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Sgt.Pepper’sの影響と伝播 [音楽]

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Small Faces の《Ogdens’ Nut Gone Flake》という缶入りのCDがあって、CDショップで見つけて面白かったので買ったのだが、イマイチよくわからないのでそのまま死蔵してしまった。
そしたら『ストレンジ・デイズ』の今月号にサージェント・ペパーズから影響を受けているというアルバムの紹介があり、そこにこのスモール・フェイセスのことが書かれていて、なるほどそういうことなのか、と納得した (岩本晃市郎/北欧のサージェント・ペパーズ・シンドローム『1st Floor』再発)。う〜ん、ロックはむずかしい。
『ストレンジ・デイズ』は毎月買うわけじゃないけどいつも参考になります。

当時の北欧のロックバンドにもサージェント・ペパーズのフォロアーが輩出する現象があったらしく、イギリスの Cherry Red Records 傘下にある RPM Records のアルバムが紹介されていたので試しに聴いてみた。その当時のビートルズの音楽的影響というのがどうだったかを知りたいと思ったので。
ザ・フロア The Floor の《1st Floor》とトーゲス Tages の《Studio》という2枚である。

《1st Floor》のリリースはCDパンフレットに late 1967 と表記されていて、ビートルズのサージェント・ペパーズが1967年6月1日のリリースだから、その半年後、つまりストーンズのサタニック・マジェスティーズ (1967年12月08日) と同時期である。
記事には The Floor は The Hitmakers というグループが母体で Stop the Music という曲でも知られる、とあったので、あぁあの曲か、と思ったのだがYouTubeで聴いてみたら何か全然違う……。
調べてみたらストップ・ザ・ミュージックという曲は、レーン&ザ・リー・キングス Lenne & The Lee Kings のものが私の知っている曲であり、この曲の演奏で一番有名なのではないかと思う。いかにも哀愁を帯びた、当時の日本のグループサウンズにも通じるちょっとアクのある演奏。この曲のオリジナルはディック・ジョーダンという人が歌ったとのことで、ディック・ジョーダンが1963年、それをレーン&ザ・リー・キングスがカヴァーしたのが1965年、そしてザ・ヒットメーカーズは1966年にカヴァーしたのだそうだ。
ザ・ヒットメーカーズのカヴァーは、ガレージっぽくてちょっと骨太でいい。

まぁそんなことはどうでもいいのだが、さて《1st Floor》を聴いてみると、すごくハイな感じで、ざわついて落ち着かない心というか喧噪感というか、そうした気分と、そして管弦楽器の多用とかテープのリヴァースみたいなのとか、などを引っくるめてサージェント・ペパーズ似だということなんだろうなぁ、と思う。
たとえば6曲目はベースラインがタックスマンみたいだし、オリジナルの最後の12曲目は、しっとりとした生ギターとフルートが絡むとか、確かにそういうテイストはあると思うけれど、でもだからって即サージェント・ペパーズの影響ってことなのかなぁ。
7曲目にABBAのビョルン・ウルヴァース Björn Ulvaeus の曲が入っているが、ABBAがまだそんなに売れていなかった頃だ。

いっぽうのトーゲス《Studio》も、音としてはザ・フロアに似ている。管弦楽器の多用、特にトランペットの底抜けに明るく振る舞う音は目立つ、つまり喧噪感というのはお祭りのようなハレな精神の昂揚であり、そうした中で突然落ち込むような翳りがあるのがサイケデリックの表情であり、それは当時の音楽シーンがドラッグの服用による影響を多分に受けていたため、と考えることもできる。
トーゲスの場合、ボーナストラックとして加えられたシングルのトラックに、サイケデリックでサージェント・ペパーズ的な印象を受ける曲があって、たとえばインド風スケールとか、ああこれは確かにフォロアーだなぁと納得できる。

結局、ミッシング・リングとはちょっと違うけど、スモール・フェイセスとサージェント・ペパーズを関連づける輪は見つからなかった。もちろん《Ogdens’ Nut Gone Flake》もサージェント・ペパーズから影響を受けたアルバムということなんだけれど、私にはあまりそういうふうには聞こえなかったからだ。
このようなサージェント・ペパーズ的サウンドは、たとえばオーケストラヒットとかボコーダーとかと同じで、当時の音作りの流行のひとつだったのではないか、そんな感じがしてしまう。「サージェントっぽいテイストをちょっと入れてみました」 みたいな、リスペクトってほどではなくて、今、これが流行ってるんだよ〜、という程度の。
もちろん実情は全然違ってるのかもしれないし、ずっと時代を下ったもはや歴史的な視点からの醒めた意見に過ぎないのかもしれないけれど。

ただ言えることは、サージェント・ペパーズに対するサタニック・マジェスティーズなら比較対象となるけれど、その他はあまりにスケールも傾向も違い過ぎて、だから影響は確かにあるのだろうけれど、トレンドとしてのちょっとした借り物でしかなかったように私には思えてしまう。タケノコが無数に生えても揺るぎないサージェント・ペパーズおそるべし、ということです。


The Floor/1st Floor (RPM Records)
1st Floor -Reissue + Bonus Tracks-




Tages/Studio (RPM Records)
Studio: Plus




Small Faces/Ogdens’ Nut Gone Flake (Sanctuary)
(缶入りではないです)
Ogdens' Nut Gone Flake: Deluxe Edition




ストレンジ・デイズ 2013年01月号 (ストレンジ・デイズ)
ストレンジデイズ 2013年 01月号 [雑誌]

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Loby

ロックもたいへん奥が深いですね。
ストップ・ザ・ミュージック、youtubeで聴いてみました。
この程度であれば私でも聴けそうです^^b

by Loby (2012-11-30 22:29) 

lequiche

>> Loby様
やはり人気のあるジャンルですから、深入りしていくとキリがないです。
ただ私は基本的なロックをあまり知らないので、
長年ロックを聴いている正統派の人にはかないませんから、
ちょっと斜めから聴いているかもしれません。(^^;)

ストップ・ザ・ミュージックは往年の名曲といっていいのでしょうか。
今、日本にプロコルハルムが来て、
ユーミンとのジョイントコンサートをやっているらしいですが、
彼等のヒット曲 「青い影」 も往年の名曲のひとつで、
もはやスタンダードなんだと思います。(^^
http://www.cdjournal.com/main/news/-/48576
by lequiche (2012-12-01 01:54) 

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