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今夜雨が止んだら — 土岐麻子 [音楽]

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土岐麻子 (Spincoasterより)

Twilight.
土岐麻子のニューアルバムからの〈ドア〉は、いままでと少し感触が違うような気がする。「ガラス窓の雨」 という歌詞から始まる。あまりカラフルでない。あまりソフィスティケートされていない。
いや、「あまり」 ではなくて 「決して」 という言葉を使うべきだった。言葉がシンプルで、その歌詞のひとつひとつが裸で、なぜか痛切で重い。
今夜雨が止んだら。雨は止むのだろうか。いつかは止むのだ、たぶん。

 あの部屋に続く道
 夢のなか現れて
 目が覚めるときとても虚しくなるよ

リフレインされるこの情景はきっと、いつか見た夢に似ている。
でもそれは本当に見た夢だったのか、それとも疑似記憶のなかの夢だったのか、その曖昧さにめまいがする。

〈NEON FISH〉も〈close to you〉も明るくリラックスした部屋なのに、曲が始まるとその世界に引き込まれる。表情のなかに硬質な美に対するたしかなアプローチがあることを感じる。

少し以前の楽しいライヴもリンクしておく。
2013年のToki Asako meets Schroeder-Headzのライヴ。渡辺シュンスケ作曲だが、始まりがなんとなく矢野顕子を連想させるメロディライン。
そして2015年の父・土岐英史とのライヴ。フリューゲルホーンは市原ひかりである。
残念ながら土岐英史氏は今年6月に逝去されました。ご冥福をお祈り申し上げます。


土岐麻子/Twilight (A.S.A.B)
Twilight(CD)




土岐麻子/ドア (PV)
https://www.youtube.com/watch?v=z47wLv8DSCc

土岐麻子/NEON FISH
TOKI ASAKO Harvest Moon LIVE 2021
https://www.youtube.com/watch?v=n3NyoRofmzE

土岐麻子/close to you
TOKI ASAKO Harvest Moon LIVE 2021
https://www.youtube.com/watch?v=rti1XWIl8r8


土岐麻子 meets Schroeder-Headz/杏仁ガール
live 2013.12.10.
https://www.youtube.com/watch?v=IY6ht2a7OH0

土岐英史・土岐麻子/Lady Traveier
神戸新開地音楽祭 2015.5.10.
土岐麻子 (vo)、土岐英史 (as)、市原ひかり (f-hr)
https://www.youtube.com/watch?v=dVa1JzLpdu
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Diggy-MO’〈PTOLEMY〉 [音楽]

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Diggy-MO’ (音楽ナタリーより)

Diggy-MO’ [ディギーモー] はSOUL’d OUTのメインMCだったが、2008年からソロとしても活動。2014年にSOUL’d OUTが解散してからは4枚のオリジナルアルバムとリミックス、ベスト各1枚のアルバムをリリースしている。

他の動画を探しているときに〈PTOLEMY〉[トレミー] のPVを見つけた。4thアルバム《BEWITCHED》に収録されているメインの曲である。SOUL’d OUTが解散してからDiggy-MO’をあまり熱心に追わなくなってしまっていたので初めて観たのだが、そのリズムのキレの俊敏さに、そしてメロディラインの繰り返すシンプルさに引き込まれて行く。わざとヴァリエーションを作らないような書法に禁欲的な美学がある。

ただそれよりもこのPVのロケ地は横浜市南区にある大原隧道だと思うのが、すぐに連想したのはglobeの〈Many Classic Moments〉のPVである。globeのアルバム《Lights》に収録されているリード・チューンであるが、globeの作品のなかで私が最も偏愛している曲である。そしてkeikoが延々と歩く隧道のPVが出口なし的なイメージを想起させて印象的だった。
もちろん〈Many Classic Moments〉と〈PTOLEMY〉のリズムパターンは違うが、ドッドッドッドッという一定のパターンで刻まれてゆくいわゆるトランスの呪術性は同じで、そこから醸し出される抒情も同じテイストを感じさせる。
それでいて〈PTOLEMY〉は最後に突然リズムが止まり、わざとかすかにノイジィで複雑なアルペジオのシークェンスパターンだけのエンディングが置かれている構成にDiggy-MO’の凄みを感じる。

