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《マイルス・イン・フランス 1963&1964》 [音楽]

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マイルス・デイヴィスの《マイルス・イン・フランス 1963&1964》が発売された。ブートレグ・シリーズのvol.8である。今回の内容は1963年7月26日〜28日のアンティーブ・ジャズ・フェスティヴァル (Festival mondial du jazz, Antibes/Juan-les pins) と1964年10月1日のサル・プレイエルにおけるパリ・ジャズ・フェスティヴァル (Paris jazz festival, salle pleyel) で収録されたライヴ演奏である。

ブートレグのvol.7《That’s What Happened 1982−1985》は私見では 「まぁね……」 とつい呟いてしまう内容だったが (私はギターの入ったマイルス・バンドが嫌いなので)、今回のvol.8はアコースティク・マイルスであり、この時期こそマイルスの最盛期と捉えるのが当然だと考える。
録音はモノラルであるが、音質はオフィシャルで出されたものであるから問題ない。

アンティーブのパーソネルはハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスのリズム・セクションでサックスがジョージ・コールマンであるが、翌年のサル・プレイエルではウェイン・ショーターに代わっている。
アンティーブの7月27日はアルバム《Miles Davis in Europe》の音源なのであるが、26日と28日はオフィシャルとしては初発売とのことである (JAZZDISCOのセッショングラフィによればJazz Music Yesterdayというレーベルでブートが出ていたらしい)。
サル・プレイエルのライヴは完全に初発売であるが、前出のJAZZDISCOで確認するとHeart Noteというレーベルでブートが出されていたことがわかる。

テナーがジョージ・コールマンからサム・リヴァースを経て、ショーターに代わってからの最初のライヴが1964年9月25日のベルリン・フィルハーモニーにおけるライヴ・アルバム《Miles in Berlin》であり、サル・プレイエルはその6日後の録音なのである。

マイルスのYouTubeチャンネルでは7月26日のアンティーブにおける〈So What〉と、サル・プレイエルの〈Autumn Leaves〉が公開されている。
〈Autumn Leaves〉はマイルス、ショーター共に尖っていて音数も多く緻密、おそろしいほどの緊張感で、数多い〈Autumn Leaves〉のなかでも出色の出来である。ベースソロの終わる頃にマイルスがテーマの片鱗を一瞬被せて来る数音が美しい (マイルスがライヴで 「枯葉」 のテーマをストレートに吹くことはほとんどない)。
〈So What〉はこの曲のライヴでの常としてオリジナルより圧倒的に速いが、ハンコックのソロが特に光る。ジョージ・コールマンもクォリティが高い。
本当はこれ、レコードで聴きたいんですが、う〜ん、値段が。


Miles Davis/Miles in France 1963&1964
(ソニーミュージックエンタテインメント)
Miles Davis マイルスデイビス / マイルス・イン・フランスーマイルス・デイビス・クインテット1963 / 64 ブートレグ・シリーズ Vol.8 【完全生産限定盤】(6CD) 【CD】





Miles Davis/Autumn Leaves
(Live at Salle pleyel, Paris Oct 1, 1964)
https://www.youtube.com/watch?v=VceamQwj8bo

Miles Davis/So What
(Live at Festival mondial du jazz Antibes, July 26, 1963)
https://www.youtube.com/watch?v=lzJ4ZTi7yoY
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末尾ルコ(アルベール)

リンクくださっているマイルス、聴かせていただきました。美しいです。どこまでもピンと張り詰めた美を感じます。これだけの音楽を聴くと、隅々の細胞まで悦び引き締まる気分になります。これだけのプレイヤーたち、出す音のひとつひとつが珠玉であり、それらが合わさって曲を奏でる。まさに至福の時間だと日曜の朝から感じ入りました。それとわたしの好みでは、後年の派手な服装のマイルスより、この頃の方が好きです。

******

以前にいただいたスマホについての話題です。


〉わからない言葉があるとすぐにスマートフォンで検索

これ、フランス人友人も言ってました。相手はニュージーランド人だったと思いますが、会話中におもむろに調べ始めた、「それ違うよ」とか言うそうなんです。腹立ちますよね。

〉羞恥がないのです。

〉延々と繰り返す世間話

〉白痴的製品であり、最後の汚点です。

力強いお言葉ばかりで勇気が沸いてきます。これらお考え、嬉しいなあ。もちろんわたしもスマホ使ってますが、結局(ここまでは使っている)(ここからは使われている=スマホの奴隷になっている)という境界に関し、まったく理解できてない、と言いますか、彼らに理解できるわけないのですが(笑)。
あと、わたしの感覚では、ジョブスのような人を英雄扱いする風潮はまったく受け入れられませんでした。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-11-10 18:08) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

このマイルスのブートレグ・シリーズは
ブート、つまり海賊盤として出されているものは
概して音質が悪かったりするので、
良い演奏内容の場合はオフィシャルで出し直してしまおう
という意図で始められた企画です。
結果として、こうして出してしまうとそれはブートではない
ということになるのでタイトルに矛盾があるのですが (^^)、

ウェイン・ショーターが入ってからのクインテット——
マイルス、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、
ロン・カーター、トニー・ウィリアムスの5人による演奏は
マイルスの組んだグループの中で最上質の作品を作った
と私は思います。
ショーターの作曲への依存度が強過ぎるのでショーターのバンドだ、
と言っていた評論家もいましたが全然音楽がわかっていません。
en.wikiでもショーターはprincipal composerとは書かれていますが
音楽の主導権はあくまでマイルスにありますし、
日本語のwikiにはこのグループを 「黄金クインテット」 と呼んだ
と書かれていますがそれはあくまで日本での呼称です。

いわゆるエレクトリック・マイルスになってから
マイルスはロックとかファンクに接近して
ファッションもそれに沿ったものになりますが、
それは時代の趨勢で仕方がなかったのだと思います。
ただ私はエレクトリックになってからの
マイルス・バンドに電気ピアノをあまり良いとは思っていません。
チック・コリアでも電気ピアノの初期の頃の演奏は
アコースティクに較べてクォリティが下がっていると感じます。
ライヴ盤でピアノソロの部分になると私は飛ばしていました。
ソロがつまらないからです。
ではジョー・ザヴィヌルは、というと……
彼は基本的にフュージョンですから。

ジョブズは一度、Appleをクビになっています。
それでNeXTを作ったのですがこれにも失敗し、
結局、Appleに出戻って、それでiPhoneを作ったのですが、
私はNeXTの思想は面白かったと憶えています。
でも出戻り以降のジョブズには否定的です。
彼は創業の頃の夢を忘れてしまったのでしょう。
Appleのマークは昔、虹色でした。
それがグレー1色になってからのAppleは別の会社です。
昔のサポート電話の対応は素晴らしかったのですが、
今は電話をかける気になれません。
by lequiche (2024-11-11 01:29)