コルトレーンの Village Vanguard 1961 [音楽]
ここのところ、銀座に出かける用事が続けてあったのだが、気がついたら GINZA SIX のビルが忽然とできあがったような印象があって、あの巨大な威圧感はちょっとすごい。道路ぎりぎりまで巨体が屹立しているからだと思う。でもそんなことはあまり誰も気にしていないようにみえて、今日もまた街は中国人観光客でいっぱいだ。
そしてここのところ、少しだけジョン・コルトレーンを聴いている。《“Live” at the Village Vanguard》というアルバムがある。有名なミュージシャンの有名なアルバムというのを私はあまり持っていなくて、それはいつでも買えるし、過去に聴いた記憶があるからなのだが、たとえばコルトレーンとかマイルスとか、ビートルズとかストーンズなどはある程度知っているのでわざわざ買うほどでもない、とたかをくくって持っていなかったりするのである。
でも最近になって、それはちょっとどうかな? と思い始めて、少しずつ揃えて聴いてみたりしている。だがこのヴィレッジ・ヴァンガードはなぜか随分前に買っていて、あまり感動しなかったという記憶が残っている。
コルトレーンはジャズの巨人であり、確かにジャズというジャンルのなかで革新的なムーヴメントを主導した人なのであるが、すごく正直に言うと、私にとっては、ちょっとカッタルくて、なんとなくお決まりフレーズという印象があるのだ。つまりスピード感に乏しいのである。スピードというのは数値的な音数の多少ということではなくて、たとえ幾ら音を細かく連ねられたとしても、ややのんびりしているなぁ、というふうに感じとってしまうのだ。それは比較的オーソドクスな頃から、晩年のフリーの演奏まで含めてそう思うのである。逆にいえばそれがコルトレーンのおおらかさであり、包容感であるとも言える。
それならなぜヴィレッジ・ヴァンガードがあるのかというと、たぶんパーソネルのなかにエリック・ドルフィーがいたからだと思う。だがこのヴィレッジ・ヴァンガードにおけるドルフィーのソロはあまり印象が強くない。《“Live” at the Village Vanguard》がレコーディングされたのは1961年11月、そしてリリースされたのは1962年3月である。このアルバムがスタンダード色の強い《Ballads》(1962) や《Johnny Hartman》(1963) などよりも前の録音であることにもちょっと驚く。
この11月のヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライヴは幾つかのアルバムに分散してリリースされているが、私が現在持っているのは《“Live” at the Village Vanguard》と《The Other Village Vanguard Tapes》だけだ。この2種のアルバムを続けて聴いてみてあらためて思ったのは、以前に感じていたことと同じで、何となくつまらない、それはドルフィーの演奏がそうだからなのであるということに思い至った。
コルトレーンはいつものコルトレーンなのであるが、ドルフィーもまた普通に吹いていて、ところどころ鋭い部分もあるしスリリングでもあるのにもかかわらず、どこかが足りないような印象を受ける。それはコルトレーンに迎合しているのか、もしくは手抜きなのか、それともちょっと違和感を持ちながら吹いているので結果としてそうなってしまったのか。リズムが伝統的4ビートであるせいなのだろうか。
こういうとき、販売元の宣伝のような 「奇跡のライヴ」 とか 「入魂のインプロヴィゼーション」 みたいな惹句はほとんど意味をなさない。なぜならそう思っていないからで、なんでも良いと思ってしまうのは単なるコルトレーン信奉の宗教に過ぎない。
調べてみると、このヴィレッジ・ヴァンガードにおけるドルフィーの違和感について指摘している意見が複数にあった。覇気が無いわけではないのだが浮いていて、つまり基本的にコルトレーンとドルフィーのコンセプトが異なるからなのではないか、というようなことである。ミンガス・グループにおけるドルフィーと較べてみるとその差は歴然としている。
そして最初のリリースから35年後、1997年に《Complete 1961 Village Vanguard Recordings》という完全盤にその解答があるとする指摘もあるが、私はこの完全盤を聴いていないのでまだ何とも言えない。
ひとつにはコルトレーンもドルフィーもともにリード奏者であるということがあって、トランペットとサックスというような組み合わせに較べるとコントラストが無いので、フレーズの異質さがかえって強調されてしまうのかもしれないが、でもこの論理は少し弱い。リード2本だって良いアルバムは良いのである。