そしてDiggy-MO’がglobeと大きく違うのは〈PTOLEMY〉のヒップホップ特有の歌詞の聞き取りにくさで、むしろ歌詞の発する音はインストゥルメンタルのひとつでありエフェクトであり、逆説的に言えば聞き取りにくくないといけないのかもしれないが、各単語間の伸び縮みのフレキシブルな動きが美しい。
歌詞の冒頭だけ書き写すと、

 hey, 吐露したりしてて オレらまだ角
 稲妻まとって spit i’m a trouble 野郎
 yellow fellow, mellow 仕立て上げろ
 タフじゃなきゃな bro. 生き抜いた fool who ?

かつて私はHALCARIの記事のときなど、SOUL’d OUTの代表曲のひとつである〈TOKYO通信〉のことを 「これ演歌だよね〜」 と言っても誰も賛同してくれなかったと書いたものだが、その考えかたは今もそんなに変わっていない (HALCALIの記事は→2015年06月27日ブログ)。
「演歌」 という表現はバカにしていたわけではもちろん無くて、むしろ東京という都市を先進的で優位性のある場所としてとらえるのでなく、ローカルな地域性のなかに並列されているアイコンのひとつに過ぎないと見ている硬質な視点がDiggy-MO’に存在するからである。

R-指定がTVなどに露出し始めた頃の小さな衝撃は今でも忘れられないが、そのR-指定はDiggy-MO’を聞いたのがラップへのきっかけになったとリスペクトしている。その部分がつながっただけで、やや満足だったと言わなければならない。


Diggy-MO’/BEWITCHED (SPACE SHOWER MUSIC)
BEWITCHED




Diggy-MO’/PTOLEMY (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=CLNCgzB0vJM

globe/Many Classic Moments
https://www.youtube.com/watch?v=APcOZvx82B0

SOUL’d OUT/TOKYO通信 ~Urbs Communication~
https://www.youtube.com/watch?v=SO51jyCs3PA

SOUL’d OUT/TOKYO通信 ~Urbs Communication~ (CDTV)
https://www.youtube.com/watch?v=juZkTXeuqfk
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林哲司 melody collection [音楽]

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林哲司 (towerrecordsサイトより)

昔住んでいた町の公営プールはもう随分と古くて、50mプールの横にある階段状の観客席はざらざらとした年代もののコンクリート造りで、でもとても料金が安かったから人気があった。だがそれも9月になった途端、急に人が減って、がらんとしたプールはかすかな寂寥感で満たされ、中旬頃には終わりになってしまう。その、夏が去って行くという季節の変わり目の悲しみのような空が好きだった。
プールには歌謡曲が流れていて、その頃よくかけられていた曲が竹内まりやの〈SEPTEMBER〉だった。他にどんな曲が流れていたのかは忘れてしまっているのに〈SEPTEMBER〉だけはよく覚えている。だからこの曲を聴くと、プールの水のにおいの記憶が蘇ってくる。

林哲司の〈melody collection〉というCDがソニーミュージック、VAP、ポニーキャニオンの3社からリリースされていて、林哲司の作品がそれぞれに収められている。スリーブは同じデザインで統一され、文字が色違いになっている。
林哲司は歌謡曲・J-popの作品をたくさん書いていて、竹内まりやの〈SEPTEMBER〉も彼の作曲である。

曲名をひろってみると、まずソニーミュージック盤では上田正樹/悲しい色やね、中森明菜/北ウイング、杏里/悲しみがとまらない、原田知世/天国にいちばん近い島、そしてもちろん竹内まりや/SEPTEMBERなど。
VAP盤では主に杉山清貴&オメガトライブと菊池桃子の諸作。
そしてポニーキャニオン盤では松原みき/真夜中のドアをメインとする彼女の諸作と岩崎良美の曲が比較的多く選曲されている。

松原みきの〈真夜中のドア〉が2020年に世界的に突如ブレイクし、有名曲になってしまったことはすでにニュースなどで繰り返し話題になっていたと思うが、この〈真夜中のドア〉と並んで海外でそしてネットで話題となりブレイクしたのが竹内まりやの〈プラスティック・ラヴ〉である。
日本のいわゆるシティ・ポップと形容される作品への注目度が高まり再評価ということになったのだとのことだが、それにしてもなぜこの曲が? という謎は残るけれど、音楽のヒットというのは概してそんなものなのだと思える。

