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tomoo〈スーパースター〉 [音楽]

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tomoo

日曜夜のテレビ朝日《関ジャム 完全燃SHOW》は例によって 「2023年の年間マイベスト10曲」 という2週にわたる特集で、いしわたり淳治、蔦谷好位置、川谷絵音の3人がどんなランキングをしてくるのかが楽しみである。
多分にトリッキーというか青田買いというのか、ややマニアック過ぎる感じがしてしまうのもいつものことなのだが、でも昨今はこうした傾向なのかもしれないと思えてしまう選曲なので、紅白歌合戦とは違う意味で面白い。簡単にいえば関ジャムは 「最先端」、紅白は 「安定多数」 である。

お互いにかぶらないようにしているのか否かがよくわからないが、そんななかでいしわたり淳治と蔦谷好位置がともにTOMOO [ともお] を選出していたのが印象的だった。いしわたりは〈Super Ball〉を1位に、蔦谷は〈Grapefruit Moon〉を2位にしていて、どちらが言ったのか忘れてしまったが 「松任谷由実と中島みゆきを足したような」 という形容は褒めているのだろうけれどちょっと違うと思う。あくまでわかりやすい比喩なのだといわれればそうなんだけれど。

最近の曲は、ともすると技巧的な編曲がなされていたりもするが、作品のネイキッドな部分は、奇を衒わない、ある意味伝統的なシンガーソングライター的なニュアンスを持っているように思える。これはなぜなのかと考えたのだが、歌詞が直裁であり、ともするとむき出しで直裁過ぎる言葉によって滲み出てくる自然な風合い、たとえば綿や麻のような天然素材の服の肌ざわりような、あまり加工されていない心情が感じられるからではないだろうか。
松任谷由実の楽曲は手の込んだ料理のような加工されつくされた構造であり、中島みゆきはときとして確定的な強い意志がその信条であるので、どちらもTOMOOとは対極にあるように思えてしまう。

何曲か聴いているうちに、少し以前の曲のほうが、よりシンプルでナチュラルな感じがした。そうした曲を好んでしまう傾向があるのは、きっと疲れているからなのかもしれない。


TOMOO/スーパースター
https://www.youtube.com/watch?v=pI3537YYGys

TOMOO/Cinderella
Studio Live from “Blinking,” 2023
https://www.youtube.com/watch?v=1g1w2jq6g08

TOMOO/Ginger
LIVE TOUR 2023 “Walk on the Keys”
https://www.youtube.com/watch?v=_UVLQnofI9M

TTOMOO/Grapefruit Moon
https://www.youtube.com/watch?v=OJiip74IWf8

TOMOO/夢はさめても
Studio Live
https://www.youtube.com/watch?v=2TQDcB0aPek
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bedtime songs — cero, iri, Awesome City Clubなど [音楽]

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iri

昔からの言い回しに 「波長が合う」 という表現があるが、今だったら何と言えばより適切なのだろうか。これいいよ、と言われてもなんとなくあまり心に響かなくてずっと放っておいた曲が突然光を持って輝くことがある。それはその音楽に変化があったのではなく、自分自身に何かがあったからなのだ。つまり、古いかたちのダイヤルを回すラジオで 「波長が合った」 とき、いままでの雑音が消え去り、くっきりと聞こえるあのときに似ている。

最近だとたとえばceroなのだ。アルバム《 e o》はジャケットも美しいし、内容も美しい。でも、これがなかなかわからなかった。単純に理解力がないから、と言われてしまえばそれまでなのだが。
Zep Shinjukuで行われた2023年7月のライヴ動画をYouTubeで観ることができるが、アルバムのきっちりとした音ももちろん良いのだけれど、このライヴの空気感はもっとすごい。「リンクの切れた言葉たち」 という言葉にやられてしまう。
そう感じてから以前の〈Orphans〉などのMVをあらためて観てみると、一気にceroが何なのかがわかってしまって納得するのだ。

iriについても同様で、アルバム《PRIVATE》のLPがレコードショップに飾ってあって、カッコいいジャケットだなと思ったのだけれど結局買わないでいた。でもその1曲目の〈Season〉をYouTubeで聴いていたら突然覚醒してしまったのかもしれない。軽いタッチのイントロから、すっと入っていける気楽さが、心になじむ。その耳で以前の〈Wonderland〉などを聴くと、いままで聞こえなかった音が聞こえてくる。これが音楽の面白さなのだと思うし、そうしたセンシティヴィティがわかる人にはわかると思う。

Awesome City Clubの2021年・東京ガーデンシアターのライヴは、まだアクセス数が少ないが、オーサムのテイストがよくあらわれたライヴだと思う。私はモリシーのギターが結構好きだ。

