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コペンハーゲン・リハーサル再び ― ビル・エヴァンス [音楽]

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Bill Evans and Monica Zetterlund

ひとりごとから始めてしまおう。といってもブログなんて所詮ひとりごとなのかもしれないのだけれど。

ビル・エヴァンスというジャズ・ピアニストはジャズ・ピアニストとしては最も有名ななかのひとりで、だから多くのアルバムがリリースされているのにもかかわらず、まだよくわからないことが多い。もっともジャズとかロックというものは、クラシックなどに較べるとそうしたセッショングラフィ的な追究はどうしても疎かにされがちである。
そもそもの疑問は、ビル・エヴァンスの〈Oslo Rehearsal Tape〉という1966年の動画をYouTubeで観て、そのことを以前のブログ記事に書いたことが元なのだが、他のことに関連して、今回それを観ようとしたらOslo Rehearsal Tapeという動画は無くて、Copenhagen Rehearsal Tapeに変わっていたのだ。URLが同じなのにタイトルのオスロがコペンハーゲンになっているということに気付くまでにかなり時間を要したのである。

一体これは何なの? と思ったのだが、そもそも1966年のオスロ・コンサートというのがあって、これは《Oslo Concerts》というタイトルのDVDでShanachieというレーベルからリリースされている映像であるらしいということがわかってきた。これはYouTubeの動画に付いているデータなどから読み取って、逆算してメディアを探したのである。
そもそも〈Oslo Rehearsal Tape〉とは、そのときのドラマー、アレックス・リールがプライヴェートで撮影していたリハーサル風景なので、それはオスロ・コンサートのためのリハーサルだったのである。

それでjazzdiscoのディスコグラフィを参照すると、1966年10月24日にエヴァンス、エディ・ゴメス、そしてリールのトリオによる演奏がコペンハーゲンで行われている。そしてその次は、10月28日のノルウェイである。〈Oslo Rehearsal Tape〉のdateは1966年10月25日となっている。

 Bill rehearsing for a concert with Monica Zetterlund swedish
 singer, and Alex Riel danish drummer in Copenhagen,
 Denmark.
 1966 Oct. 25

したがってこのリハーサルは、28日のオスロ・コンサートのためのリハーサルなのだととればオスロ・リハーサルであるし、リハーサルをしていた場所がコペンハーゲンだとしたら、コペンハーゲン・リハーサルであるという推論が成り立つ。10月24日にコペンハーゲンでライヴをして、その翌日、同じコペンハーゲンでリハーサルをしてからオスロに行ったということなのではないかと考えられる。
上記の英文のなかにあるようにモニカ・ゼタールンドとのリハーサルという記述もあるのだが、ゼタールンドとの動画も散見するし、それも一緒に、あるいは日時を変えて行われたのだと考えてよい。そのなかに日付までは記述されていないが、Recorded in Copenhagen Oct. 1966と表記があるからだ。
もちろん、オスロに前乗りしてリハーサルをしたということも有り得るのだが、以前のYouTubeのタイトルがコペンハーゲンだったので、たぶんコペンハーゲンなのではないかと思うのである。

ゼタールンドがタバコをふかしてエヴァンスのピアノを聴いていて、最初は軽く歌いながらだんだんと没入して行き、そしてアップテンポになっていきいきと変わっていくところ。それでもあくまでフルで歌っていないのだが、そのいかにもリハーサルだという雰囲気が伝わってきて心地よい。
コンサート自体の動画もあるが、リハーサルと本番の差というのが如実にあらわれていて、ゼタールンドのハレとケみたいな違いもわかって面白い。

コペンハーゲン・リハーサルの前後をjazzdiscoのリストからデータを拝借して時系列的に並べるとこのようになる。

1966.10.24.
radio broadcast, “Tivolis Koncertsal”, Copenhagen, Denmark
* Tempo Di Jazz (It) CDTJ 708 Bill Evans - Tempo Di Jazz

1966.10.25.
Copenhagen Rehearsal Tape

1966.10.28
television broadcast, Norway
* Vap (J) VPVR 60740 Autumn Leaves, Bill Evans Trio Live '66

実はこの記事は〈Nardis〉という曲について書き始めたのだが、それはヘルシンキの1969年あるいは1970年とされるフィンランドの作曲家、イルッカ・クーシストの自宅で行われた演奏の動画に端を発しているので、それなのに結果としてどんどん横道にそれてしまっている。そもそも、こんなメモ書きを出してしまってよいものなのだろうか。
ただここで気がついたことは、1966年と1970年という4年間にエヴァンスのアプローチは随分と変化していて、そのきっかけとなったのは1969年のジェレミー・スタイグとのセッションであると類推するのだが、まだ整理がついていないのであらためて続きを書きたいと思う。そして1961年のスタジオ・レコーディングによる《Explorations》に収録された〈Nardis〉が1980年にはどのように変化していったのか、ということも含めて。


Bill Evans/Explorations (Fantasy)
Explorations




Monica Zetterlund & Bill Evans/Waltz for Debby (ユニバーサル ミュージック)
ワルツ・フォー・デビー+6 [SHM-CD]




Bill Evans/Nardis
from《Explorations》(1961)
https://www.youtube.com/watch?v=yStCqteGiQU

Bill Evans Copenhagen Rehearsal Tape
https://www.youtube.com/watch?v=2mn0hZtVE04&t=1310s

Monica Zetterlund with Bill Evans Trio/Waltz for Debby
Recorded in Copenhagen Oct. 1966
https://www.youtube.com/watch?v=BoSpkQz4jXo

Monica Zetterlund with Bill Evans Trio/
Once Upon a Summertime
LIve 1966
https://www.youtube.com/watch?v=O2bXWWNBvFI
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