林哲司という名前を意識したのは、実は倉橋ルイ子に書いた〈December 24〉という曲で、タイトル通りにクリスマス・イヴの歌なのだが悲しい歌である。
倉橋ルイ子には《バラードをカバンにつめて》という45rpmの12インチ盤レコードがあり、これは4人の編曲者が競作している計4枚のアルバムなのだが、残念ながら資料がなくてよくわからない。〈December 24〉は林哲司プロデュースのアルバム《Never Fall In Love》で、タイトル曲〈Never Fall In Love〉や〈December 24〉が収録されている。
それぞれのアルバムから数曲ずつチョイスした《バラードをカバンにつめて》というCDがあって、だから12インチ4枚分全部ではないのが残念なのだが、このCDのみ持っている。隠れた名盤である。オリジナルの編曲より、この12インチ《バラードをカバンにつめて》4枚の編曲のほうがゴージャスで聴き応えがあるように感じる。

クリスマスが近づくにつれてFMでは今年はなぜかテイラー・スウィフトの〈ラスト・クリスマス〉がよく流れていたように思う。でもこの曲の彼女はちょっと歌唱が強くて、オリジナルのワム!のほうがいいかな、と聴きながら思っていた。


林 哲司 melody collection 1977−2015 (ポニーキャニオン)
林 哲司 melody collection 1977-2015(特典なし)




林 哲司 melody collection 1979−2020 (ソニーミュージック)
https://tower.jp/item/5205599/
林 哲司 melody collection 1983−1994 (VAP)
https://tower.jp/item/5205785/
(ソニーミュージック盤とVAP盤はタワーレコード限定)

松原みき meets 林哲司 (ポニーキャニオン)
松原みき meets 林哲司(特典なし)




竹内まりや/SEPTEMBER
作詞:松本隆 作曲:林哲司
https://www.youtube.com/watch?v=xAYjkGhAUsI

松原みき/真夜中のドア~Stay With Me
作詞:三浦徳子 作曲:林哲司
https://www.youtube.com/watch?v=4Q4JRVW5BFE

倉橋ルイ子/December 24
作詞:竜真知子 作曲:林哲司
https://www.youtube.com/watch?v=EEKrnlQvb-A

竹内まりや/Plastic Love
作詞・作曲:竹内まりや
https://www.youtube.com/watch?v=ibd1_Td3ygw

Taylor Swift/Last Christmas
https://www.youtube.com/watch?v=20Y0dMGqlWk
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山尾悠子×川野芽生往復書簡 [本]

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『ねむらない樹』vol.7を読む。
特集は葛原妙子なのだが、第2特集が川野芽生であり、山尾悠子と川野芽生の往復書簡が掲載されていて、とっちらかった内容でわかる人にはわかるけれどわからない人にはわからない内容で、言葉があふれていて尻切れトンボで、とても面白い。

川野芽生の歌集『Lilith』は買ったことだけ書いておいたのだが (→2021年07月05日ブログ)、これ、簡単に書ける内容じゃないぞと思ってそのままにしておいたのである。

まず、川野の最初の往信には『夜想』の山尾の言葉が引かれていてそれは 「むかしむかしの『ちょっと風変わりな』多くの女性たちはひとりで生きてひとりで死んでいったのだろうなと、尾崎翠のことなども少し思い出していた」 という部分であり、それに対して山尾は、「かつての風変わりな女性創作者たちの孤独」 と返している。それは尾崎翠であり倉橋由美子であり矢川澄子である、と。尾崎翠が幻想文学であるかどうかはここでは問わないのだ。おそらく幻想文学ではないのだけれど、その描き出す世界に 「風変わり」 と思われてしまうテイストが存在する (尾崎翠に関しては以前、ちらっとだけ書いたがほとんど書いていないに等しいのは、あまり知られたくないという独占欲だ→2013年11月06日ブログ)。

