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スタッド・ドゥ・フランスのミレーヌ・ファルメール [音楽]

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Mylène Farmer

レコードショップでテイラー・スウィフトのLPが何種類かあって、どれか1枚と自分で縛りを設定してみた。選択したのはもちろん《Midnights》ではなくて、なぜなら《Midnights》はジャケット・デザインが何種類もあるからで、結果選んだのは《Reputation》。なんでまたそんなヘンなのを、というご意見もあると思うのですが、これ、モノクロで面白いと思うので。実はもうすぐ《Speak Now》のテイラーズ・ヴァージョンが出るはずなのだが、ジャケット・デザインはオリジナルとは異なるらしい (6月7日現在、インフォメーションがあるのはユニバーサルミュージックのみである)。

それで《Reputation》といえばあの〈Look What You Made Me Do〉で、そのPVの最初のキモチ悪い部分はマイケルって感じもするのだが、墓地のショットから連想するのは私の場合、ファルメールなのだ。
ミレーヌ・ファルメールのジャケットで一番気色悪いのはたぶん《Point de suture》で、人形製作は三浦悦子である。人形そのものが気色悪いのではなくて、手術用具というコンセプトがちょっとねぇと思うのだがすべてはファルメールゆえの確信犯である。アナログ盤が欲しいと思っていたのだが買い損なってしまった。

ファルメールのYouTubeサイトには《Nevermore 2023》の動画が、ほんのちょっとだけ切り刻まれて公開されているが、スタッド・ドゥ・フランスにおける2009年のライヴも切り売りされていて、この頃のファルメールはしなやかで確信に満ちているように見える。
スタッド・ドゥ・フランスはサッカー・ファンのかたならご存知かと思うが、サン=ドニにあるスタジアムで収容人数は8万人である。かつてのベルシーよりこちらのほうが広いので使用しているようだが、デヴィッド・ギルモアのグダニスクだって5万人だったのに8万人っていうのはコンサート会場としてはどうなの? と思うわけで。

コンサート全体の動画もあるが2時間以上の長さなので、とりあえず一番盛り上がっている〈Désenchantée〉の部分をリンクしておく。終わったかと思うとコール・アンド・レスポンスで延々と続く、もはやオキマリの (というかマンネリな) ノリなのだが、早い話がミレーヌ・ファルメールってフランスのユーミンみたいなものかもしれないのでもはや何でも許されてしまうのだ。
このときの衣裳デザインはジャン・ポール・ゴルチエである。

それと2019年の、スティングと〈Stolen car〉を歌っているライヴ映像。会場は同様にスタッド・ドゥ・フランスである。
最後に最新のNevermore 2023の数十秒の動画〈À tout jamais〉を。

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Mylène Farmer/Point de Suture


Taylor Swift/Reputation (Universal Music)
(但し、これはCDです)
レピュテーション (ジャパン・スペシャル・エディション)(DVD付)




Mylène Farmer/Désenchantée
(Stade de France, live 2009)
https://www.youtube.com/watch?v=r1Le-dAocI8

Mylène Farmer/Stolen car
(feat. Sting, live 2019)
https://www.youtube.com/watch?v=S5qNoEvtt0s

Mylène Farmer/À tout jamais
(Nevermore 2023, live)
https://www.youtube.com/watch?v=HnFG38yQ62U
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コメント 6

末尾ルコ(アルベール)

ミレーヌ・ファルメール、61さいなのですね。デカダンなイメージが強いですが、これだけのコンディションを保っているというのは余程普段節制やトレーニングを欠かさないのかなと想像します。驚きのコンディションです。若いファンも多いですね。
「ファルメール」という名は女優のフランシス・ファーマーから取ったのだということですが、彼女の過酷に過ぎる人生から多くのインスピレーションを受けたのでしょうか。ファルメールの作品からは映画からの影響も多く感じます。
それともちろんエドガー・アラン・ポウ、そして彼が描き続けた最上のエロスとタナトスの薫りも濃厚なのですが、「Allan」という曲はボードレールが訳したポウの作品の一部が使われているのですね。ボードレールのポウ翻訳は世界文学史上の大事件の一つだと思いますが、ますますミレーヌ・ファルメール、深く聴き続けたいなと思いました。

ハービー・ハンコックがモーリス・ラヴェル…ラヴェルをまたじっくり深く聴きたくなります。ドビュッシーもですが、あの時期のフランスの音楽には新しい時代を感じさせる予感のようなものを感じます。
ある程度年齢を重ねなければ真価が分からないものって、音楽に限らずほとんどの芸術作品に共通してますよね。映画にしても10代20代の頃に(かったるいなあ~)と感じていた作品が、今観るとすごくおもしろいことしょっちゅうです。

