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今夜雨が止んだら — 土岐麻子 [音楽]

AsakoToki_211230.jpg
土岐麻子 (Spincoasterより)

Twilight.
土岐麻子のニューアルバムからの〈ドア〉は、いままでと少し感触が違うような気がする。「ガラス窓の雨」 という歌詞から始まる。あまりカラフルでない。あまりソフィスティケートされていない。
いや、「あまり」 ではなくて 「決して」 という言葉を使うべきだった。言葉がシンプルで、その歌詞のひとつひとつが裸で、なぜか痛切で重い。
今夜雨が止んだら。雨は止むのだろうか。いつかは止むのだ、たぶん。

 あの部屋に続く道
 夢のなか現れて
 目が覚めるときとても虚しくなるよ

リフレインされるこの情景はきっと、いつか見た夢に似ている。
でもそれは本当に見た夢だったのか、それとも疑似記憶のなかの夢だったのか、その曖昧さにめまいがする。

〈NEON FISH〉も〈close to you〉も明るくリラックスした部屋なのに、曲が始まるとその世界に引き込まれる。表情のなかに硬質な美に対するたしかなアプローチがあることを感じる。

少し以前の楽しいライヴもリンクしておく。
2013年のToki Asako meets Schroeder-Headzのライヴ。渡辺シュンスケ作曲だが、始まりがなんとなく矢野顕子を連想させるメロディライン。
そして2015年の父・土岐英史とのライヴ。フリューゲルホーンは市原ひかりである。
残念ながら土岐英史氏は今年6月に逝去されました。ご冥福をお祈り申し上げます。


土岐麻子/Twilight (A.S.A.B)
Twilight(CD)




土岐麻子/ドア (PV)
https://www.youtube.com/watch?v=z47wLv8DSCc

土岐麻子/NEON FISH
TOKI ASAKO Harvest Moon LIVE 2021
https://www.youtube.com/watch?v=n3NyoRofmzE

土岐麻子/close to you
TOKI ASAKO Harvest Moon LIVE 2021
https://www.youtube.com/watch?v=rti1XWIl8r8


土岐麻子 meets Schroeder-Headz/杏仁ガール
live 2013.12.10.
https://www.youtube.com/watch?v=IY6ht2a7OH0

土岐英史・土岐麻子/Lady Traveier
神戸新開地音楽祭 2015.5.10.
土岐麻子 (vo)、土岐英史 (as)、市原ひかり (f-hr)
https://www.youtube.com/watch?v=dVa1JzLpdu
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(。・_・。)2k

今年もありがとうございました
新年もよろしくお願いいたします
佳い新年をお迎え下さい


by (。・_・。)2k (2021-12-31 01:40) 

ゆうのすけ

今年も一年お世話になりました。残すところ一日を切りましたが
来たる新年もよろしくお願い申し上げますと共に どうぞ佳い年を
お迎えくださいね。^^☆彡
by ゆうのすけ (2021-12-31 02:01) 

johncomeback

良いお年を(^ω^ )/
by johncomeback (2021-12-31 19:31) 

末尾ルコ(アルベール)

土岐麻子の動画、拝見いたしました。
わたしは歌詞の中にあるような夢は見た記憶ないですが、夢自体は非常に具体的なものをしょっちゅう見ます(と言いますか、誰しも睡眠時には必ず夢を見ているという考えが昔から有力のようですが)。
夢の中には知り合いの女性が出てくることとても多いのですが、まったく知らない人物が出てくることもありますし、知っている場所もあるけれど、(一体ここはどこなんだ?)という場所もあります。夢というのは日常的ながら実に神秘的な体験ですね。しかもわたし、母の介護を行っている事情もあって、深い眠りというのはとんとないのですが、それでも夢は連日訪れてくれます。

土岐麻子の歌は何と言いますか、(歌うとはどういうことか)をまたあらためて考え冴えていただける歌唱に感じました。とても丁寧に繊細に唄っている、かつ言葉の一つ一つを大切に、できる限りの理解をした上で発声している。そんな印象を受けました。とても心安らぎ充実した気持ちにさせていただける歌唱です。今後も聴いていきたいです。

・・・

>それは逆に思考回路が固い

確かに(笑)。そのフランス人、大切な友人なんですが、いささかわたしと趣味が違うところがありまして、例えばゴダールに関しては、「初期はいいけど、その後は映画じゃない」とか、わたしいつのゴダールも好きなのですが、あるいはマイルスは好きだけど、コルトレーンについては騒音並みに思ってるとか、一度(こう)と信じたら、その後は柔軟性が無くなるきらいがあります。

>意味性よりも韻

つまり歌詞において、もちろんヒップホップと歌謡曲ではアプローチがまったく違いますでしょうが、韻は圧倒的に重要だということでしょうか。
あと、音楽ではないですが、詩の世界ですね。
例えばランボーやマラルメなどに関してもすぐに「これはどういう意味か」と首を捻る人が多いですが、わたしは意味よりもまず「音」と「イマージュ」を愉しみます。
これは絵画の鑑賞についても言えますが、すぐに意味を考えてしまうというのは初っ端から芸術に枠を嵌めようとする行為であって、まずは絵そのものから受ける感覚を最重要視すべきだなあと、これはいつも思っていることです。

ともあれ今年も多くのことをお教えいただき、いつも素晴らしい刺激をいただiいております。
よい年をお迎えください。
そして22年もよろしくお願いいたします。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2021-12-31 20:01) 

kick_drive

こんばんは。今年もお世話になりました。ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。

土岐麻子さん、たくさんのCMソング歌っていらっしゃるんですね。
知らない間に耳にしていたんだと思いました。

by kick_drive (2021-12-31 21:53) 

lequiche

>> (。・_・。)2k様
>> ゆうのすけ様
>> johncomeback 様

年末のご挨拶ありがとうございます。
2022年もよろしくお願い申し上げます。
by lequiche (2022-01-01 03:56) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

