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ビョークの《biophilia live》 [音楽]

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すでに新譜でなくなってしまっているのだが、今、ビョークの《bastards》と《biophilia live》を聴いている。

《bastards》はリミックス・アルバムなのだが、最初のトラックの〈Crystalline〉の中近東風のテイストにやられてしまう。あ、こういうのもありなのか、という感じで。
リミックスというのは基本的にオアソビで、元の楽曲にはかなわないはず、というのが一般的な認識なのだろうと私は勝手に思っているのだが、ビョークの場合は必ずしもそうとは限らない。つまり相当レヴェルの高いリミックスがあるからで、全く異なった楽曲として聴くことができる。それは元となる素材に〈いじりがい〉があるということに他ならない。素材がプアなのなら、それ以上のものはできないはずなのだから。

でも、リミックスというのは基本的にスタジオワークだから、閉じた密室の中で生成される作品で、それと対極にあるのがライヴ盤であることは確かだ。
《biophilia live》は2013年9月、ロンドンのアレキサンドラ・パレスでのライヴとクレジットされているが、女性コーラス隊を従えているパターンは《Voltaic》と同様だ。だが今回のコーラスはアフリカンではなく北欧風だし、展開するコンセプトとどぎついほどの色彩感が生物学的なイメージをも交えナチュラルな息吹を見せているようで、それでいて生々しい。この生々しさは非常に屈折したセクシャルなイマジネーションを原点にしているのかもしれないと思ってしまう。
ただ、表面的にはむしろそうした人間的な表象から離脱してみえるように見えるところがミソなのだ。ヴィジュアルはごく微視的でありながら、その顕微鏡で覗くような世界が同時に広大なる宇宙とアナロジィであるということが示されている。

それと、biophilia live といいながら《Voltaic》のライヴで印象的だったエレクトリック・ガジェットを駆使しているような〈thunderbolt〉からスタートし、ラスト近くには攻撃的なメッセージ性を包含した〈declare independence〉が歌われるのを見ても、このライヴは《Voltaic》の延長線上にあり Volta+biophilia というふうに捉えるのが自然である。
〈declare independence〉は《Voltaic》のときほど暴力的ではないが、ビョークにとって重要な曲のひとつであることは間違いないように思える。

ごちゃごちゃした積層するアイテムと北欧という言葉から、私はクラウス・ハーパニエミを連想するが、同じ北欧でもビョークが発しているイメージはハーパニエミのように上品ではなく、もっとぶよぶよとしていて肉感的で、グロテスクな相貌を見せている。

最初にスタジオ録音の《Biophilia》を聴いたとき、私はややおとなしい印象と書いてしまったが (→2012年07月31日ブログ) それはやはり間違いなのかもしれない。Biophilia は Volta のコンセプトがさらに深化し発展した形態なのであって、その根底に横たわる芯のようなものはより強固になっている。
ビョークのリリシズムはリリシズムという言葉から醸し出される 「たおやめぶり」 ではなく、常に強い意志を持っていて、常に進化していて、グロテスクさのなかにのみ存在する美学を信じて疑わない。まもなくリリースされるはずの《Vulnicura》でどのような変化を見せてくれるのか期待している。


Björk/Biophilia LIve (One Little Indian)
Biophilia Live(2CD+Blu-ray)




Björk/Bastards (One Little Indian)
Bastards




Björk/Isobel (Live at Alexandra Palace)
https://www.youtube.com/watch?v=It3zf5Li_58

Björk/Isobel (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=S1QtZqCiP7s
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コメント 4

johncomeback

ご訪問&nice ありがとうございます。
若い頃のようには音楽を聴かなくなりました。
通勤時はウォークマンで落語聴いてます(*´∇`*)
by johncomeback (2015-01-30 15:19) 

リュカ

詳しくは分からないのですが
こういうリズム、どことなくエキゾチックで、なんとなく体がリズムとっちゃいます。
by リュカ (2015-01-30 18:46) 

lequiche

>> johncomeback 様

こちらこそありがとうございます。
シルフさんのところへのコメがオモシロ過ぎるのでお伺いしました。
なるほど。落語がお好きなんですね〜。(^^)
確かに音楽というのも聴く時期ってあるのかもしれません。
by lequiche (2015-01-30 22:11) 

lequiche

>> リュカ様

そうそう。エキゾチックですよね。
人間の一番原初的な情動というような、
身体が感じてしまうリズムってあるんだと思います。
音楽というジャンルに限らない、もっと基本的な何かですね。(^^)
by lequiche (2015-01-30 22:11) 

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