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aikoのまとめ [音楽]

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近くに古本などを扱うリサイクルショップがあって、以前は何軒かあったんですが、皆つぶれちゃって最近利用しているのは1軒のみ。でもその店は歩いて行ける距離にあります。それでこの前、小西康陽の本を読んだことを書いたんですけど、DJに使うためにはシングル盤がいいんだというお話で、う~んそうかシングル盤か、シングル盤ならいいんですね、とCDシングルを買ってみたけれど嵩張るばかりで、音楽はすぐ終わってしまいますよね。もちろん小西先生が言っているのはアナログのドーナツ盤のことで、こういうCDシングルのことじゃないんです。わかってないなぁ。

いや、これはつまりわかってるんだけどわかってないフリしてるだけで、単なるシャレです。CDシングルっていうのは一種のプロモーション用というか宣材のような気もする。しかも昔のシングルCDっていうのは、すごく小さい直径 (8cm) で、長方形のパッケージに入っていたけど、さすがに最近見かけません。あ、でも先日タワレコで安斉かれんというポスト・ギャル系みたいなデビュー盤を無料で配っていましたがこれは小さなCDで懐かしさを感じました。懐かしいとは言っても新品の8cmCDを新品で買ったことはないんですけど。それなのにノスタルジアを気取りたいのか、いまさらって感じもするけど、こうしたムリムリはプロモの仕掛けとしては楽しいのかもしれない。タイアップしてるM・A・Cとしてはベージュ系のリップが売れてた頃のブーム再来を狙ってるのかもしれないけれど、う~ん。

ところでシングルCDの話ですけれど、これも初回限定盤とかあるみたいで、それだとDVDが付いていたりその他のオマケが付いたりしてなかなか面白い。そのリサイクルショップで、たぶんコレクターの人が手放したのだろうと思われるPerfumeのシングルがあったので10枚くらい買いました。写真集とかシールとかもそのまま入っていて、ほとんど新品というか、うち2枚は未開封でした。うわ、オトナ買いだとは思うんですが、でも1枚180円。ちょっと高いかな。昔は50円か100円だったのにぃ。

で、その中古CDの中に、これはシングルCDではないんだけれど、aikoの《まとめ》というのが棚に並んでいて、さすがに180円ではなかったのですが、これはどうもベスト盤らしい、ふたつあってひとつは赤い箱、もうひとつは青い箱で、これも面白いかもしれないと思って買ってみたのですがホントに面白かったのです。
その面白かったことというのはベスト盤の曲の入っているほうのCDじゃなくて――あ、もちろん曲もあのぐにゃぐにゃ屈折するaiko特有のメロディラインで楽しめるのですが――オマケに付いてるCDのことで、「aikoのオールナイトニッポン」 というタイトルが付いています。オールナイトニッポンという深夜の番組があって、aikoはそれを担当していた時期があったそうなんですが、それの再録ではなくて新たに、あたかも番組のようにして収録した録音がこのCDということらしい。
ただ私には弱点があって、というのは私は深夜放送というのを知らない。深夜のAMでそういう放送があったということは知識としては知っているんですが、実際に聴いたことはほとんど無いに等しいんです。深夜放送というのは受験勉強を夜にやっていて、それをやりながらラジオ聴いていたらラジオのほうが面白くて、結局勉強できなかったというような話をよく聞きましたが、そもそも私はオバカで勉強しなかったので。で、深夜放送を知らないということもそうだし、駄菓子屋を知らないというのもそうだし、あと何かなぁ、知らないことっていうのはとことん知らないのです。まぁよくあることといえばよくあること。ずっと日常的な家並みの道を歩いてきたのにカドを曲がったらそこはずっと向こうまで無機質な白い塀が続いているだけで風景が欠落してしまったような軽いショック、みたいな意外性というのか、そういうのが人間の経験とか記憶の中にもきっとあるんじゃないかと思うのです。
ですからこういうフェイクな深夜放送みたいなのを聴いてもこれが果たしてその当時の再現なのか、それともちょっと違うんじゃないの、と思うのかが私には判断できなくて、それを実際に知っている人とそうではない人とでは受け取りかたにきっと差があるんだろうと思います。

