏、ほどんど知らないので(笑)、(どんなだろうな)と芸術的好奇心が沸き上がります。
アリーナ・イブラギモヴァは9月に日本公演があったのですね。バイバ・スクリデもよく来日するとのこと。多くはないけれど、日本には熱心にクラシック音楽を聴く人たちがいるのだなあという印象です。
ユジャ・ワンの「Piazzolla: Le grand tango」、視聴させていただきました。カッコいいです。画面に譜面が映るのもおもしろい趣向ですね。

・・・

本当に今、日本は「これおいくら」勢力が圧倒的増殖中の社会になってきてますね。なにごとも「まずその質」が最優先で問われるべきですが、その最重要点がまったくお留守になってきています。
ヤフコメ欄などに日本の最も悪い要素がヴィヴィッドに出てくるものだと思いますが、たとえばある映画の主要キャストとともに生尺発表が行われたという記事に対し、「このキャストじゃ集客はたいして望めない」とか、まず書く連中が多いんです。そういうこと書いて、自分はちょっとした通であるとか、そんな妄想を抱いているのだと思います。要するに価格や「数」は「バ×」(乱暴な言葉、失礼いたします 笑)も分かりますが、芸術的な対象の「質」に関しては、「芸術的感性、鑑賞力、知識」などを総動員せねばなりませんから、総動員もなにも、これら要素を何一つ持ってない人たちは数字を挙げるしかないですよね。その低劣さを知るべきですが、知ってたら恥ずかしげもなくの発言はしないわけですし(笑)。

>プリンターインクを買わせたいからです。

ですよね。怒りがふつふつと湧いてきます。
それはさて置き、わたしもノートへ書く行為を大切にしておりまして、もちろんlequiche様ほど(きっと)緻密な書き様ではないと思いますが、常にノートや手帳を持ち歩き、できるだけ「書く」ことにしています。ただやはりPCで書く機会が多いので、漢字はすぐ出て来なくなってます。もっと手書きの時間、増やさねばです。
                          RUKO            

                                      


by 末尾ルコ(アルベール) (2022-09-25 08:38) 

つむじかぜ

ユジャ・ワンのデビュー時は今でも覚えています。難曲をにこやかに余裕で弾きこなす技術力と音楽性に衝撃を受け、中国音楽界の英才教育の奥深さにも感服しました。
by つむじかぜ (2022-09-26 04:03) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

ご指摘のように旧・ソ連の国々の出身者ですが、
バティアシヴィリはジョージア、スクリデはラトヴィアで、
いずれも現・ロシアとは一線を画している国です。
イブラギモヴァはロシア出身ですが
イギリスに住んでいてそこを中心に活動していますから
ロシアとの関係性は薄いように思います。
有名なミュージシャンは国籍というものの認識が
あまり感じられないような気がします。

スクリデの近作の現代曲演奏では
シュルホフのソナタの一部がYouTubeにあります。
Baiba Skride/Schulhoff: Violin Sonata, WV 83
I. Allegro con fuoco
https://www.youtube.com/watch?v=dDkRM24FJ6U

でも、このソナタよりもリー・ブラッドショウの
スクリデの演奏のほうが中身としては濃いように感じます。
ブラッドショウはオーストラリアの作曲家です。
この演奏はメディアにはなっていませんし、
再生回数もごく少ないですが美しい作品です。
下記リンクはヴァイオリンとチェロの二重奏です。
Baiba Skride & Harriet Krijgh/
Lee Bradshaw:The Ties That Bind
Concerto for Two: I. Overtura passacaglia
https://www.youtube.com/watch?v=2iTuNlnm8Qw

ピアソラはこのようにガッチリとした楽譜がありますし、
タンゴというよりもクラシック作品になりつつあります。
ただそうは言いながらもタンゴの特有なリズムがないと
つまらない演奏になってしまいますが
カプソンのアプローチは濃密でまさにピアソラです。

芸術はどうしても金額で換算されますが
それはそのようにビジネスとして成立しているからです。
売れないものは価値がないという基準が
現在の資本主義の根本にあるからに違いありません。
しかし金が至上のものになってしまうと
何かが置き忘れられてしまうわけで、
その結果がオリンピックの惨状となっています。

手書きしていないと漢字が書けなくなってしまいます。
現在のコンピューター文化の中では
書けなくても構わないのかもしれませんが、
さらにいえば書き文字の汚い人が昨今は多いですね。
by lequiche (2022-09-28 05:25) 

lequiche

>> つむじかぜ様

デビューからご存知なのですか。それはすごいです。
ピアニストのテクニックは世界的にどんどん上がっているので
すごい人は後から後から出てきますが、
問題はその音楽性ですね。
単純なタイプライター・ピアニストでは生き残れません。
by lequiche (2022-09-28 05:29)