馬場康夫《波の数だけ抱きしめて》 [映画]

バブル期に製作されたホイチョイ・プロダクションズの三部作で最も心に残っているのは原田知世の2作品《私をスキーに連れてって》《彼女が水着にきがえたら》ではなく、3作目の《波の数だけ抱きしめて》であるのは、バブルが崩壊し始めた影が感じられるからなのかもしれないと最近思うようになった。
原田知世と違って中山美穂には影があり、映画のなかで松下由樹にシンパシィを感じていた私には中山美穂ってヤなやつに見えてしまったのかもしれない。そしてその暗さこそが、強い思い出となり印象となる資格を備えているのだともいえる。
ミニFM局という設定は、子どもの頃の秘密基地願望と同じで、そのすべてがガジェットであるのに他ならない。TASCAMのオープンリール、KENWOODのカーオーディオ、そしてDP-1200やM44-7などのすべてがもはや喪われたガジェットであるのだ (V-15は高過ぎるからM44-7という選択肢までが蘇る)。大写しになるVUメーターのショットにそのポリシーが感じられる。
ミッツのYouTubeですごくマニアックな中山美穂の解説に感化されて、せめてベスト盤を買わなければと思っていたのにそのままになってしまったのだけれど。
この映画は長い間、DVD化されなかった。それはAORの挿入曲が多かったので許諾を得るのがむずかしかったということを後で知ったが、何か他に原因があるのではないかとずっと疑っていたことを思い出す。
YouTubeで今、観ることのできる〈世界中の誰よりきっと〉のベストは田代まさしが司会をしている下記のリンク映像である。


中山美穂&WANDS/世界中の誰よりきっと (TV番組)
https://www.youtube.com/watch?v=Y_d3-0kxlPg
波の数だけ抱きしめて/Each Time You Pray
https://www.youtube.com/watch?v=mcTDONoWfw0
中山美穂/世界中の誰よりきっと (original)
https://www.youtube.com/watch?v=hV3fVD4Ue_w
松任谷由実/心ほどいて〜真冬のサーファー
https://www.youtube.com/watch?v=jZWpFSDsT6Y
星屑スキャットCHANNEL/
突然ですが中山美穂の全シングル曲を語ります
https://www.youtube.com/watch?v=sZ1hP3QCKbs
織田哲郎・解説/世界中の誰よりきっと
https://www.youtube.com/watch?v=Rr_mEg5swj4
中山美穂の死去はショッキングでした。人間いつどうなるかわかりませんね。ただわたし、ホイチョイ・プロダクションズの映画、観てなくて。今からでも観てみようかなあ。中山美穂の出演作でテレビの「ママはアイドル」を一番たのしみました。なにせ永瀬正敏がどっぷり民放地上波のテレビドラマへ出てたという、今となっては驚くべき作品ですから。
ミッツのYou Tube、見ました。もう凄く詳しくて、いつもながら驚くきます。中森明菜やジョージ・マイケルなど、ミッツが語るのを聴いたことでわたしの認識が変わった人たちもいます。そしてミッツ以上にJ popなどへの認識を変えてくださっているのがlequiche様で、たとえば少し前に「The Covers」に菊池桃子が出ていて、興味深く話を聴きました。わたし菊池桃子はデビュー時からその容姿に惹かれてレコードなんか買っちゃたりしたんです。ただその根本には(しょせんアイドルなんだから)という侮りまくりがあって、あの独特の歌唱も、(へったくそだなあ)と信じきってました。ましてロック転向の名目でラ・ムーなんぞ失笑でしかなかったのですが、当時のわたしがいかに先入観、偏見に囚われていたか呆れてしまいます。彼女に対してもlequiche様が認識を変えてくださいました。菊池桃子の言うにはおの歌唱は「強い声」でいくか、「囁くような声」でいくか検討した上で後者にしたのだとか。そして林哲司は彼女に、「今のファンが大人になってもあの頃の選択は間違いじゃなかったと思えるような歌を作ろう」的な話をしたのだとか。先入観や偏見、ダメですね、本当に。そして「丁寧に聴く」ことですね。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-12-15 18:25)