その内容としては、aikoの曲もちょっとはかかるしジングルみたいなのもあるんだけど、でもほとんどはひとりで喋ってる。そのときBGMがかかってるわけではなくて、ただ喋っているだけのその背後にシンとしたスタジオの空気感が存在しているのが伝わってきて、その音にあらわされない空気感がよくて、これは夜っぽいなとも思いますし、オンエアという言い方をしますけど、あぁ、エアなんだ、つまり言葉が電波に乗って空気中を伝わってラジオで受信されるという魔法のようなシステムが実感できます。っていう素朴な感想がまるでオコチャマ。
(TVっていうのはたとえニュース番組でも常に背後がざわついていて、ほかの番組だともっとそう、常に音楽やざわめきや何かがあって、つまりノイズの上に乗った言葉がある。でもラジオはそうではない。)
でも一日経つと、何が話されていたのか全然記憶に無くて、ただ面白い話だったなぁとか、大阪弁メチャいいなぁとかそういう印象だけが残っていて、だからそれがAMの味なのかもしれないとも思います。FMの音のほうがきれいだけど、FMの音には何かのキモチワルイ成分も少し入っていてAMにはそれがなくて庶民的です。
話されている内容は結局どうでもいいのかもしれない。たとえばお得なランチとか安い居酒屋での集まりとか、そこでの話はきっとほとんどがどうでもいいことで言葉はことごとく空気の中に消えてゆく。でも残るべきことというのはたぶんもとからそんなに無いんだ、と思うと、記憶なんてどうでもいいんだと思えます。来る日も来る日も前の日の繰り返しのようで、そのうちにどんどん時が経っていってこれは魔法というより騙されているだけなのかもしれないと思いながら時は経ってしまうものなのだから。


aikoの詩。(ポニーキャニオン)
aikoの詩。(初回限定仕様盤 4CD+DVD)




aiko/横顔
https://www.youtube.com/watch?v=Cd3xak-bpg8

2002.09.07 POP JAM
https://www.youtube.com/watch?v=_Jj06KKZCis

尚、現在販売されている《まとめ》の通常盤にはaikoのオールナイトニッポンは収録されていません。
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末尾ルコ(アルベール)

子どものころはまず学習誌か何か忘れましたけど、付録で「ソノシート」ってペラペラしたレコードが付いてることがありました。
記憶は曖昧ですが、わたしのレコード初体験はソノシートではなかったかと思います。
両親はレコードを買ってまで積極的に音楽を聴く方ではなく、わたしが音楽好きになったから家庭にレコードが増えて来たという状況でしたが、幼い子どもにとってLPは手が届かない存在で、まずはシングル盤、特に映画音楽のものを買ってました。
現在よりずっといい映画音楽があったし、それらが多くの日本人の間で共有されてましたです。
で、中学・高校と年を重ねる(笑)につれ、LPがどんどん増えていきました。
諸事情あって、ぜんぶ捨てちゃったのが惜しかったです。
CDは諸事情あって(笑)、あまり買ってないのです。

Aikoは実は、個人的にどこがいいのかよくわからないタイプの一人でして、しかし皆さん「いい!」とおっしゃいますよね。
そして長いキャリアを誇っている。
またしっかり聴いてみなければと思ってます。

『オールナイトニッポン』は笑福亭鶴光がやってたのがおもしろかったです(笑)。
ゲストで当時アイドルだった中森明菜や堀ちえみなんかが出たこともありました。
下ネタ多かったですけどね。
あと、最盛期くらいのビートたけしのもよかったです。
ただ、聴くのはどちらかと言えば、FMの方が多かったです。
音楽情報が欲しかったという理由が大きかったですね。
渋谷陽一とか、かつては誰かのニューアルバムに入ってる曲、ほとんどかけてましたから(笑)。
ずっと幼い頃を思い出せば、AMで淀川長治さんの番組があって、それは素晴らしかったです。
町山智浩にも大きな影響を与えているようです。
ともあれ、(ラジオっていいな)と最近特に感じているところです。


・・・

> つまり何国人であるかということに対して稀薄です。

なるほどです。
そうであってほしいですよね。
もちろんどんな芸術家でもオリジンは重要ですし、そこが創作の原動力となる場合も多いですが、生まれ育った土地への愛着は多く美しいですが、「国家」が強調されるのはちょっと違いますね。

>ある程度の余裕がないとそこまで到達しないのではないか

何やらまた剣豪のお話みたいですね。
と言っても、本物の剣豪がどうだったのか(現代では)誰も知らないわけですが(笑)。
しかしよく言われる、「本当の達人は体の力が抜けている」という境地をイメージします。
力みがあるうちはまだまだであるという。
わたしなんか何であれ、つい力んでしまいますからね~。
どうにも粘度が足りないと言いますか。

