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深い森とモロッコの夢 [音楽]

DAI_180716.jpg
Do As Infinity

ニュース記事で伴都美子の名前を見た。Do As Infinity といえば〈深い森〉だ、私にとっては。
日常的に森など知らない私なのに引き付けられる森という名詞。「羊と鋼の森」 もそうだし、「世界の合言葉は森」 もそうだ。森の木陰でドンジャラホイというのは人間椅子だけれど……。

あの頃のavexは金太郎飴だったのかもしれないがポテンシャルを感じさせる何かがあって、それは幻想だったのだと今になると思えるのだが、つまり社会的にはavexが栄華を極めていた頃である。BoAの1stアルバム《Listen to My Heart》(2002) は彼女の唯一の傑作アルバムで、そのあたりからavexに翳りが見えてきたのはCCCDを採用した結果である。なぜなら少なくとも私はCCCDを買わなかったから。たとえば椎名林檎も《加爾基 精液 栗ノ花》だけ買っていない (その後、通常盤が再発されたらしいが)。

〈深い森〉は Do As Infinity (以下、DAI) の3枚目のアルバム《DEEP FOREST》(2001) に収録されているが、最初に聴いたのはたぶんアニメ《犬夜叉》のEDだったからだと思う。最近のピアノ関連の小説といえば『羊と鋼の森』と『蜜蜂と遠雷』だが、このアルバムの最初の曲は 「深い森」、最後の曲は 「遠雷」 で、偶然とはいえ面白い。
でもDAIのデビュー曲は〈Tangerine Dream〉(1999) というのだ。その後も〈Heart〉〈Oasis〉と続くのだが、ミスチルのパクリ曲名ほどのインパクトがないのはそれがバンド名だからだろう。だから曲自体とタイトルとの関連性はあまり無いような気もする。《DEEP FOREST》は繰り返し聴いたアルバムだが、でもそんなに深く聴いていたのかというと甚だ心許ない。他に思い入れるものが無くて、空虚ななかで聴いていたような時代だった気がする。だが今聞き返してみると懐かしい。それが音楽というものなのかもしれない。

タンジェリン・ドリームはまだそれが何だかもわからない頃、ライヴに行ったことがある。どんな曲をやったのかというような記憶は欠落しているが、それは全く異質な音で、こういう音楽もあるのかと思ったのだが、でも難解ではなく、アンビエントの始まりというふうに捉えてもいいのだと思う。
その頃、JUNグループにややトリッキーな George Sand というブランドがあって、その路面店があったことをかすかに覚えているのだが、怖くて入れなかった。まだオコチャマだったので。

タンジェリン・ドリームはいまだに現役で、最近のアルバム《Quantum Gate》をYouTubeで聴いてみたが、相変わらずで少しホッとする。ヴァイオリンの山根星子は現メンバーのひとりである。
タンジェリンはマンダリンの一種であるが、音楽でマンダリンといって連想するのはバルトークの《中国の不思議な役人》(Der wunderbare Mandarin) であり、そしてタンジェリンはタンジール、つまりモロッコであるから、それから連想するのはブライアン・ジョーンズの《ジャジューカ》である。


Do As infinity/Deep Forest (avex trax)
DEEP FOREST (マスターピース・シリーズ)




Do As Infinity/Tangerine Dream
https://www.youtube.com/watch?v=PgGo8EHVNac

Do As Infinity/深い森
https://www.youtube.com/watch?v=qIoDWTF0qSo

Tangerine Dream/Tear Down the Grey Skies
https://www.youtube.com/watch?v=EATh6aMCBXM

Tangerine Dream/Dentity Proven Matrix
https://www.youtube.com/watch?v=PwSMmw0TjO0
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末尾ルコ(アルベール)

タンジェリン・ドリームといいますと、映画『恐怖の報酬』(『Sorcerer』)のサントラで知りまして、この作品はアンリ・ジョルジュ・クルーゾーの大傑作をハリウッドでリメイクしたものですが、それなりに愉しめました。
子どもの頃は、映画音楽から世界の様々な音楽への興味へ連れて行ってもらったという経験はよくありました。
例えば、アラン・ドロン主演の『ル・ジタン』の音楽はジャンゴ・ラインハルトでしたし。
そういうことから、自然に素晴らしい音楽に接するという機会は大切ですよね。
タンジェリン・ドリームのライブへ行かれたということで、でもこのバンド、現在も活動しているのですね。
以前のわたしは、シンセの音にとても敏感な時期がありました。
プログレはわたしはピンク・フロイド派で、ELP派の同級生が、「フロイドにはテクがない」と小馬鹿にしていたことをよく覚えていますが、現在、フロイドやロジャー・ウォーターズは比較の対象がないほどの巨大な存在になってしまいましたが、ELPは顧みられることが滅多になくなりました。

人間椅子というバンドは知らなかったので視聴してみました。おもしろいですね。
乱歩の「人間椅子」はツッコみどころ満載で、もちろんそれは多くの乱歩作品に言えますが、子どもの頃に読んだわたしは、(別に好きな女の人がいても、椅子の中に入ってまで座ってもらいたいとは思わないが)という感想でした(笑)。せっかく椅子の中に入ってるのに、女性がぜんぜん座ろうとしなかったら困るだろうなとか(笑)。

森とか湖とか泉とか・・・子どもの頃から憧れのイメージです。なにせ高知にはそんな雰囲気まったくありませんから。
やはり欧州の森、恐怖と魅惑がともに息づく黒い森とか・・・現実には恐怖だけだったのかもしれませんが、欧州中世史関連の本を読むと、当時いかに深い森が人間の前に立ち塞がっていたのかよく理解できます。