いまさらコルトレーンという感じもするが、いまさらだからこそコルトレーンという言い方だってできる。もっとも私が最初に買ったコルトレーンのアルバムは《Cosmic Music》で、そもそも入りかたが良くなかったのだと言われたらその通りなのかもしれない。
ということで、この項はつづくかもしれません。
(→2016年11月28日ブログにつづく)
John Coltrane/“Live” at the Village Vanguard (Universal Music)
John Coltrane/The Other Village Vanguard Tapes [impulse]
John Coltrane/Spiritual (live at the Village Vanguard)
https://www.youtube.com/watch?v=H7m5joZPP0U
銀座も随分と行ってないから変わっただろうな。
銀座の近くの新橋はたまにオフ会で行くけどね(^^;
by えーちゃん (2016-11-07 00:54)
銀座には1年以上行ってませんが、そのようなビルができていたのですね。 コルトレーンは友人のフランス人が妙に嫌っているのが印象的で(笑)、しょっちゅう聴くわけではないですが、わたしは好きです。ジャズで言えば、軽いフージョン的なのがどうしても苦手で、まったく入ってきません。話は変わりますが、最近またセルジュ・ゲンズブールに凝っていて、そのついでではないですが、さほど興味のなかったヴァネッサ・パラディもなかなかいいなと・・・聴く時期によって印象が変わっておもしろいですね。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-11-07 01:02)
銀座は何ヶ月か前に行ったきり
そろそろまた行く時期かな
by きよたん (2016-11-07 09:09)
>> えーちゃん様
私も降りた駅は新橋です。
新橋と銀座はつながっていますから。
でも言葉から来る印象は新橋と銀座では違いますね。(^^)
by lequiche (2016-11-07 10:06)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
GINZA SIXは松坂屋の跡地を中心とした再開発ビルです。
地下に観世能楽堂が入るとのことです。
妙に嫌っている……(笑)
コルトレーン晩年のフリーフォームの時期は
オカルト的な印象も受けますから、
そういうのが嫌なのでは?
一時期のサンタナもそんな感じがありました。
世界の平和のために皆で祈りましょう、みたいなのです。
サンタナもフュージョンですがBGMにはいいですね。
ゲンズブールがパラディに書いたのは最晩年ですが、
彼女はゲンズブールがやってもパラディで、
レニー・クラヴィッツがやってもパラディなので、
天性のものだと思います。
フランス・ギャルから続く伝統的フレンチですね。(^^)
by lequiche (2016-11-07 10:06)
>> きよたん様
定期的に銀座に行かれるんですか。
ちょっと大人の街な雰囲気はありますが、
最近は外国人向けに観光地化しているようで、
でも仕方がないのかもしれません。(^^)
by lequiche (2016-11-07 10:16)
今日は立冬。
大阪は、やっと秋らしくなったとこですが・・・・
北海道は大雪。
日本は長いね。
今年も後2ヶ月切りました。
次はクリスマス飾りで街中キラキラするんでしょうね。^^
by hatumi30331 (2016-11-07 15:25)
"Live” at the Village Vanguard
棚の奥から探してきました。
S51に購入したものです。(impulse Records)
当時ジャズもよくわからず聞いたものです。
その後、ステレオも廃棄しレコード盤は結構残っています。
ミニコンポに接続できるお安めのプレーヤーを購入
そのうち聴こうと思っています。
by ファルコ84 (2016-11-07 21:42)
>> hatumi30331 様
今日は随分気温が低くなったように感じられました。
やはり11月です。
緯度から考えても、大阪より東京のほうが寒いでしょうね。
ハロウィーンが終わったので、今度はクリスマスです。
とは言っても私にはほとんど関係ない話ですが。(^^;)
by lequiche (2016-11-08 01:48)
>> ファルコ84様
レコードをお持ちなんですか!