私は、中山美穂さんのファンではないけど歌は好きでカラオケでも歌ったりしますよ(^_^;)
しかし、50代で風呂の事故で亡くなるとは不運だよね。
まぁ、私等も気を付けないとね(;^ω^)
by 英ちゃん (2024-12-16 00:41)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
人間、死んでしまったらおしまいです。
そう思ってしまいました。
ですから、ふと思い出したグラス・ルーツの歌ではないですが
「今日を生きよう」 なのです。
グラス・ルーツ/今日を生きよう
https://www.youtube.com/watch?v=64y1hrl40Gk
ホイチョイ・プロダクションズは『見栄講座』という大ヒット本を出し、
それでネームヴァリューをあげて映画を撮ったのですが、
表面的には軽薄で当時の流行に乗っているようにみえて
実はそうでもないのです (ここが重要です)。
ただ、当時は『見栄講座』という本は
シャレで書かれているノウハウ本なのに、書かれた内容を真に受けて、
それを実行したりする読者もいたようです。
昔、プロレスの反則技に対して真剣に怒り過ぎて
ショックで死んでしまったご老人とかいましたけれど、
それと同じです。
上記本文にYouTubeリンクをひとつ増やしたのですが、
《波の数だけ抱きしめて》の架空のFM局ブース内の
カットばかりで編集されていて、
オーディオ・マニアとか音楽マニアには、たぶん
映し出される機材の数々がたまらないシーンなのですが、
この感覚は中学校の放送部室が憧れだったのに似ています。
これです。
中山美穂/世界中の誰よりきっと (original)
https://www.youtube.com/watch?v=hV3fVD4Ue_w
林哲司は日本の最も重要な作編曲家のひとりです。
その人がなぜ菊池桃子を特に選んでいたかということから
菊池桃子の重要性がわかるはずなのです。
でもわからない人にはわからない、それはしかたがないのです。
ただ私はJ-popにはあまり詳しくないので
嗜好も偏っていますし、知らないことのほうが多いです。
J-popに関してはミッツもすごいですが、クリス松村も詳しいですね。
by lequiche (2024-12-16 00:59)
>> 英ちゃん様
そうですね。ルコさんにも書きましたが
死んでしまったらおしまい、これはシンプルな真実です。
無理しないように気をつけましょう!
by lequiche (2024-12-16 01:00)
「何のために生きているのかって、死ぬ時じゃないと分からないか‥‥‥」
中山 美穂
ミポリンが小説を書いていたとは知りませんでした。
アタシ(歌手・香音)と私(ミュージシャン)が 「天使」 になる夢物語。
「‥‥人は生まれてきてまず最初に泣きます」 という一節はSt. Vincentのアルバム《All Born Screaming》(Total Pleasure 2024)を想わせたりもしますが。
元夫のガイダンスがあったのかしら?
by sknys (2024-12-16 21:57)
>> sknys 様
アイドルの書く本というのは、エッセイとか作詞ならばともかく、
小説でしたら、本人が書いている可能性はほとんどゼロです。
それはしかたがないです。
だって本人は忙しくて文章なんか書いていられませんから。(^^)
by lequiche (2024-12-17 02:56)
いや、いや、『アタシと私』(幻冬舎 1997)は本人が書いていますよ^^
《今年のはじめ、約1カ月の休暇を頂きました。クリスマスのNYでの歌番組が休み前の最後の仕事だったので、そのまま一人でLAに入り、10日間ほどのんびり暮らし、その後、なにげなくワープロに向かった時でした。頼まれていたエッセイでも書くつもりが、自分のことを書くよりも、想像力を掻き立てて、映画のようなビジョンを文章にしているほうが楽しくなってきて、そのうちに、これはいつか私が映像化するためのシナリオにしようと思い、台本に近いものを書き始めたのです》中山 美穂 「あとがき」
by sknys (2024-12-17 12:41)
>> sknys 様
そうなんですか。
そうだとしたら貴重ですね。
by lequiche (2024-12-20 01:18)