1984年の音楽アルバム [音楽]

Prince
ブルース・スプリングスティーンの《Born in the U.S.A.》が発売から40周年で、そのことにかこつけてなのか、タワーレコードの宣伝誌『bounce 490号』では1984年の音楽アルバムという記事がリストになって掲載されていた。52から1までナンバリングされて逆順に並べてある。どういう基準で順位が付けられたのかは明記されていないが、おそらくこれが総合的な順位ということだろう。
1984年という年から、もう40年も経ってしまっているのだ、ということと、この年にこんなにも多くのアルバムがリリースされていたのだということに驚くし、深い感慨もある。
簡単に見てみると、第1位から6位までは、
1) プリンス・アンド・ザ・レヴォリューション《Purple Rain》
2) ワム!《Make It Big》
3) ブルース・スプリングスティーン《Born in the U.S.A.》
4) マドンナ《Like a Virgin》
5) ヴァン・ヘイレン《1984》
6) U2《The Unforgettable Fire》
これが全部1984年のアルバムというのがすごい。すご過ぎる。《Purple Rain》の欄のコメントには 「彼の最高傑作が本作なのかどうかは人によるとしても、このミネアポリスの奇才が時代にもっとも愛された瞬間の記録がここに刻まれていることに異論はないだろう」 とある。「ミネアポリスの奇才」 という形容が泣かせる。
マドンナの《Like a Virgin》は彼女の2nd、そしてヴァン・ヘイレン《1984》は6thアルバムで、当時はちょっとおバカなアルバムと思っていたのだが、今聴くとその音の明るさやキレに心が躍るのは単なる郷愁ではないのだと思う。かつて音楽はこういうものだったが、40年経つことによってその何かが失われてしまって、それはずっと失われたままのような気がする。
52位までのアルバムを順不同で私の嗜好だけでピックアップすると、
シャーデー《Diamond LIfe》
フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド《Welcome to the Pleasuredome》
トーキング・ヘッズ《Stop Making Sence》
ボン・ジョヴィ《Bon Jovi》
デヴィッド・ボウイ《Tonight》
ハワード・ジョーンズ《Human’s Lib》
ジュリアン・レノン《Valotte》
など。
シャーデーの《Diamond LIfe》、そしてボン・ジョヴィの《Bon Jovi》はどちらも1stアルバム。デヴィッド・ボウイの《Tonight》は《Let’s Dance》の次のアルバムで〈Blue Jean〉が収録曲。フランキーとかハワード・ジョーンズは、うわ、懐かしいと思ってしまうが、トーキング・ヘッズの記念盤はジャケットがダメよね。
ドメスティックなアルバムは、
竹内まりや《Variety》
大瀧詠一《Each Time》
矢野顕子《オーエス オーエス》
など。
竹内まりやの《Variety》は全ての作詞作曲が竹内まりやである最初のアルバムで、〈プラスティック・ラヴ〉が収録曲であることでも知られるが〈マージービートで唄わせて〉がベストソングだと私は思う。大瀧詠一の《Each Time》はスタジオ・オリジナル作品としては最後のアルバム。矢野顕子の《オーエス オーエス》は〈おもちゃのチャチャチャ〉〈ラーメンたべたい〉を収録。ジャケ写が美しい。レコードはオリジナルで3枚とも持っていたと記憶してるがさだかではない。
といいながら、さっきNHKTVで〈Creepy Nuts THE LIVE〉を観た。冒頭の〈ビリケン〉が圧倒的でCreepy Nutsの世界に没入。まだCreepy Nuts結成以前の、見た目が胡乱でキタナい頃の (失礼な!) R-指定を最初に観たときからこれはスゴイと思ったのだけれど、あっという間にここまで来たのが驚きですが、でも当然かなとも思います。
Prince and the Revolution/Purple Rain
(ワーナーミュージック・ジャパン)

Wham!/Make It Big (SMJ)

Bruce Springsteen/Born in the U.S.A. (SMJ)

Madonna/Like a Virgin (ワーナーミュージック・ジャパン)

Van Halen/1984 (ワーナーミュージック・ジャパン)

U2/Unforgettable Fire (Island)

