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回想のドヴォルザーク [音楽]

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ドヴォルザークという名前を聞くと、なんとなく学校の下校時間を知らせる音楽のようだし、そもそもドヴォルザークとかチャイコフスキーとか、そういうベッタリと心にもたれかかってくる音楽は通俗で恥ずかしいみたいに考えていた頃があった。若気の至りというものである。

ある日、弦楽四重奏のコンサートでドヴォルザークの《アメリカ》を聴いた。音楽を聴くとき、具体性のある何かを連想するのはいけないことだと私は思っていた。音楽とは崇高で抽象的なもので、それを卑近な事物に相似形として置き換えてはならないという戒律みたいな思い込み。つまり絶対音楽が至上のものという考えで、これもまた若気の至りというもの。
でも《アメリカ》はそんなこと全く気にせず、どんどん具体的な連想をさせるように迫ってくる。私が連想したのは、夜の高速道路を走る車の流れとか、高層ビルの灯りとかラスベガスのネオンサインみたいな、すごくリアルなアメリカの通俗的風景で、でもそれがとても心地よくて、あぁ音楽ってこういうふうに聴いてもいいんだ、と思ったものだった。

もっともそこで連想したアメリカは、国力が一番強くて世界に君臨していた頃の古きよきアメリカであって、そうした過去の姿を懐かしむノスタルジィでしかないのかもしれない。かつてドヴォルザークが描いたアメリカはもうすでに無くて、それはアメリカだけでなくこの国も同じで、すべてが色褪せて過去よりも薄墨色にぼやけて見える。そう思えてしまうのが最近の日常だ。

ドヴォルザークの交響曲を順に聴いていくと、もちろん後期の作品のほうが有名だし完成度も高いけれど、私が気になるのは交響曲第1番《ズロニツェの鐘》である。まだ未完成で無駄に力が入っている部分もあるが、若きドヴォルザークの暗い情熱のようなものが聞こえてくるような気がする。

ただドヴォルザークがいいと思ってしまう心は、どこか弱いところがあって痛みを伴っていて、その棘を癒してくれる音楽を無意識に求めてしまうから、ということなのかもしれない。


とりあえず一番廉価な盤です。
Carmina Quartet: Dvořák/String Quartet No.12 etc.
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1215892
Václav Neumann, Czech Philharmonic Orchestra:
Dvořák/Symphony No.1
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2638399
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