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ジャズ・バルティカ2008のオーネット・コールマン [音楽]

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Ornette Coleman (Jazz Baltica 2008)

宇多田ヒカルのベスト・アルバム《SCIENCE FICTION》は単なる寄せ集めのベスト盤ではなくて、新しく入れ直した曲が3曲、リミックスが10曲とのことだ。Re-Recordingは〈Addicted To You〉〈光〉そして〈traveling〉だが、track 1にシングル盤でいえば4thの〈Addicted To You〉を持ってきているのがさすがである。〈Automatic〉や〈First Love〉でなく〈Movin’ on without you〉や〈Addicted To You〉のほうが初期の宇多田を象徴している楽曲のように思えるからだ。

4月13日夜の日本TVの新番組《with MUSIC》で宇多田は、なぜアルバム・タイトルがサイエンス・フィクションなのかを語っていたが、よくわからなかった。もっともアルバム・タイトルなんてある種の識別記号だと考えればそのとき思いついたフィットする語彙でよいわけで、そのサイエンス・フィクションという言葉で連想するのがオーネット・コールマンなのである (と強引に結びつけてしまった)。

最近、オーネット・コールマンをよく聴く。《Free Jazz》とか《Tomorrow Is The Question!》などのLPも続々と再発されているし、単なる私のマイブームというわけでもなく、比較的よく聴かれるようになってきているのではないだろうか。

YouTubeを探していたら2ギター、2ドラムスというセクステットの1978年7月のドイツでのライヴを見つけた。ギターはジェームス・ブラッド・ウルマーとバーン・ニックスで、ブラッド・ウルマーなつかしい! と思ってしまったのだが、でもそれよりもずっと後の2008年の3sat (ドイツのTVチャンネル) が収録したライヴが素晴らしい。
ジャズ・バルティカという1990年から毎年行われているジャズ・フェスティヴァルにおける2008年7月6日の演奏で、2ベースのクインテットであるが、ベースはアコースティクとエレクトリック各1本で、それにジョー・ロヴァーノのテナー、そしてデナードのドラムスというパーソネルである (オーネットはピアノレスでグループを組むことがほとんどだ)。

どの曲も比較的短めな演奏で、しかも変化に富んでいるし、トニー・ファランガのアルコが美しい。そしてあらためて思ったのだが、オーネットの音色は常に流麗で衰えも無く、むしろ逆に練れていて、そして常にスウィングしていること、これが重要である。有名なブルーノートのゴールデン・サークルにおけるライヴは、シンプルでメインストリームなジャズにしか聞こえない、というようなことを以前に書いたことがあるが、メインストリームというのは大袈裟にしても、オーネットは常にリズムをキープさせていて、それはフリージャズに特有な痙攣するようなパルスではなく、純粋にスウィンギーなテイストであり、そして根本的に明るい音楽であることだ。それはあの〈Lonely Woman〉でも翳ることはない。もちろん曲想自体は悲哀に満ちているのだが、オリジナルの《The Shape of Jazz to Come》の頃とは違って、この日のライヴにおけるメロディーラインは慈愛に満ちている。

下記にリンクした当ライヴは1時間17分もあるので、00:54:35の〈Dancing In Your Head〉あたりから最後まで聴いてみるのでも十分に堪能できるように思う (YouTube画面左下の 「…もっと見る」 をクリックして時間表示をクリックすると各曲毎のリンクに飛ぶことができる)。


宇多田ヒカル/SCIENCE FICTION
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Ornette Coleman/Science Fiction
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サイエンス・フィクション (特典なし)




Ornette Coleman/JazzBaltica 2008
https://www.youtube.com/watch?v=yDVBrOnVdR8
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末尾ルコ(アルベール)

宇多田ヒカルはCD TVで「First Love」をうたうのをみましたが、前にも書きましたけれど、本当に神々しく感じます。その歌唱には心をかきむしられるかのごとき痛切な響きがあり、うたう表情も深く美しい。

Ornette Coleman/Science Fictionは名盤中の名盤ですね。またじっくり聴き込んでみます。JazzBaltica 2008も視聴いたしました。オーネットの映像を細かく追っていたわけではないので比較は難しいですが、達観したようなオーネットの表情が味わい深いです。ドラムスも凄いですね。

ポリーニ、しょっちゅう視聴してます。いかにも偉大な巨匠然とした佇まいながら、弾き始めると指先、そして手全体がとても柔らかに動くのに驚かされます。RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2024-04-14 10:06) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

宇多田がアルバム《First Love》をリリースしたのは
15歳のときでしたが、それから25年も経つと
それなりに人生経験も積んでそれが歌唱に反映されるのでしょう。
デビューのときも驚異でしたが、
その当時の曲が全く古くならないことも驚異です。

オーネット・コールマンについては
実は私はあまり良くわかっていなかったのです。
もちろんずっと、いわゆるフリージャズの奏者として
演奏を続けてきたのですが、
コルトレーンやドルフィーに較べると
聴きたいという意欲があまりなかったのです。
それがどこで変化したのかが自分でも覚えていないのですが、
あ、これ、すごいよね、という瞬間があったのです。
それとブログ本文にも書いたのですが、
コルトレーンやドルフィーの音は苦悩の表出という印象ですが、
オーネットにはそれが無いのです。
だからといっておバカな音楽というわけではなくて、
何かもっと違うもので、その音にやられてしまいました。
音のフレーズの畳みかけ方は、全く違うのですかれど、
パーカーと同じ方法論だと私は思うのです。

ドラムスのデナード・コールマンはオーネットの息子です。
最初期は、あんなヘタなドラム、とか言われていましたが
ずっと父親の下で演奏し続けました。
いわば不動のユニットです。

ポリーニは古い曲から新しい曲まで
わけへだてなく演奏するという姿勢が尊敬できました。
NHKのドキュメント風な放送のとき、
山下洋輔風な演奏をしなければならない現代曲で、
軍手みたいなのをしていたのが印象的で
いまだによく覚えています。
薄い手袋ではなくて、厚手の 「軍手」 なんです。
ヒジ打ちもやりました。(笑)
東京文化会館でのコンサートに行ったとき、
調律がよくないとのことで1時間くらい開演が遅れました。
でも会場は、ポリーニだからしかたがない、という空気でした。
by lequiche (2024-04-15 03:36)