山尾はユリイカで特集された須永朝彦のことによせて 「天使と両性具有」 のこと、そして百人一首リレーという企画があり、葛原妙子の 「他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水」 を選ぼうとしていたら谷崎依子に選ばれてしまったというようなことを書く。
それに対して川野はアンドロギュノスというよりもアセクシュアルであることが理想だと応えているのだ。そして天使はアセクシュアルではないかという。川野が他のところでもアセクシュアルについて語っていたようなことを覚えていてちょっと納得。

山尾は新進作家の頃、若いSF作家たちのなかで紅一点といった立ち位置にいて、それはおいしかったのかもしれないといいながら、逆にいえばそれは女性だからという見方で軽く扱われていたのだったのに過ぎないと語る。それに対して川野は、そうしたいわゆる性的差別というのはまだ存在していると応えている。
近代短歌において、浪漫的な与謝野晶子などの作風があったのにもかかわらず、アララギが出てきたことで短歌はリアリズム全盛になってしまった。そうした状況に対して折口信夫は掩護射撃のつもりで、アララギは女歌を閉塞したものと表現したのだが、そのようにしてこういうのが女性の歌だ、と男性が定義するところもまた性差別であったのだと上野千鶴子が指摘しているという記述があって、この部分はとても鋭いし、変わっているようで意外に変わっていない文壇の今昔をもあらわしている。

川野芽生の愛読書がリストアップされていて、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、トールキン『指輪物語』は順当として、ダンセイニ『最後の夢の物語』、エリアーデ『ムントゥリャサ通りで』、ドノソ『夜のみだらな鳥』が選択されているのはさすがである。
川野の短歌が30首選ばれて掲載されているがその冒頭の

 凍星よわれは怒りを冠に鏤めてこの曠野をあゆむ

は山尾が若い頃、憤怒しつつ小説を書いていた一時期があって、という述懐を思わず連想して (もちろん関係ないのだけれど)、凍星と怒りという単語から受ける冷たさに引き込まれる。
そして、

 ヴァージニア・ウルフの住みし街に来てねむれり自分ひとりの部屋に

「自分ひとりの部屋」 とはウルフの《A Room of One’s Own》のことである。
往復書簡の最後に山尾が『Lilith』の帯文はヌルかったと書いているのにちょっと笑った。そうかも。
で、結局『Lilith』については何も書けてないです。


短歌ムック ねむらない樹 vol.7 (書肆侃侃房)
短歌ムック ねむらない樹 vol.7




川野芽生/Lilith (書肆侃侃房)
Lilith




彫琢された文語の木鐸 — 川野芽生さんの歌壇賞受賞に寄せて
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/603/open/603-01-2.html
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うさぎを追いかけて — アリス=紗良・オット [音楽]

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アルバム《Nightfall》におけるサティはウェットで暗い。PVに映し出される夜の街を徘徊する画面は暗く光がぼやけて美しく滲んで、ほとんどシルエットになった顔にグノシェンヌが重なる。まるで昔のサラ・ムーンを映像にしたようで、サティの粒立ちは高橋アキと違って輪郭が濡れていて、こうしたサティもまたサティだと思う。

しかしアリスは、単にフランス系の曲を集めただけの《Nightfall》に飽き足らなかった。その結果が《Echoes of LIfe》の入れ子構造のようなエディットになったのだと思う。次作はさらに深いシャッフルになってゆくかもしれない。

アリス=紗良・オットはグリーグのアルバム・リリース時のインタヴューで、《抒情小曲集》(Lyriske stykker) を例にとって、グリーグの楽曲構造の不思議さと魅力について語っている。グリーグは同じものが繰り返される。A-B-A-Bと繰り返されながらCに行かない。Aに戻って終わる。これがティピカルなグリーグだ、とアリスは言う。
グリーグの音はキャッチできない。不思議の国のアリスのうさぎのように逃げていってしまう。それがグリーグの魅力なのだそうだ。アリスがアリスについて語るという複層した解読が印象的だ。

