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《奇妙礼太郎》を聴く・その2 [音楽]

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前記事《奇妙礼太郎》のつづきです。
YouTubeに〈散る 散る 満ちる〉のライヴ・ヴァージョンがupされた。6月21日にキネマ倶楽部で収録された菅田将暉とのデュエット映像である。PVの杉咲花ヴァージョンも優れた仕上がりだが、実際の演奏映像もこれはこれでまた良い。

〈散る 散る 満ちる〉はアルバム1曲目だが、2曲目の〈春の修羅〉は音声のみだが羊文学の塩塚モエカとのデュエットである。そして3曲目が、前記事にリンクしたヒコロヒーとの〈HOPE〉である。

そしてもうひとつ、奇妙礼太郎のYouTubeチャンネルにある〈こんにちはブルース〉は、ごくスローな歌唱だが、ギタリストが内田勘太郎である。最強。だが短過ぎる。


奇妙礼太郎/散る 散る 満ちる feat. 菅田将暉
at キネマ倶楽部 2023.06.21
https://www.youtube.com/watch?v=IWEX2f0NUpo&t=6s

奇妙礼太郎/春の修羅 feat. 塩塚モエカ
https://www.youtube.com/watch?v=7yIAFH1po3g

奇妙礼太郎と内田勘太郎/こんにちはブルース
https://www.youtube.com/watch?v=On0QOKnPOP8
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《奇妙礼太郎》を聴く [音楽]

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毎週金曜日の昼12時のTokyofmで《トーキョー・エフエムロヒー》というヒコロヒーの番組があって、昼のこんな時間帯にヒコロヒーは不似合いだよなぁと思いながらよく聴いている。深夜のTV朝日の齊藤京子との《キョコロヒー》もよく観ていて、そのユルさ加減が心地よい。ちなみに《キョコロヒー》の後のハマ・オカモトと齋藤飛鳥の《ハマスカ放送部》も輪をかけてユルくて、たぶんこのダブル・サイトーのアイドルの仮面をちょっと外したダルさ加減がこの時間に見事にハマッているんだと思う。

それはいいとして、そのTokyofmのオンエアでキョコロヒーが奇妙礼太郎のアルバムに参加して、一曲デュエットしていることを知った。収録されているアルバムは今回発売された奇妙礼太郎25周年記念アルバム《奇妙礼太郎》である。レコード店で見たらジャケットがカッコよかったので思わず買ってしまった。ときに尖鋭なものがあるのにそれを隠したソフトさと何よりもその特徴的な声も合わせて、こうした音楽もいいなあと思ってしまう。
HOPEというタイトルはたぶんタバコの銘柄とのダブル・ミーニングだ。

     *

YOASOBIはCDがリリースされたこともあって、HMVでは〈アイドル〉がガンガン流れていたが、英語版は少しインパクトが弱いように感じる。日本語詞のアクセントや韻を含めた構造に較べて、英語詞は完全に対応できていないからだと思う。
それより同時期にupされている〈セブンティーン〉のほうがいつものYOASOBIっぽいテイストで聴かせる。原作は宮部みゆき 「色違いのトランプ」 とのことだがPVの冒頭の不穏なイメージとそのタイトルから思わず連想してしまうのは大江健三郎の 「セヴンティーン」 であって (いや、でもそんなこと、もはや誰も連想しないか)、途中の思い切り歪ませた音声の部分は、かつての暴走Pの〈初音ミクの消失〉が記憶のなかから蘇ってくる。

     *

ラルフ・タウナーの《At First Light》は83歳のギタリストの最新ソロ・アルバム。シンプルなモノクロのジャケットが美しい。音楽が美しいのはもちろんだが。最初に買ったタウナーのアルバムは紫色をベースにしたデザインの《Solstice》だったが、これもジャケ買いだったのかもしれない。まだ西ドイツ盤だった頃である。

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トーキョー・エフエムロヒーでの奇妙礼太郎とヒコロヒー


奇妙礼太郎/奇妙礼太郎 (ビクターエンタテインメント)
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奇妙礼太郎/散る 散る 満ちる feat. 菅田将暉
https://www.youtube.com/watch?v=2eQnAIvv9ZI

奇妙礼太郎/HOPE feat. ヒコロヒー
https://www.youtube.com/watch?v=CJ-quOMeO6I

奇妙礼太郎/かすみ草
https://www.youtube.com/watch?v=mAa2GvyOgyc

YOASOBI/アイドル
https://www.youtube.com/watch?v=ZRtdQ81jPUQ

YOASOBI/セブンティーン
https://www.youtube.com/watch?v=0yoM7ETNPIY
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パテック・フィリップ・エキシビションに行く [アート]

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パテック・フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション東京2023に行った。
簡単にいえばパティク・フィリップのメーカー展示会なのだが、いわゆる三大腕時計ブランドといわれるなかでもパテック・フィリップは孤高のメーカーであり、技術的にもデザイン的にも最高峰であることは確かだ。
ただ、最高峰過ぎるために、身近に目にすることは少ない。今回の展示はパテック・フィリップの昔の時計から現在の時計まで、機械式の腕時計とはどういうものなのかを見せてくれる貴重な機会である。

