渡辺貞夫〈I’m Old Fashioned〉 [音楽]
常に日本のジャズシーンをリードしてきた渡辺貞夫は1933年生まれだから91歳だが、現役のサックス・プレイヤーである。メインストリームなジャズを得意とするが、ボサノヴァやフュージョン、アフリカ系の音楽にも理解があり、そのテリトリーは広い。
かつてFM東京 (現・Tokyofm) に《渡辺貞夫 マイ・ディア・ライフ》という番組があり、自己のグループでの演奏だけでなく、幾多のゲストを迎えてセッションを行うという今考えれば贅沢な放送であった (1972年から1989年までオンエアされていたとのこと)。気に入った回をエアチェックしていた記憶があるが、そのテープがどこにいってしまったのかわからないのが悲しい。
彼のメインストリームな演奏を取り上げるのならば、そのエポックとなるのは《Swing Journal Jazz Workshop 2: Dedicated to Charlie Parker》(1969) というチャーリー・パーカーをリスペクトしたアルバムであると思うが、1976年に《I’m Old Fashioned》というアルバムがあり、このほうがリラックスしていて、かつ、最盛期の演奏が聴けるという点で重要な録音のひとつである。サイドメンはハンク・ジョーンズ、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス、いわゆる The Great Jazz Trio である。
そして最初に手にいれたナベサダのレコードが、友人から譲ってもらったこの《I’m Old Fashioned》だった。青で統一されたジャケットがちょっとカッコイイ。中古盤だったり譲ってもらった盤のほうがかえって愛着があったりするのはよくあることなのかもしれないけれど、よく考えると不思議だ。
The Great Jazz Trio は実質的にはハンク・ジョーンズをリーダーとするバンドであり、何度もメンバーが変わっていて、YouTubeにはたとえばジョン・パティトゥッチとオマー・ハキムによる渡辺貞夫との〈I’m Old Fashioned〉があるが、おそらく2006年から2007年頃なので、さすがにハンク・ジョーンズが衰えていて、やや精彩を欠いている。
アルバム《I’m Old Fashioned》のタイトル曲である〈I’m Old Fashioned〉についていえば、クォリティの高いトラックはアルバムに収録されているオリジナルの演奏だと思うが、1991年にキリン・ザ・クラブというライヴ演奏があり、この日の〈I’m Old Fashioned〉がなかなか聴かせる。
メンバーはペリー・ヒューズのギター、ロニー・フォスターのオルガン、ハーヴィー・メイソンのドラムスという、ピアノレスでベースレスなグループなのだが、流れるように湧き出すナベサダのソロはオリジナルよりもより尖鋭で、ヒューズのギターソロも非常に構築的ですぐれている。
同日の録音として〈All The Things You Are〉もあるが、その当時のナベサダの記録として貴重である。
渡辺貞夫/アイム・オールド・ファッション
(ユニバーサルミュージック)
https://tower.jp/item/3764380
Sadao Watanabe/I’m Old Fashioned
Kirin the Club in 1991
,Perry Hughes(g), Ronny Foster(b), Harvey Mason(ds)
https://www.youtube.com/watch?v=RImZlu9Xfk8
Sadao Watanabe/All The Things You Are
https://www.youtube.com/watch?v=BddlgFut9p8
Sadao Watanabe/I’m Old Fashioned
Hank Jones(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)
album《I’m Old Fashioned》original, 1976
https://www.youtube.com/watch?v=imnaqlxHttE
エアチェック、わたしもしまくりでした。1972年から1989年はまだジャズは聴いてませんでしたので、渡辺貞夫の番組は知りませんでした。今だったら毎回聴くと思います。
渡辺貞夫は91歳なんですね。穐吉敏子はさらに上ですね。びっくりするほど若くして亡くなるジャズプレイヤーも多い中、二人とも頼もしい存在です。
