モントリオール・ジャズ・フェスティヴァルのミシェル・ルグラン [音楽]
欲しいと思いながらも手に入れられなかったレコードやCDはかえって記憶に残っていたりするもので、シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグランもその1枚だ。銀色のジャケットが印象的だったが、今となっては状態の良いものは滅多にない。
ミシェル・ルグランといえば数々の映画音楽を作曲したことで識られるが、最も有名なのはもちろん《シェルブールの雨傘》(Jacques Demy/Les Parapluies de Cherbourg, sorti en 1964) である。いまさら書くことでもないがセリフがすべてメロディになっているという手法によるミュージカル映画の最高傑作であり、音楽を主体とした映画でこの作品を超えるものは存在しない (作品そのものについては過去に書いた→2016年01月03日ブログ)。
ルグランはジャズ・ピアニストとしても一流であるが、2001年のモントリオール国際ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ映像をYouTubeで観ることができる。フィル・ウッズとの双頭コンボであるが、メインはあきらかにルグランである。
フィル・ウッズでよく聴いていたのは《Worm Woods》(1958) というやや地味目な初期のアルバムで、同時期に録音されたジョージ・ウォーリントンの《The New York Scene》(1957) におけるドナルド・バードとの2管の爽快感も好きだった。つまりウッズの初期が私の嗜好に合っていたのかもしれない。
このモントリオール・フェスにおける演奏は、かなり体格が立派になったウッズのサックスもなかなか味があるが、ルグランのピアノを弾きながらの歌もあり、どれもが楽しい。メイン楽曲である〈シェルブールの雨傘〉はピアノトリオでの演奏だが、ピアノとアルコのベースでごくゆっくりと始まるのにもかかわらず、突如ハイテンションな急速調に変わり、ワルツになったりタンゴになったり、そのヴァリエーションはもはや曲芸ピアノ的で大ウケだが、それでいながらそこからほとばしる哀愁のような感触がたまらない。それは原曲がいかにすぐれているかの証左なのだと思う。
Michel Legrand & Phil Woods Quartet
July 1, 2001
22. Festival International de Jazz de Montreal,
Spectrum of Montreal, Montreal, Canada
Michel Legrand: piano, vocals
Phil Woods: alto sax
Éric Lagacé: bass
Ray Brinker: drums
Les Parapluies de Cherbourg
https://www.youtube.com/watch?v=_X4AYu5m2ko
What Are You Doing the Rest of Your Life?
https://www.youtube.com/watch?v=vMg_Jiu2iF8
Once Upon a Summertime
https://www.youtube.com/watch?v=mOPVoJYaCZI
Watch What Happens
https://www.youtube.com/watch?v=GnuJThWZuxM
You Must Believe in Spring
https://www.youtube.com/watch?v=E2T8fRxix2s
The Summer Knows
https://www.youtube.com/watch?v=LuV1o7ttPKY
The Windmills of Your Mind
https://www.youtube.com/watch?v=J3CwAx9wEoc
モントリオール・フェスの「シェルブール~」、たのしみました。いやホント、たのしい。リンクくださってる他の動画もジャンジャン視聴していきます。
ジャズプレイヤーとしてのミシェル・ルグランはほとんど意識したことなかったですが、最近ラジオのジャズ番組で取り上げられていて、(ああ、そうだったのか)と知り始めたばかりです。
それにしてもルグラン、あらためてチェックすると、映画音楽のキャリアだけでも凄いですね。「シェルブール~」は別格ですが、「女は女である」 「5時から7時までのクレオ」 「
エヴァの匂い」 「女と男のいる舗道 」「ロシュフォールの恋人たち」 「華麗なる賭け」 「太陽が知っている」 「ロバと王女」など、 何度でも観たい作品がズラリ。「ロバと王女」は最近観たのですが、フランスでは観客動員凄かったらしいです。いやあ、フランスって違うなあと。プリュノ・デュモン監督の「ジャネット」「ジャンヌ」という、シャルル・ペギーの作品をベースとした音楽映画があるんですが、なかなかの内容で、しかもフランスでの批評が驚くほどいいんです。やはりこのような国だからこそ、「シェルブールの雨傘」も生まれたのだなと。やはり文化芸術的にはいまだ凄い国です。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-09-22 18:31)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
ルグランのジャズ演奏で最も有名なのは
下記の盤ではないかと思います。
邦題では《ルグラン・ジャズ》と呼ばれているアルバムです。
再発盤ですがもちろんレコードで持っています。
Michel Legrand/Michel Legrand Meets Miles Davis
https://www.amazon.co.jp/dp/B01K24FJFO
ブログ本文に書いたシェリーズ・マン・ホールのライヴは
下記のアルバムです。
Michel Legrand/At Shelly’s Manne-Hole
https://www.amazon.co.jp/dp/B09NBGC7PC
ブログ本文の下部にリンクした2つ目の曲、
〈What Are You Doing the Rest of Your Life?〉
はルグランのピアノ弾き語りによる歌唱が聴けます。
すごく上手い歌ではないのですが、とても滋味があります。
そしてフィル・ウッズのアルトが泣かせます。
この曲はリチャード・ブルックス監督・脚本による映画
《The Happy Ending》(1969) のために
ルグランが書いた曲です。
作詞はアラン・バーグマンとマリリン・バーグマン、
オリジナルの歌唱はマイケル・ディーズとのことです。
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Happy_Ending
尚、allcinemaによると劇場未公開となっていますが、
日本では未公開だったのか、アメリカでも未公開だったのかは
よくわかりません。
https://www.allcinema.net/cinema/18197
プリュノ・デュモン監督というのはよく知りませんが
《L’humanité》でカンヌを獲った人ですね。
役者を使わなかった映画とのことですが、
ロベール・ブレッソンを思い出しました。
といってもブレッソンは《Quatre nuits d’un rêveur》しか
観たことがありませんが。
by lequiche (2024-09-23 01:02)