SSブログ

わたしは今日まで生きてみました [雑記]

JWST_Jupiter_220909.jpg

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による木星の画像を新聞で見て衝撃を受けた。あまりにもくっきりし過ぎて、まるでSFのイラストのようで、でもNASAの表示があるし、もちろんイラストではない。そのことはTokyofmの〈東京プラネタリー☆カフェ〉で篠原ともえも話題にしていた。そして木星の画像は私の中で久しぶりに呼びさまされた宇宙への興味だった。

YouTubeで見つけた須藤薫のスイートベイジルでのライヴ録音〈見上げてごらん夜の星を〜心の中のプラネタリウム〉という星の歌のメドレーを聴きながらいろいろなことを思い出していた。
以前にも書いたことがあるが、私は小学校3年から4年頃、何のきっかけだったのかは忘れてしまったが、とても天文に夢中になった。星の名前や星座名を覚え、星座早見盤を買い、そして赤道儀が欲しいとねだったのだが、そんな高価なものが小学生に与えられるはずもなく、普通の地上用望遠鏡を手に入れたのがせいぜいだった。そもそも赤道儀がどういうものか大人にはわからなかったはずである。

だが比較的理解のある叔母に連れられて、当時渋谷にあった五島プラネタリウムに行ったことがある。半球状に拡がるイミテーションの夜空。ほとんど寝る姿勢に近い椅子から見上げる満天の星々は、見たこともないほど数多く輝いていて、天の川が見えて、それはまさに夢の世界だった。

叔母は家で学習塾をしていて、小学生の頃の私のすべての知識は叔母から教えられたものである。勉強だけでなく、叔母は小学生の私から見ると不思議なレコードをいろいろ持っていて、それは今から考えると結構ミーハーな選定なのだが、古いロカビリーのコンピレーションや、EMIのフルトヴェングラーや、カラヤンのチャイコフスキーのバレエ音楽のハイライト盤などがあって、私は繰り返しそれらを聴いていた。カラヤンはロンドン・レーベルの輸入盤で、圧倒的に音がよかった。
実はもうひとり、義理の叔母がいて、彼女が持っていたのはハリー・ベラフォンテのカーネギーホール・コンサートの2枚目 —— つまり長い〈マチルダ〉の収録されているレコードで、これも繰り返し聴いていた記憶がある。私の音楽的記憶の土壌はそのあたりにあったような気がする。

でも5年生になったら天文への興味は薄れてしまった。それは東京ではほとんど星空が見えないせいでもあるが、何より急速に視力が低下してしまって星を見る気力が失せてしまったことにある。

私の住んでいた町の当時の図書館は瀟洒な木造で、木の床にはオイルが引かれていて、中はひっそりとしていた。白い壁、広い机、窓の外の緑。いたずらな友だちが、私が大切にしていた全天恒星図の、星が密になっていない余白に鉛筆で落書きをした。ひどいことをすると抗議して消しゴムで消したのだが、まだ跡が残っている。今になって思うと、消さないでそのままにしておいたほうがよかったような気がする。それはあの頃の夏を思い出すためのしるしだからだ。

5年生になってからは視力が悪くなっただけでなく、クラス替えがあって担任もかわり、あのきらきらして一番楽しかった3〜4年生の頃の輝きは失せてしまった。そのあとは、やがて大人になってから現在までずっと雨降りが続いている。オリオン座はずっと見えない。

KinKi Kidsと吉田拓郎の《LOVE LOVE あいしてる》最終回。録画はしてあるのだが、まだ観ていない。でも〈今日までそして明日から〉の部分だけ、YouTubeで見つけた。《青春の詩》という赤いジャケットのアルバムに収録されていた古い曲。タイトルからして気恥ずかしいが、その時代をきっとあらわしているのだと思う。篠原ともえの声は美しい。歌詞が頭の中で繰り返し繰り返し再生される。何度も何度も。ルフランルフラン。
吉田拓郎を私はよく知らないが、アルバムとしては《元気です。》と《今はまだ人生を語らず》がベストだろう (後者はもちろん〈ペニーレインでバーボン〉が収録されていなければ意味がない)。だが、ごく初期の、ときとして野卑に流れる曲にも魅力がある。〈今日までそして明日から〉とはそんな曲だ。