Prince/Purple Rain (Official Video)
https://www.youtube.com/watch?v=TvnYmWpD_T8
Julian Lennon/Valotte
Toppop 1985.02.11
https://www.youtube.com/watch?v=W9JRtVCA1Mc
Van Halen/Jump (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=SwYN7mTi6HM
*
Creepy Nuts/ビリケン、Bling Bang Bang Born、二度寝
JAPANJAM 2024
https://www.youtube.com/watch?v=t5nAPdgpI_g
2024-10-06 01:00
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コメント(16)
おもしろいですね。1984年という時代の空気も蘇ってきますね。「ミネアポリスの奇才」という形容は初めて目にしました。わたしにとってミネアポリスは長くAWA世界チャンピオン(プロレス)だったバーン・ガニアの本拠地。NWAがセントルイスで、WWWFがNYのマジソン・スクエア・ガーデンなど、プロレスも観ていたら米国の地名を覚えたりと、意外な役に立ったりしたものです。当時プリンスについては自分の中でどう評価していいかわからなかったです。スプリングスティーンは別格でしたね。マドンナは日本人にとって一番わかりやすかったと思います。もちろんその本質ではなく、表層的な部分ですが。ワムは高橋幸宏がすごく気に入っていて、ピーター・バラカンは「聴いちゃられないんですよ」と言ってました。ワムはいわば、「狩人なんですよ」とすごいたとえもしてましたね(笑)。
挙げてくださっている中では、シャーデーとボウイをよく聴いてました。シャーデーの登場は絶大なインパクトでした。「Let’s Dance」で「堕落さした」とか言う向きもあったボウイですが、「Blue Jean」とかカッコいいですよね。デヴィッド・バーンは、「アメリカン・ユートピア」も大好評で素晴らしいですよね。
Creepy Nuts は録画してるので、じっくり観てみます。
******
Basso continuo、いい言葉です。意識と無意識の境界、そしてさらにその向こうについても心に留めておきたい。lequiche様がよくお話になる、書店で「読むべき」本と出会う瞬間も近い感覚なのかなと思います。
YOASOBI、アリーナツアーの「アイドル」なんですが、ちょっとこれ凄まじいですね。楽曲の凄さはもちろんのこと、ステージパフォーマーとしてもとてつもないレベルに達しています。挑発的なまでに圧倒的です。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-10-06 03:07)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
プリンスへの評価は肯定的なのと否定的なのと
極端に別れていたと覚えています。
渋谷陽一は、確かボロボロに否定していたと思います。
ついでにいえば聖飢魔IIも当初は否定していました。
彼の意見に影響されたわけではありませんが、
私も《Purple Rain》ははっきりと把握できませんでした。
ですので最初に買ったCDは
次作の《Around the World in a Day》です。
といってもリアルタイムではないので。
リアルタイムになったのはもっと後です。
bounceの解説によれば、
スプリングスティーンの《Born in the U.S.A.》は
その前のアルバム《Nebraska》と密接な関係性があります。
《Nebraska》は弾き語りしたデモ音源ほとんどそのままで作り、
バンドサウンドの欲しい曲は新たに録音して
それが《Born in the U.S.A.》になったとのことです。
私は《The River》と《Nebraska》が双子だと思っていたのですが
違っていました。
ワム!=狩人ですか。(笑)
まぁ比喩として合っているような気もします。
プロレスのことはよく知りませんが、
この前、鈴木おさむのFM放送の番組に古舘伊知郎が出演していて
彼は先輩のプロレス・アナウンサーとは違う方向性で、
ということであのようなアナウンス・スタイルになったのだそうです。
顰蹙も随分あったようですが自分のカラーを出さなければ、
と考えた末での結果とのこと。
シャーデーは今聴いても十分に聴けるクオリティです。
《Let’s Dance》は商業的かもしれませんが堕落してるとは思えません。
これも十分なクオリティですし、ボウイは常にクオリティが高いです。
Creepy Nutsを録画されましたか。
上記にリンクしたJAPANJAMよりも良いパフォーマンスでした。
NHKのスタジオという最高の環境ですから当然といえばそうですが。
