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レコードの日 — 大貫妙子《DRAWING》 [音楽]

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11月3日はいつの間にか 「レコードの日」 になったらしくて、ハロウィーンと同じで無理矢理作った感があるけれど、だんだんとその日に合わせてアナログレコードを出すというパターンが常態化してきている。
ユニバーサルミュージックから大貫妙子のアナログ盤が4枚リリースされた。《DRAWING》は東芝EMI (当時) 移籍後初めてのアルバムで、プロデュースも小林武史である。

大貫は過去のアルバムについて、アナログ盤で出たものはアナログ盤で聴くのが良いという発言をしていたが、この《DRAWING》は1992年リリースで、初出メディアはすでにCDであった。つまり今回は初めてのアナログ盤ということになる。リリース予定によると、この後のアルバムも順次、アナログ盤を出すとのこと。今回発売されたのは年代順に
 《DRAWING》(1992)
 《Shooting Star in the Blue Sky》(1993)
 《TCHOU!》(1995)
 《pure acoustic》(1996)
の4枚である。

midi時代の最後に《NEW MOON》(1990) があり、このアルバムと《DRAWING》、《Shooting Star in the Blue Sky》までが小林武史プロデュースである。《NEW MOON》の前に《A SLICE OF LIFE》(1987) と《PURISSIMA》(1988) があり、この2枚が私にとっての偏愛盤なので、《NEW MOON》が出たとき、エッ? という感じがなかったわけではない。でも、これはこれでありなのかもしれない、と思った。それほど小林武史の音は異質であった。3枚の中で私の好みをいえば《DRAWING》が一番だと思う。

tr01の〈OKAVANGO〉のくっきりとしたリズムに乗せて歌われるアフリカ動物パズルに通じるゆったりとしたメロディ。今聴くと懐かしい。まだ世界に希望があった頃の音楽のように、それは聞こえる。
この頃の『Mother Nature’s』や『SINRA』に大貫妙子の記事が掲載された号をいまだに何冊か持っているが、ガラパゴス、南極などの動物たちのいる風景が胸を打つ。そして《TCHOU!》から、また異なった局面に大貫の音楽は移って行く。


大貫妙子/DRAWING (ユニバーサルミュージック) [アナログ盤]
DRAWING(限定盤)[Analog]




大貫妙子/Shooting Star in the Blue Sky
(ユニバーサルミュージック) [アナログ盤]
Shooting star in the blue sky(限定盤)[Analog]




大貫妙子/TCHOU! (ユニバーサルミュージック) [アナログ盤]
TCHOU <チャオ!>(限定盤)[Analog]




大貫妙子/OKAVANGO
https://www.youtube.com/watch?v=PfEG_7s-XLY

大貫妙子/Dreamland
https://www.youtube.com/watch?v=q2elO3K6mA0

    *

大貫妙子/Yesterday Yes A Day
(ジェーン・バーキンのカヴァー。原曲はセルジュ・ゲンズブールが
映画 Madam Claude のために書いたもの)
https://www.youtube.com/watch?v=qBK1GfcZEf4

大貫妙子&土岐麻子/いつも通り
(シュガー・ベイブのアルバム《SONGS》収録曲)
https://www.youtube.com/watch?v=qqJ_d-NoCyo

ピーターラビットとわたし / 大貫妙子
https://www.youtube.com/watch?v=eltLkyzwUkQ

Taeko Ohnuki Shooting Star in the Blue Sky Concert (1993)
https://www.youtube.com/watch?v=L3H1fZfSv7Q
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コメント 4

末尾ルコ(アルベール)

アナログ盤、聴きたいものですが、現在家に対応するオーディオがないんです。残念。
わたしがかつてアナログ盤をすべて捨ててしまったのは、当時のわたし自身の過酷な精神状況があったので、後悔するも何もないという状態でしたから致し方ないとはいえ、オーディオまで処分したのは我ながらいただけませんでした。

リンクしてくださっている大貫妙子、視聴いたしました。
特にライブ映像がいいですね。
大貫妙子を愛聴していた時期は長かったですが、当時はなかなか歌っている姿、見られなかったですから。当人もラジオだったと思いますが、「テレビへ出るのはカッコ悪い」と言ってました。わたしはこういう線引きする人が好きです。美意識と言いますか。
声もあらためて聴くと、水のように伸びやかでしかも深いですね。唯一無二の声であると再認識しました。今後また頻度を増して聴いていきたいと思います。


