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チョン・キョンファのヴィヴァルディ [音楽]

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Kyung Wha Chung (1970)

レコード店でチョン・キョンファのヴィヴァルディ《四季》のアナログ盤を見かけたので衝動的に買ってしまった。最近、彼女のアナログ盤は180gのいわゆる重量盤仕様で再発されているのだが、ちょっと油断しているとすぐに売り切れてしまう。ヴィヴァルディは発売されたばかりのようだし、それにヴィヴァルディだしなぁという迷いもあったが、とりあえずおさえておく。

1stのシベリウスの再発である重量盤はもちろんすぐになくなってしまったようだ。私はオリジナル・デッカを持っているがなぜかあまり音が良くないような気がするので、昨年発売の再プレス盤が欲しかったのだが後の祭りである。

チョンはジュリアードの教師からあまり早くデビューするのはよくないと言われ、シゲティの下で研鑽を積んでからの最初のアルバムが1970年のシベリウスなのであるが (正確にいえばチャイコフスキー/シベリウスのカップリング)、その頃の公開放送の動画を見つけた。これは私が今まで知らなかった動画で、でも既視感があるようにも思えるし何ともいえない。彼女は22歳、サラサーテの小曲であるが、自信満々で弾いていて最後のキメの音をちょっと外してしまうのが可笑しい。
この放送で演奏されたフランクもリンクしておく。ソナタの最終楽章であるがフランクフリークな私の感覚のなかではほぼ完璧な演奏だと思う。ピアニストもスクエアで素晴らしい。

私が好きなのは以前にも書いたサン=サーンスの3番のアルバムであるが (というか私のこのブログにおけるヴァイオリン奏者の話題では、チョン・キョンファについての記事がきっと一番多いのではないかと思う)、このパッショネイトさはサン=サーンスのややだるいオーケストレーションをものともせず、リスナーを自分の思うように引き寄せてしまうようなパワーがある (サン=サーンス3番の裏はヴュータンの5番。ヴュータンへの私の偏愛についてはすでに書いた)。

街の中は日曜日の夕方から夜ということもあってか、やや人出が少ないように感じられた。この2年間、鬱陶しい日々がずっと続いていて、実は音楽も読書も、私はそれらにまともに対峙していなくてすべてが投げやりで手抜きで書いてきたように思える。この宿痾の季節はいつ終わるのだろうか。普通の春と夏と秋と冬がめぐってくることを静かに待ち望むばかりである。


Kyung Wha Chung/Vivaldi: The Four Seasons
(Warner Classics) [アナログ盤]
Vivaldi: The Four Seasons (Vinyl) [Analog]




Kyung Wha Chung plays Sarasate Caprice Basque Op.24
(1970)
https://www.youtube.com/watch?v=jbXiRhPXiMc

Kyung Wha Chung plays Franck Violin Sonata (Mov 4)
https://www.youtube.com/watch?v=982dQ44Nz9g

Kyung Wha Chung/Saint-Saëns: Violin Concerto No.3 in B minor, Op.61
3. Molto moderato e maestoso (1976)
https://www.youtube.com/watch?v=GuhLYrUtqeM

Kyung Wha Chung/Vivaldi: The Four Seasons, Violin Concerto
in F Minor, Op. 8 No. 4, RV 297 "Winter": I. Allegro non molto
(2001)
https://www.youtube.com/watch?v=A1bFIH7I8Do

Kyung Wha Chung/Bach: Sonata No.1 g-moll BWV1001 Adagio
(2016?)
https://www.youtube.com/watch?v=UOlXbmYhb_8
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末尾ルコ(アルベール)

チョン・キョンファ、いいですね。しかもヴィヴァルディ。ヴィヴァルディはわたしが子どもの頃、クラシック音楽を多少なりとも自覚的に聴き始めた初期によく聴いてました。『四季』とかやはり子どもにも分かりやすかったです。キョンファのヴィヴァルデ、じっくり愉しませていただきます。
そういえばポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッドという凄い映画があって、そのラストに使われているのがヴィヴァルディなんですが、(こんなに悪魔的に聴こえるのか)という秀逸な使い方でした。音楽っておもしろいですね。

ところで素朴過ぎる質問をさせていただきますが、lequiche様、1日どのくらいの時間、音楽を聴いてらっしゃいますか。そしてクラシック、ジャズ、ロック、ポップスなど多様な音楽をどのような配分でお聴きなのでしょう。お時間ある時にお教えいただければ幸いです。



