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真島昌利『ロックンロール・レコーダー』 [本]

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John Lee Hooker

ザ・クロマニヨンズの真島昌利の本が書店に山積みになっていて、真四角のEPサイズで裏表紙にEPのスリーヴに入ったレコードの写真があるので、もしかしてレコードが付録かと思ったのだが残念ながらそうではなかった。中身の文字は貼り込んだようにレイアウトされていて、内容が薄いのかというとそうでもない。真島が子どもの頃から聴いてきたディスクガイドになっていて、なかなか読ませる。

小学校6年生のとき、友だちの家でビートルズを初めて聴いて、といってもすでにビートルズは解散した後だからリアルタイムではないのだが、ギターをやりたいと思ってとりあえずギターを買ってきて、教則本通りに、まず 「日の丸」 をやって次に 「荒城の月」 をやって……でも何か違う。やりたいことからどんどん遠ざかっていってる気がする、というあたりがすごくおかしくて——いいなぁ。
それで友だちにビートルズみたいに弾くにはどうすればいいの? と聴いたら和音を鳴らすためのコードという押さえ方があるから、と教えてもらい『明星』という雑誌の付録の歌本を貸してくれた。それでアグネス・チャンとか天地真理の曲に付いているコードのダイアグラムを見て押さえ方を覚えていったのだという。それが中学生の頃。

最初はビートルズばかりやっていたのだが、そのうち古いロックンロールへ。ツェッペリンやパープル、キッスなどよりチャック・ベリーやエディ・コクランが好きだったという。そしてボブ・ディラン、スプリングスティーンなどを経てエヴァリー・ブラザースを初めて聴いたら、これビートルズそっくりだと思ったそうだが、もちろん順序が逆なわけでエヴァリー→ビートルズという影響なのだから。

で、ビートルズよりもストーンズのほうが野蛮な音で好きになり、さらに真島はブルースを遡って行く。エルモア・ジェイムス、ジョン・リー・フッカー、ジミー・リード、マディ・ウォーターズなどなど。でもその中で 「ジョン・リー・フッカーはひときわ独特で飛び抜けていました」 と真島は書いている。〈Sally Mae〉を 「初めて聴いたとき、奇妙な音のギターと低いうなり声に、僕は若干の恐怖をおぼえました」 と。

というふうに音楽遍歴が書いてあるんだけれど、ジョン・リー・フッカーがストーンズのライヴにゲストで出てきた動画があって、1989年のアトランティック・シティ、まずエリック・クラプトンがゲストとして加わり〈Little Red Rooster〉をやってから御大が登場して〈Boogie Chillun〉となるこの繋がりがとても良い。ミック・ジャガーの歌もすごくタイトだし、なによりこのライヴにおけるクラプトンのギターは素晴らしい。私が初めて買ったクラプトンのアルバムは武道館ライヴで、良いのかもしれないのだけれどレイドバックし過ぎていて、それよりこのライヴのシャープさのほうが好きだ。
ジョン・リー・フッカーはこの時72歳。なんかすでに重要無形文化財みたいな感じになっているが、バックで弾いているクラプトンやキースがとても楽しそうで、音楽っていいなとしみじみ思ってしまうのである。

それとこの本に掲載されているレコードの写真がとても美しい。おそらくマーシーのコレクションなのだと思うが、その大半が日本盤で、帯がきちんと付いていて、ジャケットの撮影も製版も秀逸で、これどうやって撮ったの? ってくらいにクォリティが高い。
CDはたぶん1枚も無い。最後のほうに書いてあるけど最近はSPも集めているらしい。チャック・ベリーのサインが入っているLPとかすご過ぎる。日本盤に付いている帯なんてダサいと思って私は皆、捨ててしまっていたんだけど、それってダメみたいですねぇ。


真島昌利/ROCK&ROLL RECORDER
(ソウ・スウィート・パブリッシング)
ROCK&ROLL RECORDER (ソウ・スウィート・パブリッシング)




Rolling Stones/Steel Wheels LIVE
(ユニバーサルミュージック)
スティール・ホイールズ・ライヴ(限定盤)(2SHM-CD)[SD Blu-ray]




