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コラージュとドット — honobono展2013 [アート]

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さて、ごくプライベートで身近な話題ですけれど 「PCを捨てよ、町へ出よう」 ということで、ハロウィーンの日に、銀座で開催されている大和田理恵さんというお友達の絵画展に行ってきました。銀座といっても新橋に近いあたりで……って、これじゃ昨年と同じ書き方ですが (昨年の記事は→2012年11月23日ブログ)。

気の合った仲間たちの、今年はひとり増えて7人の展示で、これも昨年書いたことですが、それぞれの個性が違っていてヴァラエティに富んでいます。同じ美大という共通項があるのだとしても、それが継続しているのはすごいことです。継続は力なり。私なんかがここに書いても宣伝にも何もならないとは思うんですが、とりあえずレポートということで。

     *     *     *

今年もメインはデカい作品が2点。そのうちの1点は単純なキャンバスではなくて、真四角な木枠が3×3に分割されていて、さらにその中に小さな絵が2×2になって分散されてハメ込まれている。丸いお皿のような立体も幾つか紛れ込んでいて、全体は標本箱のようでもあり、私はこれを見て 「松花堂弁当」 と言ってしまったが失礼だったかもしれない。でも我ながらすごく的確な比喩なのでここでも使ってしまおう。

絵の表面を覆うドットとか格子模様は彼女のメインツールである。ドットはポルカドットかもしれないし、それともピンホールなのかもしれないが、ともかく覆うこと。昨年の作品ではただ描き込むことでは飽きたらず、実物のネットを絵の表面に付けてしまったが、今年はそこまでには至らないけれど、でもひっそりとあちこちにこの 「覆い」 が存在する。
小さな絵の元となるのはフィールドワークした写真が素材になっていたりして、しかも例えば 「顔のかたちに見える家」 とその前にいる 「自転車に乗った親子」 は2つの絵に分散されていて 「自転車に乗った親子」 はさらに反転した陰画のようになって利用される。
これは一種のコラージュなのだろうか。どんどん分割していくことで、それはつまりPC的な動作表現でいえば、コピペして増殖したものを変形させていることになる。

もうひとつ興味を引くのは、自分の制作過程を写真に撮っておくことによって、だんだんと絵の作成されてゆくのを記録してあることである。それは秘密のノートになって記録されていて (秘密じゃないか)、つまり一種のテンポラリー・ファイルである。
今年の作品は、色が鮮やかで随分描き込まれているように思えるし、絵はどこが完成形かという設問がよくあるが、昨年よりも完成形の終着点が随分後ろになってきたように感じた。

そこで話したことなのだが、たとえば芸術でも音楽とか演劇は1回性の、いわゆる瞬間芸術なところがあってundoが効かない。でも絵画とか文学は制作過程で元に戻ることができる、つまりundoができるとその時は思ったのだけれど、でもそれはやっぱり違う。
色が気に入らないと気づいて、ある色の上に違う色を乗せていくと下の色は隠せるのだが、でもそれは上に塗った色を1色だけでただ塗るのとは違うし、その厚みを最初から出そうとする技法もある。
ということは、実は絵画だってその消費される進行過程の時間軸はlinearでしかなくて、絵を描くということも不可逆性なのだ。デジタルで描いた場合しかundoはありえない。

では文学ではundoが効くのだろうか。私が考えていた小説——というより一種のメモワールのようなものとしての技法なのだが、ひとつの時点におけるイメージを書いておき、ある程度時間が経ったところで、そのことについて回想したことをまた書くことによって、自分の目から見ればそこに時間の重層化が起こる。ただそれは極私的なシステムでしかなくて他の読者には認識できないので、それを普遍化できないかということなのだ。これは私なりの自動記述で、シュルレアリスムの自動記述とはたぶん違うと思う。
そして文学作品の終わりがどこかというと、それは書籍として定着させてしまうというのがひとつの帰結点だが、それを曖昧にしてしまうのがこうしたネット上のテキストデータであったりする。私はこのブログでも後からこっそりと少しずつ訂正したりしていて決定稿というのは永遠に存在しない。その、文学作品が重層的であって完成形が無いのではないか、と思わせるのが校本宮澤賢治全集であって、それはバームクーヘンのような地層の重なりで成り立っている。

音楽の場合、たとえばビートルズの《レット・イット・ビー/ネイキッド》のようにundoが効くようにも思える。だが、幾ら元のトラックからあらたなミキシングが可能だとしても、ミキシングする時期が異なっているのだから真実のundoはやはり得られないことになる。というようなことを私はぼんやりと考えていた。
つまり私たちの乗っているこの歴史という時間はundoができないという平凡な結論に達してしまうのである。何かだんだんと本来の絵画展のことから離れていくなぁ。

ということでお知り合いのかたも、そうじゃない人も是非行ってみましょう。絶賛開催中です。

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honobono展
2013年10月29日(火)〜11月4日(月)
11:00〜19:00 (最終日15:00まで)
月光荘こんぱる画室
東京都中央区銀座8-7-5 金春ビル4F
画室直通 TEL: 03-3571-1116 (会期中のみ)
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コメント 3

miel-et-citron

先日はお祝いコメントを頂きまして、ありがとうございました☆
月光荘はホルンマークで有名な画材屋さんですよね。
ギャラリーもあるのは初めて知りました。
ご友人のかたの作品、ドットや格子模様を使う作風で素敵ですね。
ドットや格子のようなチェック、縦縞のストライプは
普遍的なものなので、自分も好きなので
身の回りはそう言ったものばかりです(*^-^)

by miel-et-citron (2013-11-03 22:23) 

SORI

lequicheさん こんにちは
大きな作品ですね。最初の写真では大きさが判りませんでしたが、次の写真で納得でした。気の合った友達同士というのはいいですね。
by SORI (2013-11-04 12:49) 

lequiche

>> miel-et-citron 様

こちらこそいつも参考になるブログをありがとうございます。
これ買いたい! というものがよくあります。

月光荘というのは画材屋さんなんですね。
知りませんでした。(^^)
画材販売と並列してギャラリーもやっているのでしょうが、
やはり銀座は画廊の街の雰囲気があると思います。
それと、近くにおいしいレストランもたくさんあるとのことで
毎日食べに行ってるみたいです。

あ、なるほど。ドットやチェック、ストライプは、
まず衣服などの柄のスタンダードですね。
好きな柄で飾り付けてしまおう、
という意味あいもあるのかもしれません。(^^)


>> SORI 様

そうなんです。
ギャラリーは4階にあるんですが、
ビル付属のエレベーターに乗らないのだそうで、
階段から運び入れたのだそうです。
これ以上大きくすると今度は家のドアから出ないのだそうで、
これが限界と言うことですが・・・・。(^^;)

美大卒業後も続いているグループとのことです。
絵を描く楽しみというのが伝わって来て素敵ですね。(^^)b

by lequiche (2013-11-04 14:16) 

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