この疫病の流行でライヴは死んでしまった。少しずつ復活の兆しはあるが、声援が送れなかったり、一つおきの席だったり、そうしたいくつもの束縛は気持ち悪くてライヴに行く興味が湧かない。コンサートにも、映画や演劇にも、私は行かない。
昔の、明るくて快活なライヴ映像や録音に没入するのはそんなときだ。疫病は今世紀中に終わるのだろうか。


篠原ともえ、奈緒、KinKi Kids/今日までそして明日から
LOVE LOVE あいしてる最終回・吉田拓郎卒業SP
https://www.youtube.com/watch?v=wcLyxNbRKWk

須藤薫/見上げてごらん夜の星を~心の中のプラネタリウム
live 2000.12.16、スイートベイジル139
https://www.youtube.com/watch?v=o8CoOHiEHVw
nice!(68)  コメント(10) 
共通テーマ:音楽

nice! 68

コメント 10

ゆうのすけ

いろんな画像を発信してくれてますけれど ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の画像は凄いの一言!時代は進化しているんですね。
私の記憶に残る木星の画像って 天体図鑑に描かれたイラストを未だに払拭出来てないんですよね。^^;
私もだいぶ視力が落ちてきちゃって 肉眼では夜空の星が滲む点だったりします。(月も!~☽~)
ルフラン・・・繰り返しの意味でしたよね。好きだったアイドルが歌っていた歌のタイトルの意味が分からなかったことを思い出す。(「ルフラン」井上望 19790525)
吉田拓郎さんは どうも苦手であまり聴いてない(陽水さんが好きだったので)んですが 少しづつ紐解いてみようかなと!「サマー・ピープル」という作品は大好きなんですけれどね。^^;
by ゆうのすけ (2022-09-09 07:40) 

末尾ルコ(アルベール)

拝読しつつ、子供の頃を含めいろんなことを思い出しました。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の画像凄いですね。わたしハッブル宇宙望遠鏡の本は持ってますが、ジェイムズ・ウェッブの方も見たことはあると思いますが詳しくないので、またいろいろチェックしてみます。どちらかと言えば太陽系より馬頭星雲とか、その辺りの画像が大好物だったんです。
子どもの頃、父がUFOとかの話大好きだったので、望遠鏡が家にあったことはあったんですが、何分大した性能ではなかったので、(凄い!)と感じる映像などは見ませんでした。それと星座はわたし、いまだに苦手なんです。どちらかと言えば、馬頭星雲の方が(笑)。でもハッブルの写真集もやはり凄いですよね。わたしたちが宇宙という異常にして恐怖に満ちた空間に生きていること、実感させてくれます。

わたしも映画館さえまったく行ってないです。行くなら母と一緒に、ですから、「同じ場所に長時間」というのは避けてますし、レストランも行ってません。8月はあまりの感染者の多さに、病院の定期検査もスキップしました。あらゆる医療施設でクラスターが出てましたから。本当に困った困った状況です。

・・・

>中身をともなわない空疎な書評

書評に限らずと言いますか、爆発的に低レベル化しているのが映画関係の文章で、そもそも「映画ライター」とか「映画コメンテーター」とか、「評論」や「批評」を名乗らずに「逃げ」の名目でちゃらちゃら書いている人たちがどっと増えてます。
さらに各メディアに所属する書き手が、もちろん優秀な人もいるけれど、特にネット系の記事は「クリックさせる」のが目的なので、低レベルという以前に、映画を貶めて害毒を広める内容が多いです。

>筒井康隆だから出版できる内容

それだけ厚いファン層がいたのですよね。凄いです、やはり。忌野清志郎のたとえはとても分かりやすいです。どうあっても忌野清志郎、そしてクオリティも保証されている。

澱ンピック、本当に気色悪い存在です。「アスリート様」たちも、澱ンピック後にテレビタレントとなるのが一番の目標のように見えます。
澱ンピックに対する日本人のスタンスっていくつか考えられて、大まかに分けると、
1「反対」
2「無関心」
3「やってたら観る」
そして
4「非常に有難がる」

そして「4」の人たちって、あまりに素朴に澱ンピックの価値を妄信している人たちか、あるいはネトウヨ系なんですよね。   RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2022-09-09 08:38) 

lequiche

>> ゆうのすけ様

木星は精巧なイラストとしか思えないんですが
これが実画像なんですから驚愕です。
かつてイラストで描かれていたのと同じというのにも
すごいなぁと思います。
木星の薄い輪と月が写っているのも
まさにSFですしセンス・オブ・ワンダーです。