「torivago」 って知りませんでしたので、YouTubeでチェックしてみました。初めて耳にしましたのですが、「キモチ悪い」というお気持ちは分かるような気がします。
言葉に対する感覚は嗜好などの問題もありますが、何よりもわたしは何らかの言葉に対して、「美しい」「心地いい」などという肯定的な感覚を抱けるのと同時に、「キモチ悪い」など否定的な感覚も大事にしたいと思います。目の前にあるからといって、どんな言葉でも出鱈目に使ってしまう無神経さが一番嫌ですね。

そうなんですよね、そもそもCDにデザインだけLPと同じパンフレットを入れてジャケット替わりにしてしまったのが、いわば価値破壊でしたね。

クラウドに関するお話、とても興味深く拝読させていただきました。
ともあれ、コンピュータ業界による「支配」が「当然」という流れはどんどん強化されていて、ほとんどの人たちはその状況に対する疑問すら持ちませんね。
しかしこの前の水害の時にしても、わたしのPCもそうだったですし、非常に多くの範囲で通信障害となり、「ネット任せ」の脆弱さや危うさをあらためて痛切に感じました。「愚民政策」・・・とても納得できるお考えです。
わたしのようなメカ音痴(笑)でも分かることは、「ネット任せ」にしておくと、まずプライバシーを含め一人の人間のかなりの部分が支配されてしまう。
さらに、ネットがストップすれば、多くの人が「限りなくゼロ」に近い状態となってしまう。
ネットについての専門的知識がなくても、そのくらいのこと分かりそうだし、ジャーナリズムが存在するのであれば、そこを突くべきなのですが、lequiche様のおっしゃるとおり、マスメディアは「傀儡」ですから、現在の風潮の助長に奔走しています。
この間もNHKのニュースでやってたんですが、「社員の元気度をチェック」するために、毎朝「笑顔をPCにモニターさせ」て「元気度を測る」システムもあるらしいですよ。
正気の沙汰ではないですね。
「愚民」以下の「家畜」化です、これでは。

>自由な衣服や好みの飲食まで規制される時代が来るような気がします。

この状態も着々と進んでいる感があります。
全世界的傾向なのでしょうが、日本人はお国柄、この状態が既に色濃く出ておりますね。
という議論が最近ありますが、私もそれに賛同します。

>ブックピープルのほうが正しい道だと私は思います。

今すぐネットを捨てるのは困難ですが、私も常に「ブックピープル」の側であり、ノスタルジーではなく真実として、「ネット以前」の支持者です。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-07-16 09:23) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

『恐怖の報酬』という映画は知りませんでした。
原タイトルの 「Sorcerer」 というのは
マイルス・デイヴィスのアルバム名にもあります。
もともと、映画のサントラというのは
音楽として重要でヒット曲もあったようですが
(たとえばアラン・ドロンでいえば
《太陽がいっぱい》のニーノ・ロータとか)、
最近はそうした作品があまり無いようです。
あえていえば《アナと雪の女王》くらいでしょうか。

実はモロッコの夢——タンジェリン・ドリームについては
過去に一度書いています。
https://lequiche.blog.so-net.ne.jp/2013-12-04
そのときはシルフさんに的確なサジェスチョンを
いただきました。
DAIの最初の曲名がタンジェリン・ドリームをであることは
そうした音楽が単に好きだったということ以上に、
何らかの呈示を感じます。
ただ、私はプログレというのはよくわからなくて、
遡ってまとめて聴いたリスナーに過ぎないので、
その本質とかリアルタイムの感触というのは知りませんので、
ピンクフロイドとELPがどのように違うのか、
というのもいまひとつピンと来ないのです。
もちろん違うことは違いますけど。

人間椅子はイカ天の頃に出て来たバンドですが、
実は最近になって、まだ活動しているのを知ったので
ちょっとびっくりでした。
乱歩にはいわゆる奇想というか、
普通の人には考えつかないイマジネーションがあって、
細かい部分よりもその全体像で押し切ってしまう
ということがあるような気がします。

ヨーロッパの森はSchwarzwaldなどに代表されますが、
日本の森よりも、より暗く深いという印象がありますね。
そうした環境が人間の精神に与える影響も
大きいのかもしれません。

torivagoは最近のCMでは 「ゴ」 と発音しています。
やはり聞こえにくいので修正したように思われます。

CDはプラケースが嫌なので、
紙ジャケットという、LPのジャケットのミニチュア版が
作成されることもありますが、やはり何か違うのです。
そのサイズに応じた美的なかたちがあるはずなので、
CDはCDとして独自のデザインをすべきです。
と思っていたのですが、CDはすでに斜陽のようです。
だんだん具体的なモノが無くなっていく時代なのでしょう。

ジャーナリズムは死にました。
骨のあるジャーナリストはいません。
そう言われるのがくやしかったら
まともなニュースなり論説を発表してもらいたいです。
でも、くやしいというような神経を持っているジャーナリストさえ
もはや存在しないように思えます。
まさに 「家畜人ヤプー」 の時代が来ているのかもしれません。

さらなるコンピュータ化によって人間の痴呆化も進むでしょう。
砂防ダムでも、津波を防ぐ防波堤でもそうですが、
それが機能しないと
「想定外の水が」 「想定外の波が」 と繰り返すだけ。
すでに痴呆化していますね。
by lequiche (2018-07-16 17:44) 

英ちゃん

暑中(猛暑・酷暑)お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続いてますね(゚□゚)
水分補給は、こまめにしましょう。
by 英ちゃん (2018-07-19 18:10) 

lequiche

>> 英ちゃん様

ありがとうございます。
そうですね。今年の暑さは異常です。
水を飲まずにはいられないような毎日です。(^^)
by lequiche (2018-07-20 02:06) 

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