日本のWikiは終わってますよね。重要な俳優やミュージシャンなどの情報はごく僅かで、例えばアイドルグループの個々のメンバーの情報はたんまりと書きこまれている。
今回の役所広司カンヌ戴冠がどれだけ凄いことかも、報道量を含め日本人のほとんどにまるで理解されてない。その半面、毎日毎日「誰がヒット打った」とか「三振とった」とか、そうした益体もない情報が溢れ返る。あるいは藤井聡太が何を食べたかだとか。
lequiche様、時々「愚民化」という言葉をお使いになるけれど、役所広司に関する貧弱極まりない報道ぶりを見ているだけでも、(まさに愚民化大成功)という実感が沸いてきます。そう言えば上原ひろみがグラミー賞獲ったとかいうことも、ほとんど報道されてませんよね。この文化芸術に対する蒙昧ぶり、うんざりを通り越してます。

by 末尾ルコ(アルベール) (2023-06-07 10:10) 

うりくま

球体関節人形がホラー系雑誌の表紙を飾ることはありますが、
ジャケットに三浦悦子さんの作品!それもフランスのユーミン
ですか・・?!海外での評価、歌詞の内容等も気になります。
硬質な手術用具は確かにアレですが、もっとズタボロで痛々し
い人形が多い三浦さんの作品にしてはかなり綺麗なほうかも。
どんな曲を歌っている方なのか、これから聞いてみます~♬。
by うりくま (2023-06-09 23:58) 

kome

人形のジャケット、なんとなく既視感というか古書ドリスさんみたい。
関係ないことで恐縮ですが、こちらブログうかがうといつも思うのですが、「雨降り~」のタイトルがいいですね。
「雨と休日」というCDショップさんのことをいつも思い出します。
by kome (2023-06-10 20:40) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

身体の動きからは衰えを感じさせませんし、
むしろ若い頃のほうがデカダンでメランコリックな印象が強く、
今のほうが元気な感じがします。
ただ、歌詞の内容と衣裳とが乖離しているところが
松任谷由実に似ています。(笑)
〈L’Horloge〉の歌詞はボードレールそのままですが、
特に初期におけるボードレールからの影響は顕著です。
ひとつにはプロデューサーであるローラン・ブトナからの
提起もあるのだと思います。
フランシス・ファーマーについて私は知りませんが
何らかの強い意味合いがあるのでしょう。
アルバムタイトルにAnamorphoséeとか
InnamoramentoとかDésobéissanceなど、
どうしてそういうタイトルにするかなとも思うのですが
それもスタイルです。

ファルメールに影響を受けたひとりに山咲千里がいますが、
そのステージングについて松任谷由実も参考にしていたそうですし、
浜崎あゆみにもあきらかにその影響があります。
日本ではフランスものはウケないですし、
そもそもファルメールは知られていませんので
日本でのライヴの実現は不可能だと思います。

ハービー・ハンコックにしてもチック・コリアとか
他の多くのピアニストにしてもそうですが
その基本的コードワークはビル・エヴァンスにあります。
ジャズにおけるビル・エヴァンスの革新性はすごいです。
その元はというとやはりフランス印象派なのですが。

wikiは参考のためのひとつのツールとして考えればよいのですし、
私も使えるべきところは使っています。
ニュースの内容が偏向してしまうのは
メディアというものの性格上仕方がないものですし、
そこから自分自身が何を汲み取るかです。
by lequiche (2023-06-11 01:02) 

lequiche

>> うりくま様

ルコさんへのリプライにも書きましたが
歌詞が悲しかったり報われなかったりする内容なのに
衣裳が派手でセクシャルだったりするところが
ユーミンとファルメールは似ています。(^^)
もっとも演歌歌手の歌詞と衣裳の乖離も同じようなものですが。

アルバム《Point de suture》を最初に見たときは
さすがに 「えっ?」 と驚いてしまいました。
日本語にすれば 「縫合」 です。
もっともアルバム写真にファルメールが人形を使うのは
これが2回目で、2ndアルバム《Ainsi soit je...》では
腹話術人形との2ショットを使っています。
https://www.amazon.co.jp/dp/B019GRGP9C/
この2ndアルバムがたぶん最高傑作です。

ところで山尾悠子の『迷宮遊覧飛行』を買ったとき、
その隣に並べてあった中川多理『薔薇色の脚』も
購入しました。もちろん通常版ですが。
特装版は買えませんよね〜。(^^;)
by lequiche (2023-06-11 01:56) 

lequiche

>> kome 様

「古書ドリス」 「雨と休日」 両店とも知りませんでした。
古書ドリス←こういう店ってあるんですね。
とても買えませんがブックマークしておきました。
New Arrivalの中では唯一、『夜のみだらな鳥』は持っています。
日夏訳のワイルドは欲しいですね。買えませんけど。
雨と休日←一度行ってみたいです。
よい情報ありがとうございました。

タイトルをお褒めいただきありがとうございます。
タイトルはカーペンターズの〈Rainy Days and Mondays〉と
ウディ・アレンの〈Radio Days〉の合体なんです……
というのはウソで、これは後付けの理由なんですが。
by lequiche (2023-06-11 02:18)