夢の内容を他人に伝えるのは至難のわざといえます。
自分のなかでは具体的なかたちをしていたとしても、
それは自己認識に過ぎませんので
他人に伝えると抽象的なものに変わると私は思っています。
ですからあくまで相似的な解釈でしかないのです。
翻って土岐麻子が描いている夢の情景は
決して私の夢の記憶とは同じはずがないのですが、
でもそのニュアンスはわかるような気がするのです。
それは憂鬱なことだったり成就できなかったことだったり、
そうした負のイメージを共有することでなんとなく
わかったフリをしているのに過ぎないのかもしれません。

土岐麻子はいわば 「遅れてきたシティ・ポップ」 というか
いままではその言葉がソフィスティケートされていて
あまり直裁な部分を出してこなかったように思います。
それが〈ドア〉を聴いたとき、少し変化した気がしたのです。
私はそんなに彼女の音楽を聴いているわけではないのですが、
初めて〈ドア〉を聴いてドキッとしました。
それは踏み込まれるはずのない私の夢の領域に
入って来られてそれを言い当てられたような
ごく私的な驚きだったのです。
アナロジーでありながらそれを普遍化させる作詞に
鋭敏な感性があると気がついたのです。

坂本美雨も土岐麻子も地味かもしれないけれど
自分の音楽を少しずつ構築していって、
それがだんだんと確立されてきたように思います。
単純に、ああすごいな、と思うのですが。
ふたりとも親が有名ミュージシャンというところも
似ていますし、音楽傾向も近いかもしれません。
坂本美雨がFM番組を産休したとき、
かわりを勤めたのが土岐麻子だったという縁もあります。

柔軟性は必要ですね。
でないと変化にも対応できませんし、
その結果として良いものをとり逃がしてしまいます。
私は現代音楽を通過してフリージャズを見つけたので、
最初に聴いたコルトレーンは騒音のコルトレーンです。(笑)
ただコルトレーンのフリーの演奏はデタラメではなく
かなり論理的な音になっているはずです。
そのご友人に 「感性が足りないね」 と言ってあげてください。
具体的に言えば 「聞き分ける力がない」 ということです。(^^)

欧米言語の韻と日本語の韻は違いますが、
でもヒップホップでは同じようにとらえているようです。
頭韻・脚韻もありますし、いわゆる地口的な方法論まで含めて
何でもありです。
実は日本の歌謡にはもともと存在するやりかただと思います。

音楽を具体的に意味づけするのは、
たとえばサン=サーンスの《動物の謝肉祭》とか
ムソルグスキーの《禿山の一夜》などがわかりやすい例ですが
こうした曲は学校の教材として教えやすいんでしょうね。
その結果、どんな曲に対しても 「この曲はどういう意味か」 とか
「何をあらわしているのか」 を求めるようになってしまいます。
バッハやベートーヴェンの曲は (絶対音楽という範疇で)、
具体的な意味性ということでいうのなら何もあらわしていません。
だから音楽なのです。
by lequiche (2022-01-01 03:58) 

lequiche

>> kick_drive 様

年末のご挨拶ありがとうございます。
2022年もよろしくお願い申し上げます。
土岐麻子はCMもタイアップもかなりありますね。
ある意味使いやすいのですが、両刃の剣でもあります。
by lequiche (2022-01-01 03:59) 

yam

明けましておめでとう御座います。
旧年中は何かとお心遣い頂き有り難う御座いました。
本年もかわらぬお付き合いの程、宜しくお願い申し上げます。
by yam (2022-01-01 10:02) 

英ちゃん

明けましておめでとうございます
今年も、よろしくお願い致します。

♪雨が止んだらお別れなのね・・・?
これは、朝丘雪路さんの歌でした(^_^;)
by 英ちゃん (2022-01-01 16:55) 

lequiche

>> yam 様
>> 英ちゃん様

新年のご挨拶ありがとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。
by lequiche (2022-01-02 12:27) 

coco030705

土岐麻子さん、とてもいいですね。ジャズっぽい軽やかな音楽ですね。
ウィキでしらべたら、CM曲もたくさん作っておられたり。ここに挙げておられるのは、いい曲ばかりです。
前出の谷川浩子さんもいいし、いい歌手ってたくさんいるのだなと改めて思いました。
これからも、lequicheさんのブログで教えていただいて、好きな歌手が増えていくのが楽しみです。
by coco030705 (2022-01-05 16:22) 

lequiche

>> coco030705 様

わざわざお聴きいただきありがとうございます。
実を申しますと、土岐麻子さんのこと、
今まで私はそんなに注目していなかったのです。
ただ今回のアルバム《Twilight》はダントツに素晴らしいです。
でもどこが素晴らしいかと聞かれると
なかなかうまく表現できないのですが、あえて言うならば、
音楽に共感するのはあくまで相似形であって、
そのミュージシャンの心象風景そのものは決してわからないので、
自分の心の中に置き換えてみて、それが共感できるかどうかです。
土岐麻子さんの今回のアルバムはあまりに共鳴する箇所が多くて
涙が出るほどです。
でもそれはあくまで私の個人的な共感に過ぎないので、
それをもっと普遍的な言葉で表現できたらいいと思うのですが、
言葉を綴るのは難しいですね。
by lequiche (2022-01-07 01:47)