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あなたのアイドルたちに — ジェーン・バーキン Ex-fan des sixties [音楽]

JaneBirkin.jpg

初めてその曲を聴いたのは安田成美の〈ginger〉という大貫妙子プロデュースのアルバムだった。その1曲目が〈思い出のロックンロール〉というタイトルになっていて、60年代の歌手やグループの名前の羅列だけの歌詞——なにこれ? と思わせることでインパクトはあったのかもしれない。原曲はジェーン・バーキンの〈Ex-fan des sixties〉である。

最初、カヴァー曲だとは思っていなくて、ゲンズブールの曲とわかってからも不思議な曲だなぁというのが率直な感想だった。大貫妙子はなぜこれを1曲目に持ってきたのだろうか、という疑問も少しあったかもしれない。
それでセルジュ・ゲンズブールが作ったジェーン・バーキンへの曲の中で、最も手抜きな歌詞といったら断然この Ex-fan des sixties だと思ってしまって、それは私の中で随分長い間続いた。そのときは何もわかっていなかったのだろう。この曲は1978年の作品でバーキンの同名のアルバム《Ex-fan des sixties》の冒頭のタイトル曲である。

60年代のロックンロールが懐かしい。あの頃のひとたちはどこに行ってしまったのだろうか、というだけの内容で、その後に名前の羅列が続くのだが、その選択の仕方にゲンズブール独特のものがあって興味を感じる。

とりあえず、まず歌詞を載せておく。ちょっと気になる個所が幾つかあるのだが、ネット上にある歌詞はコピー元が同じらしくほぼこれなので、それと私はオリジナルの〈Ex-fan des sixties〉の入ったCDを今持っておらず参照できないので、ネットで流通しているデータのままにしておく。

Ex-fan des sixties
petite Baby Doll
comme tu dansais bien le Rock ‘n’ Roll
ex-fan des sixties
où sont tes années folles
que sont devenues toutes tes idoles -

où est l’ombre des Shadows
des Byrds, des Doors
des Animals
des Moody Blues
séparés Mac Cartney
Georges Harrison
et Ringo Starr
et John Lennon -

ex-fan des sixties
petite Baby Doll
comme tu dansais bien le Rock ‘n’ Roll
ex-fan des sixties
où sont tes années folles
que sont devenues toutes tes idoles -

Disparus Brian Jones
Jim Morrison
Eddy Cochran
Buddy Holly
idem Jimi Hendrix
Otis Redding
Janis Joplin
T.Rex
Elvis

大貫妙子の訳詞 (というか翻案詞) では1番と2番が違うのだが、原曲は前半部は全く同じ詞である。ゲンズブールの詞は例によって全てに韻が優先する。Doll, Roll, folles, idoles である。それとリエゾンによって生じるザ行の連鎖があって、sixties⌒où, tes⌒années, tes⌒idolesと続く部分が美しい。
さらに petite Baby Doll と toutes tes idoles が petite と toutes という t の重なる単語が前置されていることにより、(しかもバーキンはさりげなく、けれど比較的しっかりと発音しているので) その後の Baby Doll と tes idoles が関連して感じられる。

大貫妙子の訳詞の1番は

あなたのアイドルたちに
わたしも恋してた
二人で踊ったわね
あの日 SIXTIES Rock’n Roll

秀逸なのは半過去の dansais を 「踊ったわね」 としているところで、これはある意味、歌詞というステージでの利点である (「〜わね」 は女言葉だが、もし男言葉で代用するなら 「〜よね」 だろうか。だが 「〜よね」 だと何となく限定的な時間を示し過ぎる。日本語の繊細な部分だ)。プルーストで時として妙な翻訳があるのは半過去が日本語に移植できないからに過ぎない。
ただ、ゲンズブールの tu と大貫の 「あなた」 とはニュアンスが違う。思わず tu は誰かと見返してしまうのだけど、直訳しているわけではないので、逆にこういうふうにさらっと即応した歌詞が作れるところに大貫のしなやかさを見るのである。toutes tes idoles という最後の部分の意味が、大貫詞では最初になっていて、そのかわりに ex-fan des sixties を最後に持ってきていること——つまり倒置されているのは日本語の語順の性質からすると当然なのだけれど、それを歌詞としてさりげなく当てはめている。
もっとも大貫妙子の作詞の中に現れる 「あなた」 は、特殊な意味あいがあると思うのだが、それについてはややこしくなるのでここでは書かない。

歌詞後半の名前の羅列の部分は、単純に好きな名前、思いつく名前を連ねたともいえるし、メロディに乗る名前を考えたとも思えるし、この大雑把なのか繊細なのかよくわからないというのがゲンズブールのスタイルである。私はたぶんゲンズブールは雑なのだと思うのだが、雑なのだけれど閃きだけでこれができてしまうという人なのだと思う。

最初の où est l’ombre des Shadows というのは単なるシャレである (ombre は影のこと) と思う。ポール・マッカートニーがなぜ姓だけなのか、とか、エルヴィスがなぜ名前だけなのか、とか、ツッコミどころはたくさんあるのだが、これでいいのだと思わせてしまうのがまさにゲンズブールの 「雑な天才性」 なのだ。
Disparus の後、最初にブライアン・ジョーンズの名が出てくるところがゲンズブールの嗜好を示している。Disparus Brian Jones というフレーズは乾いていて、そして悲しい。


Jane Birkin/ex fan des sixties (Fontana France)
Ex Fan Des Sixties




narumi yasuda/ginger (徳間ジャパン)
 【中古】美品! ジンジャー/安田成美CDアルバム/邦楽




安田成美/ジィンジャー
gingerは現在廃盤であり入手がしにくいのが残念である。尚、アナログディスクもある。


Jane Birkin/Ex-fan des sixties
http://www.youtube.com/watch?v=20GXOnm3MRM
安田成美/思い出のロックンロール
http://www.youtube.com/watch?v=fEmqUrGqA5M
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