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ミレーヌ・ファルメール&スティング ― Please take me dancing tonight [音楽]

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Mylène Farmer (2015)

迷走台風は去っていったが、その湿気がずっと残っていて、車のなかはエアコンの冷気が水滴を作って曇っていた。書店で、目についた本を買ってしまい、肝心の買うべき本を忘れてきてしまったことに気がつく。きっとすべては台風のせいだ。

ミレーヌ・ファルメールの〈Stolen Car〉はスティングのアルバム《Sacred Love》(2004) に収録されているヒット曲のカヴァーである。そしてスティング本人とのデュエットになっていて、ファルメールのアルバム《Interstellaires》(2015) に収録されている。
Late at night in summer heat とはまさに今の時期の歌のように思えてしまうが、ファルメールのPVは夏っぽさとは無縁の映像だ。

色の無い車の列と金属的な輝き、犬の鳴き声。歌はまさにスティングの蒼白の世界で始まるが、don‘t be afraid で2人の声が重なると、俄然、ファルメールの雰囲気になってくる。
スティングの歌う部分は英語詞、ファルメールの歌う部分はフランス語詞になっているが、そのつながりが自然でぎくしゃくとしたところがないのがさすがである。

2番の、英語詞でいうと
Oh the smell of the leather always excited my imagination
の部分からファルメールのリード・ヴォーカルに代わって
Oh le cuir doux s’en mêle, Affole ton imagination
となるが、ファルメールの J’ai ce feeling~という個所のジェという発音がファルメールの特徴のひとつだと私は思っていて、ここだけでも彼女の個性が光る。

そしてサビの
Please take me dancing tonight I’ve been all on my own
に来ると音が完全にファルメール節になってしまうのが不思議だ。スティングのオリジナルな歌唱のときはそれはスティングのメロディで、そうならないのに。歌の後にからまるチープにも聞こえるシンセの音がファルメールの影を余計に醸し出すのかもしれないが。
フレンチにおけるこうしたシンセの使い方は、昔から、素材そのままにあられもなく使ってしまう傾向があって、それはフランス人の無造作に過ぎないのかもしれないのだが、そうした無作為さがかえって作為的に聞こえてしまうのは意識と無意識の境界線のようで面白い。

ただ、スティングのオリジナルは、
So here am I in a stolen car at a traffic light
以下が、一種のコーダになっていて、この部分が異質でいいのだが、ファルメールのカヴァーでは Please take me dancing tonight で終わってしまっている。
それと
I’m just a prisoner of love always hid from the light
の個所は、
スティングの I’m just a prisoner of love に対して、
ファルメールが Prisonnière de mes failles
と応答していて、その後、2人で歌う Take me dancing の部分につなげるようになっている。

PVもスティングのとファルメールのでは随分印象が違うように思える。そのアプローチにそれぞれの個性が如実にあらわれているし、ファルメールの色はその音と同じように、いつも変わらない。


Mylène Farmer/Interstellaires (Polydor france)
Interstellaires




Mylène Farmer & Sting/Stolen Car
https://www.youtube.com/watch?v=HQkkmYIu95I#t=84

Mylène Farmer & Sting/Stolen Car NRJ music Awards 2015
https://www.youtube.com/watch?v=K0J86CXRnsw

Sting/Stolen Car
https://www.youtube.com/watch?v=HijvesSMSQA
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末尾ルコ(アルベール)

スタジオライブのファルメール、セクシーですね~。そしてこの歌唱。フランスならではと言うか、フランス人以外ではまず聴くことのできない「芯のある脱力」とでも言いますか、故郷へ帰ってきたような気分になります。しかし考えてみたら、フランスにもピアフ、グレコ、あるいはパトリシア・カースなどのような歌い方もあるし、それでいていずれも「フランスらしい」と思えるのが凄いですね。  RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-08-31 08:13) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

むしろ、人それぞれに違うというのがフランスなのかもしれません。
さらにフレンチ・ポップスの特徴のひとつとして
「ムダにセクシー」 (笑) というのがありますが、
ファルメールはその典型ですね。
ずっとデカダンというか、その美学を崩さないのは立派です。

ファルメールのステージングはものすごく大がかりで、
J-popだと松任谷由実や浜崎あゆみにその模倣が見られましたが、
あくまで模倣の範囲に過ぎません。
たぶん、山咲千里もファルメールを意識していたと思います。
ファルメールは日本ではほとんど知名度が無いのと、
ステージングが大がかり過ぎるために日本公演は不可能でしょう。
ライヴを観るためだけにフランスに行くファンも多いようです。

以前のブログにもリンクしましたが、
次の動画はフランスドゥーのスタジオライヴです。
ステージのハイライトと、最も有名な曲のひとつである
〈Ainsi soit-je〉と完璧な脚 (^^) を観ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=FyzYNvEdkwo

以前のブログは
http://lequiche.blog.so-net.ne.jp/2012-05-18
by lequiche (2016-08-31 10:39) 

般若坊

lequicheさん こんにちは。Niceをありがとうございました。
本日あなたにいただいたこのNiceは、私にとって記念すべき20,000目のNiceになりました。
毎回の投稿に対して、多くの方々からいただいたNiceのおかげであると、感謝申し上げます。 ^^
by 般若坊 (2016-08-31 11:18) 

lequiche

>> 般若坊様

こちらこそいつもありがとうございます。
そうですか。ちょうど区切りだったんですね。
おめでとうございます。
これからもますます良い記事を重ねられますことを
期待しております。(^^)
by lequiche (2016-09-01 04:11) 

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