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ダークな音 — トマス・スタンコ Litania [音楽]

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トランペットの音色を表現する言葉に 「ダーク」 というのがある。主に楽器そのものの特徴を言うらしくて 「ダークな味」 とか 「ダークトーン」 というふうに使う。でもたとえば 「マイルス・デイビスはダークな音だ」 という表現もあるようだ。この場合はマイルスの出す音がダークだというだけでなく、音楽そのもののイメージも含めて形容しているといえるだろう。

音色そのものがダークなのか、それとも音楽性がダークなのかわからないが、ともかく聴いた途端 「これ暗いわ」 と思わせるトランペッターにトマス・スタンコがいる。私がスタンコを初めて聴いたのは、FMで流れていたリュブリャナ・ジャズ・フェスティヴァルのライヴだったと思う。聴いただけで異質な空間に引っ張り込まれるような暗い輝きの音。いかにもECMらしい音といえばそれまでなのだが、たとえばヤン・ガルバレクなどと同様、音だけで誰だかわかる、とても特徴的な音色を持ったプレイヤーである。

スタンコはポーランド人だが、同じポーランドのクシシュトフ・コメダの曲を集めた《Litania》は、しっとりとした感触を持った 「ダーク」 なアルバムである。コメダはアンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキーの映画音楽も書いていて、このアルバムでもポランスキー映画の曲から3曲が採られている。美しいメロディラインだ。

演奏はセプテット (7人編成) でピアノはボボ・ステンソン。彼は、私の聴いた印象では、自己のアルバムでよりもサイドメンとしての演奏のほうが輝いていたりすることが多い。

スタンコのスタンスは、ジャズのフォーマットではあるのだがジャズらしい熱さのようなものはない。といって、ダークといっても暗くて陰湿な音楽というのでもない。幻想的というのとも少し違って、しっかりと醒めている。あるのは、ただ、透明度の高いシンプルなトーンの連なりだけだ。こういうのを乾いた憂鬱とでも言えばいいのだろうか。


TVP (Telewizja Polska) の映像:
http://www.youtube.com/watch?v=vA8QoeZEwzc

Tomasz Stańko/Litania — Music of Krzysztof Komeda
http://www.hmv.co.jp/product/detail/472902
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