YOASOBIも同様で、その安定感が見事です。
今までにCDとしてリリースしていたTHE BOOK1〜3が、
もうすぐアナログ盤になってリリースされます。
最近はアナログで出すというのがもう常態化していますね。
by lequiche (2024-10-06 04:57)
毎回、「HOT VOICE」 をご愛読いたたきありがとうございます。
また、今回の 「H.V.映画情報係」(7/22掲載)には
さっそくご応募いただき、ありがとうございました。
抽選の結果、あなたが当選されましたので、賞品の
バウスシアター招待券をお贈りいたします。
朝日新聞東京本社広告局 昭和60年8月5日
渋谷タワレコで買ったプリンスのLP《Purple Rain》が初回盤のパープルではなく、黒だったのは残念でした。>﹏<。
トーキング・ヘッズの映画 「Stop Making Sence」 は吉祥寺バウスシアターで観ました。
『サイボーグ009 トリビュート』(河出書房新社 2024)という 「ナイン・ストーリーズ」 を読んでいたら、ジェット(002)が 「レーガン大統領のそっくりさんとチェルネンコ書記長のそっくりさんが、高価なスーツを着たまま泥レスリングする」 MVをTVで見る場面が出て来ました。
FGTH(Frankie Goes To Hollywood)の〈Two Tribes〉(1984)じゃん。
1984年といえば村上春樹の『1Q84』ではなく、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』でしょうか。
2024年のノーベル文学賞は解説を書いたトマス・ピンチョンに受賞して欲しいけれど、
意外にも金井美恵子だったりして?
by sknys (2024-10-06 12:21)
芸能に疎い私でも、この6位までの人たちは
わかります(#^^#)
by Rchoose19 (2024-10-06 20:59)
>> sknys 様
バウスシアター招待券……昭和60年8月5日 ん?
《Purple Rain》初回盤は残念でした。
ですが、これはあくまで私の感覚ですが、
レコードはカラーヴィニルより黒のほうが音が良い、
と思います。
泥レスリング←笑
でも 「ナイン・ストーリーズ」 っていうんですか。
なるほど。
ハクスリィではなくオーウェルですね。
ピンチョン、どうでしょうか?
個人的な好みではジョイス・キャロル・オーツに
獲ってもらいたいです。
金井美恵子は、最近のエッセイなど読んでいると
少し文章構造が……どうなんでしょう。
『アカシア騎士団』の頃はよかったんですけど。
by lequiche (2024-10-06 22:08)
>> Rchoose19 様
そうですか〜。そうですよね〜。
今日のアクセス数はいつもよりかなり多いです。
私のイチオシは本文にリンクしたジュリアン・レノンです。
ルックスもお父さんにそっくりですし。
お聴きになってみてください。
by lequiche (2024-10-06 22:08)
1984年はもう40年も前なのですね。全てに勢い、元気が
あった気がします。私もかつては「やわ」「おバカっぽい」と
敬遠していた類が改めて聞くと妙に良くて、「80年代の洋楽」
的懐メロ企画CDを買ってしまいました。昔は良かったとたそが
れていたら、NHKでCreepy Nutsが・・!これ、すごく良かっ
たです。一緒に飛び跳ねたら楽しい!カラオケで歌うのは無理
だけど、今の音楽も捨てたもんじゃないなと思いました(笑)。
by うりくま (2024-10-06 23:24)
>> うりくま様
洋楽懐メロCDですか。良いですね。
昭和歌謡とか演歌の懐メロとかのCDも、よく広告を見かけますが
そういうのの懐かしさとはちょっと違うような気がします。
それは単に世代的な違いだけではないと思います。
当時のほうが一般的な洋楽の音楽常識が高かったというか——
つまりマイケル・ジャクソンとかマドンナとか
誰でも知っていたわけです。でも今はそういう常識が無いです。
Creepy Nutsのライヴ、ご覧になったのですか!
すごかったですね。
偶然観たので録画していなかったのが悔やまれます。
カラオケで歌うのは普通は無理と思ってしまいがちですが、
でも、たぶん歌う人はいるでしょう。
かつての暴走Pの〈初音ミクの消失〉だって
カラオケに入っていますし、歌う人は存在しますので。
これです。
↓
cosMo@暴走P/初音ミクの消失
https://www.youtube.com/watch?v=VWVtIg5cdDU
虹色侍 ずま/『初音ミクの消失』を 死に物狂いで歌ってみた。
https://www.youtube.com/watch?v=Ko6AGlyDeqY
by lequiche (2024-10-07 02:02)
>再訪失礼します。80年代は自分的には最もポップス
&ロック(&歌謡曲も)を聴いていた時代だったので、
