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ジャズ・バルティカ2005のトマス・スタンコ [音楽]

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トマス・スタンコのことはこれまでにも何回か書いているが、最近、2004年のミュンヘンでのライヴ《September Night》がリリースされたので、それに近い動画をYouTubeで探してみた。同じドイツのキール近郊にて毎夏に行われているジャズ・フェスティヴァル 「ジャズ・バルティカ」 における2005年のライヴを見つけた。

この時期のスタンコのバックをつとめるのはマルチン・ボシレフスキ・トリオである。ピアノがボシレフスキ、ベース:スラヴォミル・クルキエヴィッツ、そしてドラムスがミハウ・ミスキエヴィッツである。
動画は1時間ほどの、おそらくその日のライブ全曲をカヴァーしているが、ほんのさわりだけでもこの日のスタンコの演奏を聴いてみて欲しい。
スタンコは非常にハイテンションで、どの曲も淀みがなく、これほどの演奏はそんなに聴くことができないのではないかと思う。またピアノのボシレフスキもスタンコに拮抗するテンションで、グループ全体のトーンはややフリーキーなスウィング感に満ちている。

演奏曲目はほとんどがスタンコのオリジナルだと思えるが、〈Euforila〉は資料によってはボボ・ステンソンとの共作のような表示がある。また〈Kattorna〉はクシシュトフ・コメダの作品である。
そして〈Euforila〉はアルバム《Chameleon》(1989) や《Leosia》(1997) に、〈Celina〉は《Matka Joanna》(1995) に、〈Kattorna〉は《Lontano》(2006) に、〈Rising Ballad〉(Ballada powstańcza) は《Wolność w sierpniu》(2006) に収録されている。

最初に私がこのブログに書いたスタンコのインプレッションは次の通りである。

 私がスタンコを初めて聴いたのは、FMで流れていたリュブリャナ・ジャ
 ズ・フェスティヴァルのライヴだったと思う。聴いただけで異質な空間
 に引っ張り込まれるような暗い輝きの音。いかにもECMらしい音といえ
 ばそれまでなのだが、たとえばヤン・ガルバレクなどと同様、音だけで
 誰だかわかる、とても特徴的な音色を持ったプレイヤーである。
 (→2012年02月13日ブログ参照)

また、スタンコの重要な作品としてポーランドの詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカへの追悼として作られたアルバム《Wisława》をあげなければならない (→2013年08月10日ブログ参照)。

ややかすれたような、あくまでもダークな音。だがこのジャズ・バルティカの演奏ではハイノートを多用し、音色もやや明るく、ジャズ・スタンダードと形容すべきインプロヴィゼーションを展開しているが、それでいてピンと張った彼特有のブロウから外れることはない。


Tomasz Stańko/September Night (Universal Music)
セプテンバー・ナイト (SHM-CD)




Tomasz Stańko Quartet/
JazzBaltica, Salzau, Germany, 2005.07.03
https://www.youtube.com/watch?v=Bzb-A3Xb_0U

Tomasz Stańko (Trompete)
Marcin Wasilewski (Piano)
Slawomir Kurkiewicz (Bass)
Michal Miskiewicz (Schlagzeug)

以下の時間表示はアバウトなものである。
00:00 Little Thing
11:17 Rising Ballad
18:40 Euforila
29:24 Piece
35;52 Kattorna
42:19 Witkacy
50:47 Celina
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末尾ルコ(アルベール)

Tomasz Stańko Quartet/
JazzBaltica, Salzau, Germany, 2005.07.03、堪能させていただきました。素晴らしいですね。快感です。かがように澄んだトランペットの音。カルテット全体の演奏もビシッと芯が通った緊張感がありながら、実に情熱的で気持ちが盛り上がります。ポーランドというのがまたいいです。トマス・スタンコ、今後もじゃんじゃん聴いていきます。

〉いっぱいいっぱいで書いたのが
「平易にわかりやすいレヴェルだった」

間違いなくこちらでしょうね。そもそも作中の「バレエの天才」という設定が気持ち悪いし、「作者が作ったバレエを文章で描写」というのも興味が湧きません。この筆者、クラシック音楽に関しての知識などはどうだったのでしょうか。

柴田淳の「異邦人」、聴きました。口と鼻の中で巧みに発声している部分がおもしろいと思いました。ひとつの楽曲にどうアプローチするかをどう決めるかという過程も興味津々です。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-06-23 09:38) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

ポーランドは数々の迫害や侵略にさらされてきた国ですが、
そうした理不尽な環境のなかでジャズを広めた人が
クシシュトフ・コメダです。
コメダはポランスキーの映画音楽にかかわったことでも有名です。
スタンコがコメダの曲を取り上げるのは
そうした歴史に対する畏敬の念があるからだと思います。

ずっと以前の記事で私は元ピンク・フロイドのギタリスト、
デヴィッド・ギルモアのポーランド公演のことを書きましたが、
ギルモアもまたポーランドの苦難の歴史に対するシンパシィで
このコンサートを企画したのだと思います。
ポーランドのグダニスク造船所で行われた2006年のライヴで
ギルモアのライヴのなかでの最高傑作です。

最後の光芒 — デヴィッド・ギルモア Live in Gdańsk
https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2012-02-09

YouTubeの動画はこれです。
全編はすごく長いのですが、冒頭の
〈Castellorizon〉から〈On an Island〉の部分だけでも
ギルモアのギターが十分堪能できると思います。

David Gilmour - Live in Gdańsk (FULL CONCERT)
https://www.youtube.com/watch?v=XkQp5L4h1Vg

     *

評判になった音楽の作品を読んでいないのでわかりませんが、
でも、どんなジャンルかにかかわらず、
ある程度の知識の披瀝でウケてしまう場合もあるので
ターゲットとする読者をどのへんに設定するのかが
上手いのかもしれません。

柴田淳の発声は確かにそうです。
あの声が独特の魅力なのかもしれません。

柴田淳/22才の別れ
https://www.youtube.com/watch?v=XWHFSyVdipI
by lequiche (2024-06-27 02:19)