グリーグのピアノ協奏曲は、彼のたった1曲だけのPコンなのだが、繰り返し改訂された作品である。第1楽章 Allegro molto moderato は非常に有名で、ある意味通俗かもしれない。アリスのカデンツァは現代的で、でありながらグリーグのテイストから逸脱していない。
Adagio の第2楽章は、アダージョという速度に拠ってときに醸し出される官能性はなく、するりとまるでうさぎが穴をすり抜けるようにアタッカで最終楽章 Allegro moderato molto e marcato へと受け渡される。
この楽章はダンスの変奏なのだと私は思う。美しく、ときにアブストラクトな、といってバルトークのように民族的過ぎたり奇矯だったりすることのない舞踊のリズムがその根底に見え隠れする。この第3楽章のダイナミクスが私は好きだ。

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Alice Sara Ott/Nightfall (Universal Music)
ナイトフォール(通常盤)(SHM-CD)




Alice Sara Ott/Wonderland (Universal Music)
【Amazon.co.jp限定】ワンダーランド (SHM-CD)(キャンペーン特典:クラシック百貨店 特典ロゴ入りコースターつき)




Alice Sara Ott/Satie: Gnossiennes: 1. Lent
https://www.youtube.com/watch?v=qUFxAxTZJZg

Alice Sara Ott/グリーグを語る
https://www.youtube.com/watch?v=Yqs4jEKYvCs

Alice Sara Ott/Edvard Grieg: Klavierkonzert
https://www.youtube.com/watch?v=MbQy4l7l0JE&t=130s
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YOASOBI 2021.12.04 武道館 [音楽]

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YOASOBIの武道館ライヴ第1日目を観た。
1時間45分あるが、あっという間である。使い古された形容であるが圧倒的なライヴである。最初のTV出演がNHK紅白歌合戦、最初の有観客ライヴが武道館というのはあらかじめ計画されたものであるとはいえ、なかなかない。

セットリストは以下の通りである。

あの夢をなぞって
大正浪漫
ハルジオン
三原色
もう少しだけ
ハルカ
たぶん
もしも命が描けたら
〈メンバー紹介〉
夜に駆ける
怪物
優しい彗星
Epilogue
ツバメ
群青

〈アンコール〉
ラブレター

バンドメンバー紹介後の〈夜に駆ける〉から〈怪物〉へと続く流れが圧巻。〈怪物〉という曲の切迫感は先日のUTライヴにおいてもそうだったが、このユニットにおいて特別な曲であるように思う。
マガジンハウスから『GINZA特別編集 THE YOASOBI MAGAZINE』というムックが出されているが、いままで謎だったYOASOBIのスタッフの紹介もされていて、やはりソニーミュージックが相当な力を入れていることがわかる。

Ayaseの書く曲はその全てにメランコリーがあり、繰り返す転調の中に切迫感と背中合わせの寂寥が、もっと端的にいえば悲しみが存在していて、この武道館ライヴでもそれがひしひしと伝わってきて胸が痛くなるほどだ。なぜ楽曲にこれだけの想いがこめられるのか、その悲しみの重さに慄然とする。

YOASOBIが楽曲を出し続けているまさにこの今の時にいられることの幸せを感じずにはいられない。そのメロディラインにはすでにAyase特有のいわばクリシェが存在していて、他の歌手に提供された楽曲でもその特徴からすぐにわかってしまう。

メディアも《THE BOOK 2》が発売されたが、品切れだった最初の《THE BOOK》も再プレスされている。同じ体裁のバインダー形式のパッケージになっているがすでに品薄なので、欲しいかたはお早めに。まだ定価で買えます。

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2021.12.04

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2021.12.05


YOASOBI/THE BOOK 2 (SMR)
【Amazon.co.jp限定】THE BOOK 2 (完全生産限定盤) (特製バインダー用オリジナルインデックス(Amazon.co.jp Ver.)付)




GINZA特別編集 THE YOASOBI MAGAZINE
(マガジンハウス)
GINZA特別編集 THE YOASOBI MAGAZINE (マガジンハウスムック)




夜遊び Nice to Meet You 2021.12.04 ライヴ全編
https://www.youtube.com/watch?v=gV3GNu7aKyI

夜遊び Nice to Meet You 2021.12.05 ライヴ全編
https://www.youtube.com/watch?v=n2K3IRrtuvI


YOASOBI Special Live in YouTube Music Weekend
from Nippon Budokan2012.12.04
怪物
https://www.youtube.com/watch?v=aLraQpv5S0U