> それをどのように言葉にするのかが私にとっての課題です。

期待しております。
クラシック音楽について言葉にできる・できない以前に、(生きているうちにどれくらい理解できるのだろう)というくらいで留まっているわたしはいつもlequiche様の素晴らしいお記事を呆気にとられながら拝読させていただいておりますが、留まることなく深めておられる内容を拝読させていただくのは本当に愉しみです。
また、「言葉でないもの」を「言葉にする」という行いは、その対象が何であれ、そして「100%言葉にする」ことは不可能であるだけに、いつも大きな挑戦であって、ワクワクしますね。
いずれにしても、そしてどのような対象であっても、「言葉にする」挑戦を続けなければと思っております。

> スカルラッティの書き方は私にとって一種の魔術なのです。

「魔術」という言葉、いいですね~。
そう言えばドイツ的な文化にはやや魔術性は希薄でしょうか。
どちらかと言えば、ラテン由来の文化に濃厚のような気がします。
もちろん『ファウスト』のような作品もありますが・・・と書きつつ、これも最後まで読んでないのですが(笑)。
神秘主義の影響が濃厚なドイツロマン派の絵画は好きなのですが、魔術的と言うよりも理知的・思考的な感じはします。
「遊び心」という言葉はまさにラテン文化に相応しいような。
すごく大雑把な言い方ですが(笑)。

> サリエリはあまりにも映画《アマデウス》の影響が強過ぎて

サリエリが一般的にはさほど有名でなかっただけに、アカデミー賞作品の影響は絶大でしたね。
わたしはあの作品を初めて観た時、(モーツァルトがこれでいいのか?)と思ったものです。
もちろん狙ってやったのでしょうが。
井伊直弼を譬えとしてお出しになるのがおもしろいですね。
直弼のプロフィールを再チェックしてみたくなりました。

> 何事も少し自由な部分がないと息が詰まります。

おっしゃる通りですね。
すべての物事に言えますね。
ご存じかと思いますが、母の入院期間も長引いてきまして、わたしは付き添いの形にしているのですが、今のところ1週間に1度くらい、(母が)ストレスを爆発させるような言動を取るんです。
ベッドの上でのあまりに規則正しい生活。
もちろん早く退院できればいいのですが、それまでは何か「自由」の要素を入れてみなければと考えていたところです。
もちろん精神的にということになりますが。

> 「公」 なんだからそこで何やってもいいんだ、というのが

これは目から鱗です!
「公」だから厳しく自己を律するべき・・・というのが常識かと思いきや、昨今は逆なのですね(笑)。
これは日本、大変な国になっちまったものです。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-06-23 11:17) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

時代によって音楽再生のメディアは変わっていきますから、
使えなくなってしまったものもありますし、
進歩とはそういうものかなとも思います。
最近だとMDというメディアがありましたが、
もう再生することがほとんど不可能ですし。
ソノシートというのも素材が脆弱ですから、
ごく短い間しか生産されなかったのではないでしょうか。

映画音楽は、昔は映画そのものが大メジャーでしたから
それに付随する音楽もよく聴かれていたのでしょうね。
今は映画の音楽に対する比率は低いのではないかと思います。

私は子どもの頃、
叔父や叔母の持っていたレコードを聴いていたので、
今考えるとその頃のレコードが一番聴きたいのですが
残念ながらそれはありません。
自分で買えるようになってからのレコードよりも
それ以前に聴いたレコードの記憶のほうが鮮明なのです。

諸事情があったのは残念でしたが仕方がないです。
そのような事情は誰にでもあることですから。
私は自分で買うようになってからのレコードやCDの
99%はまだ手元にあります。
全然処分できないのもこれはこれで考えものですが。(^^)

aikoはズバリ言ってしまえばわかりにくいです。
音の連なりが 「どうしてそっちに行く?」 という傾向があり、
それがキモチワルイという人が多いです。
wikiには面白いことが書いてあります。

 ジャズから摂取したコード進行を多用する傾向があり、菊
 地成孔によれば作曲においてブルー・ノート・スケールが
 基本となっており、曰く「ある意味ブルース・シンガーと
 も呼べる」

あるいは、

 「コードにメロディがぶつかっているから違和感があって
 気持ち悪い」と言われるが、自身では全く変だとは思って
 いない。

つまり理論的に見るとかなりむずかしいことをやっているのですが、
それをむずかしいと感じさせないというか、
本人も理論的にむずかしく作っているという自覚はなくて、
むしろその屈折感のあるメロディが屈折しているのにもかかわらず
素朴に聴いているだけのリスナーの心に
入って行きやすい構造になっているのがすごいと思うのです。
全く違うように思われるかもしれませんが、
椎名林檎とaikoはそのアヴァンギャルド性については同格です。
これは宇多田ヒカルのひとつ前のアルバムでも言われていたことですが
「ここ、和声的にいうと音がぶつかっているよね」
という個所があって、でもそれはいいんです。
和声とか音楽理論は後付けなので、そもそもの音がよければ
それはやがて理論的に正当化されるのです。