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cero

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Awesome City Club


cero/ e o (カクバリズム)
e o




iri/PRIVATE (ビクターエンタテインメント)
【Amazon.co.jp限定】PRIVATE [初回限定盤] [CD + CD] (W特典/メーカー特典 : 非売品音源CD および Amazon.co.jp限定特典 : メガジャケ 付)




Awesome City Club/Get Set (cutting edge)
【Amazon.co.jp限定】Get Set(CD+Blu-ray)(メガジャケ(2形態共通絵柄絵柄)付き)




cero/Tableaux
live at Zepp Shinjuku 2023.7.12
https://www.youtube.com/watch?v=cu1Ui-3k-7M

cero/Orphans
https://www.youtube.com/watch?v=c_SLGBJgDNE

iri/Season
https://www.youtube.com/watch?v=eQtvqaM1i58

iri/Wonderland
https://www.youtube.com/watch?v=3WlOZTy072k

iri/Wonderland (THE FIRST TAKE)
https://www.youtube.com/watch?v=cSIcPZMotOo

Awesome City Club/またたき
Awesome Talks 2021 東京ガーデンシアター
https://www.youtube.com/watch?v=RObgKYl-Yj4

Awesome City Club/Color
Awesome Talks 2021 東京ガーデンシアター
https://www.youtube.com/watch?v=MuCgWIEj3iI
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中森明菜〈北ウイング -CLASSIC-〉を聴く [音楽]

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《50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji -Saudade-》は林哲司の活動50周年を記念してリリースされたアルバムだが、このアルバムの目玉はtrack 1に収録されている中森明菜の〈北ウイング〉である。
林哲司に関しては2021年に《melody collection》という3種類のオムニバス・アルバムが出されたときにすでに話題にしたが (→2021年12月25日ブログ)、今回のアルバムはそのような過去の録音の集成ではなく、トリビュートとしての新録音である。

本当に中森明菜の新録が出るのか? と疑問符付きで言われていたが見事にリリースされ、初回盤はすでに売り切れてしまった。だが年末年始の多忙もあって、その動画があることを寡聞にして知らず、いまさらながらYouTubeで観た次第である。
タイトルに 「-CLASSIC-」 と附加されていることからもわかるように、ストリングス・アレンジされていて、原曲よりもずっと遅いテンポで歌われているが、歌唱のニュアンスが良く生かされており、なによりも現在の中森明菜を見ることができる出色の動画である。編曲は佐藤えりかと熊谷ヤスマサで、それぞれヴァイオリンとピアノで演奏にも参加している。
ソニーのマイクとヘッドフォンのセットから連想してしまうのは、YouTubeに頻出しているTHE FIRST TAKEだが、もちろんファースト・テイクのわけがない。

こうして改めて聴いてみると、康珍化/林哲司というタッグによる楽曲には杏里〈悲しみがとまらない〉、上田正樹〈悲しい色やね〉、菊池桃子〈もう逢えないかもしれない〉などのヒット曲があるが、〈北ウイング〉はそうしたなかでもメロディに乗る歌詞がうまく融合して洒落ていて、まさに歌謡曲の王道という印象を持ってしまう。
歌詞の冒頭に 「Love is the mystery」 と始めて、この言葉は何度もリフレインしていくのだが、たとえば 「すべてを捨ててく airplane」 というような和欧混交の組み立て方が秀逸だ。この部分は 「心の区切りの teardrops」 という同一パターンで繰り返される。だが何よりもこの歌詞全体の白眉はタイトルにもなっている 「北ウイング」 という固有名詞を当てはめたことだろう。
緩徐なストリングスのバックにより、こうした言葉がより際だって聞こえてきて、ひとつひとつの言葉を噛みしめることができるような、そうした静謐な雰囲気には、あの頃から遙かに時が経ってしまったことへのひとつの諦念とでもいうべきものさえ感じることができる。

以前にも書いたことだが、中森明菜の1989年4月によみうりランドEASTで行われた《中森明菜イースト・ライヴ インデックス23》は、昼間の野外という環境をものともしない当時絶頂期であった彼女の頂点をなすライヴであると思う。
このライヴでも〈北ウイング〉は歌われているので、今回の新録の〈北ウイング〉と比較して聴いてみるものよいかもしれない。
下記にリンクしたYouTubeは、どちらの動画もオフィシャルの動画であり、よみうりランドはドキュメンタリー風にやや編集されているのが残念だが、全編1時間半の長さである。


50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji -Saudade-
(バップ)
50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji - Saudade - (通常盤)[CD]




中森明菜イースト・ライヴ インデックス23
(ワーナーミュージック・ジャパン)
中森明菜イースト・ライヴ インデックス23<5.1 version> [Blu-ray]




中森明菜/北ウイング-CLASSIC-
https://www.youtube.com/watch?v=Kwf4bmGr9IU

中森明菜イースト・ライヴ インデックス23
https://www.youtube.com/watch?v=4ybVA0tcmIU

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