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映画《ミステリと言う勿れ》 [映画]

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人気ドラマ《ミステリと言う勿れ》の2023年映画版が先日、地上波で放映されたが、その録画を観た。
まず、映画のオフィシャルページにあるキャッチは下記の通り。

天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整 [くのう・ととのう] (菅田将暉) は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路 [いぬどう・がろ] (永山瑛太) の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路 [かりあつまり・しおじ] (原菜乃華) と出会う。「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです」。そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助 [かりあつまり・りきのすけ] (町田啓太)、波々壁新音 [ははかべ・ねお] (萩原利久)、赤峰ゆら [あかみね・ゆら] (柴咲コウ) の4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴 [くるまざか・あさはる] (松下洸平) は、遺言書に書かれた 「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」 というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった…
次第に紐解かれていく遺産相続に隠された〈真実〉。
そしてそこには世代を超えて受け継がれる一族の〈闇と秘密〉があった———。

宏大な狩集家に集められた関係者の中で遺産相続の奇妙な指示の遺言書が公開されるとか、家の苗字が狩集 [かりあつまり] とか、そのおどろおどろしさが横溝正史で楽しめる。相続候補者のなかの一人しか相続できない、そして過去にも相続候補者同士の殺し合いがあったという来歴が語られるのも横溝テイスト。反目し合う候補者4人の登場のさせかたがなかなかスリリング。だが、最初は反目しあっていた4人が次第に協力するようになって話が推移して行き、古いアルバムをヒントとして久能整の推理が変わってしまう。

古い、まさに伝説としか思えない理不尽な話がずっと守られ続けられてきたということになるのだが、もうこのへんは、ちょっと話としては無理があり過ぎだろうと思うのだけれど、ミステリなんてそんなものさということですべて許されてしまうわけで、古話の猟奇さとUSBメモリーという新旧の対比が面白いのかもしれない。でも紫でアメジストというのはちょっと安易かも。

話はずれるのだが、前回記事のB’zが 「他のバンドが既成曲から借用するとリスペクトと言われるのに、自分たちがやるとパクリだと批難されるのは何で? 俺たちそんなバカじゃない」 みたいなことを言っているのをどこかで読んだが、まさにそれと同じで、このドラマのTV版でも、あ、ここはエラリー・クイーンだとか、過去のミステリからの借用はよくあるパターンなので、ともかく全てをオリジナリティだけで固めるというのは音楽でも小説でも脚本でももはや無理なのだ。だから横溝テイスト、おおいに結構です。

ともかくこのドラマは菅田将暉の語り口の魅力で持っているようなものなので、今回はストーリーとは外れたフェミニズム的な発言に関しては面白かったが、推理そのものには、おおっというほどの明晰な推理展開がやや乏しかったように思う。でも下着を洗わせないとか、そのへんのキャラ設定は楽しいのだけれど。
狩集汐路役の原菜乃華は、冒頭、険のある少女を熱演。父親役の滝藤賢一が (ドラマの現時点では死んでいるのだけれど) 数少ないまともな人に見える好演。
角野卓造と段田安則とか、焼物の窯元に木場勝己など、脇まで万遍なくもったいないようなキャスティングだが、もう少し知名度が低い人を混ぜたほうがおどろおどろしさは増すような気もします。
King Gnuの主題歌はこのドラマに使われるのには少し違和感があるように感じられるのだけれど、でも曲が素晴らしいので、結果としてこのドラマの識別記号になっているようにも思える。


King Gnu/硝子窓
https://www.youtube.com/watch?v=DAzN019hKhc
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コメント 14

hagemaizo

キャスティングアイデアに同意します。
好きな役者さんが並んでいますが、lequiche さんのおっしゃる通りだと思いました。
by hagemaizo (2025-01-08 12:16) 

末尾ルコ(アルベール)

小栗虫太郎はわたし新年に(笑)何作か久々に読むつもりなんですが、「黒死館殺人事件」以外もおもしろい作品多いでしょうか。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2025-01-08 14:31) 

末尾ルコ(アルベール)

菅田将暉はこの役を気に入っているようですね。わたしテレビ版観始めて、でも小日向文世が出てる回でやたらと台詞で状況説明するシーンがあって、そこで観るのストップしちゃいました。でもNHK「ワタシだけの革命史 菅田将暉」がいい番組でますます菅田将暉好きになったので、映画版も含めあらためて観てみようかな。King Gnuは「カメレオン」も大好きなんです。
B’zはどうなんでしょうね。音楽、文学、映画、美術・・・芸術分野には必ず先人の影響というものがあるし、オマージュや引用も日常茶飯である。B’z はセールス含め突出した存在なので言われるのかもしれませんね。世の中突出した存在の足を引っ張りたがる人多いですからね。

******
ところで小栗虫太郎はわたし新年に(笑)何作か久々に読むつもりなんですが、「黒死館殺人事件」以外もおもしろい作品多いでしょうか。
それと、澁澤龍彦の訳は親交の深かった三島由紀夫はたのしみにしていたようですが、後年中沢新一らもサドの訳を「ヘン」だっ思ってたようですね。あれはわざとやってたんでしょうか。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2025-01-08 14:34) 

末尾ルコ(アルベール)

最初のコメントはミスです(笑)。失礼いたしました。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2025-01-08 14:49) 

lequiche

>> hagemaizo 様

ご同意ありがとうございます。
豪華キャストは確かに楽しいんですけどね。(^^)/
by lequiche (2025-01-08 20:50) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