リンクしてくださってる動画、たのしませていただきました。超一流のプレイヤーが提供してくれるリラックスした時間。ものすごく贅沢です。ふと思ったんですが、こうした曲に「All The Things You Are」とかタイトル付けられてますが、やはりこの曲そものに「All The Things You Are」が表現されているのでしょうか。歌詞がないだけに、このタイトルの言葉との関連性を感じ取り難いといいますか。
ジャズのお話関連になりますが、最近大江千里がニューオーリンズを訪ねる番組があったんです。それによると彼なりに真剣にジャズに取り組んでいるんだな感じました。思ったのジャズについてはどうお感じになりますか。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-09-29 19:56)
<渡辺貞夫 マイ・デイア・ライフ>・・とても懐かしいです。
でも土曜深夜0時からの番組だったため民放の<全米トップ40>
を聴いていたのであまり聴くことはありませんでした。
それで思い出したのがマイデイアライフ終了2時間後にスタートの
<スペース・フュージョン>でメチャクチャはまりました。
これ今でもコアなファンが少なくなくて伝説化された番組です。
(すいません、いつも論点が逸れて)
by NO14Ruggerman (2024-09-30 00:31)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
穐吉敏子は1929年12月生まれですから94歳です。
ジャズ・クラリネットの北村英治は同年4月生まれなので95歳。
ジャンルが違いますけど蓮實重彥は88歳。
どなたもお元気です。
〈I’m Old Fashioned〉も〈All The Things You Are〉も
どちらもジャズ・スタンダードであり、歌詞もついています。
前者は作詞:ジョニー・マーサー、作曲:ジェローム・カーン、
後者は作詞:オスカー・ハマースタインII、作曲:ジェローム・カーン
です。
ジョニー・マーサーの詞で有名なのは
ムーン・リヴァー、酒とバラの日々、降っても晴れても、など。
オスカー・ハマースタインIIの詞で有名なのは
リチャード・ロジャースの作曲による映画作品
《王様と私》や《サウンド・オブ・ミュージック》など。
ジェローム・カーンの有名曲は
煙が目にしみる、イエスタデイズなど。
アメリカ黄金時代の最も有名な作詞家、作曲家たちです。
ジャズ・ピアニストになってからの大江千里は
あまりよく知りませんが、歌手だった頃のピアノには
光るものがあったと思います。
CDもかなり持っています。
by lequiche (2024-09-30 02:03)
>> NO14Ruggerman 様
スペース・フュージョンという番組は知りませんでした。
検索したら、その番組のことを書いているブログがありました。
ご参照ください。
https://blog.goo.ne.jp/rokosnow/e/47853ce08dd086322cb72936600bc65a
当時は音楽番組もクォリティが高く、
今よりもずっと密度が濃かったように思います。
もう音楽というジャンルも衰退期なのでしょうか。
by lequiche (2024-09-30 02:03)
ナベサダさん、91才になられるのでやすか!
新しい時代のジャズをやられてたかたが、今はこのご年齢なのでやすね。
あくまで個人的な嗜好でやすが、ジャズは、あっしはもう少し昔のが好きでやす。
ラグタイムとかスウィングとか。
by ぼんぼちぼちぼち (2024-09-30 12:18)
>> ぼんぼちぼちぼち様
ジャズはブルースとかゴスペルとか、
もっと遡ればマーチングバンドがその源泉といえますが、
ベニー・グッドマンのようなスウィングジャズのブームを経て
ビ・バップという方法論が考え出されました。
チャーリー・パーカーというサックス奏者によってです。
ビ・パップはより拡散されてモダンジャズとも言われましたが
もはや普遍的な方法論になってしまったので
私は 「メインストリーム」 という表現をしています。
簡単にいってしまえば和声とスケールに特徴があります。
でも、ラグタイムもスウィングも
ボサノヴァ寄りなのもフュージョンやロック寄りなのも含めて
広過ぎて漠然としていますが、どれもがジャズだとも言えます。
「好きなのはこういうジャンルのジャズ」 と公言したほうが
わかりやすいのかもしれませんね。(^^)
by lequiche (2024-10-01 03:02)