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アンゲロプロスのこと [映画]

旅芸人の記録01_r.jpg

幾つものブログで、テオ・アンゲロプロスが亡くなったことについて触れられていて、もう今更という感じもするがちょっとだけ書いてみたい。
まずその前に監督のご冥福をお祈りするものである。

アンゲロプロスで最も衝撃だった作品は《旅芸人の記録》であると思うが、それは当時そういう撮り方 (長回し) で作られた映画が無かったこと、延々と続く長尺のフィルムであること、そして映画そのものに付けた音楽 (いわゆるサントラ) が無かったことなどであった。
だが最初に見たとき、私はそんなに長い時間の映画だとは思わなかったし、長回しにしても、世に喧伝されるほどにトリッキーでもなく、すべてが自然に映画として同化していたように思う。

上映時間が長いということならベルイマンの《ファニーとアレクサンデル》だってものすごく長いが、長いのがしんどいということはないんだけれど、その宗教観みたいなのがしんどいかもしれない。しんどいというより私のような一般的日本人にはわからないような部分があって、それがちょっと疲れる映画だった。同様のことは《旅芸人の記録》にもいえて、つまりギリシャ悲劇を知らないとよくわからないような、しかも教養的知識ではなくて、土着的な本来のギリシャの土地から湧き出ているような〈原=ギリシャ悲劇〉的なベースを必要としているように思える。だからってそんなのを知らなくてももちろん構わないのだが。

アンゲロプロスの映画の作り方は、緻密というのとも違って、あえていうのならこの頃の時期はパッション (熱情) だったのだと思う。パッションが結果としてどんどん手法として深入りしていき偏執的にこだわっていくこと、その結果が長回しだったりしたのであろう。技法は結果であって、最初から長回しでやってやろう、ということではなかったのではないかと思う。

私がアンゲロプロスの中でもっとも好きで美しいと思う作品は《永遠と一日》である。ただ美しいといっても映像美とかファッションが美しいとかではもちろん無くて、全体から感じる沈黙の構成美みたいなものを美しいと形容するのである。
ところがこれをある人に推薦したら 「私のもっとも見たいと思わない映画」 みたいなご講評をいただいて——しかもまだ見てもいないのに——あぁ、アンゲロプロスへの理解ってその程度なんだ、とかえって安心してしまったことを覚えている。

アンゲロプロスは残念なことに現在、DVD等はバラ売りされていず、何巻かの全集の形態をとっている。そして画質そのものもあまりよくない。画質の改善と単体売りをして欲しいものである。


テオ・アンゲロプロス全集DVD-BOX
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