小日向文世の回はほとんど病室の中のシーンですからね。
推理物というのは探偵が鼻持ちならなかったり、
持って回ったりという性格設定がほとんどです。
コロンボでも古畑任三郎でも。
ムダとも思える言葉を重ねていくことによって、
どこかで犯人が破綻する機会を狙っている場合もあります。
ひとことの失言で状況がガラッと変わってしまう……
そこに言葉の駆け引きがあります。
ポアロもファイロ・ヴァンスもフェル博士も皆、そうです。
《ミステリと言う勿れ》もその傾向ですから、
それを面白いと思うか、しんどいと感じてしまうかによって
好き嫌いが分かれるのではないかと思います。

ロックorポップスは一時期、おしゃれな雰囲気が良くて
パワーでごりごり押してくるのはダサい、と言われたことがありました。
日本でいえば渋谷系などがもてはやされた時代です。
そういうときは矢沢永吉やB’zはダサかったわけです。
でもそれは単純に音楽の傾向の問題であって、
皆が同じ服を着ていたら面白くないんだと思います。
きちんとしたスーツばかりでなくダメージジーンズや、
さらにはコスプレやヘビメタな衣装もあってそれぞれです。
音楽は楽しみなのであって、祭りの成分も含んでいます。
この前の紅白でそれを如実に示したのがB’zです。

小栗虫太郎は本質的にカルトですから、
夢野久作や久生十蘭と違ってそんなに面白くないです。
「黒死館殺人事件」 以外だとデビュー作の 「完全犯罪」 とか
「人外魔境」 シリーズのような傾向の違う作品もありますが、
「黒死館…」 のテイストだったら 「聖アレキセイ寺院の惨劇」 とか。
でもヴァン・ダインよりもずっとしんどいはずです。(笑)

澁澤訳は多分にわざとぎこちない訳の場合もありますね。
なぜならサドは現代文学ではないですから。
齋藤磯雄訳のリラダンなんかもそうですし、
谷崎訳の源氏物語なんかもそうです。
それだと読みにくいですから新訳を出す、というのが
今の情勢でしょうね。
by lequiche (2025-01-08 20:55) 

Rchoose19

おはようございます。
菅田将暉さんって、見るたびに違う人に見えます^^;
『鬼ちゃん』ですよね?
今年もよろしくお願いいたします<(_ _)>

by Rchoose19 (2025-01-09 07:28) 

sana

ドラマ、面白かったです。横溝テイストな世界にととのう君紛れ込む、でOKだと思います。
彼の淡々としていて的をつく発言は面白いし、見所でもあります。探偵がひと癖ある、蘊蓄垂れなのも、そう言えば伝統ですね~(笑)
フェミニズム発言は、ストーリーから外れてましたね。もう少し、関連があってもよさそうに思いましたが、時代遅れな環境の一面でしょうか。
…そんなことする?っていう話なので~確かに、見たことのない俳優さんが力演したら、日本のどこかには…?という雰囲気が出たかもですね。
見慣れた人ばかりだと、作り物というかお祭りぽくて、怖くはないので楽ですけど(笑)
by sana (2025-01-09 20:52) 

英ちゃん

菅田将暉君のこの髪型はどうなんだ?って感じだよね(^_^;)
昔の笑福亭鶴瓶を思い出しちゃうよ(;^ω^)
by 英ちゃん (2025-01-10 02:28) 

lequiche

>> Rchoose19 様

「見るたびに違う人に見えます」 というのは
俳優にとって最もうれしい褒め言葉です。
変幻自在に役を演じ分けているということですからね〜。
こちらこそ今年もよろしくお願い致します。
by lequiche (2025-01-11 01:00) 

lequiche

>> sana 様

家族が集まる冒頭のシーンがすでに横溝ですよね。
探偵役がしつこいのは杉下右京でも古畑任三郎でも同じです。
そんななか、江戸川コナンは、ややスマートさがありますね。

フェミニズム発言はちょっと取って付けた感じはありましたが
今の世相をあらわそうということだと思います。
角野卓造と段田安則は終盤になって実は重要な役だったのですが、
この2人だと怖さがないので、どうなの? ってことです。
でもキャスティングされたら誰もが出演したいドラマでしょう。

横溝正史のことですが、上のコメントで末尾ルコさんが書かれている
小栗虫太郎はカルトな推理小説作家として有名ですが、
彼は横溝正史が急病で書けなかったとき、
横溝のピンチヒッターとしてデビューした人です。
私は小栗のほうが昔の人だと思っていたのですが、逆でした。
意外な歴史を見つけるのは楽しいです。
by lequiche (2025-01-11 01:01) 

lequiche

>> 英ちゃん様

《ミステリと言う勿れ》は田村由美のマンガが原作です。
髪型は原作がそういう設定ですので。
これです。
https://flowers.shogakukan.co.jp/work/300/
by lequiche (2025-01-11 01:01) 

coco030705

こんばんは。
この作品、偶然観ました。気持ち悪い所があったので、観るのをやめようかと思いましたが、やめられなくて、最後まで観ました。
やはり主演の菅田将暉が冴えてましたね。うまいですね。なんとなく、のほほーんとしているようで、実は鋭いというのが魅力があります。他に、若い俳優さん達が結構がんばってましたね。
ストーリーも面白かったです。横溝テイストを彷彿とさせますね。原作が漫画なのですか!図書館で借りて読んでみます。
by coco030705 (2025-01-12 22:34) 

lequiche

>> coco030705 様

ご覧になりましたか。
そう、確かに気持ち悪い部分はありますね。
映画のサイトを見るとキャストの紹介 (人物紹介図) のなかに
松嶋菜々子がいないんですよ。
まぁ、ここに入れてあったらネタバレですからね。

菅田将暉は原作の味も出していますが原作以上です。
すごいですね。なんといっても菅田将暉ですから。
TVドラマの分も全部録画してあります。
原作のマンガ、是非読んでみてください。
by lequiche (2025-01-20 02:47)