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オーネット・コールマン《Chappaqua Suite》を聴く [音楽]

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Ornette Coleman

昨日の記事に書いたオーネット・コールマンの〈Lonely Woman〉という曲は、彼の代表作のひとつであるが、独特な音色、メロディライン、リズム感、そのどれをとっても一度聴いたら忘れられない特徴を持っている。

オーネットがデビューした頃、彼の造り出すメロディはアヴァンギャルドで、痙攣的で、何を訴えているのかわからないと排斥された歴史があったのだと聞いたことがあるが、たとえばブルーノートの1965年のストックホルムでのライヴ盤《At the “Golden Circle”》を初めて聴いたとき、とてもそういう印象は持てなかった。
簡単にいえばこの2枚のライヴ演奏はオーソドクスとまではいえないけれど、ごく通常のジャズイデオムに則ったインプロヴァイズでしかなかったからである。たとえば〈Faces and Places〉を聴いていても、彼特有の音配列と時々長く伸ばして吹かれるワントーンのパターンは顕著だが曲全体は一定のリズムで爽快にスイングしているし、ダーティな音に堕することもない。でもすでに50年も前の演奏なので、この当時は相当にエキセントリックな音楽としてとらえられていたのは仕方のないことなのだろう。

むしろオーネットのアヴァンギャルド性は、《Town Hall 1962》とか《Croydon Concert》などで聴かれる現代音楽寄りの弦楽の使用とか、延々と吹き続けるタウンホールでの〈Ark〉のような、ややジャズの定形からわざと外れようとする部分に感じられる。
そうした作品のひとつとして《Chappaqua Suite》がある。

チャパカ組曲はコンラッド・ルークスという人の監督兼主演作品である映画《Chappaqua》のサウンドトラックとしてつくられた作品である。だが、オーネットの演奏がその映画に使われることはなく、つまり没になってしまった音楽なのだが、その音楽のみが発売されていて、おそらくサントラとして作られた元の映画よりは有名だ。
私の持っているCDは仏コロムビア盤 (Sony France) なのだが、このアルバムはもともと原盤がフランスなのだという。

最初のLPは2枚組でCDも同様だが、Part IからIVまで、ジャズのリズムセクションに弦楽を加えた演奏をバックにして、オーネットのソロがずっと続くという構造をとっている。垂れ流しのようでいて、そうではない。
映画の画面とどのようにシンクロしているのかが不明だが、映画の長さと演奏はほとんど同じで、つまりオーネットの構想としては (監督の構想だったのかもしれないが)、ずっと音楽が流れ続けている映画という形式なのである。

ただサントラであったということを離れて、純粋にこれだけを聴いているだけであっという間に時間が過ぎる。これを私が最初に聴いたのは、どこかのジャズ系の店で、私はまだオーネット・コールマンという人をよく知らず、アルバム《The Shape of Jazz to Come》くらいしか聴いたことがなかったので、チャパカの切れ目なく続くソロに圧倒されながら、これは何だろう、という興味と当惑と半々だったような記憶がある。

オーネットは後にデヴィッド・クローネンバーグの映画《Naked Lunch》の音楽をハワード・ショアとともに担当しているが、同じクローネンバーグにはJ・G・バラードの原作による《Crash》がある。この音楽もハワード・ショアで (というかショアはクローネンバーグ組なわけで)、インダストリアルな印象があったのを覚えているが、映画自体は私にはよくわからない。あたりまえだがクローネンバーグの解釈によるバラードの世界という気がする。

今日、たまたまオーネット・コールマンのことを書いているブログに巡りあって、そのチャパカ礼賛とも思える内容に影響され、興味をかき立てられたので、あらためて聴いてみた感想がこの記事の動機である。
ゴールデン・サークルと同様に、チャパカもよく考えて作られていて、オーネット・コールマンという人は相当に構造的で冷静な音楽を作る人だとあらためて思う。決して感情に激して吹きまくるということがない。音のフリーキーさに惑わされるかもしれないが、その本質はそうである。
といって現代音楽的な外装をしている部分もあるが、そのルートとなっているのは伝統的なジャズであって、パーカーとは違うが、サキソフォニスト特有の方法論が感じられる。


Ornette Coleman/Chappaqua Suite (Fivefour)
Chappaqua Suite




Ornette Coleman/Faces and Places
https://www.youtube.com/watch?v=89CoJCdGmfY
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シルフ

オーネット・コールマン好きだったなぁ。スタン・ゲッツも。
by シルフ (2015-03-15 01:56) 

lequiche

>> シルフ様

何でもご存知ですね〜、シルフさんは。
まるで歩く百科事典のようで。
あ、それはピーター・バラカンでした。(^^;)

それじゃフランソワーズ・アルディはどうでしょうか?
by lequiche (2015-03-16 02:51) 

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