ルフラン (refrain) はフランス語読みで
英語なら綴りは同じですがリフレインですね。
井上望さんというかたは知りませんでしたが
作詞・山上路夫!(^^)
この時代としてはオシャレな感じがします。

〈サマーピープル〉という曲は知りませんでしたが
イントロのリズムは大瀧詠一の〈君は天然色〉風ですね。
編曲は松任谷正隆……おおお。(笑)
by lequiche (2022-09-12 04:44) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

馬頭星雲は太陽系よりもずっと遠くですね。
遠ければ遠いほどイメージが刺激されるのかもしれません。
尚、前記事の筒井康隆の『馬の首風雲録』は
馬頭星雲を舞台にしたSFです。

星座というのは2次元的で天空を平面として仮想しています。
でも実際には星の距離はそれぞれ違いますから
星座を形成している星々が星座としてのグループを
作っているわけではないので
天動説と同じで非常に古風な認識論なわけです。
でも星座にはロマンがあるので
いまだにそれが残っているのが面白いです。

コロナが今世紀一杯まで続くというのは極端ですが
人類というのは意外に浅知恵なのだ
と思うようになりました。
今のような状態ではだらだらと続いて
21世紀はコロナの世紀だったと歴史に残るでしょう。

映画評がそのような状態にあるというのは
よく知りませんでした。
ひとつには私はあまり積極的に
映画を観ないからかもしれません。
ネット全盛になってから発言力は均質化されましたが
逆にいえば玉石混交です。

筒井康隆は、初期の暴力的なまでの疾走感が
良いのではないかと思います。
でもある程度年齢を重ねていくと
どうしても文豪的な味わいが出てしまうように感じます。

オリンピックはどうでもいいですが
利権まみれの元首相が逮捕されればよいと思います。
検察がんばれ!(でもだめだろうなぁ)
by lequiche (2022-09-12 04:44) 

NO14Ruggerman

タイトルを拝見して思わず息を呑みました。
なぜならわたしにとっての中1が瞬時に蘇ったからです。
中学生になって小学時代では隣の学区だったワルとクラスが一緒になり誘われるがままに彼の家へ…
完全個室の大人びたその部屋にはコンポーネントが備わっていてそこで拓郎のLPを聴いたのです。
<今日までそして明日から>で唄われている「私は今日まで生きてみました♫」
自分にとってはガキを卒業してまさに思春期を迎えたメモリアルな一曲です。
(なんか泣けてきます…感傷に浸っています)
by NO14Ruggerman (2022-09-14 18:53) 

lequiche

>> NO14Ruggerman 様

そうだったんですか。
強い印象の残る思い出ですね。
若い頃の友人からの影響というのはときに衝撃的で
いつまでも記憶の中にとどまっているのだと思います。
wikiにも書いてありますが
「わたしは今日まで生きてきました」 と
「わたしは今日まで生きてみました」 では全く意味が違います。
「生きてみました」 という歌詞をあみだしたのが
吉田拓郎の天才性です。
by lequiche (2022-09-16 02:48) 

coco030705

こんばんは。
木星の画像、すばらしいですね!なんと美しいのでしょう。宇宙望遠鏡って、すごいものなんですね。
反対に、どこかで宇宙人が、やはり精密な望遠鏡で地球を覗いて、東京で沢山の人が動めいている様子や、明け放したマンションのベランダから、家の中の人間の暮らしを観察しているかも、ですね。
吉田拓郎は森進一が歌っている「襟裳岬」が好きです。

by coco030705 (2022-09-18 23:59) 

lequiche

>> coco030705 様

ご賛同いただきありがとうございます。
すごい技術だと思いますし、科学の一番正しい使い方だと思います。
科学をダークサイドに使うと某国のような戦争犯罪になります。
もし今、地球を覗いている宇宙人がいたら、
「何、バカなことやってるんだ?」 と呆れられると思います。

吉田拓郎の演歌歌手への楽曲提供は
きっと画期的だったのでしょう。
しかも大ヒットしてしまったのですから。
つまり音楽にはジャンルとか垣根など無いということです。
by lequiche (2022-09-19 03:57) 

にゃごにゃご

今度、雨宿りに来ませんか。
よかったらメールください。
by にゃごにゃご (2022-09-21 05:02) 

lequiche

>> にゃごにゃご様

ここのところ雨続きですが、雨宿り、良いですね。(^^)
by lequiche (2022-09-23 04:14)