そもそも腕時計は、かつては細かな部品で組み立てられている機械式が主流であったが、廉価で高精度なクォーツの腕時計が出てきたことによって、腕時計のほとんどはクォーツになってしまった。そしてアナログな針表示でなくデジタルな数字で時刻が表示される製品が多数存在する。
だがスイスの高級腕時計メーカーはその機械式技術の伝統を守りながらすぐれた品位の製品を作り続けているのであり、それはテクノロジーにプラスしてアートの領域になってしまっている。

展示品にはシンプルなデザインの時計ももちろんあるのだが、非常に複雑で精緻な機構を持った製品が大半であり、単純に複雑であるということだけでなく、どのように動作させるのかという設計思想があるためだろうか、製品は優美で常に 「遊び」 があるように感じる。ホントはこんな機構なんていらないよね? と言ってしまうのは簡単なのだが、その 「遊び」 にこだわることこそがパテック・フィリップの神髄なのである。

エキシビションに行ってみると思っていたよりもずっと来客者数は多く、若年層の比率が高い。そして展示も多彩で、時計の裏表が見えるように展示されているコーナーもあり、全ての製品がノーブルで美しい。
技術者が時計の分解や組み立てを見せてくれるコーナーでは、背面に手元を拡大した画面が映し出され、おそろしく小さな部品の集積が機械式時計となっていることがよくわかる。小学生くらいの来客者に技術者が 「これがぜんまいになっている」 というような説明していたが、最近の子どもにぜんまい (薇発条) と言っても理解できるのだろうか、とちょっと思った。

数日前の朝日新聞の紹介記事のタイトルが 「買えない時計」 とあるように、簡単に買うことは不可能なメーカーなのだが、ステータスとしてパテック・フィリップを使用していた従来の顧客は消滅しつつあり、若い顧客を開拓するという意図があるのだとの解説である。といっても商談は無しで、あくまで自社の技術を知らしめたいとする考えのようだ。

翻って音楽とオーディオの世界を考えてみると、最近、アナログなレコード・プレーヤーが人気なのも、その面倒な操作方法やメンテナンスがかえって面白いとする傾向もあるようだ。日本人は概して手先が器用だったはずなのに、音楽メディアがCDになった頃からその器用さが失われつつあるような気がする。CDになり、そしてサブスクになることによってお手軽な操作が蔓延しつつあるそうした趨勢に逆らう意味でのレコード・ブームという部分も、きっとあるように思う。

展示会場は新宿住友ビルの三角広場 (東京都庁の西側にあるビル)。期日は6月10日から25日までであり、入場無料である。たとえば科学博物館が好きな人なら、きっと楽しめる展示会のはずである。

詳しくは下記へ:
https://www.patek.com/ja/

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パテック・フィリップ・サイト動画より
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坂本真綾《記憶の図書館》 [音楽]

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梅雨だからと毎日のように雨が降って、雨が上がればもう真夏の陽差しのような今日。ceroの〈Summer Soul〉はけだるい。スクラッチノイズを引きずるように。

FMで坂本真綾のアルバム《記憶の図書館》から〈ないものねだり〉が流れていた。まとわりつく雨のような、それでいて躍動的でスリリングなストリングス。坂本真綾の語るこのアルバムのコンセプトは、

 —全世界の人々の記憶を管理する記憶の保管庫、「記憶の図書館」。そこ
 で “廃棄された記憶” を回収する少年が、ほんの出来心から持ち主の窓
 辺に返す幾つかの記憶の箱。それを開けた瞬間、溢れ出たのはどんな音
 楽だった?―

〈ないものねだり〉は坂本真綾作詞、そして作・編曲はceroの荒内佑である。
ceroのアルバム《 e o》も《記憶の図書館》とほぼ同時期にリリースされているが、タワレコの『bounce』474号で荒内は、今回のアルバムについて 「ブリコラージュ的な遊びのアルバムですかね。遊びと言うと軽く聞こえるかもしれないですけど、汲めども尽きない深みを感じます」 と述べている。
また、自身のソロ作品について 「自分のソロは管弦楽器奏者がいて、譜面を書かなければ動かない音楽だったので、一音一音を精査する作業が必要だったんです」 ともいう。スコアを書くというその延長線上に〈ないものねだり〉があるのだろう。

昔、オービットの『ヤミと帽子と本の旅人』というゲームがあって、私はゲームそのものに疎いのでよくわからないのだが、そのコンセプトはやはり図書館であった。Wikipediaに拠ればそのストーリーは、「いくつものパラレルワールドを 「本」 として保管している 「図書館の世界」 へ紛れ込んだ主人公は、行方不明になった義姉の初美を探して様々な本の世界を旅する」 とあり、

 宇宙の星が全て図書館 (外から見ると星だが、内部に入ると図書館にな
 るということで惑星上に図書館があるのではない) になっており、銀河
 鉄道のような汽車でつながれている図書館 (書斎) 世界を舞台とする。
 なお、各図書館の内部デザインは6角形の塔一面に本が納められている
 特殊なものである。そして、図書館に収められる本の1つ1つが通常の
 宇宙を含む世界である。

