宇野亞喜良展 [アート]

宇野亞喜良展が開催されていることは知っていたのだが、NHKの《日曜美術館》で特集されているのを観て、俄然行く気になった。坂本美雨とのトークもあり、のんや金守珍のコメントもあって引き込まれる番組だった。
NHKの放送の中で一番見入ってしまったのは、宇野がワニと少女の絵を描くところをカメラがとらえているシーンだが、えっ? そうやって描いちゃうの? という驚きである。また、宇野亞喜良と横尾忠則の対談は面白く、この2人の若い頃からの関係性の深さと長さが垣間見える。最後のほうで横尾が宇野の絵に対して 「この年齢になってこういう絵が描けるのは変態でしょ?」 と言ったのには笑ったが、まさに最上級の褒め言葉だった。宇野が 「変態のあなたに言われたくない」 と返したらよかったのに、とも思うのだが。
それで東京オペラシティ アートギャラリーに早速出かけた。
70年代頃の各種企業のポスター類はどれも力があって素晴らしいし、寺山修司の天井桟敷公演のポスターはさすがに知っているが、どれもその時代を感じさせる作品ばかりである。この頃のほうがこの国にはずっとパワーがあったと感じてしまう。特に特色を使ったポスターは4Cで印刷された図録などではその本当の色合いを再現できない。貼りめぐらされたオリジナルのポスターは圧巻である。
宇野亞喜良といえば特徴的な 「あの絵」 なのだろうと勝手に解釈していたが、対象によって、あるいはどのようにオーダーされたのかによって描き方は変幻自在、まさにどんな絵でも描けるのである。もう……とんでもない人なのだ。
宇野のイラストはいわゆる商業用作品であるから、好き放題に描くわけにはいかない。自由にやらせてもらったとは言っているが、それがどのような宣伝効果をあげるのかということを前提にして描いている。そのテクニックは驚異だといわなければならない。
「あの絵」 とは多分に耽美であり、当時流行していたサイケデリック的なベースがあるが、初期の特にモノクロ作品で感じるのはやはりビアズリーの影響である。ビアズリーは商業美術の先駆者であるロートレックとともに絵画とイラストレーションの境界線にいた人だと思うが、宇野亞喜良はより商業的テイストが高く、それでいて確実に自己のキャラクターを表現の中心としている。無名性とは正反対の方法論である。
立体作品も展示されていたが、そのなかで最も印象的だったのは寺山修司の人形である。ちょっとアバターみたいな耳の寺山が愛らしいんですよね〜。展覧会は6月16日まで開催中である。

宇野亞喜良展
https://www.operacity.jp/ag/exh273/