つい懐かしくなってしまうのですが、今でも評価されて
いると聞くと若者にヨイショされているようなこそばゆ
さ?があり・・・客観的に分析し頂けるのは嬉しいです。
カラオケの件は「自分は舌が回らないので無理」という
意味でしたが、仰る通り現在は「難易度の高いものに挑
戦してみた」というのが流行っていて逆にバズり易いで
すね。相変わらず言葉足らずでスミマセン(m--m)!
by うりくま (2024-10-07 08:25)
補足(言葉足らずでした)
映画 「Stop Making Sense」(1984)が日本で初公開されたのは1985年。
書留の消印は 「日本橋 60.8.6 12-18」。
「サイボーグ009」(1964)は60周年。
もし河出文庫編集部員だったなら、「ゼロゼロ・ナイン・ストーリーズ」 という表題にしましたね^^;
老ピュンマ(008)を主人公にした第8話「海はどこにでも」は白眉です。
2023年ノーベル文学賞者を的中させたというユーチューバーMが
日本人で受賞に一番近い作家は金井美恵子だと力説していました。
年功序列ならば金井さんですが、
安部公房のように長年候補に挙がっていても、亡くなっちゃうと受賞出来ないんですよ。
例外は43歳で受賞、46歳で早逝したカミュでしょうか?
by sknys (2024-10-07 20:33)
こんばんは。
ここに出ている曲は、ほとんど知っていたので、よかったと思いました。
私は、シャーデー《Diamond LIfe》が好きなのですが、友人や知り合いに、私の雰囲気がシャーデーにピッタリと言われました。
スローな感じが、自分にあってるのでしょう。
by coco030705 (2024-10-07 22:29)
>> うりくま様
いわゆるポピュラー音楽の場合、
ある曲を知っているかどうかは世代論的に捉えることができます。
それは近年になるほど顕著で細分化されつつあります。
でも1980年代〜1990年代あたりだと
世代を越えて誰でも知っているような曲が
多かったように思います。
今、昔の曲がリヴァイヴァルされるのは
単純にその曲が良いからということももちろんありますが、
サンプリングとかリミックスによって引用され、
遡ってその原曲は何? という過程を経てヒットしていることもあります。
カラオケの件は言葉足らずなんてことありません。
よく了解できています。
普通に考えたら早口言葉の連続ですから無理ですよね〜。
ヴォーカロイドの場合も、あれは機械ですから
幾らでも速度を速くすることは可能です。
絶対人間に歌えないまでに持っていくこともできるはずです。
でも、だから何? とも言えますよね。
それは一種のギミックであって音楽の本質ではないですから。
by lequiche (2024-10-09 02:34)
>> sknys 様
なるほど。ご当選おめでとうございました。(^^)
009という名付け方はジェームズ・ボンドの007から
派生したものですね。
0011ナポレオン・ソロというドラマもあったみたいですし。
そのようなコードネームが9人いるという発想が
面白いです。
ノーベル文学賞というのはその選択基準が抽象的ですし
時の運があると思います。
本来なら川端康成や大江健三郎ではなく、
三島由紀夫や谷崎潤一郎だったはずです。
三島がノーベル賞を獲っていれば
その後の彼の人生は変わっていたはずだと思うのですが。
by lequiche (2024-10-09 02:36)
>> coco030705 様
シャーデー、良いですね。
雰囲気がピッタリ、それはすごい褒め言葉です。
彼女の1984年のライヴ録音である《Live In Rotterdam》が
最近リリースされたばかりです。
私はまだ聴いていませんが。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGLJP5HX/ref
by lequiche (2024-10-09 02:36)
lequicheさんへ
「シャディーに雰囲気がピッタリ」は誉め言葉なんですね!
いつもなんでもすることが遅いと言われているので、曲のゆっくりさかげんが私の性格やすることの遅さと似ているという意味かと思ってました。
シャーディーみたいに素敵だったらいいのですが……。
猫には好かれるのです。私の動きが猫にとっては安心できるのかも。
by coco030705 (2024-10-09 21:34)
>> coco030705 様
シャーデーの特徴は作品のクォリティの高さです。
ですから寡作ですがそれは緻密に作っているからであり、
クォリティの低いものを量産しない、ということらしいです。
1985年のライヴ、カッコイイです。
Sade/The Sweetest Taboo
https://www.youtube.com/watch?v=T2u2eqerRks
猫は速い動きの人間を警戒しますね。
予測がつかないからだと思います。
by lequiche (2024-10-11 01:56)