と解説されている。
図書館は本の、つまり紙の集積としてのアーカイヴであり、SFでは古くからその紙の集積を如何に効率的にデータとして変換するかが夢見られていた。その夢はコンピュータによって今、かなえられつつあるが、本やレコードやCDのようなフィジカルが全て失われてしまってよいのだろうかという疑問も残る。だがそれはセンチメンタルでアナクロニズムに過ぎないのかもしれない。

そして図書館という幻想は最終的にはホルヘ・ルイス・ボルヘスの 「バベルの図書館」 に収斂するのだ。バベルの図書館とは一種のカリカチュアであり、図書館でありながら図書館でない何か不定形なものを目差す試みであり、ボルヘスらしきデーモンの発露である。
なぜ、とりとめもなく図書館について書き綴るのかといえばそれは村上春樹の最新作のキーワードが図書館であるからだ。ただ、まだその壁の中にたどり着けないのでこのような逡巡をしているのに過ぎない。

そういえば安部公房の初期作品である『壁』に収録されている作品は 「壁」、そして 「バベルの塔の狸」 であったことを思い出した。


坂本真綾/記憶の図書館 (フライングドッグ)
11thアルバム 記憶の図書館 [通常盤] [CD]




cero/ e o (カクバリズム)
e o




坂本真綾/ないものねだり
https://www.youtube.com/watch?v=F3r-tOc3N9E

cero/Summer Soul (作詞作曲/荒内佑)
https://www.youtube.com/watch?v=lfETQNfBAD4

cero/ VIVA LA ROCK 2017 Live
https://www.youtube.com/watch?v=YT0WfBTLl-w
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スタッド・ドゥ・フランスのミレーヌ・ファルメール [音楽]

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Mylène Farmer

レコードショップでテイラー・スウィフトのLPが何種類かあって、どれか1枚と自分で縛りを設定してみた。選択したのはもちろん《Midnights》ではなくて、なぜなら《Midnights》はジャケット・デザインが何種類もあるからで、結果選んだのは《Reputation》。なんでまたそんなヘンなのを、というご意見もあると思うのですが、これ、モノクロで面白いと思うので。実はもうすぐ《Speak Now》のテイラーズ・ヴァージョンが出るはずなのだが、ジャケット・デザインはオリジナルとは異なるらしい (6月7日現在、インフォメーションがあるのはユニバーサルミュージックのみである)。

それで《Reputation》といえばあの〈Look What You Made Me Do〉で、そのPVの最初のキモチ悪い部分はマイケルって感じもするのだが、墓地のショットから連想するのは私の場合、ファルメールなのだ。
ミレーヌ・ファルメールのジャケットで一番気色悪いのはたぶん《Point de suture》で、人形製作は三浦悦子である。人形そのものが気色悪いのではなくて、手術用具というコンセプトがちょっとねぇと思うのだがすべてはファルメールゆえの確信犯である。アナログ盤が欲しいと思っていたのだが買い損なってしまった。

ファルメールのYouTubeサイトには《Nevermore 2023》の動画が、ほんのちょっとだけ切り刻まれて公開されているが、スタッド・ドゥ・フランスにおける2009年のライヴも切り売りされていて、この頃のファルメールはしなやかで確信に満ちているように見える。
スタッド・ドゥ・フランスはサッカー・ファンのかたならご存知かと思うが、サン=ドニにあるスタジアムで収容人数は8万人である。かつてのベルシーよりこちらのほうが広いので使用しているようだが、デヴィッド・ギルモアのグダニスクだって5万人だったのに8万人っていうのはコンサート会場としてはどうなの? と思うわけで。

コンサート全体の動画もあるが2時間以上の長さなので、とりあえず一番盛り上がっている〈Désenchantée〉の部分をリンクしておく。終わったかと思うとコール・アンド・レスポンスで延々と続く、もはやオキマリの (というかマンネリな) ノリなのだが、早い話がミレーヌ・ファルメールってフランスのユーミンみたいなものかもしれないのでもはや何でも許されてしまうのだ。
このときの衣裳デザインはジャン・ポール・ゴルチエである。

それと2019年の、スティングと〈Stolen car〉を歌っているライヴ映像。会場は同様にスタッド・ドゥ・フランスである。
最後に最新のNevermore 2023の数十秒の動画〈À tout jamais〉を。

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Mylène Farmer/Point de Suture


Taylor Swift/Reputation (Universal Music)
(但し、これはCDです)
レピュテーション (ジャパン・スペシャル・エディション)(DVD付)




Mylène Farmer/Désenchantée
(Stade de France, live 2009)
https://www.youtube.com/watch?v=r1Le-dAocI8

Mylène Farmer/Stolen car
(feat. Sting, live 2019)
https://www.youtube.com/watch?v=S5qNoEvtt0s

Mylène Farmer/À tout jamais
(Nevermore 2023, live)
https://www.youtube.com/watch?v=HnFG38yQ62U
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