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プリンス《Diamonds and Pearls》 [音楽]

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ビートルズは〈Now and Then〉に続いて《The Beatles/1962−1966》と《The Beatles/1967−1970》(いわゆる赤盤、青盤) が再発されるとのこと。2023年editionということになっているが、ベスト盤として聴くのには手軽で便利である。ローリング・ストーンズも久しぶりのアルバム《Hackney Diamonds》がリリースされたし、コロナが終わりつつあるためなのか、少しずつ音楽活動が戻って来ているのは喜ばしい。
だが、ブルース・スプリングスティーンの日本盤のシングル集成である《ジャパニーズ・シングル・コレクション》が出るのも、一種のベスト盤だと思えばいいのだけれど、デビュー50周年記念として全アルバムをBSCD2化とか、やめて欲しいんだけどやめないだろうなぁ。
さらにややこしくなっているのはたとえば1stの《Greetings from Asbury Park, N.J.》にはMobile FidelityのSACDハイブリッド盤 (USA盤) があること。そしてMobile Fidelityのアナログ盤もリリースされるらしいが、それはもう無理というものである。良い音なのかもしれないがそれを再生できるだけの装置がない。
ボブ・ディランも武道館ライヴのコンプリート盤とか、もうね〜……でも買う人がいるから出すんですよね (もっとも私はボブ・ディランってよく知らない。〈Blowin' in the Wind〉はPPMの歌だと思っていたし)。

こういうふうにリマスターとかアウトテイクをまとめたりとか、スペシャルとかスーパー・デラックスというような昭和的ネーミングの 「これでもか」 セット販売を流行らせたのは、もちろんビートルズなのだが (最近だったら《Revolver Special Edition》とか)、音楽なんて基本的にはアルバムとして出されたオリジナルのソースを超えるものはないはずです。レコード会社の思惑に負けない強い意志が必要なのだ。

と思いながらプリンスが出ると弱い心ががらがらと崩れてしまうのは、すでに殿下に洗脳されているからだと思うのです。殿下っていう愛称はパタリロみたいでちょっと笑う。
プリンス財団の企みは《1999》、次に《Sign ‘O’ The Times》と来て今回は《Diamonds and Pearls》だった。そう来たか、という納得感と、う〜んそうなのか? という思いが交錯していて、ワーナーとの確執とかいろいろあったのだろうが、それはマイルスのプレスティッジ4枚のときにも似ていて、もっとも私は殿下が名前を捨てている間は少し遠ざかっていたので、今回の《Diamonds and Pearls》という選択が的確なのかそうでないのかを評価するだけの知識が無い。
ただ、たとえばジミ・ヘンドリックスのような過去の人とは違って、プリンスのアーカイヴは本人の性格もあるのだろうが上手に整理されているようで、そこから抽出されたものが膨大な未発表音源となるのだろう。

それでオフィシャルのMVを観ると、これはやっぱり聴く人を選ぶなという感覚が蘇ってしまうのは、世間の一般的な評価としてのプリンスのエグさが全開だからなのかもしれないが、特に〈Gett Off〉なんて超エグいのかもしれないけれど、今聴くと、そして観ると、プリンスの意図しているものがあらためてよくわかる。〈Willing And Able〉もジャジーな雰囲気に満ちているのだが、ほとんどがファルセットな歌唱であり、そのタイトなブラス・アレンジと柔らかな緻密さがこの時期のプリンスをあぶり出す。
2曲のMVのどちらにも聞こえるフルートが (特に〈Gett Off〉では)、単なるフルートという笛音のようでなく聞こえて (それはマイルスの《Bitches Brew》におけるベニー・モウピンのバスクラのような妖しさを持っていて)、この音がエグさのひとつの要因なのかもしれないと漠然と感じてしまったりする。

プリンスはジェームズ・ブラウンのようなステージングをしたいと語っていたというが、JBと違ってプリンスはどこまでもアーバンであり、泥臭さがない。それがメインストリームのR&Bとは大きく異なる面である。この日本においてプリンスが、いつまでもパープル・レインだけのプリンスでは悲しいと思うのだ。


Prince/Diamonds and Pearls (ワーナーミュージック・ジャパン)
ダイアモンズ・アンド・パールズ:デラックス・エディション (2CD) [完全生産限定] (特典なし)




Prince/Willing and Able (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=3Apk2Qr9yVc

Prince/Gett Off (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=6f4BwQFF-Os
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末尾ルコ(アルベール)

スプリングスティーンも購入候補に入っているのですか。彼も日本ではその真価、まったく理解されてない一人ですね。
プリンスはもちろんかつての日本人には早すぎたといいますか、その巨大な才能と美意識が理解できる日本人は少数派だったですね。
そういえば来年1月にブルーノ・マーズが追加公演を含め東京ドーム7デイズ完売と、このニュースだけを見ろと、洋楽、洋画離れはどこへやらといった感ですが、かつてと比べ洋楽離れは間違いないけれど、こうして局地的な盛り上がりがあるところもおもしろい現象ではあります。
もちろんプリンスとブルーノ・マーズではまるで違いますが、今の時代であれば日本でも局地的には絶大な盛り上がりをしていたのかもしれないなとか想像しております。しかし一般の日本人にとっては「パープル・レイン」だけという点は同じなのかもしれませんが。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2023-11-13 20:07) 

coco030705

プリンスは、あまり聴いたことがないのですが、すごくカッコいいなと思います。
by coco030705 (2023-11-13 23:28) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

ブルーノ・マーズ完売っていうのがよくわからないんですが、
意外なのか、実はそうでもないのか……
プロモーションが適切だったのかもしれませんし。
でもそういう現象があっても良いと思います。
つまりJ-pop偏重だったのが少し揺れ戻しされたのでしょう。
たとえばオシャレな美容院 (笑) だったら
絶対に日本の音楽は流さないという縛りがあります。

プリンスは多面体でいろいろな表情を持っています。
ときにそのコンセプトが露悪的であるために
誤解されやすいですが、
これだけの音楽的才能がある人は滅多に出ません。
同時代で彼の音楽が聴けたことはラッキーだったと思います。

スプリングスティーンの再発は今回、
ブルースペック&紙ジャケ仕様なのですが、
音質的にそんなにアドヴァンテージがあるのかどうか不明です。
それに私は、紙ジャケットって扱いにくいですし、
そんなに良いとは思わないんです。
紙にこだわるならCDの紙ジャケットよりアナログ盤LPですね。
by lequiche (2023-11-16 00:46) 

lequiche

>> coco030705 様

プリンスはどんな動画もカッコイイのですが、
以前にもリンクしましたけれど下記の2本が私は好きです。

スーパーボウルのハーフタイムショーは
大会場における自信満々のステージングが
まさにプリンスです。

Prince/Super Bowl 2007 Halftime Show
https://www.youtube.com/watch?v=-WYYlRArn3g

一方で、ごく小さな会場でのウィットに富んだ演奏。
アコースティクギターの上手さにも驚嘆します。
尚、この〈Cream〉という曲は
上記アルバム《Diamonds and Pearls》に収録された
大ヒット曲です。

Prince/Cream (Live at Webster Hall - April 20, 2004)
https://www.youtube.com/watch?v=r967lcA_rR8
by lequiche (2023-11-16 00:46)