The Rolling Stones, Eric Clapton and John Lee Hooker/
Little Red Rooster & Boogie Chillun
https://www.youtube.com/watch?v=uSxV-4RKkMc

John Lee Hooker/Sally Mae
https://www.youtube.com/watch?v=3-vsV8KrMR0
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末尾ルコ(アルベール)

リンクしてくださっている動画、視聴いたしました。「The Rolling Stones, Eric Clapton and John Lee Hooker/ Little Red Rooster & Boogie Chillun」とか愉しむのはまさに洋楽を聴き続けてきた冥利につきますね。この問答無用の実力がもたらす最高度の充実感。そしてこの動画ではクラプトンのカリスマ性も際立ってます。関連動画として掲示されていたドアーズの「Little Red Rooster」も視聴しましたが、これもおもしろい。ジム・モリソンがこの曲を歌う姿を観られるとは。このあたりはYouTubeの恩恵をつくづく感じます。
今回のお記事を拝読しながら、自分自身の音楽史についてもいろいろ思い出しました。
わたしの洋楽経験は映画音楽から始まりましたが、「ロック」としてファンになったのはクイーンが初めてでした。しかも「愛にすべてを」というクイーンの楽曲の中でも最もコーラスワークが強調されたもので、これが「ハードロック」として紹介されましたので、(これがハードロックか!)と刷り込まれたものです。
中学時代はわたしの周囲でまともにロックを聴いていたのは一人だけ。他は歌謡曲かフォークでした。男子生徒のかなりがアコースティックギター買ってフォークを聴き、歌ってました。
高校へ入っても主流は当然歌謡曲。しかしさすがにロックに詳しい友人も何人かできまして、中にはブルーズを聴いてる者もいましたし、すっかり非行化したわたしは連日学校を抜け出してアングラなカフェに出入りしていたので、そこにいた大人たちからヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの世界を知りました。
わたしは高校時代はパンク・ニューウェーブでしたが、ローリング・ストーンズは「別格」としてアルバムほとんど聴いてました。ただ全部買うお金はなく、レンタルもまだ普及しておらず、友人知人との貸し借りの比重は重要でした。
どういうわけか周囲にビートルズに熱を入れている者は一人だけでした。わたしのその当時の浅はかなイメージは今思えば、「ビートルズ=優等生」という感じだったです。だからわたしの人生にはあまり関わりないなとか、そんなイメージでした。10代ならではの無知から来る浅はかさですね。
結局わたし自身、ブルーズは熱を入れて追ったことはなく、まあこれも今後の愉しみの一つとしていこうかなあと。
レコードの帯なんですが、大事にする派とすぐに破り捨てる派、どちらもいました。わたしは深く考えることなく、すぐ捨てもしないし、特に大事にもしてませんでした。

そう言えば歌詞に関することなんですが、ぢヴィっド・ボウイなんかももちろん聴いてましたけど、まだ英語もよく分からず、もちろん「ライミング」なんて概念も知らない時期でしたが、それでも彼の歌詞の英語のキレのカッコよさにはシビれてました。これはお話しくださった朗読・音読についてとも繋がる気がしますが、つまり言葉は「音」にすることで意味を超えた美しさ、カッコよさが生まれる場合もあると、そんなことを10代の頃から実感していたのかもしれません。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2022-02-28 19:48) 

ぼんぼちぼちぼち

マーシーの作る曲って、もろブルース進行でやすもんね。
代表的なのは「ブルースをけとばせ」とか。
あっしは、ヒロトさんも好きだけど、マーシー派でやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2022-02-28 22:43) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

このライヴ音源と映像はごく最近公開されたものですが、
これまで埋もれていたということが信じられないです。
ミック・ジャガーが絶頂期ですし、
クラプトンも往年の攻めるソロが蘇ってるように思います。
マニアックなことを言いますと、
このギターはフェンダーがクラプトンのために
1988年に製作したピューターというモデルですが、
この初期モデルにはちょっと特殊なマイクが付いていて
あまり良くないんじゃないかと思っていたのですが
そんなことないですね。これを聴くとよくわかります。
まぁギターとかマイクが良いからという理由じゃなくて
クラプトンが上手いんですけど。(笑)