YouTube Music Weekend
YOASOBI LIVE『NICE TO MEET YOU』
at Budokan Digest Movie
https://www.youtube.com/watch?v=2X-_pazg0UQ

12月04日・05日映像はすぐに観られなくなる可能性があるので、
観たいかたはお早めに。
オフィシャルのダイジェスト映像は12月05日である。
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JUDY AND MARYなど [音楽]

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JUDY AND MARY

それはちょっとしたきっかけだった。
かしぶち哲郎の〈屋根裏の二匹のねずみ〉という曲を聴いていて、それはアルバム《リラのホテル》に収録されている矢野顕子とのデュエットによる佳曲なのだが、聴いているうちに、そうしたしっとりとした音楽と正反対のジュディマリを突然聴きたくなったのだ。なぜそうしたいわば精神的跳躍が起こるのかは自分自身でもわからない。だからきっと精神構造がパンクなのだ。

ジュディマリがアヴァンギャルドだったのはTAKUYAのギターによるところが大きい。限りなくポップで、ときとしてかなり歌謡曲にまですり寄りながら、あのギターはない。そのとんでもなさを納得させてしまったところがジュディマリの特異なカリスマ性なのである。
もっともジュディマリ後のなかでMean Machineはお遊びが過ぎたともいえるが、私はちわきまゆみフリークだったのでとりあえず買っておくしかなかった。これは以前にも書いたことだが、昔のちわきの動画の中で岡野ハジメがバックにいるグラムっぽい演奏があったはずなのだが、やっぱりどこにも見当たらない。でも所詮YouTubeとはそういうものなのだろう。

PINKといえばホッピー神山が近藤等則と初めて共演した《The Mantra session in Mt.Fuji》というアルバムが発売されたが、この録音の2日後、近藤は亡くなったのだという。深い残響に彩られた音作りを私はあまり好まないし、なぜ近藤等則がこうしたサウンドへと変わっていったのか、その経緯を私は知らないが、日野皓正のように陽のあたるところとは違った道を歩んできた近藤や、あるいは沖至のような、昼間の音楽に対する漆黒の夜の音楽のことを決して忘れてはならないように思う。

つい先日のTokyofmのザ・トラッドで、東京というキーワードで選曲されたオンエアがあって、くるり〈東京〉、椎名林檎〈TOKYO〉、やしきたかじん〈東京〉というふうに東京というタイトルがつづいたのだが、くるりのイントロはブリティッシュっぽくってよかったけれど、そして椎名の〈TOKYO〉は《三毒史》に入っている曲であいかわらずの椎名節でよかったのだけれど、東京というタイトルで思い出すのは桑田佳祐の〈東京〉の雨であり、荒木経惟のように猥雑な色彩と北野武のような映像のヴァイオレンス感に引き込まれる。PVの4’27”からの、わざと外したような桑田のSGによるソロの始まりが印象的だ。

ジュディマリに戻るとTAKUYAのギターだけが大写しにされている動画を見たのだが、ストラトのメイプルネックに不規則に入っている杢目が美しい。
YouTubeにはジュディマリのかなり初期の頃と思われるライヴシーンがあるが、あらためて見るとレベッカとはそのメランコリーの質が違う。ジュディマリのほうがわかりにくくてそして破壊的だ。Jam 3の1994年のDAYDREAMを聴いて欲しい。


JUDY AND MARY/COMPLETE BEST ALBUM: FRESH
(ERJ)
COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」




JUDY AND MARY/そばかす (POP JAM 1996/04/13)
https://www.youtube.com/watch?v=EnfeW5ZzCxQ

Judy and Mary/くじら12号
https://www.youtube.com/watch?v=tsEvCaUxWZQ

Jam 3
https://www.youtube.com/watch?v=4wcDiH7bQg4

【本人が弾いてみた】JUDY AND MARY/OVER DRIVE
https://www.youtube.com/watch?v=28TLdE5pNaE

椎名林檎/TOKYO
https://www.youtube.com/watch?v=nV-nleli4Q8

桑田佳祐/東京
https://www.youtube.com/watch?v=AjRbQMwXMN0

The Mantra session in Mt.Fuji phase4
https://www.youtube.com/watch?v=UhGlHDy1kWA
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