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1997年のPEARL ― 田村直美 [音楽]

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田村直美の音楽活動の端緒はPEARLというバンドである。PEARLというバンド名はもちろんジャニス・ジョプリンのアルバム《PEARL》からであることは確かである。だが私はこの初期のPEARLは全く知らない。後から遡って聴いてみたが、あまりピンと来なかった。

私にとってのPEARLは1997年に結成されたPEARLで、これはそれまでのPEARLの継続ではなく、田村直美のワンマンバンドである。北島健二 (g.)、トニー・フランクリン (b.)、カーマイン・アピス (ds.) という構成によるアルバム《PEARL》を何がきっかけで見つけたのか、もはや記憶にない。
当時は安室奈美恵やglobeなどが最も流行していた頃で、つまり音楽産業が活況だった時代である。

アルバム《PEARL》の初回盤は透明なグリーンのプラケースで、デザインはメンバーとは関係のない子どもの写真である。このアルバムをほとんどエンドレスのようにして聴いていたときがあったことを突然思い出した。あまりに聴き過ぎるので念のため、もう1枚をフルイチで見つけて買っておいた。

田村直美は最初のPEARLが終わった後、ソロ活動となり、CLAMPのアニメ《魔法騎士レイアース》[マジックナイト・レイアース] のテーマ曲〈ゆずれない願い〉がヒットしたことでアニメ歌手のように言われたりもするが、それは違うのではないかと思う。レイアースはCCさくらに先行するCLAMPらしい作品で、設定としてはやや古いが、典型的なCLAMPらしい幻想が懐かしい。

アルバム《PEARL》は強くゆるぎない声、ロック・スピリットを併せ持ち、そして強力なバックの演奏により過去のPEARLで実現できなかった田村の理想的なサウンドを作り上げることができた作品のように思える。遡ってソロ・アルバムや初期PEARLも聴いてみたが、田村直美のベストはこの《PEARL》であると思っていい。

どうしてこんなメンバーを集めることができたのかわからないが、アニメ等での成功による発言力があったことは確かだろう。
北島健二は難波弘之のSENSE OF WONDERにゲスト出演したときに聴いたことがあるが、ジェフ・ベックの〈Cause We’ve Ended as Lovers〉のカヴァーがいまだに忘れられない (こっそりと書いてしまえば、ジェフ・ベックより上手かったと思う)。
トニー・フランクリンはブリティッシュ・ロックのベーシストで、ザ・ファームを経てブルー・マーダーという経歴を持つが、田村以外の日本人作品への参加も多い。
カーマイン・アピスはヴァニラ・ファッジのドラマーである。ヴァニラ・ファッジは〈You Keep Me Hangin’ On〉の入っている1stアルバム《Vanilla Fudge》が有名だが、私にとってのヴァニラ・ファッジの最高傑作は《Renaissance》(1968) で、このアルバムにもハマッていた時期がある。私の持っているのはドイツ盤のCDだが、その頃、アメリカ盤はなぜか手に入らなかった。一種のコンセプト・アルバムであるが、1曲目の〈The Sky Cried, When I Was a Boy〉で暗い妖気のようなものに引き込まれてしまい、それは最後のトラックのドノヴァンの曲〈Season of the Witch〉まで途切れない。

田村直美の声はそれ自身が快感であって、例によって私は歌詞はあまり聴いていない。ロックはそれでもいいのだ、と思うことにしている。


PEARL (ポリドール)
PEARL




PEARL/虚ろなリアル (live)
https://www.youtube.com/watch?v=GQHKpxpg2kg
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