So-net無料ブログ作成

君の瞳の昼と夜 — 小西康陽 [音楽]

SayaIchikawa_150713b.jpg
Saya Ichikawa (nanouniverse.jpより)

『ストレンジ・デイズ』の8月号にPIZZICATO ONEの記事が載っていたのを読んだ。PIZZICATO ONEというのは小西康陽のソロ・プロジェクトの名称である。ひとりだからFIVEでなくONEということ。

それによれば今回のアルバム《わたくしの二十世紀》は、最初《わたくしのビートルズ》というタイトルにしようと思っていたのだという。小西によってコンパイルされた何人もの歌手に歌わせたそれぞれの歌の集合が、20世紀の音楽を形成していてそれが彼の音楽の原点でもあり拠り所でもあるということなのだ。それに《わたくしのビートルズ》だとビートルズというワクに限定されるし、佐藤信に 「あたしのビートルズ」 という戯曲もあったしね。

ということよりも、小西康陽の20世紀の芸術の定義に心が動かされる。

 フィルムで映画を撮って、映画館で映画を見る。録音した音楽を聴く。
 活字で印刷された本で物語を読む。これって20世紀の楽しみだったと思
 うんですよ。20世紀の中でピークを迎えて、そしてだんだん廃れて行っ
 て、今や次のメディアが出来て、死に絶えてゆく感じですけどね。(p.083)

モノクロームな、東京に降る雪のジャケットで装われた《わたくしの二十世紀》。録音メディアとしてのアナログディスクやCDは滅びつつあるが、21世紀はそうしたメディアが衰退するだけにとどまらず、やがて物語や録音した音楽を楽しむという行為そのものが無くなるかもしれないと彼は言う。そして20世紀の、たとえばビートルズはその楽曲を録音して発売するというシステムに拠っていたカルチャーであり、それが楽しかったのだと過去形のニュアンスを滲ませて語っている。インタヴューアーが書いているように、これは一種のレクイエムなのだ。

ピチカート・ファイヴというのを私はほとんど知らなくて、といってもまるで知らないわけではなく、中古盤である程度の知識はあるのだが、そのムーヴメント自体を知らない。つまりそうしたシーンとは無縁だったからである。
だがたとえば〈Can’t Take My Eyes Off You〉はフランキー・ヴァリでなく、小西康陽のプロデュースしたZARDの印象が強烈で、その12インチシングルが、今は亡き石丸電気にディスプレイされて売られていたのを覚えている。あれ買っておけばよかったなぁ。

タモリ倶楽部で鉄道少女の印象を強くした市川紗椰を最近TVで見る機会が多いのは、きっと今、売り出し中だからなのだろうが、ステラ・マッカートニーのツバメの刺繍のワンピースは、つまり列車の 「つばめ」 なのだというこだわりが楽しい。
小西康陽がその市川紗椰をプロデュースしたのが〈夜が明けたら〉という浅川マキの歌のカヴァーで、それはなによりも歌詞に 「汽車」 という言葉が入っているからに違いない。そしてタワーレコードがやっぱりマニアックだということもわかってくる。
この軽さのきわみのカヴァーの前では寺山修司の影などまるで消えていて、情念のようなものなど表向き感じられなくて、だからそれはきっと21世紀でも小西康陽が健在であることを示している。


Pizzicato One/わたくしの二十世紀 (ユニバーサル ミュージック)
わたくしの二十世紀




ストレンジ・デイズ 2015年08月号 (ストレンジ・デイズ)
ストレンジ・デイズ 2015年 08 月号 [雑誌]




市川紗椰/夜が明けたら
https://www.youtube.com/watch?v=pf-5_JD_Ay8

Pizzicato One/わたくしの二十世紀
http://www.jetsetrecords.net//p/812005076382
nice!(58)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 58

コメント 3

lequiche

>> desidesi 様

渋谷系というのだと思うんですが私にはよくわからない世界です。
でも、追っかけというのはいいですね。
気恥ずかしさを突き抜けたところがカッコイイです。\(^^)/
ライヴなんてその時その場にいたという雰囲気だけが残っていて
具体的なことは忘却の彼方に行ってしまうというような
その儚さがいいんです。
by lequiche (2015-07-14 02:09) 

Speakeasy

『ストレンジ・デイズ』毎号買ってるんですけど、小西康陽の記事飛ばしてしまって読んでませんでした。後から、確認しましてPIZZICATO ONEの話題が載ってたのでびっくりでした(笑)私は彼の音楽を熱心に聴いたことはありませんが、彼の好きなソフト・ロックなどの音楽センスに共鳴するところがあります。

市川紗椰はNHK Eテレで放送された『ニッポン戦後 サブカルチャー史』(講師:宮沢章夫が独断と偏見で強引に話しを進めたサブカル談義は本当に面白かった。)に出演していたので知りました。オタクのイメージを崩す綺麗な人ですね。

by Speakeasy (2015-07-17 21:56) 

lequiche

>> Speakeasy 様

雑誌なんて、いつも全部読むわけではないですからね。(^^)
私も小西康陽のセンスは素晴らしいと思うのですが、
でもピチカートを聴いても、洗練されているのは感じるのですけれど、
何度も繰り返して聴くかというとそうでもないんです。
それは彼の音楽が時代性に左右されていて、
そのシーンにいないと共感できにくいからなのかもしれません。

ただZARDの《君の瞳に恋してる》は2ヴァージョンあって、
だからこのブログタイトルが「君の瞳の昼と夜」なんですが、
2種類の別リミックスみたいなもので、
こういうアプローチってすごいなぁと思うんです。

この頃は外見がオタクっぽくないけれどオタクっていうのが
いいみたいです。
そうした傾向は、中川翔子あたりからですね。
あと、加藤夏希とか。(^^)
by lequiche (2015-07-18 10:51) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0