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ユジャ・ワンのパリ・コンサート2025 [音楽]

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Yuja Wang (2025.01.12)

ユジャ・ワンのパリにおける今年のコンサートの様子がYouTubeに公開されている。
2025年01月12日、ホールはGrande salle Pierre Boulez, Philharmonie de Parisである。このフィラルモニ・ドゥ・パリはパリ19区のシテ・ドゥ・ラ・ミュジークにあるホールで2015年に開館したが、名称にピエール・ブーレーズと冠されているだけあって、とんでもない造形の外観である。ここを本拠地とするオケはパリ管弦楽団、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、レ・ザール・フロリサン、イル・ドゥ・フランス国立管弦楽団、パリ室内管弦楽団とのことである。

当日のプログラムはフィラルモニ・ドゥ・パリのサイトに拠れば

Ricardo Lorenz/Todo Terreno
Piotr Ilitch Tchaïkovski/Concerto pour piano n°1
Gonzalo Grau/Odisea — Concerto pour cuatro et orchestre
Maurice Ravel/Boléro

という曲目で、オケはグスタボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル交響楽団。そしてソロイストはユジャ・ワンとホルヘ・グレムである。グレムはゴンサロ・グラウの《Odisea》という作品の演奏者だが、クアトロとはラテンアメリカのギターに似た4弦の楽器とのこと。私は寡聞にしてよく知らない。
映像はオフィシャルではないのでふらふらするし、正面よりやや右寄り上方の位置から撮られているのだが、この角度からのユジャの腕の動きは新鮮で、彼女の特徴的な腕の使い方がよくわかる。

チャイコフスキーのコンチェルトは一般的なリスナーの感覚からすると、初心者向きで手垢の付いた曲みたいな印象をつい持ってしまいがちなのだが、ユジャの弾くこのチャイコはちょっと違うように聞こえる。繰り返し聴いてよく知っている冒頭はいつも通りなのだが、次第に様相が変化して行く。どこが、と問われるとうまく表現できないのだが、通俗に堕する部分が無い。次々にあらわれる局面が今までのこの曲の記憶と違う容貌にみえてしまうのだ。映像が曲の途中で切れてしまっているのが残念である。

この日のアンコールはアルトゥロ・マルケス (Arturo Márquez, 1950−) の代表曲〈Danzón no.2〉(ダンソン・ヌメロ・ドス) で、ドゥダメルの得意曲でもあるが、それをピアノ編曲されたのを弾いているようだ。ドゥダメルがタブレットの譜めくりをしているのが微笑ましい。

オマケとして2024年11月03日に同じフィラルモニ・ドゥ・パリでユジャとヴィキングル・オラフソン (Víkingur Ólafsson, 1984−) のデュオ・コンサートの映像があったのでリンクしておく。これもおそらくアンコールとして演奏された連弾である。
曲目はドヴォルザークの〈Slavonic dance op.72, no.2, e-moll〉である。


Yuja Wang/Tchaïkovski: Concerto pour piano n°1
12 janvier 2025 Philharmonie de Paris
https://www.youtube.com/watch?v=ZzTX5SKEEO

Yuja Wang/Márquez: Danzon no.2
12 janvier 2025 Philharmonie de Paris
https://www.youtube.com/watch?v=aGMcpn1jg64

Yuja Wang&Víkingur Ólafsson/
Dvorák: Slavonic dance op.72, no.2, e-moll
03 novembre 2024 Philharmonie de Paris
https://www.youtube.com/watch?v=KK3ppINj20I
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末尾ルコ(アルベール)

Grande salle Pierre Boulez, Philharmonie de Parisの写真見ました。おもしろいですね~。異物感がもの凄く、すぐに連想したのがサルバドーレ・ダリの「茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)」。子どもの頃から大好きな絵なんです。だからなんか嬉しい気分に(笑)。このような建築が街にあると、人間精神や美意識に大きな影響があるでしょうね。小栗虫太郎も喜びそうです(笑)。
ユジャ・ワンのパリ・コンサート2025、視聴させていただきました。ユジャ・ワンを聴き観ると、いつでも力が湧き心身に熱を感じます(発熱ではありません 笑)。

〉通俗に堕する部分が無い

この曲自体、通俗的要素が濃厚でしょうか。あるいは敢えて通俗的に弾くピアニストがかなり存在するのでしょうか。

ともあれ、「Danzón no.2」は初めて聴きましたが、とても気持ちよかったです。

******

お話飛びますが(笑)、NHK BS で放送した「ジョンとヨーコ 伝説的トークショーの5日間」を観ました。これは米国の昼の人気番組にジョンとヨーコが5日間も出演したもので、お昼のヴァラエティショウに二人が出演したインパクトは抜群だったようです。しかも二人がゲストを呼ぶという構成で、ラルフ・ネーダー、チャック・ベリー、ブラック・パンサーのボビー・シールとかが来て、いったいどういうこと?(笑)という展開。ジョン&ヨーコとチャック・ベリーがエプロン着けて料理を手伝うというシュールな場面も。とにかくジョン・レノンがいかに魅力的な人物かということも再認識しました。その後、アメリカ政府はジョンに国外退去命令を下してます。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2025-01-27 17:59) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

ブーレーズといえば今まではIRCAM/ポンピドゥー・センター
というイメージでしたが、今後はこのホールが
ブーレーズを象徴する建物になるのでしょう。

チャイコフスキー自体は決して通俗ではないのですが、
わかりやすくて繰り返し演奏される人口に膾炙した曲は
どうしても手垢がついて通俗風な印象を持たれてしまいがちです。
ドヴォルザークの〈新世界〉とか
サン=サーンスの〈序奏とロンド・カプリチオーソ〉とか
ショパンの〈子犬のワルツ〉など。

通俗的に弾くピアニストなど存在しません。
問題は聴く側にあります。

チャイコの1番の場合、
たとえば辻井伸行の弾いている動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=jWChk74PlvM

この弾き方は王道です。
決して通俗ではないですが典型的なチャイコフスキー解釈です。
しかしユジャの場合はこのような解釈ではありません。
彼女にとってはチャイコフスキーもプロコフィエフも
同じような解釈なのです。ある意味、新し過ぎるかもしれません。
ですからユジャの弾き方を嫌うリスナーもきっと存在します。

それと音の出し方に違いがあります。
ユジャのピアニズムは高位置から腕を下ろしている弾き方で
これはかなり腕の力/手首の強靱さがないと無理なのだそうです。
対して辻井の弾き方は、ごく正統派です。
ただ、彼は視覚障害なので、どうしても鍵盤を奥まで弾く
という傾向が見られるそうです。
以上は私のピアノの先生の見解です。

ジョンとヨーコ、そんな番組があったのですか!
ジョン・レノンはやはり素晴らしいですし、
常に悪口を言われているヨーコも私は好きです。
2020年に開催されたDOUBLE FANTASY/John & Yoko展にも
もちろん行きましたし、ぶ厚い展示会カタログも
10インチのアナログ盤も買いました。(笑)
by lequiche (2025-01-31 03:55)