・・・

読書メーターのお話、有難うございました。
ネットで氾濫する言語の多くが現在そのような状態ですよね。書き込まれる言語も多くが酷いけれど、ネットのシステムが衆愚をさらに強化している感が強いです。
例えば映画のタイトルでグーグル検索すると、1ページ目にユーザーレヴューの点数が出てきます。それを見て多くの人たちが、(ああ、この映画はこんな氷菓なんだ)と信じてしまいます。もうどうしようもないですよね、検索しただけでユーザーレヴューの点数が目に入るシステムになっていますから。
さらにですね、例えば自分が子どもの頃を思い出すと、専門家の評価が高い作品、小説にしても映画にしてもですが、鑑賞して理解できない時はまず、(まだ自分にはこの作品を理解できるだけの力がなかった)と思っていました。ところが昨今多くの人は、「理解できない=作品が悪い、つまらないから」と信じてしまうんですよね。スゴイですよね、この思考回路。
この衆愚状態がさらに強化されれば、衆愚に気に入られない本はどんどん焚書にされる・・・なんてこともあり得るかなあと、さらに言えば、「衆愚による衆愚のための歴史や文化史」ができつつある状況ではないかと危惧しております。

松田聖子はやはり特別な歌の力を持っているのですね。その点も聖子の全盛時から、「アイドル歌手」としての存在を語ると同時に、その歌唱の力のみに絞って語る評者が前に出ていたら、当時からもっとクリアに松田聖子という表現者を理解できたと思うのですが。日本って、「アイドル論」のようなものを語る人は多いけれど、純粋に「歌の力」を語る人ってあまりいなかったです。
ただ現在は、売れる売れないは別として、「歌唱の力」のある人はかつてより多くいるのではという印象はあります。


> ところが混んでいると、下がったらなんにも見えません。

そういう状態で放置しているっていうのは、人気展覧会なら各国似たようなものかもしれませんが、どうなのかと思いますね。
でも展覧会は入場料がさほどでもないのでましな方で、以前東京文化会館のS席でバレエ鑑賞した時、どうしてもステージの少なからぬ部分が見えないことがありました。理由は前に座っている人に隠れてしまうというものでしたが、その人、普通に座ってるんですよ。特に座高が高いわけでもなし。なので注意するわけにもいかない。S席25,000円ほどしましたから、極めて理不尽な気分を味わわされました。

> 作品に対する尊敬の心がわかります。

どの分野でもそのような気持ちが伝わってくると、とても嬉しい気分になりますね。

> フッと出てきたフレーズ

フレーズの場合、「フッと出てきた」ところでできるだけしっかりキャッチしたいものですね。出てきたものの中に驚くべき傑作が秘められているかもしれません(生涯そんなのないかもしれませんが 笑)から。志は高く持ち続けたいものです。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2020-11-05 16:42) 

つむじかぜ

小生は、80年代の大貫妙子を良く聴いておりました。
ヨーロピアン3部作が好きで、特にロック色の強い「ROMANTIQUE」は当時のヘビロテアルバムでした。A面が坂本龍一、B面を加藤和彦がアレンジャーとして参加した独特の色合いの作品でした。
そういえば、AB面という表現もアナログレコードならではですね^^
by つむじかぜ (2020-11-06 01:24) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

そのようなご事情があるのでしたら仕方がないですね。

大貫妙子は歌うとき、ほとんど動きがないので、
動画にしてもつまらないのでは、とご自身で言われていました。
もちろんそんなことはないのですが。
声はいわゆるソフトヴォイスですが唯一無二のものです。

今はamazonをはじめ、誰にでもレヴューを書くことが容易です。
そして販売者側もそれを求めているようです。
そうした需要/供給のシステムは
たとえば学園祭の展示物に対するアンケートに近いです。
コメントを書く側も書かれる側も、
残念ながらそれほどのクォリティにないということのおいて。

音楽は歌唱力だけでなく楽器の演奏力でも
全体のレヴェルは著しく高くなっているようです。
ただ技術だけでは音楽として成立しません。
問題はその先です。
アイドル論というのは一種のフェティシズムなので、
その分野は私にはよくわかりません。

劇場のシートの不合理性というのは確かにあります。
しかも自分で座る位置を決めることができない、
という販売システムもありますし。
文化会館というのは比較的良いホールだと思うのですが
そういうこともあるのですか。残念です。
きちんろ観られないという危惧があると
会場に出かけるのが億劫になってしまうことがあります。
私の場合はそれが顕著です。
不愉快さを味わうよりは行かなければいい、
というような。(笑)
一度、億劫になりだすとそれはどんどん増幅します。
かくしてほとんど映画館に行かない私のような人間が
多くなっているのではないかと推察します。
by lequiche (2020-11-08 04:08) 

lequiche

>> つむじかぜ様

そうでしたか。
romantique、良いですね。私も好きです。
大貫楽曲の中で、坂本龍一は定番ですが、
私は加藤和彦の手がけたものがスキです。
過去の記事にromantiqueについて触れたものがありますので、
お時間のあるときにでもご覧いただければうれしいです。
下記の記事です。

https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2014-08-19

https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2016-12-18

by lequiche (2020-11-08 04:09) 

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