オールナイトニッポン、やはりご存知ですね。
私は笑福亭鶴光というお名前のかたさえ知りません。
何かの折りに、深夜放送が大好きという同級生がいて、
ですから高校生の頃ですが、一緒に聴いたことがあったのです。
私はそもそも深夜放送というものに何か猥雑な印象を抱いていて、
つまり偏見なのですが、ところがその同級生はマジメな感じで
そういうラジオは聴かないだろうと思っていたので
ちょっと意外でした。ちょっとじゃなくて、かなり、かもです。
けれどいざ聴いてみたら、あまりピンと来なかったので、
その後、自ら深夜放送を聴くということもありませんでした。
でもあらためて思うのですが、AMでもFMでも
ラジオの音のベースには静謐さがあって、
その静けさが私には近しいもののように感じられますし、
その静謐さはTVには存在しないものなのです。
直感的な形容をしますとTVはがさつで、
さらに言えばスマホもがさつです。

音楽に限らず優れた人というのはその個人が優れているのであって、
たとえばサッカー選手なんて私はよく知りませんが、
メッシもロナウドも優れている選手であることはわかりますが
何国人かは知りません。それはどうでもいいと思うのです。
大坂なおみでも同じことです。
特にオリンピックは擬似戦争としてのイヴェントなので
国家が出て来てしまいますがそんなのはどうでもいいのです。
と、もっと声をあげるべきだと思うのです。

現代のクラシック音楽の演奏者にとって
楽譜通りに弾けるのは当たり前なので問題はそこから先です。
でもそこで止まってしまっている演奏者というのもいるのです。
音楽は言葉にできないことだから音楽にしたのであって、
それを言葉で語るのには矛盾があります。
武満徹は音楽だけでなく文筆活動でも才能がありましたが、
その文章はともすると自分の作品を補完するだけでなく、
なにか少し違うものを付加する方向性もあったように思います。
ですから武満の文章を読んで武満の音楽を聴いても
それらは一致しません。それは仕方がないのです。
武満の文章は決して自作へのエクスキューズではないのですが、
外郭は捉えていますけれど
その文章の本質と彼の音楽の本質は異なるものです。

ドイツでもノヴァーリスのような人もいますし、
ネルヴァルもドイツ的な影響を受けていますから
一概にドイツは理詰めの国みたいには言えないとは思いますが、
でもそういう傾向はあるかもしれません。
けれどたとえばリルケの詩は明確で理知的なのですけれど、
私はそこに眩暈を感じます。
それはカラマーゾフのイヴァンに感じる眩暈に似ています。
私は小学生の頃、天文学が好きで、ティコ・ブラーエという
現代から見ると一種のトンデモ学者なんですが、
この人の中途半端な学問への入れ込みかたが忘れられません。
そういう傾向のいかがわしさという面での魔術ともいえます。
といってスカルラッティが錬金術師だったわけではないですが。

楽理的に解説すれば、これがどういう和声で、というように
わかるのかもしれないんですが、ではスカルラッティが
そのように曲を書いていたかというとそうではないんですね。
自分がそうしたいと思ったから結果としての曲ができていたので、
その方法論は、つまりaikoと同じなのです。

アマデウスでのモーツァルトの描きかたは
あまりにカリカチュアされ過ぎていますけれど、
でもわかりやすいです。
サリエリでも井伊直弼でも悪者に描いてしまえばわかりやすい。
でも現実はたぶんそうではなかったはずです。

お母様のことはいつも読ませていただいておりますが、
その詳しさと冷静さは似た境遇のかたへの参考になりますね。
医療のことでいろいろと問題点はあるようですが、
でも医療も決して完全ではなく完成しているメソッドでもないので
日々更新していかなければならないのだと思います。
ストレスは当然ありますし、お母様はよく耐えていると思いますし、
それは本人の問題であって周囲の人間にはわかりません。
類推するしかないのですが、それも試行錯誤でしかないはずです。
全く異なったアタックが必要な時もあるかもしれませんね。

何やってもいいんだ、やったもん勝ちだと思っている人間は
実際にはそんなにいないと思うんです。
でもそういう人は目立ちますし、影響力が強いので、
水はどうしても低いほうへと流れてしまいます。
もっとも一番濁っていて低いところを流れているのが
現在のこの国のトップの人たちだったりするので、
厳しく自己を律する人なんていないように思えてしまいます。
by lequiche (2019-06-23 22:57) 

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