石川秀美もご購入されたとのこと。そうしたお話を読ませていただくと、当時のアイドル界が違ったものに見えてきます。
あの頃、松田聖子というトップアイドルがいて、その後中森明菜が出てくるのですが、「トップじゃないけどよく知られたアイドル」として、石川秀美、松本伊代、早見優、河合奈保子らがいたのですが、例えば河合奈保子などはわたしの周囲ではけっこう馬鹿にされてました。彼女の歌に「けんかをやめて」という楽曲があって、これなんか当時わたしも、(なんちゅうアホな歌なんだ…)と完璧に思ってました。でも最近知ったんですが(笑)、これ竹内まりや作詞作曲ではないですか!この件一つをとっても、未熟だった時代の思い込みについては再検討すべきだとよく分かります。
あ、それと小泉今日子がまた別格的存在としていましたね。わたし映画女優となった後の小泉今日子は好きですが、アイドル時代、特に「なんてったってアイドル」などは、秋元康の顔が前面に出てくる感じで好きではなかったです。
それとついでながら黒歴史語っちゃいますと、「伊藤つかさ」のアルバム、持ってました(ひやあああ~~~笑)。

>石油をじゃばじゃば使って。企業に良心はありません。

ですね。そしてメディアの多くは大企業とずぶずぶに繋がってますので、本当に痛いところはつかないと。この拝金主義のために日本がどれだけ息苦しくなっつていることか。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2022-01-31 07:03) 

英ちゃん

ヴィヴァルディ《四季》のレコード持ってたよ。
十代の頃にね(^∇^;)
十代の頃は、クラシックや映画音楽やビートルズなんかも聴いたりしたけどアイドル歌謡曲に一番ハマりました(^_^;)
by 英ちゃん (2022-02-01 01:54) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

ヴィヴァルディはバロック期の音楽ですけれど
バッハのような対位法で書かれていません。
そのため平易でわかりやすいという特徴があります。
そして当時のイタリアは音楽の中心地であり
ドイツは音楽的地図で考えると辺境の地だったわけです。

後年になってバッハはハイブロウな音楽、
ヴィヴァルディはわかりやすいけれど卑俗な音楽、
というような評価になってきますが、
そうした考え方は今、ある面において再び覆りつつあります。
こうした歴史の変遷は面白いです。

ヴィヴァルディの四季がある時期流行したのは
イ・ムジチの影響が多大だと思います。
セールス戦略がうまかったからだとは言えますが、
時代がちょうどそういう音楽を欲していたとも考えられます。

音楽は日によって聴くときもあり全然聴かないときもあり
ということだと思います。
本来ならきちんと向き合って聴くのが良いのでしょうが
そのように聴くことはあまり無いような気がします。
ジャンルに関しても配分を考えたことは無いです。
そのときに聴きたい音楽というのは常に変化しますし、
評論家のように仕事として聴いているわけではないですから。

アイドルというのは常にブームがあって、
ファンはアイドルに音楽だけでないプラスアルファを求めます。
たとえば男性ファンが女性アイドルに求めるのは
一種の疑似恋愛もあるかもしれません。
女性ファンがジャニーズやエグザイルなどに求めるものも
同様です。単なる幻想に過ぎないんですが。
私にはそうしたセンシティヴィティがあまり無いので
アイドルの好悪みたいなのは希薄なのかもしれません。

松田聖子と中森明菜という対比はよくわからなくて、
でも最近、中森明菜と松浦亜弥には興味を持ち始めています。
ただあくまで音楽とその歌唱に対してです。
最盛期のビーイング傘下のGIZA系は好きだったかもしれません。
一番聴いたのは愛内里菜です。
小泉今日子は和田誠の《怪盗ルビイ》という映画がありましたが、
つまらない作品なのかもしれませんけれど
和田誠の思い入れみたいなのがあって小泉今日子も美しいです。
画面が美しければストーリーなんてどうだっていいんです。
河合奈保子は昨年、タワーレコードでSACD化されていますし、
評価が高いように思いますが、私はよく知りません。
もっとも竹内まりやの提供曲で有名なのといえば
〈けんかをやめて〉と中森明菜への〈駅〉、
中山美穂への〈色・ホワイトブレンド〉あたりでしょうね。
伊藤つかさという人は……すみません。全く知らないです。(笑)
by lequiche (2022-02-01 05:49) 

lequiche

>> 英ちゃん様

ヴィヴァルディの《四季》は
日本で一番売れたクラシックレコードですからね。
わかりやすくて哀愁もあるメロディラインというのが
ヒットした理由なのかもしれません。
by lequiche (2022-02-01 05:52)