ギターを始めるにあたってアコースティクギターを買うのは
それだけで音が出るからです。
エレクトリックギターはアンプとかエフェクターとか
金額がかさみますし音量も大きくなってしまいますので。

歌謡曲とフォークというのも同様に入りやすいからで
昨今のJ-popにしても実は歌謡曲ということが
まだ多いわけですが、これはしかたがないと思います。

上記の真島昌利の本では
ビートルズからストーンズへ、そしてパンクへという
彼の遍歴が語られていますが、真島はかなり広汎に聴いていて
この人ものすごく詳しいなとあらためて思いました。
ブームタウン・ラッツとか出てくるとフーンと思いますし、
パティ・スミスの《Because the Night》のシングル盤は
ジャケット写真がカッコイイです。
日本のパンクバンドだから、と軽くみていると
全然大違いだったと気がついたのです。
それと音楽評論家の見方とミュージシャンの見方は
少し異なるという感じがしました。

解説の中で気がついたのはザ・ダムドの
《Damned Damned Damned》というアルバムの邦題は
「地獄に落ちた野郎ども」 だったのですね。
もちろんヴィスコンティの映画《The Damned》の邦題である
「地獄に落ちた勇者ども」 のパロディです。
でも一番すごいのは真島がジョー・ストラマーに
ハグしてもらったというエピソードです。

歌詞に関しては正直言ってよくわかりません。
つまり相当に英語ができないと英語詞は
その本質のところまではわからないのではないかと思います。
ですからあくまで表層の、ごく上澄みをなぞるだけですが、
ごく曖昧な雰囲気だけで感じている部分はありますね。
それはそれで良いのではないかと思います。
by lequiche (2022-03-01 05:01) 

lequiche

>> ぼんぼちぼちぼち様

おぉ、マーシー派ですか!
お二人ともそれぞれの曲づくりに個性がありますが、
私は甲本ヒロトは歌手、マーシーはギタリストというような
区分けをしてしまいます。
で、実は今のクロマニヨンズもそれなりにいいんですけど
ブルーハーツのほうが情動的で聴き応えがあります。
それとこうした音楽の聴き方として
究極はモノラルのシングル盤という感じがします。
クロマニヨンズでも今、シングル盤を出していますけど
ブルーハーツのが欲しいんですよね〜 (でも高い ^^;)。

ブギ連というのはいかがですか?
内田勘太郎と甲本ヒロトのユニットです。
by lequiche (2022-03-01 05:04) 

うりくま

マーシーの本が山積みに?明日、書店に行ってきます!
35年以上前、ブルーハーツのファンクラブに入る程嵌って
いたので、そのルーツを知ろうと今回名前の挙がっている
ブルースの曲もレンタルして聞いたりしていました。
結局はヒロトの声とマーシーの歌詞が好きなだけで、ブル
ースの神髄は判らないまま終わりましたが・・(^^;)。

by うりくま (2022-03-06 02:43) 

lequiche

>> うりくま様

ファンクラブ?!!! それはすごいですね。\(^o^)/
今でしたらYouTubeで検索するだけで
古いブルースの代表曲は聴けますから、そのガイドとして
この本をお買いになるのもよいかと思います。

この本、ツカ (本の厚さ) を出すために
パラパラの文字組みにしたのかと思ってしまいますが、
写真とのバランスだとこれで十分ですし、
内容はとても濃いです。
そしてジャケット写真がとてもキメ細かく美しいです。
こんなレコードジャケット写真を載せている印刷物は
滅多にありません。

ブルーハーツは
夕暮れ (作詞作曲/甲本ヒロト) と
1000のバイオリン (作詞作曲/真島昌利) だと私は思います。
そして〈夕暮れ〉のレギュラー盤は
ミックスのとき、甲本ヒロトがギターの音を
かなり削除してしまったということなので、
以前にもリンクしたことがあるのですが、
このライヴ映像がとても好きです。

The Blue Hearts/夕暮れ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13413106

そしてブルーハーツのCDシングルボックスは持っているのですが、
やはりCDではなくてモノラルのシングルレコードが
ブルーハーツには一番似合っているように思います。
by lequiche (2022-03-07 02:57)