それはすごいですね。
今、またアナログレコードがブームみたいです。
CDと一緒にアナログ盤も出すミュージシャンが
多くなってきています。
是非、レコードを聴ける環境を作ってください。
CDと違って音に暖かみがありますね。(^^)
by lequiche (2016-11-08 01:48)
いつもありがとうございます
新橋には随分行っているのですが銀座まで足が伸びません
数寄屋橋の通りまでです
GINZA SIX 忽然と出来上がりましたか
今度こそ、立ち寄ってみたいです。
新橋、浜松町の間を歩き回っています(-_-;)
by majyo (2016-11-08 18:16)
コルトレーンの「バラッド」が家にあったので久しぶりに
針を落としてみました。
「ヴィレッジヴァンガード」も改めてyoutubeで聴いてみましたがバラッドの方がさらにのんびりで居眠りしそうです(笑)
ワタシはマッコイタイナーの攻撃的でスピード感溢れる演奏が
好きで、こちらも久々に針を落としてみました。
自分にはこのスピード感、アグレッシブさが心地よいです。
今度ヤミーに持ち込んでノーチラスのスピーカーで聴かせてもらおうかな・・・
by NO14Ruggerman (2016-11-08 23:32)
>> majyo 様
こちらこそありがとうございます。
新橋と銀座、地続きなんですけど
感覚的にやはり違うみたいですね。
私は行く場所によって近い駅を選択しています。
新橋だったり有楽町だったり、地下鉄のこともありますし。
でも単なる買い物ばかりで、銀座の老舗みたいなところは
敷居が高くてとても行けません。(^^;)
by lequiche (2016-11-09 02:24)
>> NO14Ruggerman 様
今聴くとコルトレーンって、のんびりしていますよね。
《Ballads》はあまりに有名なので、
CDもアナログディスクも持っていません。
どっちかというとムード・ミュージックに近く感じます。
マッコイ・タイナーがお好きなんですか。
まず《The Real McCoy》を思い浮かべてしまいますが、
スピードということだとモントルーもいいですね。
《Enlightenment》です。
マッコイ・タイナーの打鍵は鍵盤が戻って来るより速い、
という都市伝説がありますね。(^^)
by lequiche (2016-11-09 02:24)
おはようございます!楽しいコメントいろいろ、ありがとうございます♪ナタリー・ポートマン、確かにオスカーを獲った『ブラック・スワン』よりも『レオン』の研ぎ澄まされた存在の方が際立っていますね。ちなみに(笑)わたしは現在、カナダ人女優サラ・ガドンの美貌と知性にベッタリです♪♪ RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-11-09 08:05)
>> 末尾ルコ(アルベール)様
子役というのは大変特殊ですね。
どんなに若作りしても戻れないので。(笑)
テータム・オニールなども同様だと思います。
サラ・ガドン、知りませんでした。
チェックしてみたいと思います。
あ、あと、ウエルベックも読まなきゃ。
(買ってありますけど、まだ読んでいません)
by lequiche (2016-11-09 15:40)
ジャズにも詳しくないけれどコルトレーンは知っています。
土曜日には銀座で中、高のクラス会です。
by ponnta1351 (2016-11-10 06:53)
こんにちは
コルトレーンもマイルズも、よく聞きましたね、二十歳前後のことです。
が、レコードは持っていません。
数百円で何曲も聴けるジャズ喫茶を優先した当時の選択です。
レコードはちゃんと稼げるようになったときに、ゆっくり買えばよい、
そんなふうにも思っていましたね。
その後、クラシックに感心が移ってしまい、
レコードも圧倒的にそちら優先になってしまいました。
音楽のスピード感については、クラシックの楽曲でもよく感じます。
by e-g-g (2016-11-10 10:17)
コルトレーンのバラッドは有名ですが
体調、口かどこかが悪くて思い切り吹けなくて
ああいう選曲、演奏になったと聞いたような気がします。
ヴィレッジヴァンガードもコルトレーンではなく
ドルフィーに注目ですか
どちらも長い間聞いていないですね。
オリバー・ネルソンの「ブルースの真実」
好きなアルバムですが、ドルフィーの演奏のせいも
あるでしょうね。
by そらへい (2016-11-10 20:11)
>> ponnta1351 様
ponnta1351さんは色々とよくご存知ですね。
銀座のクラス会、いいですね。高級そう!(^^)
是非楽しんできてください。
by lequiche (2016-11-11 04:38)
>> e-g-g 様
ああ、なるほど。
昔はレコードって高価でしたからね。
今はCDになって、とても廉価で購入できますし。
上に書いたスピード感とは違いますが、
楽器を演奏しているのを見ていて
スピード感の不思議さを実感できることがあります。
バタバタと指は動くのだけれどいっぱいいっぱいだったり。
逆に的確に動いている場合は、
一見スピードを感じさせなかったりします。
by lequiche (2016-11-11 04:38)
>> そらへい様
あ、そうなんですか。
それは知りませんでした。
ドルフィーは全部集めようとした時期があって、
でもとても無理なので挫折しました。(笑)
それに曲順をシャッフルしたブートとかあったりして、
失敗も多く、むずかしいです。
ドルフィーは楽譜に強かったので、
オリバー・ネルソンみたいなコンセプトには
相性がよかったのではないかと思います。
by lequiche (2016-11-11 04:39)